8話:ミナトの申し出
「セイヤ、イオリちょっといいか」
ミナトは真剣な目でこちらを見てきた。
「なんだ?」
「……話したいことがある、ついてきてくれ」
2人は顔を見合わせ 首をかしげたあと、俯きがちに歩き出したミナトについて行った。
一体どこに向かうのだろうか。
ミナトについて行くと門に着いた。
……門番の人も久しぶりだな……。
草原に出たがまだ歩く、一体どこまで行くのだろう。
「……ここらでいいか」
門から5分程度歩いたところでミナトは止まった。
「一体何をするの?」
「セイヤ、イオリ、ここで俺と勝負しろ」
……え?
「な、何言ってるんだ……?」
「お前らはこの地を救う勇者として転生した、でも俺はこの地の新たな魔王として転生させてもらった」
救世主だと思ってたが……魔王……?
というか何を言ってるんだミナトは……。
「女神にはあまりいい顔をされなかったが……面白そうだと許可された」
やっぱりあの女神雑過ぎないか……?
「で、でもわざわざ戦わなくてもいいじゃん!」
セイヤは必死に抗議する。
「……もう決めたことだ、魔王を目指すものとして勇者の邪魔をしない訳にはいかない」
「だが、戦うにしてもこっちには戦うメリットがない」
「ふむ……ではお前らが勝ったら俺の持ち金の半分をやる、日本円にして約五万……どうだ?」
「半分じゃやらん、せめて2/3にしろ」
「そこまで言うなら1/4くれてやる! だが参加料代わりにあるものを出してもらう」
約七万五千円か……言ってみるもんだな。
だが参加料?
「何を出せばいいんだ?」
そう言うとミナトは、目を逸らし顔をうっすらと赤らめ、頬を人差し指で掻きながら小さい声で言った。
「えぇっと……和英辞典と国語辞典を……」
「な、なんで辞典……?」
「せっかくだからいい技名を考えたくて……」
まぁ気持ちは分かる。
まぁそのくらいならいいか。
「そこまで言うなら受けてやる」
「イオリ!?」
セイヤが悲鳴にも近い声で叫ぶ。
「だが、こっちはまだ自分の能力についてよくわかってないんだ、不公平じゃないか?」
「そのかわり2対1だし、バランスは取れてるだろ?」
これ以上の譲歩は無理か……。
「……ルールはどうする」
「降参するか気絶などの戦闘不能状態で負けでどうだ?」
最後に気になったことを聞く。
「最後に、なんでそんなに勇者だの魔王だのにこだわるんだ?」
ミナトは少し黙ったあと真面目な顔で言った。
「……またいつか機会があったら話すよ」
気になる言い方だな。
「ねぇ……二人とも……ほんとにやるつもりなの?」
俺とミナトは頷いた。
「セイヤ、付き合わせて悪いな……」
「いいよ、どうせ面白そうだからとかそんな理由でしょ?」
正直一番はそれだ、すごいマンガ展開感がしてワクワクする。
「やるからには手加減しないよ!」
「いつだって勇者側が勝つのが王道だろ?」
ミナトは小さくふっと笑いをこぼし笑顔で答えた。
「せいぜい俺を楽しませてくれよ? 」