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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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仲直りのツナマヨおにぎり

「コンビニとか行ってる人って、信じられない〜」


 この発言で友達を一人失うとは、想像していなかった。


 当時、遠子はいわゆる自然派ママだった。添加物を意味嫌い、丁寧でゆったりとしたナチュラルな食生活を心がけていた。幸い、夫や子供も理解があり、そんな生活を楽しんでいた。


 ただ、一言多い。ナチュラルにコンビニやファストフードをバカにする発言をし、誤解を受けてしまったという。


 友達の名前は菅田楓。離婚経験があり、今は工場で働いていた。夜勤も多いという。確かの楓の生活リズムを想像すると、時間と手間がかかる自然派食生活なんて、理解はできないのかも。いつの間にか、自分の食生活を「正しい」と思い込み、視野も狭くなり、こんな結果になってしまったようだ。


 そう気づいた時だった。駅前のコンビニで楓を見かけた。仕事帰りだろうか。疲れた顔でチルドコーナーをも見ていた。


「楓!」


 思わず声をかける。


「ああ、遠子……」


 気まずい沈黙が流れる。


「どうせ、私みたいのは食生活に気を使えないポンコツですよ……」


 しかも卑屈になってる。


「ちょっと待って。コンビニでも、チルドお粥、サバ缶、干し芋、この茹で卵なんかは無添加で比較的大丈夫!」


 遠子はチルドコーナーのゆで卵を指差す。


「あとティーバックの紅茶もオーガニックのヤツだから逆にコンビニのがいい。意外だけど、カステラも添加物入ってないし、栄養素も悪くないよ」


 余計なお節介だと思いつつも、アドバイスしてしまった。あれから反省した遠子は、自然派ママの友達にコンビニでもマシな食べ物を聞いた。すると、意外にもけっこうあり、余計に反省する羽目になった。


 思えば、コンビニが24時間営業出来るのも日本が治安が良いからだ。それに、アルバイトといえども店員はマルチスキルが必要だ。


「へえ、コンビニはバカにしてると思ってた」

「ごめん、考え改めるわ。それに、たまに添加物モリモリのもの食べても、別に死ぬわけじゃないし」

「死んだら大いに問題あるね。じゃあ、私はツナマヨ」


 楓は遠子のアドバイスなど全て無視し、カゴの中にツナマヨおにぎりを入れる。


「私もたまには、ツナマヨにすっかな」


 遠子もツナマヨを買う。三角形のそれを持つと、手にすっぽりと収まる。


 添加物の本では、恐ろしい事が書いてあるコンビニのツナマヨおのぎろだが、今は食べたくなった。


 こうしてコンビニのイートインで二人でツナマヨを食べた。


 確かに味自体は、美味しくない。油っぽい。味が濃い。


 しかし。楓と笑いながら食べるツナマヨは、妙に美味しかった。


「明日も夜勤なんだよね」

「そっか」

「明日は、その無添加のカステラでも食べようかな?」

「もちろん、おススメだよ」


 遠子はそう言い、ツナマヨおにぎりを完食していた。

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