表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
3章 イベア
82/306

75話 お話し

「どこに行きます?」

「隣で。タクの部屋だけど「勝手に入ってもいいよ!」って、言ってたし。問題ないと思う」


 む、四季、渋るなぁ…。



「事後承諾取るから問題ないさ」


 追撃したらいいのかなぁ…って顔をしているけど入ってくれた。



 …まぁ、実は「勝手に入ってもいいよ!」は、向こうでの話だったりするんだけど。でも、きっとタクなら事情を話せば許してくれるはず!



 こっちの部屋とさっきまでいた部屋でレイアウトは変わらない。ほどほどに豪華な家具がぽつぽつとある。そのくら……って、うん。たぶん、王族の家具見すぎ。感覚バグってる。



「とりあえず座ろう。タクもこの国も、獣人が云々で差別はしない」

「この国って言っても、上層部だろ?」

「問題ないと思いますよ、うるさいお方は今、お祭りの当事者です。たぶん」


 たぶん。というのはかなり小さかったけれど、さすが獣人と言うべきかしっかり聞こえていたらしい。「たぶんかよ」と、言いたそうに苦笑い。



「何聞こう?」


 「ずるっ」そんな音を立てて、ガロウはソファから滑り落ちる。リアクションが大きいねぇ…。



「…最初から決めておいてくれ」

「ごめん、正確には何から聞こう?だね」

「聞くべきことが多すぎます」


 ほんとにね。「何で、俺らを父母認定してるのか」とか、「ガロウとレイコの関係とか」。



「そうだな。じゃあ、俺が順々に話す。できるだけ体系立てて話していくが…、ごちゃっとするのは勘弁」


 頷く。話してくれるだけでもありがたいのに、わかりやすく話してくれようとしているのだ。拒否する要素なんてもない。



「まず、あの子があんたらをいきなりお父様。お母様と呼んだ件な。俺が気絶している間に何があったのか知らないから推測になる。し、衝撃が少なかったようだけど、これからが一番話しやすい。ごめん」

「「待って」」

「え?何?」

「衝撃受けてたぞ」

「そうなの?でも、俺のイメージよりは少ない」


 やべぇ、反論が見つからない。



「諦めましょう。きっとアイリちゃんとカレンちゃんで慣れちゃったんですよ」

「そうだね…」

「話すぞ?いい?」


 容赦ねぇな。急がないといけないのは確かだから、そのほうがいいけど。



「父母呼びの理由。俺の推測だけど…、まず、俺らには親がいないんだ」


 え!?



「ああ、親がいないってのは、この世に。って意味じゃない。正確には「誰が親かわからない」だ。まぁ、俺は親、死んでるけど」


 重い。レイコは重いと思ってたけど、ガロウも重かった…。そういえば、ガロウも父ちゃん、母ちゃんって言ってたな。



「同情はいらないぞ。レイコがいるしな。で、レイコの親がわからない理由…、それはレイコに尻尾がないことに関連する」


 ガロウは言葉を区切り、俺達を見極めるように凝視する。しばらくすると、意を決して口を開く。



「レイコ…、レーコは実は神獣とか、神の使いとか言われる、霊孤(レーコ)それなんだ」

「「へぇー」」

「ちょ、あんたら、俺、話すべきかすんごい迷ったんだぜ!?反応薄くねぇ!?」

「だって、うちに伝説いるし…」

「仕方なくないですか?」


 驚きはするけど、マジで!? にはならん。



「え!?どいつ!?」

「カレン」

「ハイエルフだそうですよ」

「うわ、すっげぇ!そりゃそうなるよね!あんたら慣れるの早そうだし!」


 馬鹿にされてる気がする。それはそれとして、



「声が大きい」

「静かにしなさい。向こうに聞こえますよ?」

「ごめんなさい」


 素直だなぁ…。



「で、レイコが伝説だとわかってもらったうえで…、伝説を一個人が育てるわけにはいかないとかいう理由で、レイコは親の顔をろくに見ることなく離された。そのまま、隔離され、祭り上げられた。俺はたまたまだ。親いないなら一緒に育ててしまえ。雑用にちょうどいい。っていう感じ。扱いはまるで違うかったが、不満はねぇよ」

「なあ。霊孤(レーコ)って確か…」

「家族の安全を守り、育むとか言われてませんか?」

「そうだ。二人とも察しが良すぎる」


 そりゃそうなるか…。



 にしても、まさか名前が名前じゃないとは。動物園で子供がキリンや象を見て、「キリンさん!」、「象さん!」と呼んでいるのと同じ。人間で言うなら、「人間!」と呼ばれているのと同じはずだ。



 キリンや象に知能がないとは言わないけど、レイコなら確実に理解できる。自分を指している名前は、あくまで自分の種族を指すものにすぎず、個体名ではないと。



 だから、アイリが提案した名前付け。あれが心に刺さったのだろう。あれは俺らがレイコという一人の個人を完全に識別するための。唯一無二のもの。同名の人はいても、考えた人が違う。故に、込められた思いも違う。完全な別物。



 そんでもって、そんな個体名を持たなかったレイコの前に、毎日毎日、幸せを求めて幸せな家族がやってきた。それを見たレイコはきっと、憧れるだろう。



「ああ。だいたいそれであってると思う。後、レイコがあんたらを信用したっていう点が抜けてるか」

「それ大事か?」

「ああ。レイコを利用しようとするドアホもいないこともない。大抵、ぼこぼこにされるのが落ちだけど。あいつは、勘でそういうのを察知する」

「それは、あれ?種族特性とかそういうの?」

「さぁ?わからん」


 ありゃ。ま、仕方ないか。



「そういえば、ガロウは何で、俺らの事父母呼びしたんだ?」

「え?そりゃー。あれだ。あれ。何となくだ」


 目があっちに行ったり、こっちに行ったり。何か隠しているのがまるわかり。いかにも適当にでっち上げました! っていう理由だし。



「おい、何でそんな目で見るんだよ!」


 だいたい誤魔化し方のせい。



 何だろう、全然怖くないんだよね。頑張って怖く見えるようにしているってのは伝わるんだけど…、大型犬? いや、違うな。大型犬だと襲われるとまずい。



 …チワワ?そんな可愛さがある。チワワはたぶん、「ガルルル」なんて言わないけど。



「ああ、もうわかったよ!言えばいいんだろ!言えば!」


 ほのぼのとした気持ちで見ていたら、向こうが勝手に折れた。



 …………あれ? 言わないの? 顔が真っ赤になって…。あ、察した。



「ガロウ。もしかして…」

「もしかしてですけど、ガロウ君、レイコちゃんのことが…」

「あー!あー!やめて!言うな!」

「「うるさい」」

「ごめんなさい」


 この流れさっきもやったな。



 うつむいてしまったガロウの顔はよくわからないけど、怒られてしょげているか、照れて赤くなっているかのどちらかだろうな。



「…俺はレイコのことが好きなんだ」

「だろうな」「でしょうね」

「反応薄いな!」

「そりゃあ…」

「ねぇ…?」

「わからなかったらさ…」

「私達かなりおバカってことですよね」

「え、そんなに露骨だったか?」


 無言で力強く頷く。それだけでとりつくろえていたと思っていた、彼の精神は抉られたようで、膝をついた。



「やり直す?」

「好きって言ったところから…」

「いらねぇよ」


 だよね。なんかごめん。



「…たぶんレイコちゃんは気づいてませんから…。ね?」

「それはそれで悲しいわ!」


 かける言葉が見つからない。



「この仲良しどもめ…」


 よく言われる。一応、自覚はあるけどそこまでかなぁ…。



「嫌味のつもりだったんだから、恥ずかしがるか、逆にイチャイチャするかしろよ」

「ああ、ごめん。考え事してた」

「私もです。それで、何か?」

「…もういいや……」


 ?



「とりあえず、俺らの事父母呼びしたのは、レイコの前だからでいいんだよね?」

「ああ。あいつ、割と我が強いからな…。何言われるかわからないんだ」

「既に尻にひかれてるんですね…」


 悲しい…。いや、本人が望んでるっぽいからいいか。いいよね?



「あ、そうだ。そもそもなんで誘拐された?」

「あ。忘れかけていましたね。それが一番重要なのに」


 この言葉を聞いて、ガロウも「あ…」という顔に。今、三人の心はたぶん一致した。「だいたいレイコが悪い」と。



「勘がいいとか言ってたよな?」

「言ってましたね。それなら、誘拐も避けられるはずなんですけど」

「誘拐されたのは、気を抜いた俺の落ち度」


 「ズーン」という文字が幻視出来るほど、落ち込む。



 …そうじゃないよ。と暗に伝えてもこれ。かなりレイコのこと好きなんだろうなぁ…。



「とりあえず、最初から話して」


 そうじゃないって、言葉にしたところで聞いてくれないだろうから、回り道。順々に聞いていけばわかることがあるだろう。



「うん…、わかった。えーと、まず、前提として、レイコが大切に育てられ…というか、崇められていたというのはいいか?」


 さっき聞いたばかりだ。問題ない。蝶よ花よと育てられたんだろうということは簡単に想像がつく。



「で、ついでとばかりに俺も育てられていた…って、のもいい?」


 ついでっていうのが、個人的に気に入らなかったりするが、そこは親? の判断。どうしようもない。



「で、大切に育てられているレイコと、ついでに育てられている俺が出会った。俺達は子供だったから…、当然。外を見たくなる。特にレイコはそれが顕著だった。これは俺以外、基本的に育てる人が入れ替わりでくるか、レイコをみたい奴らだけだったからだと、俺は勝手に思ってる」

「たぶんあってるんじゃない?」

「妥当なところだと、私も思いますよ」

「ありがとう。で、抜け出すことにした」

「まぁ、そうなるよね」

「よくありますよ。」


 良く抜け出せたな。って、こういう状況を小説やドラマで見るたびに思うけど……、実際に遭遇するとは思わなかった。



「みんなが寝静まったころに、こそこそっと。夜中の警備は俺らにとっちゃザル。外から入ってくる奴らの対策に重点を置いてたんだろう」


 ガロウは言わなかったけど、俺には、「せめて夜ぐらいは…」なんて心もないこともない気がする。まぁ、この辺の感じ方は体験してみないとわからないんだろうけれど。



「で、抜け出せそうなときにこっそり抜け出す。というのをずっとやってたんだ」

「いつから?」

「ん?俺が5歳になったときからだったかな?」

「ガロウ君、今何歳ですか?」

「さぁ?俺もレイコも5歳超えたあたりから、誰もそのこと言わなくなったから。知らない」


 またか。うちには年齢不詳が多すぎる。



 でも…、外見から判断するに、確実に10歳は超えてる。子供の外見はまるであてにならねぇけど。個人差がでかすぎる。



「年齢はわからないけど…、5年以上前だよな」

「たぶんそうですよね…。となると…、ガロウ君。その間に何も起きませんでしたか?」


 子供だけで5年間抜け出していたんなら、何も起きていないはずがない。



 そう思って聞いた四季の質問は触れられたくなかったらしく、目が露骨に泳ぐ。もうちょっととりつくろえるようになろ? バレバレだ。



「触れられたくなければいいよ。話せると思った時に話して」


 ガロウは四季を見る。いいのか? と目が聞いている。



「はい。いいですよ。無理に聞くのは嫌ですし…。こちらの命にかかわらない限りは」

「そうか…。……………じゃあ、これだけは伝えておく。命に係わるかもしれないから。レイコ戦えないから、前に出さないで。ダメだってんならその分俺が働くから」


 思わず顔が緩む。



「何だよ!悪いか!」

「全然、本当にガロウ。レイコのこと好きなんだね」

「う…。そうだよ。あんたらほどじゃねぇけど」

「そっか。でもな」

「私達、子供だけを戦わせるような人間じゃないんですよね」


 四季は言いながらガロウの頭にそっと手をのせる。



「戦いたくないならそれでいいのです。私達の当面の目的は、ガロウとレイコ。二人を無事に獣人領域に連れて帰ることなのですから」

「戦いたくない人間を戦わせても、足手まといになるってよく聞くし、怪我するだけだしね」


 露骨に士気に差が出るもの。



「ありがとう。でも、俺は戦うよ。いや、戦わせて。次こそはレイコを守れるようになりたいんだ」

「了解」

「私のせいで脇道にそれちゃいましたね。戻りましょう」


 四季はそう言って、ガロウの頭から手を離す。



「あの日もいつも通りに、抜け出して、いつも通りお気に入りの場所に行ったんだ。そこでのんびりして…、そろそろ戻らないといけないな。と思った時に、レイコが「嫌な予感がします」って、言ったんだ。レイコの勘はいいから、その言葉に従うことにしたんだ。まっすぐ戻るんじゃなくて、川沿いを一緒に歩いたんだ。その時にな、レイコが足を滑らせて川に落ちたんだ」


 え。



「そんな顔されても困る。事実なんだ。レイコは何もないただの平坦な道でつまずいてこけたんだ。その拍子に川の方に倒れてざぶん!俺がもっと近くにいれば…。それか、もっと力があれば…!」

「どのくらい距離あったの?」

「5歩分ぐらい」


 5歩分か…。結構遠い。一歩だったなら、手を引くことは出来たか?



「まぁ、起きたことは仕方ない。ああ。わかってる。そんなこと言われても感情では納得できないことぐらい。でも、起きた。で、その後は?」

「えーと、二人とも川でおぼれて、流れついたら檻の中。だったはずだ」

「勘で道を変えたのに誘拐か…。やっぱダメなんじゃないか?」

「そうかな?俺は…、あんまり認めたくはないけどさ。結構、レイコ、今は、幸せだと思うぜ。なんだかんだであんたらの事、慕っているみたいだしな」

「そう言ってもらえると嬉しいかな。……これくらいかな?」

「おそらくは。話したくないこと以外は、全て話してくれたはずですし、聞かないといけないところは…多分大丈夫です」

「よし。じゃあ、部屋に戻ろう」


 というわけで部屋に戻る。レイコに、



「何のお話をしていらしたのですか?」


 と聞かれたら、誤魔化すの大変だな…。と思っていたが、杞憂だった。今も、キャッキャと娘二人と混じって…、いや、娘3人楽しそうに綿菓子作りに興じている。



「もうすぐ夕飯だぞ」


 全員、がばっと顔を上げて「わかってるよ」と声を出す。本当にわかっているのかな…。



 飛び散らないようにしたにもかかわらず、ところどころに砂糖が飛び散っているのを見る限りダメっぽい。ガロウも混じりたそうにしていたので、参加させ…、てもいいのか? 男一人だけど。



「ガロウ!一緒にやりましょう!姉様達は怒りませんよ!」

「ああ、わかった」


 と、思ったら呼びつけられたか。既にレイコ、溶け込もうとしてるのか?



「楽しそうですねぇ…」

「だね」


 熱した砂糖を遠心力で振り回すだけでここまで夢中になれるか…。楽しそうだからいいか。止めなくても。







______


 うん、止めるべきだった。案の定ダメ、ちょっと食べすぎ。



 アイリは俺らと同じくらい。カレンはいつもより半分で、いつもが俺らの3/4ぐらいたべるから3/8くらい。



 ガロウと、レイコのいつもの食事量はわからないけど、「いつもより食べれない」とか言っていたので、確実に少ない。



 さて、お風呂入るか。2日ぐらい入ってなかった気がする。



「ガロウは風呂どうする?」

「ん?後で入る」

「そっか。四季たちは?」

「私達はまとめて入りますよ」

「了解」


 さて、久しぶりのお風呂。だが、語ることはない。露天風呂じゃないし…。



 まぁ、外が砂漠で土埃が入ってくるからだろう。強いて言うなら星が綺麗だった。アークラインでも見れた? うん。その通り。



 さっさと出て、ガロウと交代。ガロウが出るのと同じくらいに4人もお風呂から出てきた。



 どうしてお風呂に入ると、色気があがるんだろう。数回見ているけど、ちょっと視線に困る。浴衣、絶対似合うよなぁ…。



「習君、どうしました?」

「ああ、考え事。さて、寝ようか」


 とういわけで寝る…。と見せかけて、俺らは寝ない。別に寝かせる必要もないけど、タクから今日の話を聞かないと。



 あ、ガロウが一緒に寝ているのは、



わたくしと一緒に寝てくれないのですか?」


 とレイコに泣き落としを喰らったから。



 絶対、昔から一緒に寝てる。完全に一緒ではなかっただろうけど。きっと、仕切りはあっただろう。



 寝かしつけたら、隣の部屋。アイリはお祭りの話はたぶん聞きなれているけど、カレンはわからないだろう。



 それでも、アイリが来ると、確実に来たがるからな…。幸い、はしゃぎつかれたのかすぐに寝てくれたけど。



「おう。早かったな」

「早く寝てくれたからな。勝手に借りたぞ。部屋」

「ああ。いいぞ。とりあえず、座れ。今まで何してたか話し合おうぜ」


 こいつ寝てないはずなのに元気すぎるだろ…。こっちが先にまいってしまうかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ