9話:VSミナト 前編
「セイヤ、取り敢えず距離をとるぞ!」
ミナトから目を離さないようにして距離をとる。
ミナトがどんな能力を貰ったかわからない今、あまり近づきたくなかった。
ミナトもまだ警戒しているのか攻撃を仕掛けてこない。
しばしの間見つめあった後、先に動いたのはミナトだった。
セイヤ目掛けて駆けてくる。
「くらえセイヤ!【ヴァイオレットフレイム】!」
すると、ミナトの手から青黒い炎が溢れ出しセイヤのいる場所を焼いた。
「ッぶな!」
セイヤは間一髪後ろに跳んで炎をかわす。
俺はミナトの隙をつくように足元に落ちていた石を2つ腹に目がけて投げた。
一つは外れるがもう一つは腹に当たる。
「クッ!」
そう小さく声を漏らすとミナトは一旦俺たちから離れた。
「大丈夫か!」
「う、うん、それより……」
セイヤは不安げな顔をした。
セイヤの言いたいことは分かる、ミナトの能力が思った以上に強い……!
「……セイヤ、少しの間ミナトを引きつける、能力で出来そうなことを試せ」
「……大丈夫だよね?」
「あぁ! 任せろ!」
正直、怖い……が、勝つにはセイヤが鍵になる。
ミナトに向かって駆け出した。
「イオリ、一人で戦う気か?」
「一人でもお前くらいなら拘束できそうだからな」
「へぇ、言ってくれるな、【ヴァイオレットフレイム】!」
走って避ける。そして避けるついでに拾えそうだったら石を拾う。
「【ヴァイオレットフレイム】! 逃げるだけじゃなくて攻撃してこいよ! 【ヴァイオレットフレイム】!」
「ッ……んッ……」
炎をかわし次は足に目がけて石を投げる。
「フッ……ハァハァ……余裕そうな……割には……かわせないんだな……」
当たったが息も切れ、もう体力がない。
でも、もう少し時間を稼ぎたい。
石はまだいくつか残っている。上手く使えばもう少し時間稼ぎは出来るだろう。
取り敢えず石を二個、足に向かって投げる。
その石は当たるも外れるでもなかった。
「【イレイスファイア】!」
ミナトが横薙ぎに払った手から出た炎によって石が消滅した。
焼けたでも溶けたでもなく、消えたのだ。
「イオリ……お前の攻撃はもう、通じないぞ」
苦し紛れに残ってる石を投げつける。
だが、それは【イレイスファイア】の一言で全て掻き消える。
「これで勝負を終わらせよう……【ヴァイオレットフレイム:エンチャント】!」
ミナトは腰から両刃の剣を引き抜き掲げた。
掲げた剣の先端から青黒い炎が溢れ出し剣を纏う。
「……おいおい……剣とか……殺す気か?」
「峰打ちにする、安心しろ」
「両刃だから……峰とかないし……炎を纏ってんじゃねぇか」
そして掲げた剣を振り下ろした。
……俺ではなく離れているセイヤに向かって。
振り下ろした剣からは炎を纏った光弾のようなものが飛び出した。
「セイヤッ!!」
俺はただ叫ぶことしか出来なかった……。
※人に向かって石を投げてはいけません。剣も振ってはいけません。