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今と女性と曇り空

 この日、マリ?さんは学校に来なかった。風邪らしい。2年間皆勤賞を貫こうとしたらしいが、あと1歩届かなかった。


 一週間の疲れがどっと溜まる木曜日の授業は終わり、さあ帰ろうとした時に職員室の放送で、前岡に呼び出しを喰らった。


「悪いんだけど、今日提出の重要なプリントがあるんだ。佐藤マリの家に取りに行ってから、学校に持ってきて貰えるか?」

「仲いい奴に頼めばいいじゃないですか?」

「修学旅行委員だから」と強い説得力を持って、ねじ伏せられてしまう。

まあ、佐藤さんに結構迷惑かけてるから行くか。

「わかりました」

「いやー、物分かりがよくて助かる。これ地図だからぁ」とA4の紙を渡される。

  要件を託されたので、職員室を出る。



「栗林!!」

「っ?げ」


 思わず声が出てしまった。学校でコイツが話しかけてくるのは結構珍しいんだ。先日のレアケースに該当する。どうやら、職員室前に待ち伏せしてたらしい。


「何が『っ?げ』っよ。あんた《《も》》マリのうち行くんでしょ」

「それがぁ」と返すと、楓は睨みつけ、

「あんたが、風邪に苦しんでいるマリの身体に何するか分かんないから。わたしも見舞い行くって言ってんの!」


 まるで意図を察せられなかった俺が悪いかの如く、憤怒と同時に言葉を紡ぐ。

 そして、楓は早歩きで立ち止まっている俺を置いて行った。


 2人して学校の下駄箱まで、10メートル間隔くらいを開けて、歩く。

 下駄箱に着くと朝には、夏から季節が遠ざかったにも関わらず、強い日差しが刺さり、一睡もしなかった体に染みたのだが。放課後には、晴れた空模様は曇り、楓の機嫌を表している様にも思えた。

 もうそろ、『雨が降るな』とカバンの奥にあるはずの折り畳み傘の所在を確認する。靴を履き昇降口を出て、校門をでて、左へ右へと向かっていくと10分ぐらいで佐藤さんの家に着いた。

 そのかんも、10メートル間隔はキープされたままだった。

 楓とは学校で、一方的な暴言や侮蔑ぶべつ名誉毀損めいよきそんとも取れる銃弾ことばを放射されて以来は無言のままだったが、正確なナビとしては機能しており、その点は感謝している。佐藤家は2階建ての一軒家だった。


 遅れて佐藤家に着いた俺を待ってたらしく、ちょうど来たタイミングに、楓がチャイムを押す。ピーンポーンとお馴染みの響きが流れると、黒髪でロングヘアの女性が左手でドアを半開きにして下を向きながら、「何か御用ですか」と話す。

 


顔を上げる、

「……ええぇぇえぇー、そうなんですかぁ?」

 楓は、さっきまでの態度が嘘のように、テンションを一気に上げる。

 何がそうなのか、まったく分からない。


 女性は白色のケーブルニットのセーター、下にはジーンズを着ていた。背丈は170ぐらいでモデルのような体型をしていた。顔は端正な顔立ちをしており、美人と可愛いを両立しているようにも思えた。鼻は高すぎもせず、低すぎる事もない。

 女性の顔を見ると心に突き刺さった感覚があった、筆舌に尽くしがたい何かが。マリさんの部屋(階段上って奥の部屋)が紹介されるまで、目が離れなかった。

 その女性は少し出かけると言って、俺らに留守番を任した。


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