間宮拓哉の過去
今回は2話ほぼ同時投稿です。とはいっても2話目は説明ですが。
「わかった。だが、柊の話だけ聞くのもフェアじゃない。俺の話も聞いたうえで結論を出そう」
「いいんですか?ほかの人にばらすかもしれませんよ?」
「信用してるからな。俺に話してくれたことに対する誠意みたいなもんだ」
俺が自分の過去を話すとは思ってもいなかったようだ。自分のトラウマになっていることを話すのは実際かなり勇気がいることだ。
「俺は小学5年生のころ、父さんと一緒に誘拐された。父さんは有名な会社の役員で、会社の膿をかなり出したらしいから恨みを買っていたらしい。まあ、その結果父さんは死んだ。それもひどい状態だったらしい。俺は殺されはしなかったが、暴力も振るわれたしレイプされかけた。俺の女性恐怖症はおそらく、というか確実にそれが原因だろう」
「当時の俺の様子はひどかったらしい。そのせいで悲しいはずの母さんと琴葉がちゃんと悲しめなかった。二人のおかげで、何とか今は女性とも話せるようになった」
「そうなんですね...つらいことを教えてくれてありがとうございます」
「俺の症状についてなんだが、本当は目を合わせるものダメなんだ。だが、柊とは何故か問題なかった」
さっきつい目を合わせてしまったが、特に何ともなかった。今まで家族以外で目を合わせても何ともなかったの初めてだ。
「ええ、実は私も驚いていたんです。先生に彼は目も合わせられないほど女性が苦手だと聞いていたので」
「だから、申し訳ないが俺の腕に軽く触れてみてくれないか?つらいならしなくてもいい」
「分かりました」
「っ!!」
柊の腕が触れると腕全体にぞくっという感覚が広がった。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だ。予想していたよりも嫌ではなかった」
「失礼でなければ症状について教えてくれませんか?」
たしかにそれもそうか。柊が言っていた、私を見守っていてくださいというのを了承してもいいと思っている。そうなると互いの嫌なラインを知っていたほうがやりやすい。
「そうだな。さっき柊は見守っていてくれといった。俺のことを見守ることはできるか?」
「もとよりそのつもりです。では、先ほどの話を受けてくれるということですか?」
「互いの気分を害さないためにも症状を知っておいたほうがいい。まず俺だが、基本的には目を合わせると寒気がして話すこともままならなくなる。触れられると最悪気を失う。それ以上はやったことがないしやりたくもない。ちなみに家族は例外で、柊もずいぶんマシなほうだ」
「私ですね。私は目を合わせるのよりも話すほうが怖いです。でも我慢すれば何とかなります。軽く体に触れられる程度なら問題ないですが、掴まれたりすると悪化するみたいですね。それと、あなたと話すのはそこまで苦じゃないですよ」
「なら互いに体に触れなければ問題なさそうだな」
お互い通常よりも症状が抑えられているというのはなぜなんだろうか。不便になることはないから構わないが、できることならこの調子で症状が治まってきてくれればいいんだが。
「そうですね。これからよろしくお願いしますね」
「よろしく頼む」
俺たちは連絡先を交換して別れた。信也からRINEに大量のメッセージが来ていると気づき、慌ててコンビニに向かった。全部話すわけにもいかないから相当端折ったが、ある程度の事情は話した。俺もいい友人を持ったのかもしれない。
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