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ベーコンエッグイヤー

作者: 杉将

 1995年、ベーコンエッグを18回作った頃、今年はベーコンエッグの年だ、と僕は思った。年数に言葉を当てはめるのは僕にとって初めのことだったし、これから先もあるかどうかわからない。ベーコンエッグイヤー。なんだか油っこい言葉だ。


 朝食に作ったベーコンエッグトーストを食べ終わると、僕は女の子に電話を掛けた。彼女は3コール目で電話に出て、ちょうどあなたに電話しようとしていた、と言った。

 「何か悪い話?」と僕は聞いた。

 「退屈な時にしかあなたに掛けないわ」

 「都合のいい相手」

 「お互いにとってね」

 僕は電話を耳にあてたまま立ち上がり、パンの屑が乗った皿を流しに運んだ。

 「あなたは何をしていたの?」

 「18回目のベーコンエッグを食べ終えたところ」

 「きっちり数えてるの?」

 「僕は6個入りの卵しか買わないし、ベーコンエッグ以外で卵を使わないから、そんなに難しいことじゃない」

 「卵の数が18個だと言い切れる?」

 「間違いなく」

 「18回、あなたは、一人でベーコンエッグを食べた」

 「誰にも邪魔されることなく」

 「悲しくはならない?」

 「考えたこともない」

 少しの間、お互いに黙った。

 「今から会えるかい?」と僕は言った。

 「もちろん」


 僕はその年、ベーコンエッグを42回も食べ、女の子と36回寝た。僕の人生の中でも、偏りのあった年だった。


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