第8話 最速攻略しちゃったようで・・・?
8話です!
まず始めに俺はファーストコンタクトとして彼女 四堂院 ユキの言葉を無視し隣の席に座ってみた。
この学園は大学でも見られる教室。いわゆる階段教室の造りで各段に長机&椅子4席ワンセットで一つの段に四つほど置かれていた。
窓側の席に座る彼女は案の定自分の椅子をガッと動かして、俺から距離を取りその吸い込まれそうな切れ目をさらに険しくさせる。
「これ以上来たら貴方に乱暴されそうって叫ぶわよ・・・!」
相手は完全にこちらを不審者のような目で見始めていた。
これはやばいな・・・。俺は少し危機感を持ち、何もしないという意思を込めて両手を上げて降参のポーズをとる。
「いやいやちょっと待ってくれよ・・・。俺まだ何もしてないんだが?」
「貴方もそう言って私に告白するつもりでしょう?貴方のその目、今まで言い寄ってきた男達と同じだわ。残念だったわねお断りよ。わかったらさっさと帰ってくれないかしら」
「なにか勘違いしてないかぁ?」
彼女の目には何を思い出したのか光がなかった。
四堂院 ユキはその容貌から昔から沢山の男達に告白を受けていた。その中には大人も交じっており乱暴つまりは強姦されそうになった事も何度かあったらしい。男嫌い否男性不信になるには十分な理由だ。
俺は参ったなーと頭を掻くと素直に言葉を出した。
「確かに四堂院は綺麗だけど、別に俺は告りにきたわけじゃないぞ?」
「嘘言わないでくれるかしら・・・。男性なんてどうせ毎日不純なことしか考えていないのでしょ?」
「なにそれどこのウサギさん!?そんな年がら年中考える奴なんてよっぽどの変態だぞ?」
「じゃあ貴方がその変態ってことでしょそれになんでわたしの名前を知っているの?貴方まさかわたしのストーカー?」
「いやそこに名札置いてあるし・・・」
俺は呆れた顔を浮かべつつ内心少し焦り始める。
おかしいインヒロだともっと感じ良かったのだが・・・?
ああそうか忘れてた・・・!今の俺はハルトじゃないもんなぁ。
俺の顔は良く言っても中の上、さらにすこしボサついた髪の毛とやる気ない目は根暗のイメージが強い。
これがくだんの青春のラブコメや実力的な教室みたいな物語なら似た者同士仲良くなる筈なのだが現実はそうはいかないらしい。
これ以上長引かせると攻略できないかもしれないな・・・。
どうやら思ったよりも彼女の抱える男性への闇は大きい様だと冷静に分析した俺は、Bプランに移行することにした。
真剣な眼差しで四堂院 ユキを見つめる。
「四堂院 ユキさん・・・!俺の友達になってください!」
静かな教室にそんな声が響き渡った。
Bプランそれは直球に相手に想いを伝えるだ。
そのBプランの成果かその言葉に四堂院は驚いたように目を見開くと下を向いていた視線が俺の方へ向く。
その視線は俺の考え、思考を読み取ろうとしている意図をハッキリと感じることが出来た。
「それ本気なのかしら?」
「マジだよ」
「私達まだ会ったばかりよね?そんな状態で友達になんてなれるのかしら?それに私に友達なんて必要ないわ・・・。
いても邪魔なだけだし1人の方が気が楽だもの・・・」
後半の言い方はどこか闇を持った様な感じで相当ひどい目にあったのだと容易に想像ができる。
俺の女神様にひどいことをさせる外道など魔法でこの世から焼却してやるのだが、そんなわけにもいかない。
取り敢えずは俺のありのままの言葉を届けるしかないだろう。
「確かにそうかもしれない。ぼっちの方が気も配らなくて良いし好きなことだって沢山出来ると思うぞ。
でもな・・・。やっぱり人と関わることは大切だぜ?今だからこそ仲間を作って楽しまないと後でぜっったい!後悔するからな!」
そうこれは俺の体験談でもある。
高大とそれなりの青春を送っていた俺だったが、空手をやっていたと言うこともあって体格はめちゃくちゃ良かった。
それプラス結構目つきも悪い方だったので、部活や道場間で友人は出来たものの学校では怖がられてなかなか友人と呼べる存在を作ることができなかったのだ。
社会人となって和気藹々と楽しそうにお喋りをする学生が目に入るとつい溜息を吐いたものだ。
兎にも角にも四堂院は人を信頼していないのが、友人を作らない大きな理由なのだろう。
過去にあったトラウマのせいで、周りに辛辣な言葉を使ってしまいそれでみんなが離れて行く、インヒロの時も教室の彼女の人間関係は最悪な状態だった。
しかし俺はそんな四堂院 ユキと言う人に前へ進んで欲しいのだ。過去を払拭して欲しいのだ。
「すまんなんだか臭いことを言った忘れてくれ・・・」
「・・・なさい」
今の状況を見るとファーストアタックは失敗に終わってしまった。
これは態勢を整えてから出直すしかあるまい。
本当はもっと仲良くなるはずだったのだが、どうやらガッツリ過ぎたようだ。俺は反省し肩を落とすと教室を後にしようとするが四堂院がそれを呼び止めた。
「ちょっと待ちなさい・・・!」
俺はピタッと足を止めると振り返る。
「メリットは・・・?」
「はあ?」
「だから!貴方と友達になったら私にどんなメリットがあるのかって聞いているの!」
四堂院のメリット・・・。
俺は上を向いて少し考えるとうんと頷き腕を組んだ。
「四堂院よ。お前、学校生活を楽しいと感じたことはあるか?」
彼女はキョトンとすると一瞬考え、いえっと首を左右に振る。
「そんなの一度もないわよ・・・。だって学校は勉学をするところよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「そう言うとは思ったよ」
想像通りの回答に思わず俺は苦笑いを浮かべてしまう。
「四堂院!お前が俺と友達になるメリットを教えてやる!お前に心から楽しいと思える学校生活を過ごさせてやるよ!お前にどんな過去があったかなんて関係ないそれすらも忘れるぐらいの思い出を俺が作ってやる!」
ビシッと音が鳴る様に俺は彼女に指をさした。
今まで影の多かった教室はいつのまにか光が差し込みとても明るくなっている。
そのおかげか彼女の顔がよく見えるようになった。
彼女の頬は少し赤みを帯び、何故だかその目には涙が溜まっている。
今まで見たことのないその新鮮な光景に俺の心臓の鼓動が急激に加速した。
なんだこれ・・・!?無茶苦茶可愛いんだけど!!
「な、なんで泣いてるんだ・・・」
「えっ・・・?」
四堂院は自分の目に手を当てると信じられない様な顔を浮かべ困った様に笑みを浮かべる。
「何で私泣いてるのかしら・・・?ごめんなさい私泣くつもりなんてなかったのに・・・」
「いやいいんだよ・・・。何か困ったことがあったら俺に相談してくれよ出来る限り力になるから・・・!」
力強くそして決意を秘めた様に俺は彼女の目を真っ直ぐ見てそう告げる。
四堂院はその俺に態度が少し可笑しかったのか少しクスっと笑う。
「私に今までそんなことを言う人は一人もいなかったわ・・・。・・・いいわよ貴方の友達になってあげるわ」
「ほ、本当か!」
「ええ。さっきの言葉忘れないでね?私楽しみに待ってるわよ」
「ああ約束するよ!本当にありがとう四堂院!」
今までで一番の笑顔を俺は浮かべた。
あの憧れのゲームキャラ四堂院 ユキの友人になれたのだから無理もないだろう。
今ならば魔法なしでも大空を羽ばたける程、俺の心は舞い上がっている。
四堂院はどこか驚いた様な顔を浮かべると何故だか急激に顔を赤くし始めた。
「ど、どうしたんだ四堂院!熱でもあるんじゃないのか!?」
「だ、大丈夫よ・・・!そ、それより貴方の名前を教えなさい。わたしだけ貴方と呼ぶのもなんだか変だわ・・・」
それもそうか・・・。俺今まで名前も言わずズカズカと彼女に話しかけていたのか・・・!そりゃあ警戒もするわなあ。
「俺の名前は神原 レイだ。よろしく四堂院ユキさん」
「神原レイくん・・・。いい名前ね」
そう微笑む彼女の顔が眩しく、ついつい見惚れてしまう。
そんな顔はズルイと思う。
なんだか甘酸っぱい雰囲気が流れる。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに今この瞬間の時を止めたい様な感情に陥る俺だったが、突如背筋がゾクゾクっと震え上がった。
い、一体なんなんだ!
四堂院は俺ではなく何故だか俺の背中の方に目を向けている。
俺は恐る恐るといった様に後ろを振り返ってみた。するとそこには満面の笑みを浮かべ、なんだか黒いオーラを発している幼馴染のクロナの姿があったのだ。
「うふふふふふふ。こんなに朝早くから2人は何やってるのかなあ?レイ、私という幼馴染がいるのに他の女の子に手を出しちゃダメでしょう??」
「いやいや可笑しいだろ。俺はただ四堂院と話をしていただけだぞ!」
突然の乱入者クロナはふーんと言いながら俺の首にホールドを仕掛け、四堂院の方を品定めをするかの様に見つめる。
う!く、首が絞まってる!む、胸に顔がああああああああ!
と大パニックを起こす俺とは裏腹に四堂院は全く動じずにクロナの視線を受け止める。
「あなた新入生代表クロナ・アル・ミラードさんよね?神原くんが困っているからさっさとその手を外してもらえないかしら?」
「へー。そんなあなたは確か新入生7位の四堂院 ユキさんだったよね?君には幼馴染の私がレイをどうしようと関係ないんじゃない?」
「いえ関係あるわ。彼は私の友達になったのよ?困った友達を助けるのに理由などいらないと思うのだけれど?」
2人は互いを睨みつける。まるで火花が散っているように見えるのは俺の気のせいだろうか?
そんなことより四堂院が俺のことを友達と言ってくれたことが無茶苦茶に嬉しかった。
「あ!クロナさんようやく見つけましたよー」
と美人と言うよりは可愛い系のユルフワな見知らぬ少女が入ってきた。
「ああ・・・。すみません宮ノ内先輩今行きます」
どうやら先輩のようである。
クロナは大人しく俺の拘束を解くと、面白くないような顔でユキを見た。
「四堂院さんあとで話はちゃんと聞くからね?レイそれじゃあまたあとでね・・・」
「あ、ああ」
「もう戻ってこなくてもいいのだけれど?」
「いや戻ってくるし」
またも火花が散るこれって俺の目の錯覚だよな?
2人は互いにフンと鼻を鳴らしてそっぽを向き、クロナは不機嫌気味に教室を出て行き、四堂院はどこか勝ち誇ったような顔で席に着いた。
「すまん。俺の幼馴染が迷惑かけた」
「いえいいのよ。そんなことよりあのミラードさんと神原くんは恋人同士なのかしら?」
なんだか少し暗めに言う四堂院に俺は全力で首を振る。
「んな訳ないよ!俺とあいつはそのなんだ兄妹みたいな関係なんだよ」
「そうだったのね・・・。じゃあ私が狙っても大丈夫なのね」
後半部分は何をいっているかよく分からなかったが四堂院が可愛いからどうでもいい。
俺はちらりと腕時計を見る。そろそろほかの学生達も登校する時間帯となってきていた。
名残惜しいがここはもう離れるしかないな・・・。
「四堂院俺はそろそろ・・・」
「ああ!おはようレイくん!」
「おお本当だな。おはようレイ」
またなと四堂院に言おうとしたその時教室の開かれ聞いた事のある声が聞こえた。
振り返ってみるとそこには二パーッと太陽のような笑みを浮かべるメインヒロイン日向 春香と爽やか超絶イケメンの月島 ハルトが、仲良く登校してきたのである。
「おお!おはようお二人さん朝からお熱いねえ!この休みで相当距離ガチじまったんじゃねえのかあ?」
少し茶化すとハルトは顔を真っ赤にしてそんな事ないよ!と反論する。しかし春香の方は至極真面目な顔で、そんな事ないよと素で返されてしまった。
「まあいいや俺これから教室戻るからまたな!」
と俺が教室を出ようとした時2人は不思議そうに、互いの顔を見て次に俺の方を見た。
え?俺なんかしたか?
「な、なんだよ2人とも」
「レイ・・・。まさかお前看板見てないのか?」
「へえ?」
「見たほうが早いんじゃないかな?ちょうどここから見えるみたいだし」
春香はそう言って窓の方を指を指す。
それに習って視線を動かし指差す方を見てみると、そこには信じられないことが書いてあった。
『 受験番号357番 神原 レイは学園長の権限により Aクラス とする 』
俺は思わずゴクリと息を飲み込んだ。
学園は生徒のレベルに応じて各クラスに分けらている。
入学前に行ったテストで順位付けされていて、学年1位から30位までが特別進学クラスであるAクラスにそれ以降から40人前後の編成でクラスB〜Fに分けられるのだ。
インヒロで神原レイというキャラは新入生全体の中では100位。
Cクラスとなってそこで様々な情報を集めて主人公を助けるモブキャラの筈だったのに、あのクラーケン戦闘で余計なことをしたせいで俺はAクラスとなってしまった。
これから先、インヒロとは違う結末が起るかもしれない・・・。不安が肩に圧しかかるのを感じながら俺はこれを判断した張本人へ会うために教室を後にするのだった。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!
近々ここまでのストーリーをまとめた輪を出したいと思います!
ブックマーク、評価等お待ちしておりますまた次回お会いすることを楽しみにしております。