第14話 模擬戦③
リアルが忙しいですがなんとか書きました!
side ハルト
威圧を放ちどこか心底楽しそうな表情のクロナさんはそのまま僕たちへと飛びかかってきた。
「四堂院さん!後ろで援護頂戴!」
僕は側にいる彼女四堂院 ユキさんを背後に置くとクロナさんと真正面に対峙する。
クロナさんとヘレナの戦いを見ようとこの場に来た直後。バッタリと四堂院さんのチームと鉢合わせしまった僕たちは、そのまま彼女達と戦闘をする事となった。
四堂院さんのチームには僕が思いを寄せるハルカも居たが、今は模擬戦の最中だと言うことでその感情に目を瞑り戦いを挑んだ。
結果は両チームにそれぞれ2人ずつのリタイヤ者が出て痛み分けと言う形になった。(僕のチームは、九条さんと武藤さん。四堂院さんのチームは倉田くんと言う男子生徒と真田さんと言う少女生徒である)
なぜ僕達が途中で戦闘を辞めたのかそれはあまりにもクロナさんが強すぎると言う理由からである。
あのヘレナを相手にする事さえ今の僕には荷が重いのに、その相手をまるで赤子をあやすような感じで圧倒してしまったのだ。
この光景を目撃した僕達は一時交戦を中断して協力関係を結んだ訳で、そして今僕はその件のクロナさんと肉弾戦を繰り広げていた。
「遅い!遅すぎですよおおおおおお!!!」
まるで戦闘狂・・・、いやあの楽しそうな表情からして間違いなく戦闘狂であろうクロナさんは、いつもの落ち着いた性格とはだいぶかけ離れたテンションで拳を放ってくる。
耳元にサシュ!と風邪を切り裂くほどの拳が通り過ぎ僕の背筋が思わず震える。しかし僕は恐怖を押さえ込み、拳を放ったクロナさんの腕を掴むとそのまま地面へと叩きつけるように投げた。
柔道で言うところの一本背負いという技である。
「面白い!!」
グルリと目を動かし嬉々とした表情をこちらに向けながら、クロナさんは投げ飛ばされている体勢からグッと身体を動かして地面に叩きつけられる前に両足で着地すると僕の顔に向け魔力弾を放ってきた!
しかしすんでのところで顔を反らして避けた僕だが、今度は顔の横から魔法陣が出現する。
「まさか設置型魔法陣!?」
いつの間に仕掛けたのか一定時間が過ぎると発動する設置型魔法陣に驚き、僕は堪らず腕を放してその場から飛んで離脱した。
直後ドシュ!っと魔法陣が輝き、魔力の塊が凄まじい速度で魔法陣から発動する。
その威力と速度に冷や汗を浮かべる僕、
そして離れた絶妙なタイミングを見計らい四堂院さんが魔力弾の雨をクロナさんへ降らせた。
ダン!ダン!ダン!と数十を超える魔力弾が地面を掘り起こし土埃がクロナさんを覆い隠して行く。
しかしそれでも四堂院さんは構わずバスケットボール程の魔力弾を2つ両手に出現させると凄まじい回転を加えて土埃の中へと放った!
突如として轟音が鳴り響き、その衝撃で砕け散ったであろう無数の地面のカケラが空から降ってくる。
僕は思わず四堂院さんに視線を向けるが、いつもの凛とした姿のままブツブツと何か呟いていた。
「これで神原くんと私の仲は安静になったわ・・・」
何だかレイの名前が聞こえたような気がするが僕の気のせいかな・・・?
するとそんな中、土煙の方からハシュッ!と何かを斬る音が聞こえると一気に土煙が空へと舞い上がった。
「いいです!いいですよおおおおお!期待以上!流石はレイが選んだだけの事はありますねええ!!」
するとそこには所々服が破れているが、無傷のクロナさんがまるで狂ったように笑い出す姿があったのである。
まるでホラー映画だよ!!
とその様子を見て思わず顔を青くする僕だが、クロナさんのとある言葉を思い出し思わず聞いてしまう。
「えっ・・・。クロナさんはレイの正体を知ってるの・・・!?」
「そんなの当たり前ですよ!私と彼は幼い頃からずっーーーーーと一緒に過ごしてましたから」
一瞬瞬きを行ったクロナさんは何を当たり前の事を言ってるんだというような調子でそう言った。
「それどう言う意味かしらできれば詳しく教えて欲しいのだけれど??」
しかしこの話に食いつく人物が現れた。
何だか目をドス黒くしまるで無機質な人形のような表情で、クロナさんにそう問いかける四堂院さん。
四堂院さんの表情を見ると可笑しそうにクスクスクスっとどこかバカにしたような笑い声をクロナさんは上げた。
「四堂院さん・・・!まさかあなたレイの友人だとか言いましたけど彼のことなんにも知らないんですねえ??友人とか思っているのはまさかあなただけじゃないんですか?」
その一言で四堂院さんは青筋を浮かべて、クロナさんを睨みつける。
しかしクロナさんはどこ吹く風といった様にその視線を受け止めると、僕らとは違う場所に視線を向け始めた。
「へー・・・。どうやら私囲まれているみたいですね」
その言葉通り予め囲う様に言ったチームのみんなが、クロナさんを警戒しながら構えを取っていた。
「いいですよ?もっともっと私を楽しませてください」
そう言ったクロナさんは身体強化を体に纏うとアキトに向かって走り出す。
「はああ!!こっち来んのかよおおお!!」
とビビり気味に叫んだアキトは決意した顔をすると魔力弾を2、3発クロナさんに向け放つ。
しかしハエでも叩くかの様に片手で吹き飛ばしたクロナさんは、一瞬消えたと思うほどの速度でアキトの前へ現れるとそのままアキトの顔に右ストレートを叩きつけた!
グワシャ!と音がなる程そのパンチは強力で、殴られた本人は理不尽だあああ!と涙を流しながらそのまま気絶してしまう。
それを唖然とした様子で見ていた僕たちだったが、四堂院さんがクロナさんに向け魔力弾を放ったのを見てそれに習って同じく魔力弾で応戦した。
しかしクロナさんはそれを全て防御魔法で防いでしまうと僕たちに向け、まるでマシンガン張りの速度で魔力弾を放つ。
「ハルカ!!」
危うく魔力弾の餌食になりそうなハルカを庇いながら僕は防御魔法を発動。
グガガガガ!と魔力の塊がまるで雨の様に防御壁に当たり続ける。
「ハル・・・!なんで・・・!」
「絶対に君を傷つけさせやしない!」
そうだ僕は彼女を守る為ここまで血の滲むような訓練をしてきた。
この程度で屈しちゃダメなんだ!
僕は魔力を放出し、2本の剣を思い浮かべる。
「マナ・ソード!」
魔力は工夫をすればこの様に普通の実剣と何ら変わらないのように振るうことができるのだ。ハルカを背後にやるとスッと息を吐き出して2本の剣を構える。
「天道十心流 A級剣術士 月島 ハルト・・・いざ参る!」
そうして僕は防御壁から飛び出すと風のようにクロナさんへ向け駆け出した。
「受けて立ちましょう!!」
クロナさんは笑みを深くすると魔力弾を僕に向ける。
まるで雨のように覆い尽くすほどの魔力弾が迫り、その圧力に改めて六武族のすごさを身に染みて感じた。
「天道十心流 八ノ技《十双蓮華》!」
迫り来る魔力弾を斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!体に当たりそうな魔力弾を全て斬り捨てクロナさんの元へ近づき、僕は2本の剣を天高く上げてそのまま彼女に向かって振り下ろす。
ザシュッ!と地面をも切り裂く斬撃であったが、クロナさんはいとも簡単に避けてしまうとそのままカウンターとばかりに横腹に蹴りを放ってきた。
「かは!」
胃液を撒き散らしながら地面を数回バウンドしゴロゴロと転がる。
至る所から痛みが広がり、確実に何箇所かの骨が折れているであろう。
たった一度の攻撃、それだけでこんなに体がボロボロになるなんて・・・。
彼女と僕の力の差は一体どれほどのものなのだろうか・・・。
ザッザッザと地面を踏みしめながら彼女がこちらにやってくる。
その音はさながら命を刈り取ろうとする死神が近づいていると錯覚させ、僕は思わず体を震わせた。
「ハルト様にちかづくなあああああ!」
と大声を出して果敢にもクロナさんに立ち向かう小豆。
頼む逃げるんだ・・・!
心からそう小豆に願うが彼女はもう止まらない。
「五月蝿いですよ?雑魚はすっこみなさい」
小豆の放った拳をヒラリとかわしたクロナさんは彼女の足首を掴むと思い切り地面へと叩きつけた。
地面がめり込むほどの衝撃と威力。小柄な小豆がそれに耐えられるはずもなく、カハッと息を吐き出してそのまま気絶してしまう。
「よくもやったわね・・・!」
「許さない!」
四堂院さんといつのまにか移動したハルカが怒りを露わにして魔力弾を打ち込む。
しかしクロナさんはそれらを全て防ぎ。
逆に彼女達を迎撃してしまう。
無数の攻撃を浴び、膝をつくハルカ達に向かいクロナさんはゆっくりと歩を進めた。
その姿に僕はクソクソクソ!と自分を罵り、小豆をあんな目に合わせたクロナさんに憤怒し、震える体に鞭を打ってユラユラと立ち上がる。
ふざけるな月島 ハルト・・・!お前の実力はこんなものなのか・・・?
ただ黙って自分の大切な人がやられるのを見るしかできないのか!?
お前ならやれるもっと・・・!もっと強く!速く!
僕は自分をそう鼓舞し、うおおおおおお!!と雄叫びをあげると再度マナ・ソードを出現させクロナさんに突撃した。
余力は残りわずか、この一撃で決めるしかない・・・。
そうして僕はマナ・ソードをとある形に変形させる。
想像するのは刀・・・、どこまでも鋭く、そして速さに特化した武器にその形状を変え僕はそれを腰の方へと携えた。
天道十心流において最大の攻撃力と速さを持ち合わせるこの技。
未だ完成には至っていないがやるしかない。
全神経を研ぎ澄ませ、ゆっくりと長く長く息を吐き出した僕はクロナさんだけに集中して柄に手を置き技を解き放った。
「天道十心流 十ノ技 《オボロヅキ》!」
腰から放たれる刃・・・。最速の攻撃にして最大の攻撃が相手の首めがけ、まるで吸い込まれるように伸びて行く。
あまりの速さにクロナさんも対応しきれず、驚いた表情を浮かべていた。
勝った・・・!そう心の中で確信した僕だったが、それも次の瞬間に霧散してしまう。
何と自分の魔力が切れてしまったのか、首に届くギリギリ一歩手前でまるでガラスが割られる様な音と共ににマナ・ソードが砕け散ったのだ。
僕はクソっ!と苦虫を噛み潰した表情を作ると、そのまま力尽き地面へと倒れこむ。
「・・・今のは危なかったですね・・・。刃がまるで見えなかった」
そう唸る彼女に自分の限界の悔しさに再度クソっ!と漏らす。
何度立ち上がろうにも体に力が入らず、虚ろになった目でハルカ達に近づくクロナさんを只々見つめると言う選択肢しか僕にはなかった。
「それじゃあこれで終わりですね・・・!」
僕達に向け魔法陣を展開するクロナさん。
もうこれまでか・・・、そう思っている矢先突如としてそいつは現れた。
「どうやら間に合ったみたいだな・・・」
その声に僕は反応して思わず後ろを見る。
するとそこには僕の想像した人物が、いつもの様な眠たそうな顔でクロナさんを見つめている姿があったのだ。
「ああああ!やっと・・・!やっときたんだねレイ!ずっと君を待ってたよお!」
そんな嬉しそうな彼女を見ても臆さず件の本人 神原 レイ ・・・、否 六武族の消えた神童零・アークフリートはこう告げた。
「クロナ今度はこの俺が相手になってやるよ・・・!」
こうして六武族内でも生粋の武闘派と呼ばれる両家の次期当主候補同士の戦いが幕をあげたのである。
次回いよいよ模擬戦の終盤です!
お読みくださりありがとうございました!
アドバイスやら評価やらブックマークやら何かありましたら小説を書く励みにもなりますのでくださると嬉しいです・・・!
それではまた次回お会いしましょう!




