6話:お久しぶり
久しぶりに聞いた俺たち以外の日本語。
今の状態を変えれるかもしれない、そんな希望の光を目の前にして自然と涙が出た。
「お、おい……なんで泣いてるんだ」
「いや……つい……」
困惑しながらも、目の前に現れた救世主は縦に長い五角形の宝石が付いたネックレスを俺たちに渡してきた。
「あの、これは……?」
「まぁ、すぐに分かる」
疑問に思いつつもしばらく見てみる。
すると、微かに宝石が光りだしたと同時に声が聞こえてきた。
「一ノ瀬 ミナトさん、ひとまずお疲れ様でした」
聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
うん、絶対あの人だ、女神だ。
「あ、あの……お二人もお久しぶりです……」
「あの……めが…「あぁぁぁぁ! わかりますわかります言いたいことも聞きたいことも沢山あるのはわかります!しっかり答えます!だから落ち着いてください!」
セイヤが喋ろうとしたら声を被せてきた。
この女神の焦りようと救世主、一ノ瀬 ミナト様の服装と装備を見たら察することが出来た。
「いや、でもよく考えたら文句言われた仕返しだと思えば……はい、ごめんなさいただのうっかりです、はい」
俺とセイヤの無言の圧力に屈した。
というか疲れてもう怒る気もなくなってきた。
「女神様怒ってないのでしっかり話してください」
「ほ、ほんとに怒ってませんか?セイヤさんはそうでもイオリさんがすごい睨んでるんですけど……」
「はい、怒ってませんよ?女神様から話を聞いた後に怒るんです」
女神はひっ……と小さく鳴き、話し始めた。
「えと……あの……お二人を送ったあと言葉を覚えさせるのを忘れてたことに気づきまして、送ってしまったあとなんで覚えさせることも出来なくて……お二人には悪いことをしたと思っています、はい」
セイヤは数十分に渡り女神に怒りをぶつけたのだった。
「それで? どうしてくれるんですか? 女神様のミスのせいで僕らは1週間も不便な状態で過ごしたんですけど」
「先程も言った通り、今の状態だと言葉は覚えさせれないんです。ですので……あの……悪いんですがミナトさん、お二人に教えてあげるなんてことは……」
女神は怒られたせいで涙声になっていた。
そして、今まで黙ってた一ノ瀬 ミナト様も声を出した。
「おい待て、聞いてないぞ」
「そこをなんとかぁ~……」
ついに泣き出してしまった。
ただの人間三人に負けた神の図の完成である。
「で、では大雑把でいいので教えてあげてください……そうしたら覚えさせてあげられると思います」
ではっ! と言って宝石から光が消えたのと同時に女神の声は聞こえなくなった。
……何か言われる前に逃げたな。
俺達は大きくため息をついた。
「……じゃあ小倉、相馬教えてやる、ついてこい」
「あの……一ノ瀬さん、小倉じゃなくてセイヤって呼んでください」
「俺も、相馬じゃなくてイオリでお願いしたい」
苗字で呼ばれるのは慣れてないからな。
「分かった、じゃあ俺も一ノ瀬じゃなくミナトでいい」
こうしてやっと言葉を覚えられそうな希望が見つかった。