メルト
クスクス。
笑われている気がする。今日も婚活パーティーに行って来たが、成果は何もなかった。既婚の友達は励ましてくれたが、勝手に被害者意識をを持ってしまい、あまり会いたくない。特に既婚者には、独身である自分は欠陥品だと笑われているような……。
もちろん、そんな事を直接言ってくる人はいないが、既婚者全員が敵に見えてしまう。心は岩のように固くなっていた。
そんな中、優花から家に来ないかと連絡を受けた。
優花も既婚者だ。できれば会いたくないのだが、あまりにも避け続けるのも不自然なので、お邪魔する事にした。
優花のご主人は、長期出張で中国に行っているそうだ。子供もいない。彼女のマンションのリビングは、少々広く見えた。
結婚しても、別にそんな変わりないのかも。余白の多いリビングを見ながら、そんな気がする。
「じゃーん! 今日はチーズフォンデュしよう」
「ホットプレートで? 出来るの?」
「うん」
テーブルの上にホットプレートを置き、細々とした材料を切り、準備をはじめた。チ小鍋にチーズを入れ、チーズが溶けるのを待つ。
ゆるゆるとチーズが溶けていく。
ホッとトプレートの上には、パン、ブロッコリー、にんじん、エビ、イカ、ソーセージなどが盛られ、見るのも鮮やかだった。
そう言えば優香花とはよく女子会を開き、こんな風にチーズフォンデュを楽しんだ事を思い出す。
当時、女子会にはボスがいた。ボスは、優花の悪い噂を流し、孤立させようとしていたが、私はそんな噂全く信じらてなかった。孤立しそうな優花を誘ってよくチーズフォンデュ食べらた事を思い出す。
「私、ミサのいいところいっぱい知ってるから」
優花の声とともに、ふわりとチーズの匂いが広がる。
「そうかな?」
「よくも悪くも、人の言うことを信じないのがいいところ」
「うーん。だから男も信じられないのかねえ」
チーズは完全に溶け、具材をくぐらせて食べ始めた。チーズフォンデュはダラダラと話しながら食べるのにピッタリだ。いつまでも具がなくならない。酒もすすむ。
いつの間にか、固くなっていた心もゆるゆると溶けていた。
最終的には女二人で男の悪口大会にもなっていたが、まあ、いいか。




