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7.ギルド登録

 この街、ラメトークには西門、南門、東門はあるが、北門は存在しない。それは、北側に深く幅の広い谷があるためである。その他の方角、西側には王都方面の街道が、東側には鉱山が、南側にはダンジョンや魔物の生息する森となっていた。

 結果的に北側が貴族街、中央が市民街、西側が商人街、東側が職人街、南側が冒険者や旅人が滞在する街になっている。


 冒険者ギルドは南門の近くにあった、魔物の襲来をいち早く察知し指揮を執るためと、討伐された魔物や獣の死体を素早く解体するためだ。討伐して時間が経過するほど、使える部位は減り、疫病発生の危険が増えることは、この世界でも知られていた。

 冒険者ギルドは、依頼受付に買取、解体、倉庫、宿泊施設、食堂兼酒場などが一緒になっているそうで、石造りの建物は奥行きがとても長い。その割に高さは無く二階建てだった。


 天井まである頑丈なドアを開けるとホテルのロビーのように広々としており、奥には真ん中を通路で分断するように配置された受付カウンターがあった。向かって左側は宿泊施設の受付、右側はギルドとしての受付カウンターになっており、カウンターの1番右端は大き目なカウンターになっていた。きっと大型の魔物がいる場合に使われるのだろう。

 左側手前には大き目なスイングドアがあり、その先は食堂兼酒場になっている。


 今回の目的はギルドカードの発行なので、僕はキチンと翻訳メガネをかけてきていた。

 僕とグリールさんは空いていたギルドの受付カウンターに向かった。カウンターは2段になっていて、職員のしている作業をこちらからは見ることが出来なくなっている。


「いらっしゃいませ。ギルド職員のルミカです。今日はどのようなご用件でしょうか?」


 猫耳の獣人族の女性が対応してくれた。僕はピクピクと忙しなく動く耳につい目がいってしまう。


「この方のギルドカードの発行をお願いします。」

「はい、畏まりました。念のためお聞きしますが、初めてのご登録ですね?」


 女性はわざわざ僕の方を向いて質問してきたので、


「はい、初めてです。」


と、僕が答えると女性は手元の方を確認した後、


「では、こちらの紙に登録内容を記入してください。」


 渡された紙には名前や出身地、種族などを記入する所があった。


「グリールさん、すみません。内容はわかるのですが、文字を書くことが出来ないです。」


 グリールさんに告げると、グリールさんは書類を受け取ると、名前と種族にだけ記入すると受付に渡した。ルミカさんは書類を受け取り内容を確認すると、次に上の一面だけ黒色になっている灰色の四角い台を僕の目の前に置いた。手のひらサイズのトレース台のような見た目だった。

 ルミカさんは上の黒色の板を取り外し、先程記入した書類を挟み込んだ。


「では、こちらに手を乗せ、自身の魔力を放出してください。魔法には変換せず、魔力をそのままこの板に押し込むイメージです。イメージが難しいようなら教えてください。」


 僕は手のひらから台に魔力が流れ出る様子をイメージした。

 四角い台は手のひらを当てている面が数秒白く光るとすぐに元の黒色に戻った。


「ありがとうございます。標章の登録が完了しました。こちらがギルドカードになります。ギルドについて説明をお聞きになりますか?」


 僕はどうしようかと思い、グリールさんを見た。自分一人なら聞きたいけど、わざわざグリールさんを待たせてまで聞くべきか。


「私は隣で休憩していますから、遠慮せずに話を聞いたらいいと思います。終わったら来てくださいね。」


 横の酒場を指差すと、グリールさんは歩いて行った。


 僕達の行動から説明を聞くと判断したルミカさんは、ギルドの施設の説明からはじめた。


「ギルド内の施設は基本的には誰でも使用可能です。ただし、食堂以外は過去に犯罪などを犯し、ギルドカードを剥奪された方の使用はできません。次に依頼についてです。依頼をされる場合も、受ける場合も、ギルドカードが必要になります。これは、冒険者ギルド発行のものでも商業ギルド発行のものでもかまいません。依頼される場合は直接このギルドカウンターにお越し下さい。依頼を受ける場合は、あちらの掲示板を確認下さい。」


 そう言いながら、ルミカさんは入口横の壁面を指差した。そこには大きな掲示板があり、依頼書が乱雑に掲示してあった。


「受ける依頼用紙をこのギルドカウンターにお持ち下さい。その際、こちらで力不足と判断した場合には声を掛けさせていただきます。依頼を達成した場合も、達成出来なかった場合にも、申告された日数までには1度近くのギルドにご連絡下さい。ご連絡がなく、申告された日数からさらに10日経過した場合には、依頼未達成として再度掲示板に戻されますので必ずご連絡をお願いします。なお、依頼中の事故などで四肢欠損、亡くなった場合もギルドからの補助等はありませんので、自身の実力に見合う依頼の受注をお願いします。その他詳しくはこちらの冊子をご覧ください。文字が読めない場合は、10日おきに朝10時より朗読会を行なっていますので、そちらをご利用下さい次回は3日後となります。その他、不明な点はその都度、ギルド職員へお問い合わせ下さい。また、新人冒険者向けの講習会も随時実施していますので是非ご利用ください。以上で説明を終わります。お疲れ様でした。」


 もらった冊子はB5ノートのように薄かった。パラパラと中を見ると、今教えてもらった内容の他に、ギルドカードについて、パーティ結成方法や薬草、魔法薬についてなど、新人冒険者に必要だと思われる知識についてが説明されているようだった。

 ルミカさんにお礼を言ってカウンターを離れると、掲示板を少し覗いてからグリールさんの元へ向かった。


「グリールさんありがとうございます。説明聞いてきました。」

「お疲れ様でした。せっかくですし、少し早いですが夕飯を取りながら、ここで従魔契約の説明をしましょう。」


 そう言いながら、店員に向けて合図を送り、注文を取りに来た人に果実水とミートパイを頼んだ。


「では、ギルドカードを出してください。」


 僕は、服のポケットに入れていたギルドカードを取り出した。グリールさんは先程と同じように、異空間収納からギルドカードを取り出した。


「では、ギルドカードに文字を表示させるイメージで魔力を流してください。ギルドカードの発行でやった感じですね。魔法を発動してもいいですが、表示している間ずっと発動させないといけないから大変ですよ。魔力の状態だと、カードを経由して、また身体へと循環するので消費をしません。また、ギルドカードは個人の標章で反応するようになっていますので、他人のカードの内容を表示させることは出来ません。やってみますか?」


 グリールさんのカードを借りて魔力を流してみるが、言われた通りカードは反応しなかった。カードを返し、改めて自分のカードに魔力を流すと名前と種族しか表示されていなかったカードの空欄部分に自分の標章、従魔種類、従魔の標章、受注中の依頼内容と言う文字が浮かんできた。

 他の項目は空欄だったが、自分の標章欄に丸が付いた神白マーク(明らかに認印だ)、従魔種類欄にスライム、従魔の標章欄に六芒星のマークが描かれていた。魔力を流すのをやめるとカードの表示は元の名前と種族のみになった。


 そこまで確認したところで、果実水とミートパイがテーブルに運ばれてきた。

 ミートパイは味が濃い目ではあったが美味しかった。しかし、果実水はぬるく少し残念だった。生活魔法では食べられる氷はなかなか出せないのかもしれない。食べた後、自分で作ればよかったことに僕は気づいた…


 家に戻った僕は約束通り異空間収納魔法についてグリールさんに教えてもらうことになった。

 自分の居る空間の外へ魔力を使って入れ物を作りそこへ指定したものを入れる魔法である。この、『自分の居る空間の外』と言う所でイメージが出来ず、この魔法を使用出来ない人が多いそうだ。

 僕も初めは全くイメージ出来ず魔法が発動しなかった。しかし、何もない空間で使わず、()()()()()に空間が広がっているイメージする事ですんなりと発動出来た。つまり、マジックバッグ。慣れ親しんだアニメや漫画のおかげである。

 ただ、異空間収納で困ったのが、何がどれだけ入っているのかが分からない点だ。入れたものを全て覚えておかないといけない。覚えていないものは指定てきないので取り出せないからだ。僕の場合、空間から集めた魔力を使うので、時間経過はしないらしいが、荷物を整理するためだけに一度全ての物を取り出さないといけないのは面倒だ。携帯電話が使えれば在庫管理システムみたいに一覧に出来そうなんだけど。

 今度、空間の魔力を充電に使える電気に変換すると言うイメージで付与魔法を使ってみようか。

 グリールさんにお礼を言って部屋に戻ると早速、スーツケースとビジネスバッグを異空間収納に放り込んだ。グリールさんはそんな事しないと思うけど、泥棒とか普通にいそうだからちょっと心配だったんだよね。これでひと安心。


 せっかくギルド登録したし、今日見た感じだと街の中での依頼や、薬草採集の依頼なんかもあったから何か受けてみようかな。お金を貯めて地図や装備なんかも手に入れたいし、街を歩いて場所も覚えておかないとすぐに迷子になりそうだ。いつまでもグリールさんにお世話になるわけにもいかない。日本でよくお世話になっていた携帯電話のマップ機能、使えるようにならないかな…。

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