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必要悪の神髄  作者: 福馬運
その名は第七組織
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04 彼は戦っている

 


 堕天魔法は状態異常付与や能力低下、つまりデバフの魔法だ。


 魔素親和力向上のおかげで広範囲の魔法を可能とする。要するに、全てのフレアバットを一気に“混乱”させられる。

 効果は覿面。思考の混乱に加え、荒れた風は対応できないだろう。次々にフレアバット同士で衝突、自爆、制御を失い落ちていく。


 状態異常付与は付与すれば一定時間異常なままだ。魔法を同時に使えないため付与の瞬間だけ気配を隠すのは不可能だが、そもそも無詠唱でスキはほとんどない。

 堕天魔法はここら辺が使いやすくて便利だ。


 また“気配削減”を使い、移動を開始。街壁の上からラウルの様子を伺う。

 状況は一方的だ。圧倒的なラウルの優勢。魔素の残りは……これくらいなら大丈夫だな。

 これでイデアの作戦は大成功となるだろう、これからの大きなプラスになるはずだ。


 よし、じゃあ高みの見物としようか。


 空間魔法は魔素の消費が大きい分、それぞれが強力だ。堕天魔法は魔素の消費が少ないけれど、それぞれが決定打とはならない。フレアバットの対処を俺がやって、ホブゴブリンはラウルが対応するのはまさに適材適所ってやつだ。


 他の上位属性の加護持ちはどうしてるんだろうな。

 覚醒の魔術師は元傭兵、現在では世界でその名を知らぬものはいないほどの魔道具制作会社、セヴィアの社長らしい。見事なまでの成功者だ。

 確か、生命の魔術師は俺らと同世代でまだ学生だったか。

 ただ、他のあと四人は詳しいことは知らない。小競り合いのような戦争は、科学や魔法が発展しようが減らない。傭兵になれば軽く稼げそうなんだが、そういう話も聞いていない。


 ……傭兵って儲かるのだろうか?

 職に困ったら考えてみようか。命をかける分、貰えるお金は多いって聞いたし。


 まぁ職に困ることはないだろう。白髪で、魔法が上手いことを隠せないのはどうしようもないのだ。

 戦争にはラウルが行くから俺は魔道具制作関連のほうへ行くのが許された。安全だし、それはそれで良いんだが。


 ……イデアとは、まぁ、会えなくなるよな。仕方ないことだけど。

 ラウルは、どうなるんだろうか。

 上位属性の加護持ちの戦闘力は本当に圧倒的だ。この街の兵士程度、万単位で来ても問題ない。対抗できるのは同じ上位属性の加護持ちか“剣神の加護”などのスキル特化の加護持ちか。もしくは加護以外の才能か、圧倒的な努力か、とてつもない武器か。魔素が無くなってしまえば何も出来なくなるので、戦争開幕と同時に大魔法を連発させれば良いのかもしれない。僕ら相手にそんなことしてる余裕は無いだろうけど。

 とすると、ラウルが戦場に出ればそのままこの国の英雄となることだろう。そしたら、きっと俺と会うのも一苦労するような身分だろうな。

 ……なら、この三人で居られるのはあと少しだ。終わりか、この生活も。戦争が無かったら、どうだったんだろう。


 なんて。

 考えたって、どうしようもない話だ。

 ラウルの戦闘は、そろそろ終わるようだ。

 ホブゴブリンはほとんど残っていない。フレアバットも地に落ちればただの兵でも殺せる。


 が、みんな全体的に疲れてる。

 濃密な死の香り、そして赤黒い景色。

 こんな田舎の兵にこれほどの戦闘経験なんてあるわけもなく、ラウルだって実戦らしい実戦をしたことはない。精神的なダメージが大きいようだった。


 でも、もうそれも終わり。

 最後のホブゴブリンの首が舞った。

 この街の兵たちの勝利だ。


「やった……! やったぞ!」


 誰かが歓声を上げ、周りがそれに乗って喜びが伝播していく。

 ある者は生き残れたことを喜び、ある者は仲間と抱き合い、またある者は命を落とした友のために泣き。

 俺もやる事はもう無いな、と踵を返そうとして。

 そんな、弛緩した空気が。


 凍った。


「……なんだ、あれ」


 兵の一人が言った。

 フラリと、森から出てきた影は。


「……は? 嘘だろ、マジかよ」


 俺の口から思わず洩れた文句。

 いや、ありえない。いつの間に、そしてなんでこんなところに。


「タイラントスライム……」


 ほとんどの魔法の効かない、そして物理耐性の高い魔物。

 俺ら、魔術師の天敵。

 スライムの、さらに巨大な魔物がそこにいた。


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