ただ者と思えない5歳児
(どどど、どうしよう……!)
突然目の前に現れたドストライクショタ。
綺麗なサラサラの金髪で雪のように白い肌。
すこし貧弱そうだけどまたそこがいいというか……
「……ヴィオラ嬢?」
(う、上目遣いっ……だとっ……!?)
この年上のお姉様キラーとも思える狙ったかのようなあざといとまではいかないけれど、やっぱりあざといとも思うこのしぐさ。
……100点です。
「ヴィオラ、ヴィオラ!」
「っ!!」
お母様が私を呼ぶ声で私はふと我に返る。
いかんいかん。あまりの衝撃に自分の世界にトリップをしてしまっていたようだ。
「ご、ごきげんようフォルテッシモ王子。お久しゅうございます。」
久しぶりとは言ってみるものの、正直こんな人にあった覚えがない。
いや、こんなドストライクショタに出会っていたならこれで前世思い出すわ!
そう思うほどに完璧な理想ショタだった。
「…………あの、いきなり失礼かもしれないのですが、ヴィオラ嬢。何やら雰囲気が変わられましたか?」
「っ!!!え……?あ、そうでしょうか……?」
「はい。以前お会いした際も礼儀は正しい方でしたが、なんというか……大人のような話方をされるようになったというか……。」
(えっ!?嘘、そんなに変わってた!?)
特に意識はしていなかった。
けれど、ドストライクなショタを目の前にして緊張しているのか焦っているのか実年齢(前世含め生きた年数)分の人生経験振りしまってしまっているのかもしれない。
(どどど、どうしよう……何か不信感抱かせちゃった!?)
別に嫌われない程度であれば向こうからの好感度なんてどうでもいい。
……いや、正直会って意見が変わった。ちょっとは欲しい。
だけどそれはさておいても「思っていた人と違った。」なんて印象はできれば避けたい、家の為にも!!
「ふふっ、実はこの子、急に大人っぽくなったんですのよ。」
「あぁ、言われてみるとドレスも少し……。」
母に言われて私の服装をじっと見つめてくるフォルテッシモ王子。
……その視線は気のせいか胸元で止まっている気がする。
(えぇえぇ、わかっていますとも。貧相な胸の5歳児の女児が着るようなドレスではないですよ、はいはい。)
ある程度歳が行っていたら恥じらいもあるかもしれないがこんなまな板同然の子供では別の意味で恥ずかしくて苦笑いを浮かべてしまう。
(お願いだからもう見るのはやめてぇぇぇ~~~!)
こんなにじろじろ見られている自分が可哀想だと心底思った。
「とてもお似合いですね。」
「…………は……い?」
思いもよらぬ言葉が聞こえて気がして耳を疑う。
(いやいや、流石にこれは効き間違え――――)
「凛としていてどこか大人の女性の様な貴方にとてもよくお似合いですよ、ヴィオラ嬢。」
「っ!?」
可愛らしい笑みでにっこりとほほ笑みながら称賛の言葉を述べられ、私の顔の体温が一気に上がる。
いや、それ以上に、やはり――――――
(なんか侮れない、この王子……!!)
鋭いというのだろうか。
メロディンお兄様をこの場に同席させなかったことといい、大人の女性の様と私を例えた事といい、非常に察しが良い。いや、良すぎない?この5歳児!!
(も、もしやこの子も前世の記憶を持ってて~~~とかなんじゃ……?)
その可能性は捨てきれないと思う。
だって、普通の5歳児ってこんな賢い?鋭い?
否!!
(こ、これはすこし探ってみる必要がありそうね……!)
もし前世の記憶もちなら場合によっては頼もしい仲間になるかもしれない。
もしそうなってくれたら最高に嬉しい話だ。
「では立ち話もなんですわ。庭にお茶会の準備をしておりますの。そちらでゆっくりお話しされてくださいな。」
「ありがとうございます、アルトバーン婦人。さぁ、お手をどうぞ、ヴィオラ嬢。」
「え……あ、こ、光栄ですわ、フォルテッシモ様。」
嬉しそうに私たち二人を庭へと案内する我が母上、ナタリア・アルトバーン。
その後ろで私、ヴィオラ・アルトバーンは理想のショタと手をつないでいることに恥ずかしさと嬉しさがこみあげ今にも体から火が噴出して燃え尽きそうな事態となっていた。