第51話
『Ciao〜、陽の国の皆サン』
日が沈み始める大洋。
船の中にいた飯島のヘッドギアに通信が入った。通信から響く声は女性のものだった。声だけで見た目はわからない。
『私、マルテアのクラウディア言います。私が代表として話しますね』
どことなく不自然な日本語で彼女は話を続ける。声から推測される年齢としては飯島とそう変わらない。
『陽の国の船を見つけました。まだ、グランツさん来てないですネ』
この通信は現在、飯島と山本の二人に入っているらしい。
『一つ、質問がある』
山本の声が飯島の耳に入った。現在は山本と飯島は別の船に居る。
『ハイ?』
『クラウディアさん、貴女はリーゼのパイロットという認識で合ってるか?』
『ええ、その通りでございますヨ。私、リーゼピロータです』
「ピロータ?」
飯島が口を挟めば、クラウディアはハイと言ってから答える。
『ピロータはマルテアでパイロットという意味です』
「はあ、成る程……」
『あまり日本語得意でなく……|Mi dispiace』
「いや、こっちもマルテアの言葉に不慣れで申し訳ない」
飯島がそう謝罪を述べるも、クラウディアは対して気にしていない様だった。
『日没に攻め込む様に指令が来てた筈デスが、グランツさん、来ませんね』
『確かに遅いな……』
既にマルテアも陽の国も準備は出来ていると言うのにまだ、グランツ帝国のパイロットが来る気配がない。
『あ、グランツさんの船が見つかったそうです!』
クラウディアはどこか喜ばしげにそう告げる。
『通信繋がりますよ!』
ザザッ。
そんな音が一瞬して、通信が繋がった。
『|Es tut mir leid。今、合流した』
『えーと、貴方は?』
クラウディアが名前を尋ねるとグランツ帝国の所属であろう男性が答えた。
『ワタシはディートヘルム。グランツ帝国リーゼ隊、部隊長である。それぞれの兵力を確認したい。リーゼの機体数を』
そう言われて山本が答えた。
『こちら、陽の国は俺と飯島。計二機。後からもう一機が増えるかもしれない』
『こちらマルテア、同じく二機。ピロータは私、クラウディアとテオ』
彼らの報告を聞いてディートヘルムも応答する。
『グランツ帝国は三機。ピロートはワタシ、ディートヘルムとバルドゥル、オイゲンである』
合計七機のリーゼがアスタゴ合衆国の東海岸に集中することとなる。
『陽の国の二人と、マルテアのテオ。この三名が東海岸に上陸し攻撃を開始する』
「七機同時じゃないのか?」
飯島が疑問を覚え、尋ねるとディートヘルムは静かに答えた。
『まずは三機により道を開く。実力があるものを使うより、実力のないものでこじ開ける方が有用だ』
つまりは陽の国とマルテアでは実力が足りていないから、捨て駒になれと言うことだ。
『それは傲慢じゃありませんの?』
クラウディアが機嫌が悪そうに尋ねるも、ディートヘルムの態度に変化はない。
『それに見合う実力がワタシ達にはある』
『そうですか。では、私も彼らに加わります。私もそれほどの能力は持っていませんので』
クラウディアが発言すると、ディートヘルムは彼女の意見に了解を示す。
『……そうか、分かった。では陽の国とマルテアがアスタゴへ侵攻。我々も後に戦場へ向かう』
それでクラウディアは満足した様だが、飯島はどこか納得がいかない。この偉そうで、他人のことをどうでもよく考える人間性に、岩松を重ねてしまっているからかもしれない。
『ーーでは、作戦開始だ』
そんな個人のどうでもいい感情を置いて、侵攻作戦は開始される。




