第4話 ボクっ娘学園長と正体
4話です!
どうぞよろしくお願いします!
気まずい雰囲気が流れている。
ここはとある部屋の扉前。
そこには2人の男子生徒と1人の女子生徒が互いに沈黙している姿があった。
しかし3人が3人同じ表情をしてるわけではない。
1人の美青年(超イケメン)は眉を寄せ、明らかに不機嫌な顔。
また1人の美少女は顔をポーッと赤くさせて、隣に立つイケメンではない明らかに平凡な顔をした少年の顔を見ていた。
そして最後にそんな2人に囲まれた平凡な顔の少年は遠目でもわかる様に額に冷や汗をかいていた。
ーーーー
俺 神原 レイは只今冷や汗が止まらない状況に陥っていた。
それもそうだよ・・・!誰がこんな気まずい雰囲気の中にいたいと思うのだろうか?
片方や熱にうなされたように顔を真っ赤にさせこちら方面を見てくるし、もう一方は頑なに俺と視線を合わせない様にし眉を寄せて明らかに不機嫌にしてんだから。
溜息を吐きたくなる衝動を堪えながら、この気まずい雰囲気の理由もある程度俺は予測をしていた。
それはあのクラーケン事件の際、最後に放った俺の魔法がきっかけなのだろう。
前にも話した通り政府は優秀な学生を100人選別してこの学園に送り込んでいる。
この100人は予め政府で行った筆記、身体能力そして魔法の試験によって順位付けされており、その中での1位つまりは国代表とも言っていいのがこのハルトなのだ。
どの科目も国の過去最高記録を叩き出した彼は、出発前の式典でも生徒代表として挨拶を行なっていて、政府からは一目置かれている存在なのだ。
ちなみに俺は50位で春香が3位である。
つまり何が言いたいかというとハルトは俺がわざと手を抜いていた事を怒っているのだろう。自分よりも実力が上なのになんで黙ってたんだ・・・。とまあこれを説明するには俺の秘密も喋らないとならないのだが、今はまだその時ではない。
いつかはこんな事にはなるんではないかと内心考えてはいたが、まさかこんなタイミングでバレるなんて思っても見なかった。
まあ仕方がない、説明するのは後にして目の前の仕事を片付けよう。
俺は意を決して部屋の扉を数回叩いた。
『入っていいよ〜』
どこか間の抜けた声が室内から聞こえてる。
「失礼します・・・」
と部屋に入るとそこには俺たちよりも若干歳下に見える美しい美貌の少女が、微笑みを浮かべながら座っていた。
耳は少し長く髪は黒髪、大きな翠色の目は爛々と輝いている。インヒロの中ではハルトのハーレム一員となるこの少女は少女と呼べるには程遠いほど歳をとっている。
彼女の名は リリナ・エル・フェルナンド。
300年という歴史を誇るこの学園オルガス のうち100年間もの間学園長を行なっている最高齢の学園長である。
長寿と美貌を持ち合わせるエルフ族と人間の間から生まれた彼女は、今からおよそ200年前、地球とゲートの向こうにある別世界の住人との初の混血種『ハーフエルフ』として注目を集めている有名人なのだ。
そんな彼女はフムッとその視線を向け、俺たちを順番に観察してまたも笑みを浮かべる。
「うんうん!噂通り今年の人族には期待できる生徒が多い様だね!」
「あ、あの?フェルナンド学園長なぜ私たちはここに呼ばれたのでしょうか?」
「あれ聞いてなかった?君達にはお礼と謝罪をしたいなーと思って!」
今まで黙っていたハルトは首を傾げる。
「お礼と謝罪ですか・・・?」
「うん!まずはあのクラーケンを討伐してくれてありがとうね。実は最近海辺の町人から被害は聞いてたんだけど中々こっちも動けなかったんだよ。」
「そうだったんですね・・・」
「うん・・・でここからは謝罪だ。ゴメンよ君達には危ないことをさせてしまった。本当は船に乗っていた教士の子が生徒を守るはずだったんだけど何せ新人さんだったから動けなかったらしいんだよ」
本当にごめんと頭を下げる学園長に俺たちは慌てて頭をあげてくださいと懇願する。
「迷惑料とはいかないけど何か分かんないこととか、提案がある時は言って欲しい。ボクにできることがあれば何でもやるから・・・!」
と意気込む学園長には、はいとしか返事ができなかった。
そんな薄い反応だが満足したのか学園長はウンウンと頷くと、先程までとうって変わり怖い程真剣な表情を作り出していた。
そんな急な変化に戸惑いを隠せない俺たちを無視して、学園長は口を開いた。
「まあお礼と謝罪は言い終えたし、ここからがまあ本題なようなもんなんだけど。一体誰なのかな?あの第2階位級の魔法を放った子は・・・?」
しばしの静寂。
なんだか少し場の雰囲気が悪くなってきた気がする。主に俺の隣の方からだけど・・・。
ここでだんまりを決め込んでも仕方ない。俺は静かに溜息を吐き出すとゆっくりと手を挙げた。
「・・・俺です」
「ふーん・・・。君は確か50位の神原君だと記憶しているけど、間違い無いよね?」
「その通りです」
「この件は既に君のお父様には知らせてあるよ」
「親父にですか・・・。」
と俺は苦虫を噛む潰した様な顔を浮かべる。
というかこの人俺の素性もう知ってんのかよ・・・。
「なぜ知ってるの?って顔しているね。君の入学が決まったその日に君の親から連絡があったんだよ。彼等はどちらも僕の教え子だったし末恐ろしい程の才能を持った子達だったなあー」
と昔を懐かしむ様に言う学園長の話に食いついたのは、以外にもなんと春香の方だった。
「学園長・・・!神原くんって一体何者なんですか?」
学園長は一瞬俺に視線を送る。
その意図は俺でもわかる・・・。
この子達にバラしてもいいのかい?
と言うものだろう。
どちらにしろ俺もハルトたちにタイミングを見計らって、正体を明かすつもりだったので良いきっかけかもしれない。
俺は静かに頷くと学園長もまた頷き返し話を続ける。
「君達に神原君が正体を言わなかったのには理由があるのさ・・・。そうだね君達には消えた神童とも言えば彼の正体がわかるかな?」
その言葉を聞き今まで不機嫌な顔を浮かべていたハルトと春香は驚愕の事実に目を見開いた。
・・・俺は静かに息を吐き出す。
ああクソがこんな感情になったのはいつぶりだろうか・・・。まるで暗く深い海中に入る様な感覚。
自分では完全に立ち直れていたと思っていたのだが、思い出そうとするだけで奥にしまっていたはずの記憶が波の様に押し寄せてきやがった・・・。
「六武族の一つであるアークフリート家。その中でも当時若干5歳にして第3階位級しかも全属性の魔法を習得した神童。十数年後には必ず最強の魔法士となって六武族を纏めていただろう男の子。零・アークフリートがそこの彼なんだよ」
過去に一度・・・。
とある意見の食い違いから、地球とアナザー間での戦争がたった一度行われている。
後に《魔法大戦》と呼ばれ、後世に語り継げられるこの戦いには、圧倒的な武力と魔法を行使する6人の《魔法士》と呼ばれし魔法を極めた者達が存在しいていた。
彼らの力は正に一騎当千。
一度魔法を使えば、およそ数千人もの兵、戦士たちが薙ぎ倒され、更にはその地形や天候でさえも変えてしまう程、強大な力を持った彼らの事を 破壊神 と呼ぶ者も少なくなく、その6人の魔法士達を大戦後の世界は尊敬と畏怖から《六武族》と言う地位を与え、以降数多くの優秀な人材が誕生する。
そして《六武族》の中でも俺の世代には、特に優秀な子供達が生まれ、その中でも次期魔法士筆頭と呼ばれたのが当時5歳だった俺 零・アークフリートだった。
ただただ魔法というモノが楽しくて、毎日来る日も来る日も魔法の勉強と練習を馬鹿みたいにのめり込み続け、気がつけば全属性魔法を第三階位級まで使いこなして神童と全世界に名が知れ渡り始めた時に、俺はとある事件をきっかけに表舞台から消え去った。
もうあんなの思い出したくもない。
眼から段々と光が消え去り、ピリピリとした空気が学園長室を満たして行く。
泣き叫ぶ俺、恐怖の眼差し、振り払われる手、その時の記憶と感情がグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルとまるでリピート再生の様に脳内に溢れ出してくる。
「・・・・!レイ!眼を覚ませ!」
といつからかハルトが俺の肩を掴み強く揺さぶっていた。
「ああ・・・。またか落ちてたか・・・」
過去の衝撃と感情が大き過ぎて俺はどうやら自我を失っていた様だ。
顔から大量の汗を流す俺はフーッと息を吐き出して、弱々しく笑ってハルトに告げる。
「すまないハルト・・・。本当はもっと早く俺の正体も話したかったんだがな・・・」
「いやいいんだよ悪いのはこっちだ・・・。すまない君にも辛い過去があったのにあんな子供の様な態度を取ってしまって・・・」
そんな姿を春香はグズリながら見届け、学園長はフーッと重々しく空気を吐き出す。
「うーんまさかここまでとはね・・・。みんな時間を取らせて悪かったね今日はもう寮に戻っていいよ・・・」
「すいません学園長迷惑をかけてしまって・・・」
「ううんこっちこそごめん・・・。今日はゆっくり休んで明日の入学式に備えてくれ」
思案顔をする学園長は立ち上がりそのまま部屋を出て行った。
そうして微妙な雰囲気の中取り残された俺たちも宿泊棟で分かれて解散する。
積み上げられた荷物の整理でもしようかと悩んだが、もうすっかりそんな気分でもない。
そのままベットにダイブインした俺は、自分の不甲斐なさにクソッと毒を吐き、とある決意を固め静かに眼を閉じたのだった。
難しい・・・!けどなんとか書いていきたいと思います。
ここまで読んでいただいて何かご感想があれば是非下さい。
お読み頂きありがとうございます!
評価、ブックマーク等是非お待ちしております
お読みくださった皆さま今後ともよろしくお願いします(>_<)