表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/47

台風コロッケ

 台風の日は、コロッケを買って家で食う。なぜかこんな風習があった。


 2019年の東日本台風の時も、冷凍のコロッケにを買い込み、家で一人で食べていた。確かあの時は、スーパーやコンビニで水やカップ麺、パンなども品薄が相次ぎ、品薄になっていたのが記憶に新しい。


 台風の時はコロッケ。


 確かに揚げ物は、天気の悪い時の方が美味しく感じる。なぜだが不明だが、天気も悪いし、ちょっとぐらい自分を甘やかしてもいいんじゃない?って思ったりもする。


 しかし、台風になぜコロッケ?


 現在、2023年9月7日にも台風が来たので、気になった。雨も風も強かったが、電車は相変わらず動いている。会社からは「いつも通り出勤しろ」と連絡がきて、イライラしてくる。「ちょっと熱っぽい」と仮病をし、有給を取る事にした。


 有給の連絡を終えると、近所にあるコンビニに行き、冷凍のコロッケを買う。少し外に出ただけで雨でビショビショだ。こんな時まで労働してる人も多いようで、全く日本はクレイジーな国だ。


 皿に冷凍コロッケを盛り、レンチン。すぐにいい匂いがしてきて、コロッケを食う。


 中のじゃがいもはほわっと柔らかく、衣はサクっとしてる。コンビニの冷凍食品の割にだいぶ美味しい。色も美しいキツネ色だ。


 そんなコロッケを楽しみながら、パソコンで検索すると、台風コロッケは2001年の2ちゃんねるの書き込みが起源だと知る。その後も2010年代ごろからジワジワと話題になり、2019年の令和元年東日本台風の時もコロッケが飛ぶように売れたとあった。台風コロッケにも歴史があるようだった。


「ふーん、そっかぁ」


 そういえば2013年ごろに付き合っていた元カノからもコロッケを作って貰った事があった。台風が来るから、と。


 元カノが作ったコロッケは、色が黒く、いかにも手作りっぽい味だった。確かに油分が多く、コンビニのコロッケのようにサクサクではなかったが、中身のじゃがいもがホクホクとし、妙に柔らかかった事も思い出す。


 あの彼女とは、俺の浮気がきっかけで別れてしまったが、手作りコロッケが食べたくなってきた。


 俺は一人暮らしが長い。手作りの味に飢えているといえば、そうなのかもしれない。元カノには未練なんてなかったはずだが、コロッケの味だけは妙に覚えていたりするのはなぜだろう。胃袋が掴まれてしまったという事か。


「げ、コロッケって作るの超めんどくさそう」


 手作りコロッケぐらい簡単に出来るだろうと思ったが、違った。じゃがいもを潰し、衣をつけて、揚げる。


 普段、料理などしない俺は途方もない工程に見えて仕方ない。ポテトサラダも面倒だと聞くが、その倍ぐらい面倒くさそう。


 もしかしたら元カノも、面倒だと思いながらも俺の為に作ってくれたのかもしれない。そう思うと、突然あの彼女に未練が出てきてしまった。


「俺、ヤベい奴だわな」


 自分でも頭おかしいと思いながらも、元カノの名前でSNSを検索してしまった。


 少し珍しい名前だったので、元カノのSNSは簡単に見つかった。ただ、俺が欲しい情報は一つもなかった。彼女は結婚し、夫のための台風コロッケを作ったという画像が投稿されていた。


 そこには少し黒めのあのコロッケの画像があった。もう決して俺が食べる事は出来ない台風コロッケだった。


「台風の時はコロッケ!」


 そんな元カノの明るいコメントを見ていると、だんだんと未練を持っている事も下らなくなってきた。もう、彼女は他人だ。関係ない女だ。


「今日ぐらいはまたコロッケ食ってもいいよな」


 冷凍庫からもう一個コロッケを取り出し、レンジで温めた。


 しばらくすると、再び良い香りがしてきた。このコロッケは綺麗なキツネ色に揚がっている。油でべちょべちょしてなく、企業努力を感じてしまう。


 今度はソースを垂らして食べてみたが、濃厚な風味も美味い。やっぱり俺はこのコンビニの冷凍のコロッケが一番舌に合うようだ。


「うん、うまい」


 天気予報を見る限りは、明日には台風も去り、晴れるだろう。まだまだ残暑も続きそうだが、こんな美味いコロッケを食べる台風の日も悪くないだろう。


 なぜ2ちゃんねるに台風の日はコロッケという書き込みがあったのかは謎のままだが。


 これって俺の感想。別に誰に論破されても良い。コロッケが美味かったら、今の俺はそれで良いのだ。


「ご馳走さま」


 こうしてココロッケを食べ終え、箸を置いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ