表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

二項対立の水晶

作者: パラディン

誰かが言った。「おまえは1年後に死ぬ。」

それは唐突にやって来た。絶望の宣告。目の前の暗闇。しかし抗おうとする自己。そして葛藤。この世の終わりは近い。


夜が明けた。長い夜。今、自分がいるのはふかふかの別途の上だ。朝の小鳥のさえずり。

-よし、今日も生きよう!-そう自分に言い聞かせ、顔を洗いに部屋を出る。リビングからは家族の話し声が聞こえてきた。

「ねぇママ、またあいつは学校に行かなかったの?もうそれなら退学しろよって感じよね。」

「和美、パン食べながらしゃべらないでよ。それから俊君のことはもういいのよ。」

「何で!ママは甘いよ。あいつが家で何してるか知ってる?」

やめろ、それ以上はやめてくれ。自分の心からの叫びだ。

決して男子中学生がよなよな駈られるある種の衝動などではない。断じてない。自信をもって否定する。

「何だっていいでしょう。もう俊君だって、17才なんだから、ある程度は大人として見てあげないと。それより和美、学校は?今日は午前中に講義あるんでしょ?」

「あ!ヤバイ、もうこんな時間か。それじゃ行ってくるね!」

ドタドタドタドタバタン!

慌ただしく家を出ていく我が姉貴。全く自分の存在にも目もくれずに行きやがった。まあ自分の影の薄さは否定しないが。

そうこうするうちに、例の時間がやって来た。いったいいつからだろう。自分に魔術めいたものが使えるようになったのは。

自分の部屋の窓のカーテンを全部閉める。精神は落ち着いている。静寂。闇。無。

その時、自分の中に何物かが乗り移るのを、感じた。よし、今日はきれいにできた。この調子で、維持だ。

一瞬。意識を自分の部屋のドアにむける。ドアが静かに音もなく開いた。

悪魔だ。唐突にそう思った。いや正確には山羊だった。山羊が立っていた。ソシテこう告げる。「おまえは1年後に死ぬ。」と。

目の前が真っ暗になった。俺はまだ死なない。死ねないんだ!

しかし言葉が出てこなかった。きずいたら自分は家のベッドにいた。「クソ、またやってしまった!」吐き捨てるように言う。

このままではらちが明かないので、外に出ることにした。


公園のベンチで、悶々とする。なぜ自分には悪魔が見えるのか?

そして1年後に死ぬとは、どういうことか?

「よう、俊哉。何してんだ?」突然かん高い声を聞いた。そこには、腐れ縁で同級生の敦士がいた。

「また学校サボって、例の中二病か?はっ!意味わかんねえ!」

「うるせえよ。おまえに分かってたまるか。」

「まあ、いいやそんなことより、今度和美さんはいつが休みなんだ?」

敦士は自分の姉に御執心だ。

「知るか。」

自分は人のことにあまり興味をもたない。別に姉貴と敦士が付き合うことになっても構わない。しかし当の自分はというと彼女はいない。少し寂しいことだ。

敦士は、何か愚痴を言いながら去っていった。

さて、ここで考えこんでいても仕方がない。そう思った自分は、ある人の家に行くことにする。

そのある人とは別に恋人などでは決してない。まあなんだ。一種の中二病的なつながりとでもいおうか。

そして、着いたのは、長い坂道を登ったところにある大きな屋敷だった。自分はため息をつきながら、呼び鈴をならした。しばらく待っているとドアが勝手に開いた。入れということか。

屋敷のなかはとでもいおうか広かった。

「俊哉君!また来てくれたんだね!」

いきなりかわいい声をかけられた。この屋敷の主人の妹にして同級生の愛奈だった。

「全く、びっくりするからいきなり声をかけないでくれ。心臓に悪い。」

「ごめん、ごめん。それはそうとまだ学校行ってないの?」

愛奈はニヤニヤしながら聞いてくる。せっかくの顔がいけすかねえガキになってしまう。

「うるさい!そういうおまえも姉貴に流されて行ってないだろ。」

愛奈はてへぺろという感じ。

はぁ、大きなため息をつきながら自分は愛奈の姉貴がいる部屋に向かう。

そこは豪華な部屋だった。ベッドの上に腰かけていたのが愛奈の姉貴の涼だった。

「姉さん、今起きたの?何時だと思ってんだよ。」

「よー俊哉!元気か?って昨日会ったな。それで例のものはもってきたんだろうな?」

「例のもの?あーはいはいあれねあれって何だっけ?」

とぼける自分。

「丸い水晶だよ。あれがないと私は生きていけないってことあんた知ってるよね?」

自分はため息をつきながら、しぶしぶ涼に水晶をわたす。この水晶を自分の魔術で生成するのに丸三日はかかる。つまり涼の命は自分が握っているといってもいい。

その水晶、実は例の魔術の過程でできるということはまだ誰も知らない。まったく自分がどれだけの矛盾を抱えているかも知らずに。いや人には誰だって矛盾を内包している箇所はあるものだ。そうやって自分を納得させつつ、涼に水晶をわたす。

自分の運命には逆らえない。そうやって今まで、自分は生きてきたのだから。

「ありがとう!あんたってやっぱりいいやつね。」

「あぁ。」

生返事を返しながら、涼の屋敷を出る。日差しが眩しい。自分にはこの日差しは耐えられそうにない。急いで家に帰ることにする。

途中で学校の門の前を通った。休み時間なのか生徒の賑やかな声が聞こえてくる。その声聞いたとたん、自分にはこの世に存在する価値がないように思われた。疎外感、孤独、自己嫌悪。様々な負の感情がありすぎて、自分を制御できない。少し混乱しながら家に帰る。

家で昼ご飯を食べていると、突然眩暈がした。自分は音を立てて床に崩れ落ちた。

声が聞こえる。賑やかな話し声。自分は街にいた。そこは、異世界ではなかった。自分の生きている世界の街だった。よく自分が遊びに行く街だった。

「あのーすいません。大丈夫ですか?」

突然声をかけられ振り向くと、若い女性が立っていた。よく見ると誰かに似ている。涼だ、と思った、

「あ、あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。」

そこには、雰囲気が全く違う涼の姿があった。

なんていうか、すごくおしとやかな印象を持った。

普段と全然違う涼に戸惑いながらも、その場をあとにする自分。何だか、違う世界に来たみたいだな。そんなことを考える。

「そうだよ。」

その時ふいに声がした。自分の頭上右斜め上に何かが浮いているのが見えた。虫かと思ったが違う。それはほんの拳大ほどの生きている妖精のように見えた。

「こら❗誰が妖精だよ。ぼくは、立派な悪魔なんだからね。」

まるで自分の思考を読んでいるかのようにその悪魔は言う。

「さあ、俊哉、どうする?もうわかっていると思うが、今君がいる世界はこちら側の世界、そう悪魔の世界だ。ようするに君は1年後には死ぬんだよ。だからといってあちらの世界の君は死ぬわけじゃない。よかったねぇ~❗きゃはは。」

自分の頭では到底理解しがたいことが目の前の悪魔から告げられる。混乱する頭を押さえつけ、どうにか頭のなかを整理する自分。

「ただ、さっき君が会った女の子。あの子は残念ながら、本当に死ぬかもね。彼女はもといた世界で君の水晶によって命を永らえていた。つまりだ。こちらの世界の彼女ともとの世界の彼女はリンクしている。これどういう意味だか分かる?」

「それはつまりこちらの世界の彼女を救えなかったら、もとの世界の彼女も死ぬのか⁉️」

「ご名答。さあ君にはあまり時間がないよ。なにせあと1年で君は死ぬんだ。こちらの世界ではね。早く彼女を君の水晶で助けてあげな。ただし、そう簡単にはいかないだろうけど。」

そう言いながら悪魔はどこかに飛び差って行った。

「そうそう僕の名前はアモン。よろしくね~❗」

そんな言葉を発しながら。


道を行き交う人々を見つめながら、ぼーっと考える。今自分がいるのは、喫茶店だ。周りの人々はまるで自分に起こったこと知ってるかのように自分に視線を向けてくる。自分の顔に何かついているのかと思い確かめたが、思いすごしだった。これからのことを考えると深いため息がでた。

「ようするに、こちらの世界の涼を俺の水晶で助ければ、もとの涼も助かるんだ。それに俺も本当に死ぬわけじゃない。大丈夫だ。うまくいくさ❗」

そう小声で自分を励ましながら、何気に隣の客のほうを見た。

何やら教科書を広げて勉強しているようだ。自分の視線に気づいたらしく、相手と目が会ってしまった。顔は敦士そっくりだった。自分はびっくりして少し目をそらしてしまった。

「なんですか?僕は今受験勉強で忙しいんです‼️邪魔しないでもらえます。」

「はい、すいません。」

そう言って自分はそそくさと喫茶店を出た。

どうやらこちらの世界の敦士はくそ真面目なやつらしい。くくっと笑いながら道を進んで行った。

街を歩きながら、ふと思った。こちらの世界の自分の家はどうなっているのだろう、と。母親は?姉の和美は?

そんなことを考えながら自然と足は自分の家へと向いていた。そしてさらに別の考えが頭をよぎる。こちらの世界の自分はいったいどうなっているのか?それはつまり自分が自分に会うとまずいのではないか?そう思いつつ、いつのまにか自分の家の前まで来ていた。心臓が高鳴る。自分は思い切ってドアを開けた。

リビングには和美と母親がいた。和美は今日は学校は休みのようだ。

「ふぅ。」

自分は大きくため息をついた。どうやらこちらの世界の自分は、ここにはいないようだ。

「俊哉、あんたそんな所で何やってんのよ?」

そう和美に声をかけられた。

「あぁ、いや別に。」

自分は、事の事情を姉の和美や母親に話しておく必要があると思い、思いきって話した。和美たちは、なにかあっけにとられた表情をしていた。しかしすぐに思いたったように話し始めた。

「まあ、あんたが言うのだもの、信じるわよ。ねぇ母さん?」

「えぇ、そうね。」

いくぶん、心配そうにしていた母親も納得してくれた。

どうやらこっちの世界のしてくれたは、真面目な人間として見られているようだ。どうやら和美たちの話しを聞くと、学校にもちゃんと通っているらしい。ただ真面目な人間がいきなり中二病的なことを話したのにも関わらず、それを何も疑わずに聞く和美たちのほうも少し心配だが…。それはまた別の話しということで。

自分は気を取り直して頭を整理する。自分はこちらの世界では1年後に死ぬ。それまでに涼を例の水晶で救わなくてはならない。そうしないと、向こうの世界の本当の涼が死ぬ。ただどうやらこちらの世界では、涼と自分は面識がないようだ。幸い学校が同じようなので、ある程度時間をかけて涼と関係をきずいていく必要がある。よし、そうと決まれば、さっそく登校の準備をしなくてはならない。自分は、自分の部屋で準備することにした。


思えば、登校なんていつ以来だろう。自分の魔術のために悩み不登校になっていたのに、今では、その魔術を使い人を救うために登校しようとしている。いったいどうしてこうなることが予想できただろうか?自分の人生の矛盾に苦笑いを浮かべる。

「いや、とにかく今は涼を助けることに全力をあげるんだ。その後のことは、その後のことだ。」

そう自分に言い聞かせ、明日から学校に行く準備をした。

次の日の朝になり、自分は久しぶりに学校に行った。かなり心拍数が上がっているのに気づく。やはり自分には他人と良好な関係を築くことなんてできない、と思う。しかし今はそうも言っていられない現状だ。自分にだって今の自分の状態を正確に認識することはできる。そんなふうに自問自答しながら朝の通学路を歩いていると、前方に知ってる後ろ姿を確認できた。間違いない。愛奈だ。こちらの世界では愛奈と初めて会うことになる。自分は瞬間戸惑いながらも、愛奈の横に並んだ。

「あ!俊哉君、おはよう❗」

「お、おう。おはよう。」

よかった。愛奈はいつもどうりの愛奈のようだ。

「昨日は、凄かったねぇ。この街中がすごい嵐だったもんね。」

「え?あ、あぁそうだったか。」

思わずとぼけた声を出してしまう。

「あはは、何だか今日の俊哉君、変だよ。」

「そうか、俺はいつもどうりだけどな。」

愛奈の話しによると昨日の夜は凄い嵐だったらしい。自分がこっちの世界に来てしまったことと何か関係があるのかもしれない。


自分と愛奈は確か同じクラスだったはずだ。しばらく学校に来てなかった分、記憶が曖昧だ。自分は久しぶりの授業を受けながら、これからのことを考えた。まずこっちの世界では自分は1年後に死ぬ。よってあまり時間がない。それまでにこちらの世界(悪魔の世界)の涼を助けなくてはいけない。なぜなら涼は向こうの世界で自分の水晶の力で行き永らえていたからだ。しかしどうやらこちらの世界の涼(それから敦士もだが)は自分を知らないらしい。ここからどうやって涼を救えばよいのか?自分はしばらく考えた。まずは涼との関係をいちから築かねばならない。それは自分にとって最も苦手な人間関係の良好な構築ということだった。悶々と考えに耽っている間に、午前の授業が終わった。

「俊哉君、お昼一緒に食べない?」

「あ、あぁ。いいよ。」

愛奈に誘われたので、屋上に一緒に昼食を食べに行った。

自分はふとずっと疑問に思っていたことを口にした。

「愛奈、昨日の嵐って何のこと?」

一瞬、愛奈の表情が固まる。

「もう、俊哉君、ボケてんじゃない?昨日すごい嵐で学校休みだったじゃない。」

「そんなに凄かったの?」

「うん。もう木の枝とかもバキバキ折れちゃうし。大変だったんだから。」

不思議そうな顔をしながら愛奈が言う。

「俊哉君、本当に今日変だよ?昨日ことを忘れるなんて」

「あぁ、ごめん。今日はちょっと調子が悪いんだ。」

「まあいいけど。昨日は嵐のおかげってわけでもないけど、お姉ちゃんと家の中でずっと遊んでたんだ。楽しかったなぁ。」

昨日ことを思い出すかのように笑う愛奈。

自分は涼のことだと思い、一瞬緊張する。

「お姉ちゃんって涼さんのことか?」

「うん、そうだよ。俊哉君は私のお姉ちゃんってあまり知らなかったよね?確か。」

「あぁ、そうだな。できれば、少し教えてくれないか?」

これはいい機会だと思い、聞いてみた。

「うん、いいよ!」

少し不思議そうな顔をする愛奈だったが快諾してくれた。

それからしばらく愛奈の話しに耳を傾けた。どうやらこちらの世界では、涼の性格はかなり温厚なようだ。本当の世界ではそうでもないのだが。

「でね、お姉ちゃんって本当に水晶が好きなのよ。家の自分の部屋にはいろんな水晶を集めて置いてるくらいなんだから。」

ちょっとあきれたように愛奈が言う。自分は水晶っていう言葉に反応した。

「え?水晶が好きって何か理由があるのかな?」

「うーんなんか昔、お姉ちゃんが小さい時に好きな男の子からもらってから好きになったって言ってたなぁ~。」

「男の子…。」

しばしの沈黙が流れる。

「その男の子は言ってたって。その水晶を持っていたらまたいつか君に会えるからって。」

「そうなのか。」

自分の中で何かが繋がる感覚を感じた。そうこうしていると昼休みが終わりそうだった。自分は愛奈と教室に戻って行った。


午後の授業を終えると、今日は特に進展もなく下校することにした。突然後ろから声をかけられた。涼だった。二人は学校の門の辺りで再会したのだった。

「あなたは確か昨日、お会いになりませんでしたか?」

「あ、あぁ。」

間抜けな声を出す自分。あまりにも突然だったので驚いた。

「すいません。同じ学校の人だったなんて知らなかったものですから。」

「いや、学年が違いみたいだしね。仕方ないよ。」

変な沈黙が流れる。

「…、では私はこれで。」

「あ、、あぁ。」

二人はちょうど門の所で左右に分かれるように別れた。


家に帰る途中で敦士に会った。彼はなにやら本を読みながら歩いていた。自分は思い切って彼に話しかけた。

「やぁ、先日お店で会ったよね?勉強してるの?」

「そうですよ。今、集中してるので話しかけないで下さい。」

「ごめん。また、学校で会ったらよろしくね。」

自分はそう言い彼の後ろ姿を見送った。その時ちらっと目に入ったものがあった。それは自分をひどく動揺させた。なぜなら敦士が読んでいた本に水晶の文字があったからだ。

なぜだ?なぜ敦士が水晶についての本を読んでいる?その時ある考えが脳裏に浮かんだ。敦士も涼を水晶によって助けようとしている?そんなバカな…。


それから月日は流れた。あれから3ヶ月がたった。自分はこちらの世界の涼と良好な関係を築くことに成功していた。ただもう時間は確実になくなっている。そう思うと焦るばかりであった。

自分は今自宅のフロでゆっくりしていた。その時ふいに声が聞こえた。その声はフロの水面から聞こえてきた。

早くしろ、急ぐんだ。おまえにはもう時間がない。早く涼を…

気のせいだと思い、頭をふりながらフロを出ようとしたその時だった。後ろから声がした。

あと少しだ。もう少しでおまえには抗えない闇が訪れる。フフフ、楽しみだなぁ。

自分は、陰鬱な、そしてどこかで自分が深い闇に飲まれていくような、そんな錯覚に囚われるのを感じながらフロを出た。


リビングでは姉の和美がテレビを見ていた。

「俊哉、おふろあがったの?」

「あぁ、あがったよ。何見てるの?テレビ。」

「ん、クイズ番組だよ。」

確かにテレビには司会者が出演者にクイズを出しているところだった。しかし次の司会者の言葉を聞いたとたん自分は固まってしまった。

「さて、第三問。悪魔アモンは今どこにいるでしょうか?」

何、今なんて言った?!

出演者が答える。しかし、間違えた。

「ブー。正解は涼ちゃんの家の前でした~❗」

自分は愕然とした、と同時に足はもう走り出していた。

「ちょっと、俊哉どこ行くのよ?!」

後ろから和美の声が聞こえたような気がしたが、自分は振り返らずに家を出た。外はこの世とは思えないような夜の静寂に包まれていた。焦る。早く、涼の家に行かねばならない。自分は涼の家へ向かって駆け出した。

涼の家へ向かいながら、あることないことをいろいろ考えてしまう。焦る気持ちを押さえつつしかし足だけは全速で駆けた。

そして、とうとう涼の家の前に着いた。涼の家はごく平凡な一軒家だ。しかし、自分はただならぬ気配を家から感じとることができた。

「涼‼️」

急いで玄関のドアを開ける。奥に人の気配がする。自分は周りを注意しながら奥のリビングへ足を向けた。扉の向こう、何やら声がする。自分は思いきって扉を開けた。

そこには、涼が立っていた。後ろでテレビがついている。自分の家で見たクイズ番組だった。

「涼、大丈夫か❗」

「俊哉君、私…」

涼はどこかぼうっとしている。不審に思いながらも涼に駆け寄ろうとした次の瞬間、涼のうしろから炎が襲いかかってきた。いや正確にはテレビから炎が吹き出したのだ。自分は後先を考えてず涼を抱えて横に飛び退いた。

「よぅ、けっこうやるじゃねえか。」

うしろを振り向くと、異様な形をした山羊が立っていた。その山羊は二本足で立っており、人間がよく着る黒いタキシードを着ていた。自分が元いた世界で魔術によって呼び出していた悪魔だった。自分が好むと好まざるとに関わらず、それは自分の前に現れたのだった。

「あっちの世界じゃてめぇの顔を見るだけだった、こっちでは思う存分なぶり殺してやるぜ。」

山羊の悪魔はそう言うと、リビングのフロアを蹴り自分たちに襲いかかってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ