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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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妻の地味ご飯

 ここは不倫女の家。「美味しいピザを焼いたから来て」と連絡があり、のこのこやって来た。


 都内にあるタワーマンションだ。不倫女は自称事務職。事務職では住めないような家に住んでいるが、その点はスルーしておこう。おそらくパパ活でもやってる女かと思れるが、不倫相手の私生活なんてどうでも良い。


「え、ピザってパイナップルのか」


 広いリビングのテーブルの上。そこには、パイナップルが乗ったデザート風のピザだった。マルゲリータや照り焼きピザを想像していたので、少し驚く。


「そうよ。文句ある?」

「いや、別にないけど」


 一応食べる。まあ、不味くはないな。かといって毎日食べたい味でもないかな。甘すぎる。口の中がベトベトしていた。


 俺は大きく売れてないとはいえ、一応ミュージシャン。体力勝負の仕事で、こんな食事が毎日続くと想像すると、嫌なもんだ。


 思えば不倫は、甘くて美味しいところだけを都合よくいただく行為だった。目の前に生身の人間として不倫女がいるわけだが、ポルノと大差ないわな。別にこの女が実在しないAIでも一向に構わない。


 ただ妻は……。


 大して美味しくもないパイナップルピザを齧りながら考える。


 妻が作った地味なご飯が目に浮かんだ。白米、味噌汁、納豆、糠漬け、焼き鮭など。糟糠の妻だとか笑われていたが、あいつは別に気にせず、こんな食事を毎日飽きずに作っていた事を思い出す。


 妻の地味なご飯だって決して美味しくはない。飽きる。つまらない。でもあいつの飯を食いはじめてから、身体は健康になったよな……。


 頭の中では、妻が作ったご飯の数々が駆け巡る。


「いや、もう帰るわ」

「えー!? ちょっと待ってよ!」


 不倫女の文句を無視し、家に帰る事にした。毎日地味でパッとしないご飯。低刺激でつまんないご飯。それでも、今の俺の骨や血肉になっている事に気づいてしまった。

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