第78話
アスタゴの海岸、防衛基地。
それは街の近くにあった。
基地の廊下をチョコレート色の肌の身長の大きな男が歩いている。
顔はどこか、生気の宿らないような虚さを感じさせる瞳。どんよりとした空気を纏っていた。
「カルロス」
声をかけてきたのは何個か年上の軍人だ。気の良い男で、比較的、年下も話がしやすいと言われている男だった。
しかし、軍人として、タイタンのパイロットとしてはルイスに幾分も劣る男であった。彼の劣等感をネタにした話し方も接し易さの一つなのかもしれない。
「ジョージさん……」
確かめるように名前を呼びながら、振り返った。
「はいはい、ジョージさんだよ。……大変なのはわかるが、あんまり陰気な雰囲気を出すなよ」
どこかふざけたような態度で、ジョージは返答と、忠告をする。
「出したくもなりますよ……」
友人と尊敬する先輩を殺してしまったのだから、気にしない方がおかしい。今もカルロスは壊れてしまいそうなのだ。
不安を誤魔化すことができるほど、カルロスは器用でもなかった。
「ここにいる時点で、死ぬのは前提としてあったんだよ。お前は運良く生き残ったんだから、そこまで自分を責める必要はないだろ」
真摯に向き合ってくれているのはわかるが、その言葉が受け入れられないのだ。この男には目の前で誰が大切な者を殺された経験などないのだろう。
だから、カルロスの感情を揺さぶる。
怒りが沸き立った。
人の命を軽く見られているのではないかと感じて仕方がなかったのだ。
「ジョージさんには分からないでしょう!」
彼は声を荒げた。
「アンタに俺の気持ち、わかるって言うんですか!?」
感情的になって、相手のことを決めつけてしまう。
言ってしまった後、カルロスには謝罪をするための言葉も吐き出せず、喉が張り付くような感覚がした。
「……っ」
目に力を入れて、怒りを表したような顔でカルロスはそのまま、金髪の白い肌の男に背中を向けて、歩き出そうとする。
『シャドウが街へ侵入しました。至急、タイタンパイロットは迎撃準備をしてください』
瞬間、館内放送が響き渡った。
「ーーカルロス、お前は残ってろ! まだ、心の整理がついてないだろ!」
それだけ言い残して、ジョージはタイタンが鎮座する倉庫へ向かって走っていく。
「俺もーー!」
カルロスもジョージを追いかけようとするが、振り返った彼は珍しく怒鳴り声を上げた。
「いいから! 先輩命令だ!」
ジョージのカルロスに向けて初めての命令を出す。待機命令だった。
どうして、待機命令を出したのかはカルロスには分からない。
「ついてくるな。お前はここで待っていろ!」
ただ、この命令に対する答えをジョージは一つしか求めていなかった。
「分かり、ました」
求める答えを吐き出した。
「それで良い」
カルロスの返答を聞いたジョージは笑って、再び走り出した。




