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傲慢な戦士:偽  作者: ヘイ
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第81話

 リーゼは戦場を()く。

 視認可能範囲には人っこ一人いない。静寂に鉄の足が地を揺らす音だけが響いた。

 軍人はやはり出てこない。

 勝ち目がない戦い、そこで数を削っても無意味。

 リーゼが彼らを攻撃することも、また無意味である。戦闘意欲のないもののために体力を浪費するのは勿体ない。

 本部基地の存在する都市まで距離はまだまだ有るものの、そこまで進軍を続ければ良いだけの話。

『にしても、敵が全く居ない……』

 九郎が呟く。

 どうぞ、進んでくださいと言いたげにも感じるほど、彼らの歩みを止めようとする影がない。

 対戦車用地雷があったとしてもリーゼやタイタンに対する有効手段とはなり得ない。

 つまるところは、タイタン以上のリーゼへの対抗手段は皆無という事になる。

 アスタゴ上陸から二時間ほど。空は未だに夜の暗さを保つ。もう二、三時間ほど経つと朝日も見え始めるだろう。この二時間と言う時間で陽の国とアスタゴ間におけるタイタンの破壊された数は五機。異常な速度とも言えるだろう。

『ロッソが居ないなら、それで良い』

 美空はどうでも良いと感じているようで、リーゼを動かす。

『それもそうだね』

 彼女の言葉に九郎も納得を示す。

「つまんねぇ……」

 阿賀野は溜息と共に小声を漏らした。

 彼の言葉が何かの引き金だったのか、ビル群の向こう側から暗い闇に包まれた紅が迫る。

『よかったね』

 九郎の言葉は皮肉混じり。

 この短い言葉には面倒な事になったと言う色が見える。

「ああ?」

 興味もなさげに阿賀野は銃を撃ち放つ。無慈悲にタイタンの銃を持つ左腕を撃ち抜く。

 アスタゴの銃が大地に落ちる。

 まるでそれが合図だったかの様に走り出した阿賀野はリーゼの機動力を利用し、背後にまで回って力強く切り裂いた。

 リーゼの足からはミシリと音が響く。

「んだよ、クソ弱え」

 求めるのはこんな物ではない。

「コイツも、あのロッソとは別物だ」

 比べるのもおこがましい、あの赤い巨神とは。これではただの人型の鉄屑だ。

 弱すぎて、脆すぎて、話にもならない。思わず長い息を吐く。

 だがしかし、少し考えてみたら直ぐにわかる話だ。これは阿賀野であるが故に起きた圧倒的勝利なのである。

 もし、これが別のパイロットであれば苦戦は必至であったはずだ。更にボロボロの機体であるという制限を設ければ、他の者では勝つことは不可能だっただろう。

 もしかしたらの話をするのは無粋なのかもしれないが。

『そうか……』

 九郎の脳裏に、自らの雇い主である佐藤の言葉が(よぎ)った。

 特別。

 阿賀野を表す上で、間違いなどではなかったのかもしれない。だが、それを九郎は認めたくなどなかった。

 特別など、この世界には居ないのだと。九郎は自らに言い聞かせる。

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