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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
おまけ(後日譚)
299/306

おまけ1 アークライン会談

 改稿版がちょうど、カーチェ様たちが出てくる頃に差し掛かっている&天啓が降りてきたので書きました。また、5周年が近かったので、頑張って間に合わせました!


 時系列は258話と259話の間です。

 あの子──チヌリトリカではなく、ファヴェーシュウキラトなった子──ラトとの戦いを終えて数日。新たに出現してしまったニッズュン上の白黒の街やら、諸々の課題を議論するため、全員揃ってアークライン神聖国へ。



 なんか妙に緊張しているメイドのドーラさんに連れられて大聖堂の最上階、カーチェ様の部屋へ。



「カーチェ様、皆様をお連れいたしました」

「お連れしてください」


 ? ここには既にカーチェ様の本性を知っている面々しかいないのに、何で丁寧語?



「失礼いたします。皆様、どうぞ」


 ……え? あれ? 見間違いかな? 目をゴシゴシとこする。うん、見間違えではないね。



 開かれた扉の先、めっちゃ豪華で神聖ささえあるカーチェ様の執務室の中に、何故か荒々しい縄が天井からぷらんと二本垂れ下がっている。



「これまでのご無礼、謝罪いたします」

「いたします」


 え。ちょっ……、



「アイリ!」

「カレンちゃん!」


 困惑していても口は動いた。そして、それを聞いた二人も直ちに動いてくれた。今にも首を吊ろうとしていたカーチェ様とブルンナ。その二人をカレンの矢が強引に縄から引き離し、アイリがスパッと縄を切断してくれた。



「離してください!これでは死ねません!」

「そうだよ!あ、でも、このまま外に行けば、落ちて死ね「「死なせません」」何でぇ!」


 それはこっちのセリフなのでは。



「あの、何があったのです?」

「ぐぎゃあああ」


 えぇ……。カーチェ様がめっちゃ悶えておられる。



「あの、謝罪が云々とおっしゃっていました「ぎゃあああ」……あの、私達、何のことかさっぱりわからないです」

「何の謝罪か分からない謝罪程、空虚なものはないですよね?ちゃんと話してくれませんか?」


 冷たく聞こえるかもしれないけれど、どう見ても錯乱してる二人にかけるにはこれくらいの方がいい。じゃないと、止まってくれない。だって、精神にさえ効く魔法を持ってるカーチェ様が錯乱してるもの。ほんと、意味が分からん。



 なんとか俺らの言葉は届いたらしい。じたばた暴れていた二人だけど、動きが止まった。



「降ろすー?」

「降ろしてさしあげたいと「ぎゃあああああ」…あのザマだから無理」


 降ろしてもらうと、カーチェ様、素手で首をへし折って死にそう。普通、出来ないはずだけど、それで死にそう。そんなオーラがある。



「…シャイツァーも奪っておいた」

「さすが、ありがとう」


 ブルンナのシャイツァーは指揮棒。あれを手元に置いておくと何されるかわかんないものな。離しておくのが吉。



「聖杯も取った方がいいと思うよ」

「コウキの言う通りだね」

「ですね、では…「ルナが、行く!」なら、お願いしますね」


 にぱっと笑ったルナがたたっとカーチェ様のところへ走って行って、ぱっとパクって戻ってきた。ふむ、抵抗はされないと。



「ルナ。二つとも家に入れておいて」

「ん!」


 手で持っているより、家に入れている方が戻しにくいはずだし。



「なぁ、何で聖杯取ったんだ?」

「うん?聖杯って回復に関係するでしょ?」

「毒と薬は紙一重。というか、それを支配するのは量です。それが示すように、過剰な回復は肉体を破壊しかねません」


 だから、奪った。そういうのって起きないようにロックがかかっているはず。シャイツァーは願いを汲む道具、治したいって願いがある故に。だけど、今はそれが悪い方にはたらきかねない。



 それに、回復させるなら過剰回復とか関係なしに、欠損させることもできるかもしれない。それも怖い。自傷手段は全部取っておかないと。



「で、どうされ「ぎゃああああ」えぇ…」

「あの、お父様。お母様。おそらくですが、カーチェ様は敬語を使われると、悶えられておられるように見えます」

「「えぇ……」」


 丁寧語を投げ捨てろと? ちらっとカーチェ様を見ると、猛烈な勢いで頷かれた。貴方、そんなキャラじゃなかったでしょうに。



「ブルンナ級の扱いは無理なので、」

「普通程度にやります。で、何があったんです?」

「何も、何もなくないです?」


 ??? えっと、どういうこと?



「ブルンナ。説明して」

「あっ、はい。わたくし、ブルンナ!誠心誠意、やらせていただきます!」


 こっちもキャラ崩壊してるし。



「簡潔に申し上げますと、三点の要因がございます。一つ目。シュウ様とシキ様はわたくし達の国、アークライン神聖国の初代教皇猊下の実親の転生者であらせられます。二つ目。お二人にはわたくし達が崇め奉らせていただいております、シュファラト神とラーヴェ神。その二柱(ふたはしら)の魂の一部を色濃く受け入れておられます。三つ目。シュファラト神とラーヴェ神の御子、チヌリトリカ神の名付け親であられます。以上のことから、わたくし達といたしましては、お二人……と、ミズキ様とコウキ様に頭が上がらないわけでして。そして、過去を振り返りますと、ミズキ様とコウキ様は兎も角、お二人に対しての振る舞いが雑過ぎたのです。それに気づきましたので「もうマジ無理。リスカしよ……」となった次第であります」


 お、おぅ。めっちゃしおらしい説明だけど、最後にネタをぶち込んでくるあたり、余裕ある?



「要約すると、俺と四季がこの国の建国に関わってたり、主神に関わってたりするのに、態度が雑過ぎた。でいい?」


 めっちゃ頷く二人。良いらしい。確かに、事実だけ列挙されるとえぐいよね。パンチが。でも、



「俺ら的に、三つ目は兎も角、一つ目と二つ目はそこまで実感ない」

「ですから、言われも困るというのが本音ですね」

「…三つ目は否定しないの?」


 それも否定した方が良くないって? 確かに、二人の精神安定的には良いだろうけど…。



「名前を持ってきたのは俺らじゃないにしても、」

「魔法を行使して、ラトちゃんを定義しなおしたのは私達です。そこを否定してしまうと、あの子が揺らぎかねません」


 魔法で強引に安定化させたから、揺らぎはしないはず。だけど、揺らぐ可能性があるなら、そこは潰しておきたい。



「し、そんなの関係なしに、そこを否定するのは心情的に無理」

「ですね。確かに、やらざるを得ない状況だったのは間違いないです。ですが、あの子を引き受けると決めたのは私達です。そこを否定する気にはなりません」


 だから、無理。



「というわけで、正直、一つ目二つ目は実感なくてどうでもいいですし」

「三つ目は否定しませんが、私達には二人に謝られるような要因にはならないので、元に戻ってくれませんか?」

「「で、ですが……」

「戻ってくれませんと、盛大に各国に言いふらした上、二人を死なせない状態にしたまま晒しますが」


 ノータイムで脅しにかかるのね、四季。もうちょい、付き合ってあげてもよかった気がするんだけど…。



「「わかりま……わかった」」


 よし、戻ってくれたね。なら、もう大丈夫なはず。カレン、ルナに頼んで、シャイツァーの返却と二人を床に下ろしてもらおう。



「魔法を使っても構いませんか?精神安定に」

「で、あれば、どうぞ」

「助かります。……いや、マジで助かります」


 カーチェ様はそう言うとごもごもと呪文を唱えると、聖杯を頭上に掲げる。そして、ブルンナを抱き寄せると、聖杯をひっくり返して水をかぶった。



「あの、そういうのするなら先に言ってくれません!?」


 俺やガロウ、コウキは男です! 透けたら困る!



「心配ご無用。今の水は持続しない。さて、座って……と言いたいが、そもそも椅子が足りないな」

「首吊りのためにどけたもんねー」


 そんなことのためにどけないで。



「申し訳ないが、前のようにオレの私室に行こう。そっちなら、どけた椅子とかがある」

「そっち行って大丈夫なのです?」

「あぁ。大丈夫だ。死ぬつもりだったから見られて困るようなものはないさ」


 反応に困ること言うのやめてもらえませんかね。



 ずかずか歩いていくカーチェ様について寝室へ。ここはかなり前にお邪魔した時と特に変わった様子はない。どけたといってる椅子とかがある程……んん?



「遺書があるんだが!?」

「必要だろ?ガロウ。オレらが死んで、みんなが疑われても困るし」


 それ理解してるなら、謝罪代わりに目の前で自殺しようとするのやめてくれませんかね。



「ま、とりあえず、その辺に座ってくれ。どこに座っても文句は言わねぇから。あ。ドーラ。皆にお茶とか出してくれ」

「かしこまりました」


 どっかりとベッドに座った瞬間、ハキハキと指示を出すカーチェ様。さっきとのギャップがひどすぎる。



「ギャップが酷いねー」

「そらな。戻ってくれと言われたから…。正直、心の中では「何で皆様にこんな雑な口調で喋ってるんだ!?」って悶えまくってる。が、それを顔に出さないオレを褒めて欲しい。あ、嘘。止めて。褒めてもらうと逆に死ぬ」


 えぇ……。



「ブルンナはさっきから喋ってないって言うか、借りてきた猫状態だけど、元に戻らないの?」

「え。前みたいな雑な態度を取って欲しいって?…マジ無理。リスカしよ…」

「メンヘラですか。止めてください。自殺と変わらないでしょうが!」


 リスカってただの自傷行為じゃないんだぞ? やりようによっては普通に死ぬ。そんな危険行為。



「そも、リスカって、自分が生きてる実感得るためにやるやつだろ?今回関係なくない?」

「話を逸らしたいという意図と、死にたいという願望を叶えられる」


 うわぁ。重傷。



「ねぇ、カーチェ様「カーチェでいいぞ。ていうか、ミズキだけは頼むからカーチェにしてくれ」了解したわ。カーチェ。ブルンナに魔法効いてる?」

「はずだぞ。そも、効いてなかったらいまだに暴れてると思う」


 これで割と落ち着いてるのね…。確かに、椅子の上で膝を抱えて猫みたいに丸くなってるけど。…って、ほんとに猫みたいになってるじゃん。



「何でそんな引きずってるのよ」

「マジ無理。ブルンナ達の本流に当たる方達だよ?それにあんな雑な態度とか、マジ無理」

「勇者ってほぼ確信しててあの態度だったのに?」


 勇者ってこの世界では超信頼されてる上の立場の人間ってところだったでしょ? だのに、違和感しかない。



「勇者と!それとは!違う!でしょ!あっ」

「やっぱりそっちの方がブルンナちゃんらしいですね」

「あっ、あっ…」


 ほんとにブルンナのダメージデカいな。めっちゃ意外。心臓超合金で出来てるって思ってただけに。でも、これ何とかしないとずっとこのままだよね? それは嫌だな…。



「正直、話し方はブルンナに任せるけど、」

「普通に話せないのは悲しいです」

「はーい!頑張ります!」


 めっちゃ雑な泣きまねしたけど、なんとか効いてくれたみたい。子供たちが「うわぁ」って顔してる気がするけど、気にしない気にしない。



「それはそれとして、よく俺らがシュファラト神とラーヴェ神の魂が混じってるだとか、よく信じられましたね」


 後のことに絡んでくるから手紙に書いてたとはいえ…。



「ファヴェーシュウキラト神、本神から聞いたぞ。「チヌリトリカ改め、ファヴェーシュウキラト!今までやらかしまくって来たけど、しばらく、パパとママ…あ、ごめん。分かんないよね。シュファラトパパとラーヴェママに代わって頑張るから、よろしくお願いします!あ、細かいことは習父様と四季母様に聞いてね!それじゃ!」とだけだが」


 そういえば、ラトには「挨拶くらい行ってあげて」って言ったな。そん時に爆弾投げて行ったのか…。父様と母様って本人に言われてたら手紙も信じれるよね。



「そういうわけで信じたんだ。そもそも、二人が嘘書くわけねぇってのに、駄目押しだぞ?ま、そこは置いておこう。罪悪感が酷くなるから。湖の上に出来たって街の話をしようぜ」


 了解です。



「でもでも、しょーじき、任せる以外の解答ないでしょー?」

「それはそうなんだが。それを言われるとせっかく逸らした話題がだな…あ。そもそも、何故、会談場所がここなんだ?普通、呼ぶだろ?」

「話を露骨に変えにかかった!?」


 やめてあげてガロウ。



「安心してください。カーチェさん、普通じゃないです」

「さすがに、宗教国家のトップ呼びつけるとか無理です」

「「いける」」


 あの時はそう思ってたんですよね。今までの反応見ている限り、余裕そうですが…。



「また戻ってんじゃねぇか!戻せ戻せ。何故、バシェルじゃないんだ?」


 取り繕いすらされませんね!



「確かに、人間領域ではバシェル王国が最大です。ですが、」

「バシェル王国はルキィ様と矢野さんをくっつけるというたくらみの当事者がいるので…」

「あぁ、そっちはルキィ様から聞いてるぞ」

「タク…矢野の側が問題なんですよね」


 あいつもあいつで、俺のこと言えないくらいにはヘタレだし。もはや両想いで、くっつきたいって両方思ってるなら、さっさとくっつけた方がいい。



「なるほど。シュウと同じ感じか」

「です」


 …四季からの目が若干、痛いような。ごめんね、最初の告白なかなかヘタレてできなくて。



「把握した。その件に関して、何かこちらがすることはあるか?というか、仲人はオレがやろうか?」


 !



「お願いしようとしていたことなんですが、それ」

「承った。こんな言い方するのはアレだが、今のバシェルは王族がルキィ様しかいねぇからな…。信頼できる婿を取ってくれるのは安定的にもありがたい」


 それ、ブーメランでは? カーチェ様にもブルンナにも配偶者いませんよね?



「おい、その、お前が言うなという顔は止めてくれ。別に構わんだろ。こんな言い方はミズキがいる前でしたくないが、最初から養子で始まってるんだぞ、この国。それに、新たに出てきたという街。そこはシュファラト神とラーヴェ神の御力で満ちているんだろ?そして、そこを治めるのはシュウとシキ。聖地として申し分ない立地じゃねぇか。そっちを総本山にして、この国を畳んでもいいだろ?」

「「それはちょっと…」」


 困る。でも、さらっと言ってる辺り、本気っぽいのがヤバイ。



「そうか?国として成立させるなら、部下がいるだろ?今の地位を失ってでも行きたいってやつはうちの国には結構いるだろ。そいつらを受け入れてもらえれば、後はこっちで隣のフーライナにでも併合してもらえば、どうとでもなるしな」

「嫌って言ってる人はどうされるおつもりなのです?」

「ん?んなもん決まってるだろ、レイコ。この国は既に先代のやらかしで大部分の馬鹿は相当消えてんだ。反対するのは残ってしまった奴らだよ。いわば、重箱の隅に残ってる食べかすだ。いらんいらん。最後の大掃除とばかりにオレ達が片付けるさ」


 粛清ですね、わかります。いや、やられても困るけど。



「二人は、どうするの?」

「オレとブルンナの二人なら、適当にどっかで過ごすさ。あ、勿論、農作業とかが厳しいのは理解してるぞ?…って、これ、ルナに言って通じるのか?まぁいい。俺らは二人で過ごすさ。野垂れ死ぬならそれならそれだ」


 ブルンナ…も特に否定はしてない。うん、これは止めないとマズいな。こっちがアークライン教の総本山とか冗談じゃない。仕事で死ぬ。



「あの、こっちに総本山とか止めてくれません?」

「正直、あそこで小国ながらでも王をやらされるというだけでも、精一杯なのです。その上、総本山とか死ねます」

「二人がそう言うならやめるが」


 はっや。ありがたいけど、前言撤回早っ! あ。認識の上では俺らのが上位だからか。



「だが、総本山の一括化はした方が良くないか?将来、絶対に揉めるぞ?」


 …確かに。それで将来の子供達を地獄に落とすのもマズいよな……。



「ちなみに、オレは並列ならまだしも、下に付くとか絶対に拒絶するから。これだけは頼まれても無理。オレの心が死ぬ」

「そこまで言ってくださるなら、将来も何とかなりません?」

「駄目だよ!シキ!ブルンナ達は良くても、将来、絶対に馬鹿は出てくるから!」


 カーチェ様も激しく同意されている。駄目だよな…。はぁ。



そして、カーチェ様に言われるまでもなく、下に付くという手は使えない。「勇者は何人もいるのに何で俺らが王なの?」っていう正統性の確保にそれを話す方針だから。であれば、もう、出来ることは一つしかない。



「総本山としての業務をアークラインに移管しているって方針しかない」

「ですね…」


 これも問題がないことはないが、まだ、マシ。な、はず。…自信ないが。相互破門とかやらかさなきゃいいけど…。



「オレらは二人がいいなら本当に、さっき言ったことを除いて構わない。その場合、オレらの立ち位置は?」

「あたしが国を作ったとこって時点で、聖地感はあるでしょ?それで何とかなるでしょうよ。正直、こんなに残ると思ってなかったけど」


 ミズキはむしろ、世界を滅ぼす側だったしね…。



「ミズキはそれで構わないのか?」

「えぇ。という……あー。言うとマズいかしら?」


 こっちを見てくるミズキ。ぶっちゃけるってこと? 



「ぶっちゃけるなら、許可取ったら?」

「心構えがないと、可哀そうです」


 さすがにね。俺らだけじゃなく、ルナ以外の子らも頷いてるし。



「了解。なら、めっちゃ頑張って、ここまでアークラインを存続させてきたあなた達には悪いけど、ぶっちゃけてもいい?」

「怖いが、頼む」

「頑張って堪える!」


 気合を入れるアークラインの二人。



「ぶっちゃけ、あの時のあたしって、父さま達を殺された時点で、この世界に愛着なんてなくて、滅ぼす気だったのよね。でも、残されたあたしがちゃんとしておかないと、ふざけたことに、絶対、父さま達が悪く言われるでしょ?だから、最低限の体裁を整えたわけなのよね。だから、正直、かなりどうでもいいのよね。この国がどうなろうが。父さま達の名誉が汚されることはもうないし」


 あ。二人がフリーズしてる。そうなりますよね。当事者じゃないから実感はないけど、その衝撃の大きさはなんとなく推測できる。



「えっと、どうしたらいい?」

「声かけてあげたら?」

「あたしが?」

「うん。僕も転生体だけど、僕がかけたって仕方ないでしょ?」

「コウキと同じく」

「ですね」


 建国当時に既に死んでた俺らより、当事者のミズキのほうがいいでしょ、声をかけるのは。爆弾落した当事者ってことを差っ引いても。



「りょ、了解。えっと…こういう時は確か、こうしてもらえると嬉しかったはず…」


 後半だけちょっと小さい声で呟くと、ミズキは二人の方に歩み寄って、並んでいる二人をそっと抱き寄せた。



「えっと、さっきのは本心だけど、それでも、今までこの国を存続させて、父さま達の名誉を保ってくれたことには本当に感謝してるわ。だから、二人がいいならアタシはそれで構わないのよ」


 言われた途端、二人から嗚咽が聞こえてきた。努力を超尊敬する人に認めてもらえた。それで嬉しさが爆発しているというところだろうか。



 羨ましくなったのかルナが甘えてきた。…うん、落ち着くまで時間がかかりそうだから他の子達も構ってあげよう。



 そうやって構ってあげることしばし。ひと段落したくらいに二人も落ち着いてきた。



「ふぅ、うん、すまない。えっと…話すべきことはこれくらいか?」


 ……ですね。大事なことはもうないはず。四季も頷いてくれてるし、ないね。細々としたことがないこともないけど、ちょっといたたまれないだろうから、さっさと撤収しようか。



 それは後でいくらでも詰められるし。



「うん、ないですね」

「ですね。例のたくらみ(結婚式)は、建国宣言の時にやりますから、次にお会いするのはその時ですかね?」

「だろうな。早くしないと困るものな。日程はどうとでもなるから、流れか」

「そちらは決まり次第、カレンちゃんにお任せします。さすがに、ぽんぽん私達が動いていると気取られそうなので」


 ほんとに。四季なら兎も角、俺が怪しい動きを見せると駄目だろうな……。タクは鋭いから。



「承知した。では、結婚式で」

「「結婚式で」」


 さて、帰りますか。あの街へって、なんかドーラさんが死んでる。



「どうした?」


 外で立ち止まっていたからか、中から声が飛んできた。



「ドーラさんがなんか固まっているんですが」

「あぁ、たぶん、さっきの衝撃の告白を聞いてしまったんだろ。…お茶を持ってこさせたのに、済まない。飲んで行くなら飲んで行ってくれ。ドーラはオレらに任せろ」


 了解です。なら、折角、作っていただいたんだし、飲ませていただこう。…うん、美味しい。

※途中で習のセリフで「カーチェさん」になっていますが、ワザとです。心の中では様つけていますが、それで呼ぶとまた死にそうと考えているので「さん」づけしています。 


 お読みいただきありがとうございます。

 もし誤字や脱字などを発見されましたら、お知らせいただけますと嬉しいです。


 カーチェ様とブルンナ、それにドーラは2章に出てきたキャラです。詳しくは2章の人物紹介をお読みください。

 次は…また気が向いたらになります。

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