表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

1-1

サブタイトルの形式を一旦整理。


1/1

気になっていた所をそこそこ修正

 人の気配を感じて目を覚ました僕の視界に、最初に映ったのは星の光だった。

 ふと「なぜ空が星で埋め尽くされないのか」なんて話を思い出す。この星空ならそんな心配はいらなそうだ。なにせ数えるほどしか星が無いのだから。僕が住んでいる田舎の、満天の星空からすると想像も出来ないけれど、話に聞く都会の空というのはこういう物なのだろうか。


「……え?」


 そこまで考えて、僕の意識は覚醒した。何故夜空なんだ? 僕は屋根のない所で寝ていただろうか。最後の記憶を探るけれど、いまいちはっきりしない。いつも通りに朝起きて、学校に向かって。いや、それは昨日の事だったか……。


「なんで!?」


 ともかく体を起こした僕は、そのあり得ない光景に叫ぶ事になった。最初に目に入ったのは星空だったけれど、僕は地面に寝て夜空を見上げて居たわけじゃなかった。いや、夜空ではあるのだけど、僕の周りは全天周、360度、天も地も、見渡す限りの闇だったのだ。目に入るのはわずかに光る星のみで、周囲はすべて闇に包まれ自分の体すら見えない。確かに感じる地面の感触も、何も見えないどころかその先に星の光があるのだ。宙に浮いている感覚こそないが、それはそれ以外の何物でもない光景だった。


「あなたは魔力によらない魂の維持によって第三種の壁を超え、願いをかなえる権利を得ました」


 そうただ混乱している僕に、その声は突然響いた。


「え?」

「おはようございます」

「あ、おはようございます……」


 唐突にされた挨拶に、僕は思わず返事をする。暗闇の先から投げかけられているのだろうか。それは美しいけれど、事務的で抑揚のない女性の声だった。確かに目覚めた所だから挨拶は必要なのだろうか。

 

「とりあえず錯乱はされていないようなので、順を追って説明しますね」

「は、はあ」


 どう反応して良いかわからずこぼれた僕の返事を、その声はそれを相槌と捉えたのか続けて喋り始める。

 

「私はこの世界を創造し管理している存在が第三種空間に投影した人間です。簡単に言えば、この世界を作った神の使いと言ったところです」

「神様の……使い?」

「管理者はこの世界の創造主ですのでそう言ってしまっていいかと思われます」


 え、なんでいきなり神様が出てくる?

 

「そしてこの場所ですが、ここはおそらくあなたの居た世界とは別の世界、別の宇宙です」

「別の世界!? なんで!?」


 神様の使いに話しかけられてるというのも滅茶苦茶な状況だけど、別の世界ってどういう事だ? なんで自分がそんな場所に居るのか。思わず叫んだ僕に、その声は答える。

 

「この世界を創造し管理している存在を便宜上管理者と呼ぶ事にします。この世界は管理者によってほぼ完全に管理されており、その管理者に把握できない事象が発生することは稀です。しかしあなたは先程突然この世界に現れました。しかも人間として完全な姿。丁寧なことに服を着て、しかし服に汚れなどは全くない状態で、です。これが偶然である可能性はほぼありえません。管理者の管理範囲外からの作用だと考えるのが妥当なのです」


 その声はとても綺麗で落ち着いていて、混乱するばかりの僕とは大違いだった。僕はその声の内容を反芻する。要するに神様はこの世界の事なら何でも分かる。なのに知らない人間が突然現れたんだから、僕は別の世界からやってきた事になると?

 そこまで考えて、僕はそれが僕の疑問に対する答えになっていない事を理解する。

 

「いや、そういう事じゃなくて……なんで僕は別の世界に居るの?」

「わかりません」

「え?」

「管理者にとっても原因は不明です。おそらくそちらの世界の管理者によって成された事ではないかと推測されます」


 その言葉に僕はただ呆然とするしかなかった。いきなり闇の中に居て、神様にも理由が分からないってどういう事だ? というか、そちらの世界の管理者? 僕の世界の神様が何かをして、それで僕は別の世界に移動したって言うのだろうか。いや、でも、そりゃ神様という言葉は分かる。世界を作り出したり、人間を見守ってたり罰したりする、あの神様だろう? でも、それはお話の上での存在であって、実在するなんて聞いたことはない。もちろんその存在を信じている人達がいるのは知っている。でも僕の常識から考えれば、神様というのは空想上の存在だ。

 

「いや僕の世界に神様なんて……居ないと思うけど」

「いえ、そちらの世界にも管理者はほぼ確実に存在します。そちらの世界の人間に知られていないだけでしょう」


 しかし声は僕の言葉を否定する。知られてないだけで神様は実在するって言うのか。そりゃ居ない事を確かめた訳じゃない。でも人間を勝手に別の宇宙に放り出す神様なんているだろうか? いや……神隠しなんて言葉はあるけれど。

 

「その根拠はあなたです。この世界にも人間が存在します。あなたと同じような。しかしこれはとても奇妙な事なのです。この世界の人間は管理者によって管理者の姿に似せて作られています。厳密な意味で物理的な姿という訳ではありませんが」

 

 僕が納得できない様子を感じたのか、声は再び語りだした。

 

「この事から、二つの世界の管理者が同様の姿をしており、あなた方もそれに似た形で創造された存在であると推測できます。また、あなたが完全な形でここに存在するという事も管理者の存在を裏付けています。それが偶然発生する確率は極めて低い。無いと言って良いでしょう。なのでそこに何らかの意志があると考えるのが自然です。この世界の管理者と同等の力をもち、同様の姿をしていて、何らかの意志を持つ。そんな存在が居るのなら、それはそちらの世界の管理者と呼んでも差し支えがないのでは?」

「はあ……」


 僕は思わず間の抜けた返答をしてしまう。声が言っている事の意味は分かるけれど、理解は全く追いつかなかった。そんな僕の様子を察したのか、声は軽い調子で付け加えた。


「まあ、実際のところは分かりません。そもそも原因が分かってどうこう出来る類の事でもありませんし」


 酷い言われ方だけど、確かにそうなのだろうか。まさに人知を超えた何かが起きているのなら、その理由が分かったところで人間の手の届く範疇では無いのかもしれない。

 

「ともかくここはあなたの生活していた宇宙ではない別の宇宙の、特に特色のない、ある比較的平坦な地点です。あなたからすると別宇宙の適当な宇宙空間という事です」

「宇宙空間……」


 そりゃ宇宙に住所がある訳はないし、場所を説明できないのはわかる。それなら確かに周りが真っ暗なのも納得だけれど、そういう問題じゃないんじゃないだろうか。


「息できてるけど……」


 いや、そういう問題でもない気がするけれど、とにかく僕は思ったことを口に出していた。さっきから声も聞こえているし、喋れている。頭の中に直接……なんて事はなく、その声は確かに耳に聞こえて来ている気がする。宇宙って真空で、無重力なんじゃないのか。……いや、そういえば重力もだ。そんな経験はないけれど、今は無重力中に漂ってる感じはしない。


「はい。あなたは出現と同時に条件を満たしたので、管理者により保護されています。生命維持に支障はないはずです」


 条件? というものに心当たりはなかったけれど、ともかく今は管理者による保護……つまり神様に守られてるから大丈夫ってことだろうか。じゃあ僕はやっぱり宇宙の片隅に漂ってる? ふと気がついて、僕は体の下を確認した。真っ暗で何も見えないけれど、そこには確かに硬い地面……と言っていいのかはわからないけれど、ともかく僕は硬いなにかの上に居るのだった。


「さて、現状は把握していただけたようですので、次の説明に移らせていただきます」

「はあ……」

 

 いや、分かった事といえば何故か別の宇宙に居るという事だけなんじゃないか? 把握なんて全くしてないけれど、そんな僕を無視して声は続ける。

 

「この世界では、この世界に存在する者が管理者によって設計された限界を超えると、管理者から願いを一つ叶える権利を受け取ります」

「は?」

「管理者によって設定された物理法則であったり、設計を変える事に成功すると神様からご褒美を貰えるという事です。そして権利を得た存在の元に管理者の分体、つまり私が出現し、願いを聞き届けるための端末として機能します。また、権利を得た瞬間からしばらくその生命は管理者によって保全され、さらに継続的に生命の危機にあるとみなされた場合安全な場所への転送も行われます。これはこの世界の仕組みの一つであり、自動的に行われます」

「はあ……」


 今度は一体何の話が始まったのだろう。さっきまでの話も意味不明だったけれど、それは状況が滅茶苦茶だったからだ。僕の置かれた状況を説明しようという意図は分かった。でも、今は何について説明なのかすら分からない。


「さて、あなたは先程この世界に現れた訳ですが、あなたは別の世界の住人であるためでしょうか、あなたはこの世界の人間と魂の維持の仕組みが根本的に異なります。そしてその点において、あなたはこの世界の人間の設計された限界を超えていると言えます。あなたはその事によって願いを叶える権利を得ました。あなたの生命が管理者によって保護され、また私がここに存在するのはそのためです」



「さあ、管理者に叶えてもらう願いを決めてください」

1「出現」-1

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ