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必要悪の神髄  作者: 福馬運
その名は第七組織
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08 第七組織



 “麻痺”。

 相手を動けなくする状態異常付与。

 なんだが。


「……ティナ」


 首から上は動く。つまり声は出せる。

 背の高いのがまだ振り返ってなかった一人に指示して。


「“治癒”」


 生命魔法。状態異常の回復魔法だ。

 魔法が速すぎる。詠唱省略系の加護か? 止め損なった。面倒だな。

 回復と同時、背の低いほうがこちらへ飛びかかってきた。

 手にはナイフ。斬属性スキルらしきその動きは。

 当然“自動削減”に止められる。

 尋問に人は複数いらない。お前は“気絶”。

 そうしようとして。


 ……こいつ、女?


 油断もあって、思考が逸れた。

 その一瞬で、その女はナイフの柄のスイッチを押した。

 柄にはライト、それもかなり出力の高いものがついていた。


 カッと輝き、目がやられた。いや、失明するレベルのものではないが。そのせいで“自動削減”も作動しない。


 まずい視界が、とは俺はならない。

 別に目が潰れようが魔法は周囲に放てばいいし、相手の攻撃は避けなくてもいいのだ。


 が。

 異臭がした。なるほど、毒ガスか。

 これは……毒ガスを放ったんじゃなくて俺の目の前に生成したのか?

 毒を叩きつけるのは“自動削減”を食らう。だから呼吸で自然に体内に入るようにってか。


 息を止め“毒効力低下”。

 すぐさま少し離れた位置へ“気圧低下”。強引な突風でガスを散らす。

 その頃には視界も戻りかけ。


 ……まずは回復役を潰すか。

 さすがにもうこちらを向いてる、先程ティナと呼ばれたやつに“気絶”。

 こいつも女か。

 って、青髪……? なんでこんな所に? まぁいいか。


 ドサリ、とそいつは倒れた。

 間を置かず突風に怯んでいたナイフ使いにも“気絶”。

 毒ガスを生成していたのだろう、最後に残った背の高いやつには“麻痺”。


 はい楽勝。大したことなかったな。

 にしても。

 立ち回りはどう考えても俺が“堕天の加護”を持っているのを知っていて、それに対策した動きだった。

 毒ガス生成はちょっと焦った。ナイフからの強い光でパニックにさせてからの流れはよく出来てる。

 最初の“治癒”もおそらく俺が来た時のために、魔法を構築したまま待機していたのだろうと思われる。そうでなければ詠唱省略からの生命魔法で攻撃までできたはずだ。それがなかったということは、つまりそういうこと。


「……ササ・アスカム。本当に堕天の魔術師だったか」


「その通りだ。その様子じゃ、分かってた上でケンカ売ったんだな」


「年相応の戦闘経験、判断能力なら問題ない戦力だったんだけどね……。空間の魔術師とは大違いだなぁ」


「ラウルをバカするな、殺すぞ」


「おっと、怖い怖い」


 地に伏しているというのに、その男は余裕を感じさせた。毒ガスを生成したのはおそらくこいつ。詠唱した様子は無いが、あぁ、魔鉱石が落ちてるな。これを使ったのか。


 魔鉱石というのは魔石に魔法が刻み込まれているもので、無詠唱で魔法を使える石だ。が、魔鉱石は専用の鉱山でしか取れない上、そのほとんどの魔鉱石の魔法は雑魚い効果ばかり。

 毒ガス生成の魔鉱石は、そこそこの値がつく貴重品のはずだ。

 となると、まぁ当然だけど個人ではなく組織が送った人間だろう。


「どこの国の出身だ?」


「言うわけないだろ? ……と、言いたいけど言っても問題ないので言おうかな。僕はノーベム共和国だ」


 ……は?

 スエルア戦争に関わってない国がどうしてここで出てくる?


「おっと、別に亡命して四国のどこかに今在籍してるとかそんなこともないぞ。ついでに我が母国が四国と同盟を結んだ事実も、予定もない」


 どういうことだ?

 じゃあ……戦争とは関係ない、ただの襲撃だというのか。


「目的は?」


「その前にこちらの話を聞いてみないかい?」


「死にたいのか?」


 ちなみに本当に殺してもいい。

 こいつを殺してもまだあと二人いる。殺しても問題ない。


「あぁ、待ってくれ。私が悪かった。まだ死にたくないものでね」


 まぁ聞くこと聞いたあとにどうするかも、まだ決まってないが。


「目的ね。空間の魔術師、並びに堕天の魔術師の能力調査だよ」


「なぜ?」


「そのままだよ、普通にそのデータが欲しかったんだ。我々の目的の妨げになるのなら、それは排除しなければならないからね」


「“我々の目的”とはなんだ?」


「そこまで聞く? ……分かった、話すから目を細めないでくれ、怖い」


 こいつと話すのは少々めんどくさい。意識を残す相手を間違えたかもしれない。司令塔っぽいし、一番状況がわかってそうだから残したんだが。


「まずは、私の胸ポケットの中のものを出してくれ」


 ……は?

 罠か?

 やっぱこいつ“気絶”させるか。


「あぁ、待って、待ってくれ。いやほんとに。罠じゃないから! 組織の決まりなんだ、やりたくてやってるんじゃない」


 ……。

 意味がわからん。

 が、まぁいいか。仕方ない、とその胸ポケットからモノを取る。何があっても対応できるように準備しながら。

 それは。


「サイコロ、か?」


 見慣れたものだ。だが、これがなんだというのか。


「君も、一度は聞いたことがあるだろう? 今世界に存在する国は、その成り立ちから六種類に分類される、という定説。革命派、保守派、科学派、信仰派、魔導派、自然派」


 そこそこ有名な学説。

 三百年前、元々三百近く存在した国を三十まで減らした大戦に伴うものだ。


「それが、なんだっていうんだ?」


「それぞれの派は、相対的なものが存在する。それはまるで1と6、2と5、3と4のようにね」


 革命派に対する保守派のように。

 これも有名な話。今でもどこかその二派閥ではどこか敵対関係をとっているし、とりやすい。

 何度も言うが……だから、なんだ?


「これらの数字には、もう一つの数字が隠れている。それらを足した数字。7だ。我々はその7……第七組織さ」


 なんかかっこいい。

 だがどうでもいい。


「で、お前の話は聞いてやったが。それが?」


「うん、この名乗りまではちゃんとやれって上からのお達しでね? ごめん、付き合わせたね」


 上からの指示が謎すぎる。どういう規則だ。


「我々の目的は世界平和だ。その障害は、取り除かなくちゃならない」


「俺やラウルがそうだと?」


 俺らを害するなら当然障害となるだろうさ。実際今そうしてる。


「それを判断するための今回の襲撃だよ」


「その行動はまるで世界平和のためと思えないな」


 襲撃って自分で言ってるじゃないか。


「我々の世界平和の方法は、世界から武器をなくすこと。いや、正確には、それぞれの国が“これさえあれば戦争に勝てる”と思わせる原因をなくすことだ」


 随分遠回りな、めんどうな方法だ。

 そして途方もない苦労が必要な。


「分かるかい? 空間の魔術師がもっと強ければ処分は決行だった。が、あの程度なら問題ない。他の国でもあれなら対抗できる。決定打になりえないんだ。問題は君だが……どうやら戦争には参加しないようだし。我々としても何も手出ししないとも。だからね、解放してくれると助かる」


 そんな事言われて解放するやつがいるわけがないだろう。

 というか、俺らに危害を加える可能性もあった、と? いや、すでに加えられてるんだが。


「殺されても、文句はないだろう? お前らはそれだけの事をした。今回の一件で兵士だって幾らか死んだんだぞ」


 変な組織もいるものだな。

 ということでも頭の端に入れておこう。さりげなくイデアに伝えておくか、とも。

 そんなことを考えながらまずはこの男から手を下そうと、して。


 その男の目が、先程までの軽薄なものから一転、鋭いものとなる。


「我々の目下の目的は、スエルア戦争の終結。……さて、ササ・アスカム。我々は君を迎え入れる準備を整えてある。上でも少しモメててね、今ならまだ戦争の終結の目処はたっていない。いかようにも戦争を終わらせられる」


 手を止めた。


「……どういう、意味だ?」


 それが、なんだというのだ。


「誰を英雄とし、どの国を勝たせ、どの様な賠償をさせるのか。我々なら、それを操れる。それほどの戦力が、我々にはある」


 誰を、英雄とし……?

 いや、そんな戦力がある?

 まさか、そんな……ありえるのか?


 心が揺れ動く。


 思い出すのは……イデアの言葉。

 “私の手で戦争をおわらせる”


 畳み掛けるように男は言う。


「もし私がこの場で死に、本部と連絡がつかないとなれば。あの街に、それほどの脅威があると認定されることだろう。それは君の思うところじゃないはずだ。君が堕天の魔術師であることもわかっている事だしね」


「脅してるのか?」


「そうとも言う。けど、君にもメリットのある話だ」


 こいつらは、どこまで分かって言っているのだ。

 俺がイデアを気にかけていることは?


 あの、イデアの願いは?


「ササ・アスカム。どうする? 君は私を殺すかい? それとも……?」


 俺は。

 俺は……。


 口を開く。


 俺の、願いは。



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