ぬぐえない過去
目の前で仲間だったものの血肉がむさぼられている。
「逃げろ!ルル!」
彼が私の名前を叫ぶ。
逃げろって……どこに?
それにここで私たちが逃げることは、世界同士の開戦を意味してしまう。
「私も――――」
私も、ここに残って戦いたい。
ここまで頑張ってきたんだ。
地位も名誉もすべて投げ捨てて、母さんに救われた命を危険にさらしてまで乗り越えてきたんだ。
今更引くわけには
「ルルさん!僕が先陣を切ります!!……っ!兄さん!殿は頼みます!!」
それでも私の考えを置き去りにするように、目まぐるしく事態は動いていく。
「行くよ!!ルル姉さん!!」
「ルル姉!!早く!!」
「行きましょう、ルル!!このままだと逃げられなく――――あぶないっ!」
ドンと私を突き飛ばし、彼女は私の前に迫っていた魔物の攻撃を真正面から受けた。
また、目の前で、もう一人の仲間の命が散っていく。
さっきまで、こんなことになるなんて考えてもいなかった。
もっと、もっと、幸せな結末があるんだって信じていた。
だけど現実は、いつもこうだ。
どれほど泥水の中で力を蓄え、鍛え上げた牙で戦おうとも、洗礼された力には及ばない。
逃げるしかなかった。
だけどどこに?
逃げ場なんてどこにもなかった。
次々にみんなが欠けていく。
ありえざる邂逅から始まった私たちの旅が、力によって屈服されていく。
いやだ。こんな結末は嫌だ。
だけど、もう。
千年桜の元にたどり着いた時、生き残っていたのは私一人だけだった。
なんで?
どうして?
何を間違えたというの?
戦争を止めたいという選択が、間違いだったとでもいうの?
神様、いるならどうか答えてほしい。
私達の行動は間違っていたの?
その投げかけに、誰も言葉を返してはくれない。
あるのは虚空と虚無。
そうして、背後に迫る一体の怪物だけ。
あぁ、お前が憎い。
私達が手にするはずだった未来を握りつぶしたお前が憎い。
涙で前は見えない。
それでも戦わずにはいられなかった。
舞刀を抜き放ち威勢だけで魔物に突っ込んで行く。
だがすぐに弾き飛ばされ、千年桜に体を打ち付けられた。
体中が痛い。
魔物が迫る。
もう立ち上がる力もない。
その大きな拳を振り上げる。
まだ……生きていたい!!
息の根を止めるために、拳を振り下ろした。
veux-tu encore vivre ?
Êtes-vous prêt à recommencer ?
Je ne peux pas vous donner beaucoup de chances.
J'ai un peu de grâce.
Vous êtes la clé du déclenchement.
N'oubliez pas cela.
Et à propos de?
Continuez à courir sans vous décourager.
je te regarde
鮮明に蘇る悪夢。
今でも、体験したことのあるかのような感覚に襲われる。
それでもこれは私にとってはあり得ない現実。
それを、目の前にいるあなたが証明してくれている。
ねぇ、そうでしょう?洋一。