エピローグ 白黒神の勇者召喚陣
もう少し…もう少しで終わる…。むむぅ。最近遊んでなさ過ぎて、ちょっとフラストレーションが。いやいや、でも、もう少し。ここで後回しにすると予想外の事態が起きて糞面倒くさく…、ぎゃー!
あ、あぁ。よかった。なんてことないわ。ここをこーして、あーして…。おk。ん?となると、これをこの空いたところにぶち込んで…、あ。いけたわ。
ッーー! やった! やってやった! 第三部完! …決して、休憩中に何か厄介ごとが起きて今まで2回ド面倒なことになったわけではないけれど、終わった!
…のはいいけど、改めて見渡すと…、この空間、寂しいな! 今いるのは私、ファヴェーシュウキラトだけ。パパとママは父様と母様が創ったICUみたいなところにぶち込まれてる。オペしてるわけじゃないから、ICUじゃない気がするけれど、気にしない。
父様と母様は…確か、前見たときは人間以外に転生してたかな? まぁ、あの二人なら大丈夫でしょ。
てか、パパとママ。私が生まれ変わって早々にICUにぶち込まれて、出てこれてないんだけど…。うん、変わる前の私、やりすぎだね。
もともとあったアークラインと白地の理をぐにゃりしたときはそんなにひどくなかったのに、私が生まれて暴れてかなりひどくなった。…マジでごめん。
でも、そろそろ回復するはず。あのICUの原料はアークラインと白地の使ってない部分。それぞれの体質? によく合うはずだし、父様と母様が世界を弄った時に二人自身もすこーし調整してくれてるはず。…弄りすぎると耐え切れずに無事死亡するから、ちょこっとだけどさ…。
にしても、世界改変とかよーやるよね。確か、その時のことを書いたものが…、この辺の本棚の中に…あ。あった。父様と母様がどうやってこの世界を創ったか? の本。創ったというよりは改変、再編だけど、細かいことは気にしたら死ぬ。
えっと…、パパとママ、それにアークラインと白地に母様と父様の権能で作成した【起点】をペタリ。次いで、私にパパとママの考えた名前をペタリ。
ふむ。私が持ってた瘴気──世界の歪み──生産を何とかするのが最大の仕事っぽいね。それ以外の変えた方がいいところも、私の在り方の変化に引きずるようにして連鎖的に全部変えてる。
私の改変は瘴気を生まないようにするために、瘴気で私を歪ま…ん? 瘴気で歪ませる…? うえっ!? めちゃくちゃしてるな!? 歪ませ過ぎて私が破裂したら…、瘴気のビッグバン! 世界は死ぬ。
…うまく行ってるし、成功の見込みあったらしいからいいか。さらに、私の瘴気を使ってアークラインの一部を引きちぎり、瘴気が受けつけられるように改善。…え? 改善? できるの? …きっとなにかの誤植だね。
で、白地は溢れてる瘴気で歪ませつつ、一部を引きちぎって歪みを受け入れられるように…、ありゃ? やっぱり改善してるね。謎い。
二つの世界からちぎった分を合体させてICU。概念的には日本神話の高天原をパクったと。神の住まう高天原 (実態はICU)…ドシュールだ!
ICUが高天原なら、この神域は…日本風に考えると鳥居を越えた先の神域? いや、フーちゃんのいた神殿最奥に繋がる出入口はこの世界にあるけど、通れるのは私か両親だけ。となると、ご神体祭ってるところ…? でもなぁ、入れるところはかなり近くまで寄らせてもらえるらしいしな…。
気にしたら死ぬ。放置!
ついでに私という子の概念を利用して、親たる二柱を改変。世界と切り離し、世界同士も切り離す。これでどれか滅んでも滅ばない。
瘴気の影響が出てる部分をちょいちょい手直ししつつ、瘴気を生まないようにして、新たに私を再定義。再定義に巻き込まれて、二つの世界とICUが私の管轄下に。…おぉう。他にいないとはいえ、私が全部管理せにゃだめっぽいな。
改変では歪みをいい塩梅のところで止めるのに父様と母様自体の力を使ってる。けど、足りなさそうな分は、かつて私らが親子喧嘩というか、地上最高に迷惑な遊びでばら撒いた分とか、そのほか諸々で散った分とか、そのあたりの力を回収してるね。
トリラットヤとかの石は力の結晶のはずだけど…、普通に資源として残ってるのよね。力が失われているから多少、劣化しているでしょうけれど、長い時間がたって存在を確立したからかしらん?
まぁ、そのあたりはいっか。
「私は、しばらく!自由だー!」
と思いたい。何も忘れてないよね? …ん?
「やっほい。父様、母様」
「まともに喋るのは最初以来ですが…、お元気そうですね」
「無事に全部終わった…かな?」
うみゅ。なんとかね。二人は文字通り人生…じゃねぇな。龍生終えてきたみたいだね。
「何してたの?」
「ん?やっと終わったから、父様と母様が何をしてくれたかの記録を読んでた」
あ。そうだ。微妙に訳わからんから聞いとこう。
「瘴気の改善って何?」
「ん?瘴気をエネルギーにしただけだよ」
「私たちが世界改変の動力源として用いたのです。それすなわち、エネルギーでしょう?」
何を当然みたいな顔されてもわけわかんにゃいんだけど。
「世界を引きちぎるときに瘴気で歪ませて、歪みを調整することでうまいこと世界の一部を細くしてちぎったりした」
んん? 瘴気は改変に使った力。だからエネルギー! そういうこと? そう…っぽい。
「瘴気って扱い間違えたらやばいじゃん。危険性のあるエネルギーって何?」
「そもそも、エネルギー自体が扱い間違えたら危ないものでしょうに。火力発電は化石燃料をガンガン燃すことで、その化学エネルギーを電気へ変換してるのですよ?」
「その時に湧いてくる熱エネルギーに炉が耐え切れなければ炉は解け落ちる。それと一緒」
確かに。でも、それは…エネルギー変換の過程でエネルギーが望ましくないものに転化してしまってるのが悪いだけで、瘴気みたいに存在が害悪なものとは違うんじゃ…。ま、細かいことは気にしないでおこう。
「となると、私がのたうち回りながらやってた作業って無駄?」
あれは白地──現、私の住処──にあふれてた瘴気を消す作業。エネルギーなら消す必要はなかったんじゃね?
「あー。それをしてくれてたのね」
「ならば、声をかけるべきでしたか…」
あり? なんで父様たち、私が何してたか知らないの? 私、それは言…ってなかったわ。父様と母様が入ってきた部屋の入り口に「修羅場中入られると死にます」って書いて面会謝絶してたわ。orz。
「どうした?」
「少し私の馬鹿さ加減に泣きそうになってるだけ…」
「ラトちゃんの作業は無駄じゃないですからね。残念ながら、エネルギー扱いにしても、エネルギーになる部分と、それじゃどうしようもない部分がありまして…」
そっちの処理作業してた…と。そういや、地球の方にも迷惑かけてるはずだけど私が何かした記憶がねぇ。それの対応もしてくれてた? …うん。なら立ち直れそう。切実に声かけときゃよかったとは思うけど!
「ねぇ、もし私が声かけてたらどうなった?」
「できて作業手伝うだけだな…」
あり? 一撃でしゃきーん! って解決しないの?
「書き換えはできなくもないです。…が、どこかで無理が生じるかと…」
おうふ。
「生じる無理な部分は頑張れば抑えきれると思いますが…ね。」
「ほぼ永久に耐えなきゃならないからな…。いつか押し負けて消えるかな?」
「止めてよね!?泣くぞ!?」
二人が死んだ悲しさと、それをさせたからって姉様、兄様にぶち殺される恐怖で!?
「わかってる」と言いつつ頭を撫でてくる二人。…なら、いいけどさ。
「つまり、改善は瘴気をエネルギー認定したこと?」
「うん。そう」
「ラトちゃんが元気なのはそのおかげですね」
ふぇっ!?
「瘴気をエネルギー認定。そのおかげでラトちゃんの瘴気製造はエネルギーと駄目な部分、その二つの製造能力に分離しました」
「だめな部分は排除。でも、やっぱり消しきれなかったから、世界に産生する駄目な部分の巨大産出口にした」
なるなる。確かにそのおかげって言えるね。何もしなくても力得られるわけだし。ふふふ、不眠不休、水分、食事抜きでも働けるのだー。
「あの、ちょっと目がイッてますけど、大丈夫ですか?」
「じゃないと思う。なでて引き戻そう」
…はっ。私は何を…? あ。そうだ。
「産出口はどこ?」
「え?ラトに任せなかった?」
「一応、暴れた罰も兼ねて、面倒ですけどお願いしますって…」
ん? 任せた…? ……あ。あー。あれか。第二次惨劇の引き金になったやつ。…なんということでしょう。第二次惨劇は私の怠慢が招いたものだったのです。
「いきなり失意体前屈になってどうした?」
「少し昔の物事に思いをはせてただけ」
気にしないで。すぐに立ち直…った、
「なんで罰なんだっけ?」
「生まれ変わったから無罪でいいと思うんだけど、」
「それが駄目な人もいるでしょうし、ラトちゃんもそれが気持ち悪い…となったら困りますので、形式的に」
なるほど。「形式的」のつもりだったのね。ふふっ。形式がガチ罰になるとは。泣きたい。私ってほんと馬鹿。
「あ。そういえば、なんで来たの?」
「死んだから」
「」
理由が。理由がひどすぎる。
「というのは習君の冗談です。いい加減、ラトちゃんに会えるかと思いまして」
おぉ、嬉しい。ありがとー!
「それと、そろそろ回復しただろうから、ラーヴェとシュファラトを一回殴ろうと思って」
え?
「止めたげて!?まだ回復してないから!?てか、何のために!?」
「前の色々」
あっ…、うん。正当だ。
「私じゃダメ?」
「親の不始末を子が取ってどうする」
「呆け老人じゃあないでしょうに…」
ですよねー。可愛く首をかしげても駄目かー!
「それに俺と四季、転生したのに記憶消えてないし…」
ふぁっ!?
「無理に決まってるでしょ!?てか、何で消えるものだと思ってるの!?」
「それが生命でしょ?」
「です」
あ。あぁー。人間生まれで、神の知識もあるからこうなってるのねー。
「そりゃそうだけど、例外があるでしょ?」
「でもさ、何故か死んだら即転生して、生後1日くらいで、アイリをはじめとする俺らの子に「やっほー。久しぶり(意訳)」って言われたんだぞ?」
何で生まれ変わるの察してるの…。姉様たちなら出来そうだけどさ。
「私たちが結婚したらしたで、生まれる子は基本的に、アイリちゃんなどの寿命の関係で死んだ子でしたしね…。何かしてるなーと思ったら「久しぶり」ってものを並べて書いてるんですよ?」
軽くホラーだね。とはいえ、記憶のない転生したい魂が、記憶と縁のある魂に勝てるわけねぇべ。だから、再度子になりたがってる子らが全員転生してからようやく、前世関係のない新しい子の誕生になる。えぐぅい。
「その次もひどいしな。また記憶消えてないし、殴られるのを察したからか、転生先は長寿命の龍だぞ?」
「しかも、兄妹…いや、姉弟?まぁ、ほぼ同時でしたしどっちでもいいですか。兎も角、血縁あったのですよね。問題ないように捻じ曲げましたけど」
うん。二人なら「シャイツァーは人間だけ」…ってきまり? みたいなの諸共、近親でも平気なように書き換えるよね。
「そこでもまた、アイリたちがいるしな…」
「やっほー。久しぶり」(3回目1生ぶり)ですね、わかります。人間じゃないはずなんだけど…、魂で見極めてるっぽいね。
それはさておき。一応、聞いとこう。話聞いてる限り不安だ。
「ねぇ、もしかしてだけど、まだ人間だと思ってるとかないよね?」
ふたりがピタッと固まって、空を見上げる。…見ても天井だから真っ白だぞ☆。
「神の記憶は弄れない…か」
「うみゅ。正確に言えば弄れるけど、ずたぼろのパパママ、くっそ忙しかった私ができる作業じゃねぇべ」
転生にまつわる世界の機能もあるけど、この世界の神に仕事するわけもなし。てか、ICUでずっと寝てるパパママより下手したら強い可能性のある二人に作用できるわけもなし。
「となると…、うちの子らも?」
「人による」
としか言えないかなー。
「ちょっと待ってね。調べる。えーと…、森野習、清水四季として産んだ子らは亜神クラスだね。何かやらかすか、力が欲しいってなると亜が取れる。カレン姉様はハイエルフだから微妙…。でも、正味、神でいいと思う。|長寿命勢《セン、ガロウ、レイコ、ルナ》は…うぇっ。嘘でしょ、まだ一回も死んでない…?となると、亜神かな」
死んで記憶あり転生とかした時点で神になりますん。かなり強いぜひゃっほい。
「となると残りの子らは?」
「アイリ姉様、コウキ兄様、ミズキ姉様?ははっ。神に決まってるじゃん」
アイリ姉様は前身が勇者。残り二人は神話決戦時の英雄の子孫で、なんか色々あって、その上に神から産み落とされてる。そして三人は記憶消えずに転生してる。どう考えても神様です。本当に以下略。
「俺らがなったきっかけは?」
「そりゃ、パパとママの魂まぜまぜだけど…、シャイツァー改変が結構ヤバめ」
「だよなぁ…」
「ですよねー」
改変時に体が変わった気がした…的なこと本に書いてたけど、そりゃそうだよ。権能が二人のものになったんだから。それに伴い、私を何とかしてほしいと思ってたアークライン、白地がパパとママには過剰な分を二人に回した。だから力があるような気がしてたんだよ?
「でも、これはせいぜい両足切断くらい」
せいぜいって言っていいのかわからんけどな。
「トドメは私を実際に書き換えちゃったことだね。心臓摘出して放置するレベルで致命傷」
「もとからいた三柱が抱えていた問題を解決したのがやばかったか…」
いえす。文字通りの神話創造。
「後、気づいてる?私の名前、二人の名前も入ってるんだよ?」
「単に俺らがいたからとった…というだけでは、」
「そうはなりませんよね?」
「うみゅ」
パパとママも神にするためにやったわけじゃないと思うけれど、
「二人は魂の一部が入ってるからほぼ自分。だから、私の産みの親といえないこともない。し、改変で私は生まれ変わる。そういう意味で二人は生まれ変わった私の親…、そういう観点が入ってるからね」
神の親は少なくとも普通の人間じゃないだろ。そんな理論でアウトー!
「心配しなくても、これがなくても神話作ってる時点で駄目です」
「いや、ラト。神になったからって恨むことはしないぞ」
「ですです。その名前をそのままつけることにしたのは私たちですし、全て私たちの行動の結果。責任をとるのは私達以外にあり得ません」
さすが二人。覚悟ガン決まりですにゃあ。
「一応、混ぜた理由聞く?推測だけど」
「ん?いや、いい。ある程度推測できるし」
「ですね。さっきラトちゃんが言った理由で感謝を込めた。またそのついでに、」
「自分たちの名前だけでラトの名前を作って、誰も覚えていない元の名前と一致するのが嫌だった…だろ?」
うん。私もそう思う。
「そんなんだから、私のファヴェーシュウキラトには単語としての意味なんてなかったりするよ。ラーヴェ、シュファラト、シュウ、シキ。被らないように一字ずつ抽出して、ラーヴェ、シュファト、ウ、キ。要は4人(柱)の子って意味かな?」
あ。
「心配しなくても、私はこの名前が好きだからね!?」
撫でられた。…わかってくれてるみたいなのでよし!
「てか、神の自覚の確認したけどさ、龍だったときにでも神話に接する機会があったんじゃ…」
世界に生きている命に言うと失望されてしまいそうなことはそっと誤魔化してる。そのせいで大げさに脚色された神話が。
…まぁ、失望されるとマズイ。そんな意識があるから神であるパパとママは誰にも相談できなかったんだけど。だから、二人も「なんで誰かに相談しなかった?」という類いのことは一言も言ってなかったはず。
現実問題、相談したところで、私を殺す方策は出ても、この道にたどり着く方策は出ないしね。
「あったなぁ…」
「ですねぇ…」
何故それで悟らぬ…。
「ヒント、アイリたち」
大げさに書いた神話隠してたのね…。でも、二人のことだから悟ったとしても、姉様達の「父様と母様が無名なのは許せない!」みたいな思いを感じられてしまうから、流しちゃうんだろうね…。
「そういえば、国はどうだったの?」
戴冠式くらいは頑張って見たけど、そっから先は知らないんだよね。
「さっきまで何故か俺と四季が国王夫妻やってたよ。「人」ですらないんだけど」
「魂の正当性とか始めて聞きましたよ…」
「血」でなくて「魂」。なんかすごい。これがパワーワードか!
「血縁での殴り合いとかは?」
「なかった。そもそも、俺と四季が人間だったときに生んだ子も、俺らが生きてる間に子に譲ってた」
「龍になってからはお察しですね。アイリちゃんたちは私たちがいれば王になる気はない。新しい子らは…、なる気がないか、なる気があってもしばらくすると、「ごめん。遊びたい」といって辞めちゃうので」
うわぁ。
「その短い治世の中で中々偉業を残すんだよなぁ…」
「子供たちは私たちの方がスゴイとか言ってくれるのですけど…、超発展させる気がないですからね…」
ほえー。
「あの、大丈夫です?やっぱり疲れているのでは?反応がちょっと死んでますよ?」
「兎も角、うまく回ってる。大丈夫?少し休むか?」
!
「ごめん。ちょっと色々ぶっ飛んでたから。で、これからどうするの?」
「少なくとも、もう一回は降りてくることみんな期待してるだろうから…、転生するかな」
「その生の中で、アイリちゃんたちに話を通しつつ、転生しない宣言もしますかね」
律儀。めっちゃ律儀だ。
「あぁ、もちろん、カレンとか下にいる子には会いに行くし、」
「会いに来れるようにもしますけれどね」
そりゃね。しないと暴れると思うよ?
「その後は、合流するかな」
「神になってしまってるなら、何とかしないといけなさそうですしね…」
え゛? 全部仕事は終わったはずなんだけど?
「いや、何もしてない。この世界群は大丈夫なんだけど…、」
この世界群は? まさか…、ちょっと視点を広げて…、
「この世界が樹みたいになっとる…」
「だけじゃないですよ。外見てみてください」
この樹の外…にも同じようなやつが。いっぱい。あの世界群…めんどくせぇ、丸パクリして世界群の樹をユグとでもしよう。ユグがいっぱぁい。
あのユグの管理者は…いねぇな。管轄は…私らの世界から派生してるから、私らか。ふむ。
「人手が…ヒトデが足りない」
「だから、他の兄姉とかに頼んでくる」
「私たちがまともに動けるようになるのに多少かかっちゃいますが…」
「それでも、お願い…」
姉様たちも多分すぐには無理。神の自覚をした後に、転生してもらわないときっと駄目。母様たちは生まれなおすと未熟すぎる。大きくなるのに時間がいる。
「でも、あの世界でなら多分すぐです」
「ひどいことにはならないはずだから、一仕事終えたのだから、遊んでおくといい」
ポンと私の頭に手を乗せて撫でると、姿が消え去る。
転生が唐突だな!? ま、あそべるならあそぼっか。さすがにフラストレーションが。せっかくだし、二人の話とか探そう。さすがに表に出るわけにはいかないけど、下界の蔵書は魔法のタブレットで見れる! ふぅ!
というわけで、スイッチオン。みっけ! 二人の話! ……うわぁ。すごいな。初代国王の時代、コンマ0秒までぴったり同じで死んでる。なんという運命力。いや、それで片付けちゃ駄目なんだろうけどさ。そりゃ、パパとママも力回復に利用したくなるよね…。
あの時の最大の問題は、世界から回ってくる力でさえ強すぎて死ねる可能性があること…だったりするみたいだけどさ。ある一定以下よりは弱い必要があるけど、弱すぎると意味がない。という…無理ゲー。それを満たせるたった二人の恋の出力。人間達の信仰心が貧弱貧弱ぅ! なわけではないはずだけど。
で、次の転生は生誕、死亡が同時。龍も同じ。…さすがにやばい。これ、二人のご利益で一番強いの夫婦円満では…?
ん? やばい…? 何かやばいことがあったよう…な? うげっ。第二次大惨事引き起こしたアレ、修羅場で手をつけれてない!
えっと、確か前みたいな騒動はごめんだから、多少、安全なところに鍵かけて…、ここかぁ!? あったぁ! 消えろ! よし! 大惨事は防がれた。もうちょいで溢れるとこだったぜ☆。
ふぅ…。あ。そうだ。こっそり隠してあるあれを見ていこう。
この部屋の外、上の方をいーじいし。おk、天井開いた。上って、私が作業している部屋。その直上まで浮いていって…あった。勇者召喚陣。
父様と母様に見られたって、これが二人に忌々しいものでも、破壊しろとは言われないと思う。
パパとママに見られても、これが二人の黒歴史でも、壊されることはないと思う。
私が「大切」とさえ言えば。
それでも、この召喚陣は独り占めしておきたい。もし、万が一、以前のチヌリトリカのようになってしまっても、私の名前を誰も知らなくなったとしても、4人の親から与えられたものは確かにあった。それを実感したいから。
…まぁ、パパママと違って、父様と母様がいる今なら、手の打ちようがなければ、私の存在を覚えたまま踏みつぶしてくれるだろうけどさ。
でも、私が4人のことがわからなくならなくても、例えば、4人は私が消え去った後、長い時間が経てば私のことを忘れるかもしれない。そうなったとき、私の遺品に値するものとして、これを残しておきたい。
パパママはこれが最初に作られた理由を考えるはずだ。父様と母様はこれが何で忌々しく思えるか考えるはずだ。間接的だっていい、私がいたことを思い出してほしい。心に刻んで、永久に私の存在を忘れないで欲しい。何なら私がいない寂しさを抱えたまま死んでほしい。そんな我儘のためにこの陣はここにある。
でも、そうなってしまうのは嫌だ。ならないのが一番。ならないようにするには簡単。このまま生きていればいい。
だから、この陣をお守りとしても置いておく。もうパパとママの仕込みはないから、発動しないけれど、この陣はかつて暴走していた私を止めてくれた陣なんだから。
……む。そこまで意味をこの陣に置くなら名前をつけるべきかな? となると、名前は一つしかないね。
この陣は不器用なパパとママが創った、私の勇者──父様と母様──を召喚した陣。
だから、この陣の名前は、『白黒神の勇者召喚陣』だ。
お読みいただきありがとうございました。これにて本編は完結です。
後書きを活動報告にあげてあります。よろしければお読みくださいませ。
URLは以下です。
後書き
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「それはいいや」という方はここでお別れです。長い間お付き合いくださりありがとうございました。
また、私が何か書いた際、見つけたらお読みに来てくださると嬉しいです。