第6話「Your majesty」
2070年10月 教室 1年A組 休み時間
ヤンキーA「おいっ!善 清十郎ってやつはどいつや!」
突如、ヤンキー風の上級生2人が教室に飛び込んできた。
清十郎「僕が善 清十郎です!」
ヤンキーB「噂通り、アイドルみたいな顔してんな〜、ちょっと俺らについてこいよ!」
清十郎「どうしてですか?」
ヤンキーB「お前ぶっ飛ばすぞ?いいから黙ってついてこいや!」
新「あの〜、俺達もついて行っていいですか?」
ヤンキーB「舐めた口聞くな!俺らはコイツだけに用があるんや!」
清十郎「新、達也、慶子はここにいてくれ!ちょっと行ってくる!」
清十郎はそう言い残すと上級生2人に連れて行かれた。
◆◆◆
教室 2年C組
清十郎は教室の1番後ろの席でのけぞっている男の方へ連れて行かれた。
その男の側には3名のヤンキー生徒達がおり、清十郎にガンを飛ばしている。
草薙「コイツが善か?」
この金髪オールバックの男は草薙 五十音、開能中学2年の番長である。自尊心の化身のような男で、舎弟からは自分の事を「陛 下」と呼ばせている。
ヤンキーA「Yes!your majesty!」
草薙「お前調子乗ってんな?」
草薙は清十郎に向かってそう問いかけた。
清十郎「何がですか?………ぐはっ!」
清十郎がそう答えると橋本が清十郎のボディを殴った。
ヤンキーA「陛 下の前ではYesかNoかで答えろ!………ぐっ!」
清十郎はヤンキーAの腹にボディブローをやり返した。
ヤンキーB「てめぇ!ぶっ殺すぞこらっ!」
ヤンキーBが清十郎に殴りかかろうとする。
草薙「やめろ!」
ヤンキーB「Yes!陛 下」
草薙「面白いやつだな!」
草薙がそういうと片足を前に出した。
草薙「俺の靴を舐めて、陛 下に忠誠を誓うと言え!そうしたら俺の舎弟にしてやってもいいぞ」
清十郎「それは無理だ!あなた達はこんな事をやって恥ずかしくないのか?周りで見て見ぬフリしているクラスメートも同罪だ!」
──教室内の雰囲気が凍りついた。
ヤンキー4人「ぶっ殺すっ!」
そういうと4人は清十郎の襲いかかった。
清十郎「オーバーヒートっ!」
炎の鎧が清十郎を覆う。
警報「チリリリリリリリリ!」
火災警報機が鳴り響く、その音を聞きつけて教師が慌てて教室にやってきた!
熱血体育教師「何事だー!」
この熱血体育教師は不登校の生徒の家に100日以上毎日訪問して、最後には迷惑がられて警察に通報される程のパッションを持っている。
清十郎「すいません、先輩達が僕のエボリティを見たいっていうもので!」
熱血体育教師「上級生と下級生が仲良くするのはいい事だ!だが次からは気をつけろよ!」
清十郎「それでは先輩失礼します。」
草薙「今日放課後!体育館裏で続きを見せてくれ!もちろん1人で来いよな」
清十郎「わかりました。」
◆◆◆
放課後 体育館裏
草薙「よく来たな!」
なぜか椅子に座っている草薙と5人の取り巻きがそこにいた。
ヤンキーA「お前の友達は薄情だな!誰もお前について来てくれないなんて!」
ヤンキーB「ぶるってるよアイツ(笑)早速フクロにしますか?………ぐへーー」
ヤンキーBは何かに殴られた。
草薙「俺がタイマンで負けると思うのか?」
ヤンキーB「いいえ!陛 下」
ヤンキーBは立ち上がって即答した。
草薙「タイマンだっ!とは言っても、ただやってもなんの興もない。お前が俺を椅子から立たせる事ができたらお前の勝ちだ!」
清十郎「わかりました!{こちらを舐めてるか?しかし、こちらとしてはかなり好都合だ、これはいけるっ!}」
草薙は清十郎の足元を指差した後、指をクイっと上に向けた。すると清十郎の影が清十郎の分身となって現れた!
草薙「{さっ、どこまでもつかな}」
清十郎「{影!?}」
影「ギガフレア!」
影の掌から炎が飛び出してくる。
清十郎「!?こいつ!俺の技を完璧にコピーしてるのか?」
清十郎は炎を交わして、草薙に向かって行った。しかし行手を陰に阻まれた。
草薙「せっかちだな、この戦いはそんな緩ゲーじゃねぇぜ!」
清十郎「{まず影を倒すか?ん、待てよ?影ってことは日光の当たらない所に逃げたら消えるかも…}」
清十郎は体育倉庫に入った。しかし影は倉庫内でも消える事は無かった。
清十郎「{くそっ!俺と同じ身体能力とエボリティを持つ影に勝ち筋はあるのか?}」
清十郎・影「ギガフレアっ!」
2つの炎がぶつかり大きな火炎の渦となる。
清十郎「{負けねぇ!明日を捨てる覚悟でやってやる!}」
草薙「「火炎」のエボリティショーはなかなか幻想的でいいな」
舎弟5人「Yes!陛 下」
◆◆◆
1時間後
ヤンキーB「しつこいっすねあいつ、もうエムピリンも底を尽きてるんじゃないかな?全然炎使ってないや!」
清十郎「くそぉぉーーー」
清十郎はがむしゃらに影を殴る。
清十郎は全身の打撲だけでなく、かなりの火傷を負っている。
草薙「…」
草薙は黙り込んだ。
◆◆◆◆
さらに30分が経過した。辺り暗くなり始めた頃、清十郎と影は倒れ込んだ。
清十郎・影「はぁ、はぁ、はぁ…」
ヤンキーB「もうアイツ無理っすよ、どう見ても草薙さんの勝ちです、帰りましょう!」
清十郎「ま、まだ…だ」
清十郎は残る体力を振り絞り立とうとしている。
清十郎「うっ、ぐへっぁ」
内出血を起こしているのか、口から血が出始めた。
地面を這いながら草薙の方向に向かって行く。
10m以上あった距離がじんわりと縮まっていく。10m…9.9mと数cm単位だが確実に近づいていく。
草薙への距離を3m程まで縮めた瞬間、草薙は突如椅子から立ち上がり、清十郎の方へ向かって歩いた。
取り巻き達は混乱している。
草薙はしゃがんで清十郎の髪を掴み上げこう言った。
草薙「愚かではある。だがその愚行が時として勝利を生む。貴様の勝ちだ。」
いつの間にか影も消滅していた。
草薙「おいっ!コイツのツレ!寮まで運んでやれっ!」
草薙が声を上げると取り巻き達はさらに混乱した。
すると物陰に隠れていた新、達也、慶子は清十郎に駆け寄った。
慶子は涙していた。
慶子「全く、無茶するんだから…」
清十郎「お、お前ら、見てた…のか?」
達也「当たり前だろ、あんな話聞いて帰れる訳ねぇだろ!」
新「ナイスファイト…」
そういうと新と清十郎は拳を突き合わせた。
2時間近くの死闘の末、清十郎は草薙に勝利したのである。