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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 獣人領域
98/306

89話 砂漠縦断中

最初だけ3人称です

 某所。



 犬のような耳を持つ獣人が、12の席を持つ半円卓。そこにズラッと並んで座る威圧感のある者たちの前で何かを訴え続けている。



 話す言葉には熱が籠っており、汗が彼の額を濡らしている。声をあげ続けたために、彼の声はかすれ、時折、許可を貰って牛乳のようなものを飲む。だが、そんな状況であるにもかかわらず、先ほどから声を出しているのは、その獣人と中央に座るものだけ。



「首長!我らの群は、何度も申し上げますが、レーコ姫を失い荒れに荒れております!レーコ姫を失ったのは全てが人間のせいであります!今すぐに人間どもに報復を!」

「ふむ。では、何度も聞くがどうして君は、報復して欲しいのだ?そもそも群はどうする?」

「レーコ姫がいれば再び彼女を中心にまとまれます!ですので!戦争は出来ます!今こそ、つもりに積もった憎悪を奴らに叩きつけるときです!我らを抑圧する下賎の者どもを一人残らず始末しましょう!」

「何故?」


 首長と呼ばれた男は面倒そうに返した。



「ですから何度も言っているではありませんか!我らの群はレーコ姫を失い、ハールラインが覇権を握ろうと暴れまわっています!ですが、それはレーコ姫がいれば解決します。その原因を作りやがった奴らに、積年の恨みを叩きつけるのです!今こそ、我らの力を奴らに!」

「…ふむ、わかった」

「では!」


 パァッと男の顔が明るくなる。だが、その顔も首長と呼ばれた男の言葉で引きつる。



「思慮が足りんな……。いや、情報を零さないあたり、さすがと言うべきか?それとも…、持っていないのか。はぁ…。手間のかかることだ」

「首長?一体何を…?」

「皆、やれ」

「は?」


 男は何を言われたのかわからないとばかりにぽかんとする。だが、半円卓に座る首長以外11人から魔力が膨れ上がるのを確認するなり、



「ハハハ!獣人如きだますのは簡単だと思ったが!無理だったか!」


 狂ったように声をあげる。



「我らを侮りすぎだ。死ね」


 男は突如として頭上(・・)から聞こえてきた声に一瞬、動揺する。しかし、首長の席を確認し、そこが空席となっていることを確認すると楽しげに歪める。



「それが首長…、リンヴィの真の姿か!どこからどう見ても化け物だな!」


 首長…、リンヴィは巨大な口の中の牙の隙間から苛立たしげに炎を吹き出す。鱗は鋼のように滑らかで光沢があり、それが全身を覆っている。体躯は巨大で、その巨体を支える前後の足はそれ相応に強靭で、普通の人間のそれとは一線を画す。尻尾は太く、根元は丸太のように太いが、先に行くにつれ細くなり折れてしまいそう。だが、



「ハッ。貴様らのせいだろう。足りていない方だったか。逃げ場などないぞ」


 リンヴィが言いながら、尻尾を地面に叩きつけ一薙ぎ。たったそれだけ。にもかかわらず、尻尾は一切傷つくことなく、床に深い傷を刻み、逃げようとした男の頬を軽くなで、そこから大量に出血する。



「この野郎…」

「「「龍宴賛歌(ケリュー・バジャン)」」」


 男がリンヴィを睨みつけている間に、黙っていた残りの11人が口を開く。一瞬にして、男の周囲半径5 mを半透明の球体が包み込む。その球体には、溢れんばかりの龍が空を飛び回るような模様が刻まれている。



「完全に殺す気だな!リンヴィよ!」

「ハッ、情報を与える気もないのであろう?当然の処置よ。疾く失せるがいい」


 リンヴィは巨大な羽を広げる。羽を通じて世界から魔力を吸収。大気が震え、世界が軋むような不快な音を立てる。



「ハッ!こいつが死んだところで変わりはいるぞ!」

「それがどうした?駒を潰せる意義は大きい。問答など無意味だ。諦めて死を受け入れよ。『雷霆神の一撃リヴィ・チャ・ティーラ』」


 リンヴィの口から太陽のように紅く輝く火球が放たれる。その火球は龍宴賛歌(ケリュー・バジャン)によりできた龍の舞う球体を通過。目をつむる男だったが、それは男のことなど眼中にないかのようにその中央へ。



「しくじったか!リンヴィ!」

「さらば」


 嘲るような男の声に、つまらなそうに返すリンヴィ。怪しむような顔をする男。



 一拍の後に世界が爆ぜた。火球が炸裂し、爆音がこだまする。男の姿が声をあげる間もなくかき消え、「ガンガン!」と何かが壁にぶつかるような音が断続的に鳴り響く。リンヴィは、「ふぅ。」と息をはくと急速に小さくなり、元の大きさへ。



「死体が残れば、聖地に」

「「「はっ」」」


 半円卓に座る者たちへ、一言指示を出す。その姿を追うように立ち上がる獣人が一人。



「リンヴィ様。いずれにしても、我ら戌群をどうなさるおつもりで?中央の方針を明らかにしていただけねば、我らも動きにくい」

「基本、独自でよいのだがな…」


 ポリポリと頭を掻くリンヴィ。彼は困ったように呟くと、一切考えるそぶりを見せずに言葉を紡いだ。



「案ずるな。今回は我が出る」

「「「なっ…」」」

「今、身内で争っている場合ではない。後は任せた」


 後ろを振り返りもせずリンヴィは立ち去る。円卓に座っていた者たちはあまり開いた口が塞がらない。しかし、それも無理はない。彼──リンヴィが首長となってから、バミトゥトゥを「争いを仲裁する」という名目で離れるのは初めてなのであるから。



 そして、その背後でもはや誰にも注意を払われなくなってしまった龍宴賛歌(ケリュー・バジャン)が小さく収縮し音もなく弾け、炭化したような黒い土だけが残った。







______


 さっき走って往復した道。御者台から見えるものは相変わらず砂ばかり。夜が明けて機嫌がいいのか太陽は燦々と砂を照り付け、砂海を赤褐色に色づかせる。



 そんなところをセンのひく馬車が爆走する。やはり馬車は早い。まぁ、センの速さが異常なのだけれど、細かいところは気にしない。ただ、相変わらず揺れる。御者台とか関係なく揺れる。



「なあ、馬車かなり揺れているが大丈夫か?」

「もちろんです」

「…ん」

「大丈夫だよー」


 四季、アイリ。カレンが即答する。まぁ、慣れているしね。



「レイコとガロウは?」

「ちょっと、気分が悪いですが…、大丈夫です!ご迷惑をおかけするわけにはいきませんから!」

「俺…も、だい…じょぶ。だいじょぶだ」


 明らかに大丈夫じゃないな…。いつもの移動速度は耐えられないか。



「セン。少し速度落として」

「ブルルッ」


 センは、俺が声をかける前から、会話を聞いて自分で判断していたみたい。俺の問いに対して、「これくらいでいいの?」という目を向けてきた。



「ああ、これくらいで。しばらく維持ね。様子を見る」

「ブルルッ」


 良い返事だ。



「習君。これでも振動はましになっているんでしたよね?」

「ああ。そのはずだよ。そんな改装をしてくれるとか言ってたはずだし…」

「…馬車も広くなってるね」

「だねー。じゃあ、それ以外はー?」


 カレンの無邪気な問い。ガロウとレイコは少しダウン中。喋らずに回復に専念してもらおう。



「ねぇ、聞いてるのー?」

「え?聞いてたよ」

「はい。聞いてましたよ」

「じゃあ、答えてよー」

「知らない」「知りません」


 二人の顔がなんともいえない微妙なものになった。仕方ないじゃん。知らないんだもの。でも、知ったかぶりするよりいいと思う。



「…説明書でも読む?」

「目録もあるよー」

「目録?…ああ、出発時にもらったやつね。何があった?」

「これですね。慌ただしく着替えた、体をスッポリ覆って日光を遮れるこの服です」

「それ以外は?」

「知りません。読みましょう」

「だね。じゃあお願いするよ。俺は…」


 「御者台で見張りをしているよ」と後ろを振り返って言おうとした。だど、四季がこっちに来ようとしているのが見えた。



「えっと、何しているの?」

「一緒に読みません?」


 全身を覆う布の間から、照り付ける太陽がかすむほど楽しげに顔を輝かせて答える四季。やばい、ものすごくかわいい。思わず見とれてしまう。ああ、だめだ。答えないと。



「え、あ、うん。いいよ。隣座って」


 ちゃんと答えられなかった…。動揺しているのがバレバレだ。でも、四季は気にしなかった。それどころかさらに笑みを深めた。ああ、もう。可愛いなぁ…。



「ありがとうございます」


 座ろうとする四季。だが、砂丘でも超えたのだろうか突然馬車が跳ねた。



「わっ!」

「四季!?」


 慌てて手を伸ばす。あ、でもこれ、手が届かない。なら…、足!支点になっているから届くだろ!



 よし、届いた!



「引っ張るよ!痛いだろうけど我慢して!」

「お願いします!」


 思いっきり引っ張る。…ちょっとしか動かないな。これじゃ全然足りない!



「「『『身体強化』』」」


 同時に声が響く。けれど、やりたいことは違う。俺はさらに引く力を強めるため、四季は俺のひく力で足を怪我しないようにするため。でも、行きつきたいところは同じ、馬車から落ちたくない。



「む…、これで均衡か?」

「まだ強くしてもらっても大丈夫です!」

「了解!」


 聞こうとした質問に先に答えてくれた。よし、さらに力を込めて…。



「そおぉい!」


 よし、行けた。あ、だめだ。これやりすぎたやつだ。



「習君、これ力強すぎません?」

「そうだね。ごめん!それより四季!耐えれる?」

「頑張ってみていますが、厳しいです」

「あー。じゃあ、諦めるか。死にはしないし。口閉じて」


 俺が言い切るかどうかのタイミングで砂漠に落ちる。口を閉じていたため舌をかむことはなかった。それに砂はさらさらと細かい。そのためだろうか、俺を優しく受け止めてくれた。無傷だ。セーフ。



 …あ。そりゃそうだよね。あの体勢で落ちれば上から当然四季も落ちてくるよね。ホッとため息をついたら四季が落ちてきていた、避ける間もなく潰される。



「ゲフッ」

「ふにゃっ」


 変な声出たけど、四季の悲鳴の方が印象に残るな…。思ったより痛くない。四季が柔らかいからかな?



「ごめんなさい!すぐに回復しますね!」


 跳ね起きて、飛びのいて流れるように回復してくれる。



 そんな四季の姿も、いつものしっかりした雰囲気とは違って、またいい。欲を言えばもう少しそのままでもよかったのだけど…。こういう機会でもなければできないから…。



 …俺が普段からやれるような度胸がないのが悪いのだけど。好いてくれていても許されるラインがわからない。嫌われたくないし…。



「習君?大丈夫ですか?『回復』効いてませんか?」


 ちょっと待って。近い。近いよ。四季! 心配してくれているのだろうけど、顔が近いよ!



「ん、大丈夫だよ」


 四季は倒れている俺の様子を見るためか、四季は砂漠に足を投げ出している。その足は布が上にあるにもかかわらず、スラッとしているのがよくわかるシルエットを晒している。自分がドジを踏んだためにけがをさせたと思っている彼女の目は潤んでいて、尋常じゃなく無防備に見える。



「本当ですか?挙動が変ですよ?」


 心配してくれる四季。それは嬉しいけど…。自分の今の姿を見て、自分の心配をしてもらいたいよ…。



「大丈夫だよ」

「本当の本当ですか?」


 そんなこっちの気持ちは伝わらない。なら…、



「四季.様子が変なのは四季の顔が近いから。ちょっと動いたら唇と当たっちゃうよ。それに、無防備すぎるし…、綺麗なんだからもうちょっと警戒心を…」

「今、綺麗って言いました?」


 頬を桜色に色づかせ問う四季。



「うん」


 頷きながら言う。ただそれだけなのに恥ずかしい。さっきは忠告の中でスルッと出てきたからそんなに恥ずかしくなかったのだけど…。



 兎も角、滅多に俺が恥ずかしがって言わないストレートな言葉。それで四季は恥ずかしくなってしまったらしく、「あぅ…」なんてかわいらしい声をあげて顔を覆ってしまった。



 余計に無防備になってるんだけど…。



「…ねぇ。わたし達を信用しているんだろうけどさ…。…馬車を確認せずにいちゃつくってどうなの?」


 アイリの生暖かい視線と言葉がぐっさぐっさ突き刺さる。カレンはレイコとガロウの介抱をしているのか、馬車から降りてこない。前にもこんなことあったな…。



「ブルルッ、ブルルウ。ブルルルッ!」


 「落ちたのわかったから止まって引き返してきたよ!」こんな感じか。偉い偉い。なでなでしよう。あ、魔力吸われた。



「…スルーするのね。…別にいいけど」


 アイリは拗ねるように言うが、視線は暖かい。あれ? 普通、逆じゃない?



「ごめんよ。行こう。四季」


 まだ顔を赤くして座り込んでいる四季の顔の前に手を差し出す。少々強引ではあるけれども、手を掴んでくれた。「うぇ!?」とかいうよくわからない悲鳴を上げていたのはスルーしておこう。



「…ねぇ、気分変えようとしているところ悪いんだけどさ。この先、進めないよ?」

「え、何で?」

「…見てもらった方が早い」


 アイリの手招きに従って、ちょうど視線を遮るように横たわる砂山を超える。



「川…?」

「川ですね」

「…ん。川」

「川?何でこんなところにあるのー?」

「カレン。二人は?」

「ダウン中だよー。『回復』は迷惑になるからいらないってさー」

「そうか…」


 そこまで気にしなくてもいいんだけど…。『回復』は常にストックしているから。3枚ほどある。



「『ティリティス川』でしょうか?」

「多分違うと思う。ちょっと川幅が狭い」

「『メピセネ砂漠』における最狭部が50 kmでしたか」

「だったと思うよ」


 日本で一番川幅が広いのは荒川でだいたい2.5 km。ただし、堤防から堤防まで。……それでいいのか。



 それの20倍。かなりデカい。まぁ、地球の世界一たるアルゼンチンにあるラプラタ川河口はおよそ250 km。もはや海である。



「ねえー。なんで砂漠なのに川があるのー?」


 ごめん、カレン。何でって聞いてたね。



「砂漠で雨が降らなくても、別のところで雨は降ります。それが流れているのでしょう」

「あっちにもナイル川っていう世界で一番長い川が世界で一番広いサハラ砂漠を縦断してるよ」

「ナイル川やさっき話題になっていた『ティリティス川』みたいなのを外来河川と言いますね」

「定義は…、流れる水の大部分を別の湿潤地域に依存している川だったはず」

「ふーん。そうなんだねー!」


 今のびっくりするほど雑な説明で通じるのか。賢いな。



「…じゃあ、これは何?」


 アイリが目の前の激流を見ながらつぶやく。



「ん?たぶん涸れ川。ワジともいう」


 あ。ワジをどうやって説明しよう。パッと言うのも芸がないし…。



「では、突然ですけどクイズです。砂漠で一番多い死因は何でしょう?あ、私達の世界で、ですよ」

「でも、たぶんだけど、俺はあっちと変わらないんじゃないかと思うけ…」



 !? 殺気!? 後ろか!



「ドォン!」


 砂を遥か高くまで舞い上げ、砂漠から現れたのは『サンゴ』。しかも超巨大。体長50 mはある。それくらい大きな鯨の形をしたサンゴだ。そういえばここは魔物の領域だった!



「四季!」

「はい!」


 ファイルから紙を取り出そうとする四季。そのとき、



「…むぅ、無粋」

「黙っててよー!」


 冷たく無機質な2つの声がなぜか明瞭に響いた。「グギャァ!?」と変な声をあげて反転するサンゴ。



 だが、カレンが巨大な矢を取り出し、番え目いっぱい引き絞り発射。それとほぼ同時にアイリの巨大な鎌が胴を捉える。



 一拍。



 容赦なく、ドッ! ザッ! という重低音が響くと、哀れな鯨は矢で脳天から尻尾まで貫かれ、鎌で頭と胴が泣き別れ。文字通りの瞬殺だ。



「…火葬しようか」

「ですね」


 この空まわったやる気はどこへぶつければいいんだ…。



「あ。そうそう俺達の世界に魔物はいないぞ」

「ですから、死因=魔物は除外してください」


 俺と四季のやるせなさとは裏腹に全員満面の笑みで答える。みんな無事なのは嬉しいんだけどね。



 考えている間、暇なのかセンが構って欲しがったので撫でる。



 一応ヒントは出ているのでわかると思う。…聞いていたのはアイリだけだったと思うけど。センの頭に手を置いて2往復。



「衰弱ー?」

「違います」

「じゃあ、餓死か?」

「違う」

「では、水分不足でしょうか?」

「それも違いますね」


 三者三様の解答が出たけど、全部違う。さらに考える3人。少し唸っていたが、ガロウが舟をこぎはじめ、レイコがそれをたしなめる。…たしなめるというにはいささか音が大きすぎる気がするけど気にしたら負けだ。涙目になっている気がするのは錯覚だ。



 アイリがおもむろに手を上げる。



「どうぞ。アイリちゃん」

「…溺死」


 胸を張って答えた。



「正解。そうらしいよ。なんでわかった?」

「…水を見てのクイズだったから。たぶん水に関係あると思った」

「ヒントの有効活用だな」

「いいじゃないですか。そういうのも大切ですよ。ちゃんとした理由もあるんですけど、それはわかりますか?」

「…。「砂漠に川?そんなの幻覚だ!」って、川に突っ込んじゃうとか?」


 ……ありそう。普通にありそうで困る。



 向こうでも蜃気楼か何かで『逃げ水』といって、水が逃げるように見える現象が起きることがある。実際はそこに水なんてないんだけど。



 でも、こっちは異世界。魔法なんてものがあるために、普通に起こりそう。さっきは「地球で」って場所限定したけど、こっちは続きのつもりでしてないからなぁ……。



「一応正解…でいい?」

「ですかね?」

「…やった」


 喜ぶアイリがかわいいから、手を伸ばして撫でる。同時に四季の方からも伸びてきているが、アイリは嫌がることなく気持ちよさそうに目を細めて受け入れる。



「…ところで、二人が言って欲しかった理由は?」

「ワジは歩きやすい。元が河道だから低平だし、砂が舞い散ることもない。かららしい」

「それにオアシスにつながっているというのもあるそうですよ。だから、商隊や地元住民の方が、雨が降っていない間は歩きやすいので通るそうです」

「…難易度高くない?」

「かもしれない」


 ヒントがあまりにもなかったかな。



「ああ、なるほど。それで鉄砲水に巻き込まれてしまって死んでしまう人が出るのですね」

「レイコ。正解」

「雨が別の場所で降ってしまうと気づきませんから…」

「でも、乾燥している土なら水は吸うよな?」

「だよねー。ボクもそう思うよー」


 まぁ、普通はそう思う。



「まぁ、そうだよね。でも、極度に乾燥すると水は弾かれるよ」

「この辺りは、砂が柔らかいので微妙ですが…、他にカラカラの砂砂漠があるかもしれませんし、岩石砂漠などもありますから、そこの水が流れ込んでいるのでしょう」


 極度に乾燥した土が水をはじくのは、見たことがあるからあってるはず。家の近くの収穫を終えて乾燥しきった田んぼに友人が水筒の水をぶちまけたとき、ほとんど吸収されなかったし…。



「…なるほど」

「で、それは理解したが、どうするんだ?」

「まぁ、想定の範囲内だ。たぶんガロウとレイコならわかるんじゃないか?」


 この問題もヒントは今までにたぶん十分出ている。

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