第67話
ディートヘルムとルイスの戦闘は、少しずつルイスが盛り返してきている。
きっと、ディートヘルム側に焦りが生まれたからというのが理由だろう。
仲間であったマルテアが彼らを裏切ったこと。この裏切りを含めて、三機のリーゼを失ったのに対し、依然としてタイタンは敵対している三機全てが生存している。
数的不利に立たされている中で、陽の国の残された飯島はもはや、正気を保っていない。完全不利な状況にディートヘルムの額には、疲労もあったのか玉のような汗が浮かぶ。
冷静に。
頭を回転させて、状況を見極めなければならない事は分かっているが、早くしなければと、ディートヘルムの心を急かし立てる。
「ちっ!」
長引けば長引くほど、この戦いはさらに不利になっていく。
幸いな事に、アメリアは飯島と戦闘中。そして、カルロスもまた、ディートヘルムの方向ではなく、アメリアの支援に向かっている。まだ、ルイスを倒す好機は失っていない。
だが、どうなるかはわからない。
鋼同士の衝突により、弾き飛ばされるように開いた距離を、ディートヘルムはすぐに詰めて、大剣を振るう。
「マルテアの裏切りさえなければ……!」
過ぎたことを口にしても仕方がない。
だが、それでも恨み言を吐かずにはいられなかった。
ここが完全なる地獄へと変わったのはマルテアのせいだ。間違いない。
「倒さなければ」
剣とハルバードが交差する。
数回の激突、空いた距離。そこをルイスが狙い撃ってくる。
「ぐぅおおおっ!」
機体を多少無理やりに動かして、銃撃を回避する。
『うぁぁああああ!!!!』
叫びが聞こえる。
ディートヘルムの背後での戦闘に向かわなければならないと考えても、ルイスは逃さず、このまま連れて行き、乱戦にする事は悪手と言える。
「やはり接近戦か……」
考えつくのはそれだけだ。
先程から、接近戦に持ち込む事で有利に立ち回ることができている。この戦場で小手先の技術はほぼ通用しない。
大剣を盾に変形させ、正面に持ち最大限、身体を隠す形で勢いよくタイタンに向かって走り出した。
「オオオオォォオオオオ!!」
銃弾を全て弾き、後ろに押し飛ばされることもない。
「貰ったーー!」
振るわれ、迫るハルバードも想定内。
襲いくる攻撃をディートヘルムは盾を上に振り上げて、大きく弾く。衝撃にタイタンがのけぞった。
タイタンのガラ空きの胴に銃口を突き当て、トリガーを引いた。
発射された中距離砲の弾丸はタイタンの装甲を食い破り、深刻なダメージを与える。タイタンの中にいるルイスにも。
このまま無抵抗にタイタンは倒れていくと思われた。
『軍人、舐めるなよ』
だが、倒れない。
血を吐き出しながらルイスは呟き、ハルバードを手早く逆手に持ち替えて、ディートヘルムの乗るリーゼに向けて、両手で勢いよく突き刺した。




