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必要悪の神髄  作者: 福馬運
その名は第七組織
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09 日常の裏



 街が今までにないほど賑わっていた。


 あの魔獣の襲撃から一週間。大規模な魔獣の氾濫、そしてタイラントスライムの討伐を功績とし、国が騎士団を派遣。ラウルを表彰するという。

 おそらくはラウルをこの国に留めるための色々が絡むのだろうけど。第七組織曰く、ラウル程度、他の国でも対策できるらしいので、正直不安だ。


 喧騒の中、街を歩く。

 表彰は明日らしいが、なにやらセッティングとか騎士団に野次馬とか、そもそも人が増えたで街が浮かれている。


 目的の建物に着いた。この街唯一の総合病院。今日はその院長に用がある。アポも取ってある。


 病院には何度も来ていた。というのも、院長本人からカウンセリングを受けていたからだ。

 “堕天の加護”を秘匿したならしたなりに、相応の正しい道徳観を養わせるためという名目で月に二回。

 今日もその一日だ。


 まぁそんなわけで受付の人とも顔なじみだし、適当に院長の部屋へ通された。


「ササ君、いらっしゃい」


「はい、よろしくお願いします」


 何かと院長にはお世話になった。堕天の魔術師であることを隠された分、色々なところに手を回していたのだ。

 ……いや、院長の都合で隠されたのだから当然ではあるけれど。


「それで、今日は何か話したいことがあるんだっけ」


 この人もめんどくさいな。

 大人の余裕とか、いつ見ても鬱陶しい。


「もう全部知ってるんですよね」


 まさか、とは思っていたが。


「前から少し気にはなってましたが。その机の上のサイコロ、この部屋の調度品には合わないとは思ってました」


「ただの僕の子供の頃からの宝物かもしれないが」


 その言い方が、面倒だ。


「……話を進めていいですか」


「つれなくなったね。成長を喜べばいいのか、育て方を間違えたと言えばいいか」


 大体、小学生の頃、何もかもを話した相手はこの人しかいない。しかも反戦派を謳っている。それで、森で見たサイコロと全く同じものが机の上に置いてある。

 黒だろう。


「……いつから俺を第七組織へ入れようとしていたんですか」


「君が産まれた時には、既に可能性の一つとして考えてはいたよ。“堕天の加護”を持つことも確信して、監視体制……じゃなかった、カウンセリングも取り付けられた。才能も十分だった。何より世に出てないということは裏の仕事をさせやすいってことなんだ。上からもゴーサインはすぐに出たね」


 ずっと掌の上ってか。情報も全部筒抜け。

 利用する気満々、性格も歪められたか?


「洗脳でもしてたんですか?」


「残念ながらそれはウチの組織のポリシーに反する。神に誓って、それは無いと宣言しよう」


 どうだか。


「この前の性能テストも、結果は十分。魔素観測機でも堕天属性魔法の使用が確認された。練度、使用程度も予想以上。さらにうちのメンバーの発見、拘束もしてみせた……。そんなわけだ」


 院長は立ち上がって手を広げてみせた。


「第七組織へようこそ、ササ・アスカム。我々は、君を歓迎するよ」



 ー ー ー ー ー



 第七組織。


 その存在は、一言で言うと“やばい”。

 フード付き黒コートは支給された。生地の裏に魔法陣が描かれていた。覚醒属性魔法“耐久上昇”らしいが、効果は薄い。というか俺には“自動削減”があるからあまり意味は無い。


 まずこれがおかしい。軽いものとはいえ魔法陣を描いたコートを支給? 資金力が尋常じゃない。


 それと、支給されたのはサイコロ。例の名乗りは形式に従え、らしい。が、名乗りはそのグループリーダーがやるのでしばらく俺には関係ない。

 この謎ルールも意味わからない。

 ちなみにこのサイコロ、本当にただのサイコロみたいだ。


 そして通信アプリ“ダイス”。院長を通して携帯端末、オクトキューブにダウンロードしたもの。これを使って他のメンバーと連絡を取ったり上から指示が来たりするらしい。


 このアプリが一番やばい。

 十万人近くの人数が第七組織にはいて、その人数が使っている。

 そしてそれぞれがどこかに潜入しているようだった。その潜入先の情報がダダ漏れなのだ。現在実行中の任務一覧の数も尋常じゃない。俺の権限じゃまだ見れない情報は多いが、それでもやばい。

 どこかの国の宰相。有名企業の幹部。一大宗教の重役。そんなレベルがゴロゴロ。

 そんなわけで、どっからどう見ても機密なあれこれが大量に流れてるのだ。


 世界を裏から操り、支配していると言っても過言じゃない。味方でよかった。これは敵に回してどうにかできるものじゃない。


『君には特別な出世コースが出来上がっている。働き次第じゃ、この組織の幹部になるのも夢じゃない。そうなればこの戦争の行く末も君の思うがまま。活躍を期待している』


 とは、院長の話。

 間違いなくそれができる力はこの組織にはある。

 つくづく思う。恐ろしい組織だ。


 時々、任務失敗もあるようだが。

 重要そうなのは……これか。双子座の杖、並びにその所持者の勧誘。星座シリーズと呼ばれる強力な武器の確保は、第七組織の目的からすれば重要だろうに。

 三年前、三十人の投入、しかもそのうち二人は幹部だというのに、その大半は死亡が確認されたとか。幹部は無事らしいが。


 さて。

 出世とは言うが、とりあえずは下っ端。上からの指示で任務につくことになる。あくまで凡人を装うのだが。建前上、どこかの企業に就職している扱いだそうだ。当然だがその偽装もお手の物。

 俺は予定通り魔道具関連の企業にいることになるそうだ。

 だが、俺はその企業には行かない。他の調査に駆り出されるそうだ。


 覚悟を決めよう。

 イデアの手によって、戦争を終結させるために。

 そのためなら、なんでもしてやる。



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