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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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お局とお弁当

 職場のお局は、癖が強い。


 家族経営の会社で事務をやっている。お局は一応上司にあたるが、仕事ぶりは悪くはないが良くもない。


 服装も変。大昔のエビちゃんOL風の格好で、全体的にふんわりとしたピンク色でまとめている。正直老け顔と合ってない。ファッションセンスは無いのは確かだろう。


 声も高め。独身。しかも今だにコロナ脳だった。


 マスクもずっと外さない。五類になってだいぶたつが、アルコール消毒もシュッシュシュッシュと一生懸命やっている。机の上も清潔すぎるぐらい清潔だった。


 ワクチンも七回コンプリートしているらしい。これはさすがに少数派だと思うが、本人は嬉々と副反応を自慢し、反ワクチンへの悪口もずっと続けている。マスク警察も。


 今でもマスクの強要がひどかった。私も何度もマスクしろと言われ、お局は浮いていた。彼女はある意味ではソーシャルディスタンスが完璧に守られてる。


「里野さん、ちゃんとソーシャルディスタンス守ってください!」


 今日もエレベーターに乗っていたら、注意された。今になってもコロナ脳というのもすごい。逆に言えば芯があるという事なのだろうか。


 コロナ渦の最中も社長達は、陰でこっそり飲み会を開いていたのを知っている。五類になった途端に手の平を返すようにマスクを外して騒ぐ派遣の子も知ってる。そう思うと、お局の頑なさは尊敬する。単に今更後に引けない可能性もあるが。


「飯田さん、お弁当ですか?」


 そんなお局は、ランチバックを持っているのに気づく。ピンク色のキティちゃんのデザインで、ファンシーなものだった。服装と合わせて可愛いものを持っているのだろうか。


「ええ、母が作ってくれてるの」

「実家暮らしですか?」

「ええ」


 正直引く。おそらく四十以上のお局が、実家暮らしで母親にお弁当作って貰っているとは。


 そういえば、派遣の若い子達のお局の悪口を聞いた事があった。気の強そうなその声を思い出す。


「飯田さんって子供部屋おばさんで引く」

「あの平成風の服装もやばい」

「お弁当もママが作ってるんだって」

「うそ、もう介護とかの年齢じゃないの?」

「え、どっちが介護?」

「あははは」


 自分もお局に引いたが、悪口を言う若い子もちょっと……。


 お局が頑なにソーシャルディスタンスを守り、一人で弁当を食べている姿を想像すると、心が痛む。しかも母親が作った弁当を。


「一緒にお弁当食べません? もちろんソーシャルディスタンスもちゃんと守りますから」


 気づくと、お局を誘ってしまっていた。


「守るの?」

「ええ。ぶっちゃけ元々誰も守ってないですけどね」

「何か言った?」

「いえ。たまにはいいじゃないですか」


 相変わらずソーシャルディスタンスを守って会話するお局。そこまでやるなら、最後まで突き進んで欲しい。私はこんなお局は嫌いじゃなかった。

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