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必要悪の神髄  作者: 福馬運
その名は第七組織
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06 それは少年の一手



 スライムがその力を失い、整っていた形を崩した。ラウルの勝ちだ。


 ふぅ、と息が漏れる。

 みんなあっちに注目していたおかげで、俺が色々してたのにも気付かれずにすんだ。“気配削減”は他の魔法を使う瞬間だけ解かなきゃいけないから、正直ヒヤヒヤしていた。かなり無防備だったし。

 堕天属性魔法は魔素の消費が少ないからごまかせたってのもある。ほんと便利だ。


 俺がやったことは三つ。

 一つめ。スライムの意識からラウル以外を逸らすこと。“敵対心削減”だ。おかげでラウルの立ち回りは楽になったはず。他の兵士の心配をしなくて良くなった分、ラウルの負担も増えるけど。

 二つめ。スライムに“鈍感”を付与。動きは緩慢に、思考力も大したものじゃなくなる。馬鹿みたいに真っ直ぐ触手を伸ばすしか脳がなくなる。

 三つめ。ラウルのラストアタック、その瞬間、その部位に残りの魔素をかけて強引に防御力低下。結果魔石まで刃が届き、スライムは死に至った、と。


 最低限の援助と言ったらこんなものでは無いだろうか。これよりもやったら魔素が心許ないし、これ未満ならもっと苦戦しただろう。少しのことで最大な効果ってやつ。


 実戦経験じゃ、やっぱりラウルやイデアに比べて俺の方が上だ。そこら辺の感覚は考えるだけで何とかなるもんじゃない。実戦になれば普段よりも魔法の制御が甘く、どうしたって魔素を普段よりも消費してしまう。

 にしてもイデアの作戦も面白かった。少ない魔素で全方位攻撃。スライムの守り方から魔素の位置を推測ってか。最初はスライムの行動パターンを観察したんだろうな。


 まぁそれはおいといて、と思考を切り替える。

 今回の一件、どうしたって違和感が拭えない。何度も森に行った俺は分かる。

 ホブゴブリンもフレアバットも、タイラントスライムもこの森には存在しない。いや、タイラントスライム一体くらい隠れていても気づかないかもしれないが、最低でもあんな大量の魔獣が隠れていたのはありえない。

 俺がどれだけの期間、どれだけの範囲の森を歩いたか。それを考えればどれだけ異常なことが分かる。

 どう考えても人が関わったものだ。目的は不明。戦時中だし、どっかの国が送り込んだか。とすると目的は空間の魔術師の討伐か。

 あの程度で殺せると思ってるのだろうか。あれなら別に俺が手を出さなくても、イデアが何かしなかったとしても、結局魔獣は掃討されていそうだ。兵士の犠牲は増えるだろうが。

 それだけ、僕らの力は圧倒的だ。あの状況からでも被害のことさえ考えなければ手段はある。


 とはいえ、この街を狙う理由なんて他に無さそうだし。

 軍師は愚か者かな。またの日にもう一度とか言うのだろうか。

 正直、あの森の魔獣たちは俺でもどちらかと言えば強いと思えるので、そうホイホイ来れるとは思えないのだが。


 まぁなんにせよ、魔獣を転移させた人がまだ森の中にいるはずだ。

 お礼参りと行こうか。

 “気配削減”を維持したまま移動。近くの高めの建物の屋上へ移動する。いつも森へ行く時の方法。


 “気配削減”解除。使うのは“重力削減”。身体が、軽くなる。

 思いっきり地面を蹴れば、高くまで飛び上がれる。風向き良し。森の方へ。


 兵士たちが盛り上がってる上を通過していく。誰も上なんて見ていない。見ていたとしてもかなり上を飛んでる俺なんて気にもかけないだろう。街から遠ざかっているし。

 さて、森の様子は、と。

 お、あそこ、いつもより魔獣が少なめだな。ということは、なるほど。あの辺りにいるな。


 これでも視力は良い方だ。なんなら上空から魔獣を何度も見つけるので、慣れている。


「ついでにこれもあるしな」


 鞄から出したのは望遠鏡。そこそこ高いやつ。森に行き始めてすぐの誕生日プレゼントに親にもらった。

 おっと、動く影発見。どれどれ。

 ……当たりだ。

 人が三人。全員黒いフード付きコートを来ている。なんかかっこいい。そして怪しい。

 一人、背の高いやつが光魔法でも使っているのか、ラウルが戦っていた場所が地面に投影されている。まだなにか相談しているみたいだ。


 他に人影は無し。三人でここまで来たのか。優秀だな。まぁ俺はここなんて一人で余裕なんだが。でも、あの三人で俺と同レベルの力を持っているかもしれない。一応警戒しておこう。

 “重力削減”解除。“気配削減”起動。

 俺は重力に従って、自由落下開始。


 昔はこれにめっちゃビビってたな。死ぬ事は無いのは、頭では分かってるんだが。

 加護が落下死を防ぐために“自動削減”をする。加護の力だから、擬似的に魔法を二つ同時発動できるのだ。

 三人の背後に着地しても、全く気づかれず、そして安全なのである。なんなら三人のど真ん中でも問題ない。


 あとは不意打ち。

 “気配削減”解除。

 驚いたように三人のうち二人が反応。片方はさっきまで光魔法の使っていた背の高いやつ。

 まぁいいか。

 堕天属性魔法“麻痺”。


 なあお前ら。

 ここまでしといてさ。


 楽に帰れるとは思ってないよな?



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