10話:VSミナト 中編
炎を纏った光弾がセイヤに当たる寸前。
石の壁が突然セイヤの前に現れた。
石の壁に光弾が当たり石の壁は半壊してしまう。
だが同時に光弾は消えた。
今の石の壁はセイヤが石を増やしたものだろう。
セイヤを見ると目が合った。そして、力強く頷いた。
恐らく、ある程度能力を試せたのだろう。
1度セイヤの所へ引きたい……が、体力が限界に近い今の状態でミナトから逃げられるとも思えない。
どうすれば引ける?
考えろ……考えろ……!
だが、ミナトの振る剣を避けるのに必死で集中して考えられない。
「ちょこまかとっ!」
やはり剣は重いのか降る速度は遅い。
だが、
「【ヴァイオレットフレイム】!」
回避した先を読まれ炎がイオリを襲う。
無理やり体をねじって避けようとするが、衣服は少し焦げ皮膚を焼く、それに加えて転び、倒れてしまった。
「これでっ!」
ミナトが剣を振り上げる。
終わるかと思ったその時、突然ミナトの足元の土が盛り上がった。
そのおかげでミナトがバランスを崩し、尻もちをついた。
今のは……セイヤの能力か。
本当に……助かった。
ただ、普通に走っても普通に追いつかれそうだ……体力きれてるし……。
出来るかわからないが強化を使ってみるか。
今履いている靴を強化してみよう。
そうだな……移動速度強化でどうだろう。
強化が成功していることを願って走り出した。
うん。成功はした。
成功はしたが強化されすぎた。
いつもの感覚で走り出したらあっという間にセイヤのところを通り過ぎて、数十メートル先の木にぶつかり止まった。
「ッ……つー……痛ぇ……」
強い衝撃と痛みが俺を襲った。
骨折れたわ……。
……まぁ折れてないんだろうけど……。
「イオリ! 大丈夫!?」
「あぁ……強化されすぎただけだ……」
「あ、能力使ったんだ、びっくりしたよ」
セイヤが差し伸ばした手をつかみ立ち上がる。
「取り敢えず俺の能力は置いといて、セイヤの能力について分かったことを教えてくれ……ん? 危ねぇ!」
ミナトの放った炎を纏った光弾が俺たちを襲う。
「なるべく簡潔に頼む!」
「了解! まず増やし方は大きく分けて2つ、パンの時みたいに個数を増やすのと、増やすもの自体を大きくするやり方。どっちも増やせる量の上限はわかんなかった……けど、結構上限は高そう。後者の方は元の大きさより大きいなら形は変えられた。最後に増やしたいものが離れていても、見えてなくても増やせた」
ミナトの攻撃を避けながらだから集中して聞けなかったがある程度は分かった。
というか未だに移動速度が強化されてるせいで避けづらい。
「どう? 倒す方法思いついた?」
「……少し考えさせてくれ」
ぶっちゃけ聞いた感じセイヤの能力だけでも勝てそうっちゃ勝てそうだけど……。
なんか悔しいから俺の能力も使いたい。
けど、呼び出すためのポイントも、どう入手出来るのかがわからない以上あまりポイントを使いそうなものは呼び出したくない。
あっ…………これが決まったら面白いなぁ……。
「セイヤ、作戦が決まった」
「じゃあ僕は何をしたらいい?」
俺は能力で呼び出した今回の作戦の要をミナトに見られないようにチラッと見せた。
「これを使う、臨機応変にサポートしてくれ」
セイヤは首をかしげて考えている。
「お前なら俺のやりたいことに何となく合わせられるだろ?」
「はぁ……了解!しっかり合わせるよ!」
さぁ、作戦スタートだ!