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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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リメイク

 応募した企業の数は、そろそろ三桁にいきそうだった。


 現在、転職活動中の智樹だが、数々のお祈りメールで心は折れていた。高卒、無資格のアラサー男の転職活動は、そう簡単ではないようだった。


「今日の面接はどうだった?」


 金も減ってきているので、彼女の家に行き夕飯を食べる。彼女の夢子は正社員でマーケティングの仕事をしている。このまま夢子のヒモにでもなった方がいいのか。マイナス思考がやってきた。


「無理っぽかった。というか、もうあんまり期待してない……」

「そう……」


 夢子はそれ以上何も言わず、キッチンの方へ行き夕飯を作り始めた。冷蔵庫も中身を確認し、手際よく作っている。確か昨日はポトフだった。芋がホクホクで美味かった。あのポトフの出来を思うと、ヒモになるのも難しいか……。


 夢子は親が多忙だったので、中学の頃から自炊をしていたらしい。当時は忙しい両親に不満だったが、今のような一人暮らしの自炊は楽勝だったと語っていたのを思い出す。


「悪い経験でも無駄になる事ってないんだね」


 などと語っていたが、自分のこの失敗続きの転載活動に良い点は全く見つけられない。


 そんな事を考えていると、キッチンの方からいい香りがする。カレーの匂いだった。


 夢子がキッチンに立って数分。そんな短時間でカレーが出来るものか。不思議に思い、キッチンに向かう。


 IHコンロの上には、確かに鍋に入ったカレーがある。ちゃんと野菜や肉などの具も入っている。どう言う事だ? まるで魔法だ。


「実はこれ、昨日の余り物のポトフのリメイクなのよ」

「はあ? そう見えないよ」


 ポトフとカレーが上手く結びつかないが、確かに具は共通点がある。カレーにリメイクするのも、そう難しい話ではないのか?


「よく煮込んだポトフはルゥを入れたらそのままカレーにできるんだよね」

「そうか……」

「余り物が大変身だね。まあ、食べよう。お腹ぺこぺこ」


 こうして夕飯は、元ポトフのカレーを二人で食べる。


 味もポトフの形跡はない。普通にカレーだった。普段料理をしない智樹は騙された気分だったが、このカレーはどこにも問題はなかった。むしろ美味い。


「まあ、経験値だよ。転職活動も昔と比べれば慣れたもんじゃない?」

「確かにそうだな……」


 そういえば面接はもうすっかり慣れていた。お祈りメールにも慣れたが。


「智樹の経験もこのカレーみたいに生まれ変わったら良いね?」


 そんな事言われたら、ヒモになるのは無理だと悟る。もう少し転職活動も頑張ってみるか。こんなカレーを食べながら、だんだん元気になってきた。





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