クリスマスのプレゼント交換
……僕は、どうしてこんなに緊張しているんだろう。
これから、幼馴染のあずきが家に来る。まあ、それは幼稚園より前から大学生になった今まで毎年している事なんだけど。
ではなぜ緊張しているのか。それは、今回のクリスマスが僕たちが付き合い始めて最初のクリスマスだからだ。
あああ!!どうして今日に限って母さんも父さんもいないんだ!!
あずきの両親と旅行に行くって何だよ!!僕とあずきは放置か!!?
――ピンポーン
インターフォンの音が聞こえて、僕は深呼吸をしてから玄関へ向かう。
ああ、どうしよう……プレゼント、喜んでくれるよね?
ガチャリ。
僕がドアを開けると、そこには大きな袋を持ったあずきの姿。
うん。やっぱりかわいい。
「?空人なんで固まってるの?」
「あ、ああ。ごめん。」
僕は少し寒そうなあずきを慌てて家に入れると、とりあえずリビングに通す。
一応、飾りつけとかはしておいたし、料理も作っておいた。
変なところはない!はず……
「おお!準備万端じゃん!もしかして、結構ノリノリ?」
「いや、そうじゃないんだけどね。」
特にすることもなかったから何となくやったってだけで、ノリノリという訳では……まあ、楽しみじゃないと言えば嘘になるんだけど。
「空人!ごはんたべよー。」
「いいよ。じゃあ、飲み物出すから座ってて。」
あれ?僕なんで緊張してたんだろ。
なんか、あずきを見たらどうでもよくなっちゃった。
そして、食後。
テレビをつけてぼんやりとしていると、急に後ろから抱き着かれる。
後頭部に感じる柔らかい感触。
「ねえ!プレゼント交換しよ!!」
「あ、うん。そうだね。じゃあ、しよっか。」
危ない危ない。
一瞬意識が飛んでた。あずきってああ見えて結構胸が……って、この話はやめておこう。
僕はテレビ台の下に隠しておいたプレゼントを出すと、それをあずきに渡す。
「ありがとう!!何くれたの?」
「開けてみていいよ。」
「うん!」
僕が許可を出すと、あずきは丁寧に包装を取り、その中身を出す。
「あ!これ、『星空深夜』の限定缶バッジ!!?なんで!!?っていうか、こんなレアもの貰っちゃっていいの!!?」
「いいよ。そもそもあずきにあげるために手に入れたものだし。」
うん。あれは友人の蛍に頼んで入手したものだし。
まあ、それをプレゼントにするかは迷ったけど、蛍に金払って買ったものだし、大丈夫でしょ。
「じゃあ、次は私からのプレゼントだね!えいっ!!」
「えっ!!?ちょ、え!?」
「そのままじっとしててね!今準備するから。」
なんか、目隠しされたんだけど。
なにこれ?どういう状況!!?
っていうか、準備って何!?
暫く何かの音がしていたが、やがてその音が止む。
「うん!もう目隠し取っていいよ!!」
そう許可をもらったので、僕は目隠しを取って、声がした方を向く。
で、僕は固まってしまった。
「メリークリスマス!!はい、プレゼントとサプライズ!」
そう言ってあずきはリボンのついた袋を差し出してくるけど、僕は今それどころじゃない。
赤い色の生地に白いふわふわがついた服とミニスカート。そこから伸びる細長く白い足。
そして、頭には赤い帽子。
何処からどう見てもサンタの格好だった。
「あ、え、う……」
心臓が跳ね上がるのを感じる。
なにこれ!?かわいすぎでしょ!!反則だって!!
ちょ!理性と語彙力がやばい!!
「ん?空人?どうしたの?顔真っ赤にして……」
そうやって首をこてんと傾げるあずきサンタ。
もう駄目だって!!
「ごふっ!」
鼻から生暖かいものが出てきて、僕は咄嗟に鼻を抑える。
ちょ!鼻血出たっ!
「ええ!!?大丈夫!!?ほら、ティッシュ。」
「あ、ありがとう。」
咄嗟に抑えたおかげで、床とか服に血はついていない。
その代わりに手が大変なことになったけど。
「ありがとう。たぶんもう大丈夫だよ。」
そのまま十分ぐらい鼻にティッシュを詰めていたけど、流石に血は止まった。
サンタの格好にも目が慣れてきたし。
「そう?無茶はしないでね?はい、プレゼント。」
あずきから手渡された袋は、思ったより軽かった。
結構大きいと思うんだけどな?
「開けていい?」
「いいよ!」
「ありがとう。」
僕は慎重に袋を取ると、そこから出てきたのは紺色っぽい色を基調としたマフラー。
しかも、結構長い。
「これって……」
「うん!私が作ったんだよ!!どう?お気に召した?」
「もう、最高!!」
ヤバい、素直に嬉しい。
ただでさえ大好きなあずきが僕の為にこんなマフラーを……あ、語彙力がまた……
「あと、あと、もういっこあるんだ。」
「ん?何?」
「あの、その……」
下を向いて顔を赤くしているあずきは、なかなか言い出せないのか手を強く握っている。
「その、えっとね。もし、よかったらなんだけど……
……私を貰ってくれませんか?」
上目遣いでそう言ってくるあずきは、まさに天使とも言うべき存在で、その瞬間に僕が鼻血を出して倒れたのは言うまでもない。
この後はご想像にお任せします☆