メロディンの想い
「はぁ…………。」
自室に戻り、深いため息をつく。
私、メロディンことメロディは先刻の自分の妹からの質問を思い出していた。
「……好み……か……。」
うっかりと自分の可愛い妹の名前を言いかけた。
しかし、それは避けなければならなかった。
二週間前、ある物語を読み聞かせてから様子の可笑しい可愛いヴィオラ。
まるで、俺の行動の真意に気づいているかのようだ。
「……バレたかな。俺がそういう目で見てる事。」
歳の離れた妹が可愛い。
そう思う事は何らおかしくない事だ。
だけど、ヴィオラが物心つき始めた頃、俺は幼いはずの幼女であるヴィオラに何とも言えない感情を抱いてしまっている変態だという事に気が付いた。
……駄目だ。
このままでは変態と軽蔑され、嫌われる!
そう思った俺は妹に警戒されないために心は女と言い張り、女の身なりになり、女の言葉で会話をするようになった。
……それに、男の姿に戻ってしまえば男として幼い妹に何かしてしまうんじゃないかと怖くなるからでもあった。
……すでに抑えがきかなくなっていろいろしちゃうことはあるけど。
そんな行為のせいで俺が変態で妹をそういう目で見てるって事実がバレたんじゃないかとこの二週間、生きた心地がしなかった!
……しかし……。
(まぁ、何はともあれまた一緒にお風呂に入れるぞ!!!)
今はそれがとにかく嬉しい。
……別にやましい意味はない。
泡で楽しそうに遊ぶヴィオラはいつもの何倍も可愛い。
泡が本当に好きなんだろうな。
そんな楽しそうい笑うヴィオラを見るのが俺にとっては何よりもの楽しみなのだ。
週に一回なんて言われてしまったが、週一回でもあの笑顔を見れるならそれはもう一週間の中でのご褒美タイムとして、その時間の為に生きられるというものだ。
(はぁぁ~~~でも、明日から別宅か……。)
俺が行ってはいけない理由を考えるとやはり間違いなく男の匂いがする。
妹を溺愛している俺が邪魔だというのだろう、親共は!!
(……別に今までのヴィオラならそこまで心配することもなかった気がする。だけど、様子がおかしくなった二週間ほど前から急に女になった、気がする。)
まだ5歳の幼女だというのになんだか大人の魅力というものが急に垣間見えるようになった気がする。
……男女の体の違いとか気にしだしたしな。
それはつまりそろそろお年頃だという事。
(あいつも男に興味、持ち出したのか……?)
もしそうならやっぱり行かせたくない。
だけど、両親の言葉は絶対だ。
行かせたくないけど行かせなきゃいけないし、同行したいけど同行できない。
(……ずっと、俺の腕の中に閉じ込めておければいいのに。)
俺の愛しいヴィオラは誰にも渡したくない。
そんな思いが胸を締め付ける。
(本当は男を知りたいなら俺が教えてやる的なことを言いたいさ。だけど、ヴィオラには嫌われたくないし警戒されたくない。その為にお姉様になる事を決めたんだ。……それに、妹をそういう目で見てることなんて絶対にヴィオラにはばれたくない。)
どうすることが最善で、どうすれば他の男に取られないのだろうかと本気で悩んでしまう。
(……そういえばヴィオラの好みはどんな男なんだ!?)
自分が聞かれたことで動転してしまい、よくよく考えれば自分だっていい話が聞けたかもしれないタイミングを逃してしまったことに気づく。
馬鹿だ、俺は……。
(……好みのタイプ、か。)
好みのタイプ。
それは考えた事はなかったはずなのに何気なく先ほどの言葉が浮かんできた。
きっと、あれは嘘ではない。
嘘ではないが……―――――
(やっぱり、俺の一番のタイプはヴィオラだよ。)
警戒されないためには心は女性と偽り続けなければいけない。
恋愛対象を男だとでも思わせていればきっと、警戒されずにこれからも触れることを許してくれるに違いない。
……どの道、俺たちは兄弟で結ばれない運命。
なら、いっそ…………
(この思い、墓までもっていくさ……。)
隠し通してバレないように、俺は女の格好を続けよう。