249話 舞
時系列は246話終了直後で座馬井条二視点です。
芯達がマカドギョニロのちっこいのと、ウカギョシュのちっこいの。それに、シャリミネで出来た鎧を持って走ってった 。
ま、芯達なら大丈夫やろ。ちゃんと、魔物の少ない外側にぶっ飛ばしたみたいやし。せやから、俺らが対処せなあかんのは、ちっちゃいリブヒッチシカと、魔物達だけやな。
「なっ…。貴様ら、自ら分断されていくというノカ!?」
「そうせなうちらも、臥門はんらも、ちゃぁんと行動できひんからねぇ…」
青釧さんの言うとおり。俺らの攻撃は範囲攻撃が多め。どー考えたって、巻き込むで。
「せやから、心配無用やで、糞野郎!」
「やな!むしろ自分の心配した方がええで!」
青釧さんが舞い始める。それに合わせて、俺が笛を吹き、りっちゃんが太鼓を叩く。笛先からひょろひょろと緑の風が出て行き、太鼓からどこどこと黄に色づいた雷が飛び出し、青釧さんの扇からひらひらと桃色の花びらが飛び出てく。
そいつらは俺らの周りを飛び回って、中心に向かって吹く渦を成す。寄ってくる魔物はこれで殺したる。ちっこいリブヒッチシカ…、めんどいな。チビリブが魔物を作ったって、かなり強うない限り、これに巻き込まれて即死する。
自分から渦に飛び込めへんくても、外から吹く風が無理矢理叩きこむ。叩き込んだらりっちゃんの雷が焼いて、青釧さんの花びらが切り刻む。チビリブが再利用できそうなしっかりした死体なんか絶対に残さへん。
「これで封じ込めるんちゃう!?」
「油断したらあかんで、りっちゃん。封じ込められたかて、まだ何か隠してはるかもしれへんからなぁ」
「せやな!」
りっちゃん、素直やな…。実際、何かあるやろうけどな。
てか、そもそもやな。習と清水さんが戦ったとき、「最後に置き土産置いていった」って言ってたやん!
「青釧さん。殺すだけやったらあかんで!」
「わかってる。きっちり破壊してあげやなあかへんね」
それをわかってくれとるならええな。シャイツァー…やないな。白授の道具やったか? それを破壊しきらなあかんやろ。習と清水さんの時はせえへんかった…というか出来ひんかったらしい。けど、その結果出てきたんが、ついさっき何か知らんけど出てきて、速攻殺されたノサインカッシェラやったな。うん。確実に破壊せぇへんかったら後でやばいことになるな。
即死させられてたせいで、いまいち驚異感がないんやけどな…。まさか、あのノサインカッシェラは油断させるのが狙いなんか? ……残念やったな。清水さんがあかんかった時点で、油断なんて言葉はこっちにはないで。
「チッ…、貴様ら、我に満足に戦わせないつもりか?」
「そらそやろ?なんであんさんの土俵の上で戦わんとあかんの?あんただって逆の立場やったら、そうしはるやろ?」
「確かにナ!」
納得するんやな。納得したところでなんかが変わるわけではあらへんけどな。
「故に、我は手札を切ろう!」
!? 何かする前に、その宣言する阿呆がここにおる!?
「やらさへんよ」
青釧さんが突っ込み、何かやろうとしているっぽい右腕をぶん殴る。ブシャッっと血が吹き出して、プランと腕が垂れ下がる。
は? 待って。わけわからんねんけど!? なんで扇で殴っただけでそんなにダメージ受けてんの!? 今の今まで殴ったって、鈍器で殴ったようなダメージを受けてただけやったやんか!?
「お疲れサマ!」
ちぎれそうな腕を振り上げ、血をバッっとばらまき、腕がちぎれて吹っ飛ぶ。血を警戒した青釧さんが後ろに飛び退き、俺らの追撃を妨害する。悠々、びゅっと飛ぶ腕を追いかけ、頭をパカッと開けると、腕がスポッと収まった。
ちょっ…。白授の道具言うてるくせに、白授の道具は頭なんかい!? うちの身内にそんなんおら…、おったわ! コウキがそうやった!
「発進!」
再度、頭がパカッと開き、コロコロ出てくる卵っぽいやつ。
「兄ちゃん!青ちゃん!殴るで!」
「待つ必要なんてないからな!」
俺とりっちゃんで風と雷を叩き込むで!
「百引はんの性格を考えるとちょーっと心配やけどねぇ…」
あ゛。それ、やる前に言って欲しかった…!
「殴っちまったものは仕方ないよね!兄ちゃん!」
「せやな!」
とことん殴ってしまうんや! 一向に堪えている気配がないんやけどなぁ! やっちまってる感が割とあるけど…、んなもん、そっと蓋をしときゃええねん!
「じょーくん。りっちゃん。アレの準備しといてや」
「「うぃ」」
了解。その心づもりはしとくわ。
「ギャグアアァ!」
あ。やっぱあかんかったか…。普通に卵が孵ってしもた。
「たんと喰らいや」
一瞬、俺とりっちゃんは黄昏れたけれど、青釧さんは一切そんなことはない。生まれたばかりで雄叫びを上げる魔物に花びらを喰わせる。
「喰らう(無理矢理)とは」
「そもそもこいつ、ライオンっぽいで。肉食動物に草喰わせるとかいじめかな?」
「敵やで?いじめで結構。ほら、じょーくん、りっちゃん。二人も食べさせたって」
あいあい。青釧さんのせいで口を閉じられないライオンの口めがけ、風と雷をぶち込こんだる。風が口を切って、雷が切れたところを焼く。痛そうやな。でも、
「りっちゃん!雷で焼いて止血したらあかんやん!?」
失血死しそうにないけど、血が垂れ流しになってくれたら、じわじわダメージ与えられるんやで!?
「じゃあ、止血しないと死んじゃうレベルの怪我させーや!」
ド正論やめーや。さすがにでっっかい風を撃ったって、切れへんやろ。あれ? ていうか、今だって口の中やから効いてる感があるんやで? あいつの体に撃ったって、薄皮か毛の数本切ってしまいやで?
「回れ!そして、喰え!」
命令されたライオンがその場で横にヒュパッっと回転。その最中に飛んできた、魚? みたいなのをパクッと喰った。たぶんアレ、習や清水さんがおった時に大量に殺した魚の残りやろなぁ…。
「肉食のライオンに魚だとぉ!?」
「りっちゃん。魚も肉やで」
魚屋さんと肉屋さん。大概、売られるときはそんな風に別れてるけど、どっちも肉やで。
「魚は魚肉やんか!?」
「肉は肉でも狭義の肉やったんか!?」
「絶対わかってたやろ!?」
そりゃな。あの文脈やもん。逆にわからんかったら国語力が…。いや、言葉の意味がわからへんかったらわからんか…?
「二人とも。とりあえず黙ろか。あのライオンも、口を閉じはったみたいやし…」
せやな。
「にしても皮、硬いで!?」
「そりゃな。チヌカの腕を犠牲にして作られた奴やしな!」
ただ……、ちらっとチビリブを見る限り、腕が再生してへんな。他人の攻撃やったら、腕がもがれようが再生しとった気がすんねんけど…。白授の道具で材料にしてもうたら、再生できひんのかね? 普通に腕もがれた時みたいに血がドバッって流れるんやなくて、元からなかったみたいにペターってなっとるから、たぶんちゃうことはないやろう。
ただ、切断面見てる限り、「腕がなくなった」以外のデメリットはなさそうやなぁ…。
「ッー!」
「青ちゃん!?」
「青釧さん!?」
サッっと青釧さんとライオンの間に割り込む。今、思いっきり腕に噛みつかれてたように見えたんやけど…。
「『回復』…すごいなぁ。これ。食いちぎられてもちゃんと生えて来たわぁ」
!? 食いちぎられた? 思わず振り返りそうになるんを我慢して、ライオンの口を見る。……ちらっとしか見えへんかったけど、確かに腕が咥えられてた。
やりやがった。やりやがったな!? なにさらしてくれやがるんじゃワレェ!?
「あー。心配せんでええよ。腕の一本や二本、いかれてもうたって、死なへん限りただの怪我のうちや。それに、この程度やったらまぁ、耐えられへんことはないしなぁ…」
「それはそれ」
「これはこれやで!青ちゃん!」
もうちょい俺が警戒しとくんやった…! 「硬い」って言うてるんやったら、周りの風や雷、花びらなんてものともせえへんのはわかってたやろうに! このド阿呆!
「じょーくん。りっちゃん。うちが結構な傷を受けたからって、雑になりなや。それで二人が攻撃くらってもうたら、うち、どういう顔したらええかわからへんよ?」
わかってる。わかっとる! せやからさっさとチビリブをぶん殴りたい。ぶん殴りたいんや! やけど、ライオンが邪魔や! しかも、俺のシャイツァーは笛。やから、音を出し続けようと思ったら、あんまり笛から口外しておられへんし…!
ッ! 危ないな。「お手」の破壊力が笑える。普通に床ぶち抜くやん。猫やねんから水嫌いなんちゃうん、自分?…ちゃうんやろなぁ。そうなんやったらやらへんやろ。逆に嫌いやのにやってくるんやったら自爆ネタやな。
「青ちゃん!そろそろ!」
「せやねぇ。でも、まだ本命はあかんから…、適当に捌きましょか」
了解。ライオンとチビリブ以外の魔物は、相も変わらずずっと展開されてる嵐に巻き込まれて死ぬ。せやけど、さっきまでより素早く、できるだけ死体が残れへんように死んでる。それを続けさせればええねんな。
「やはり有象無象ではダメカ…!さすが勇者とでも言うべきですカ。ならバ!」
腕を勢いよく振り上げ自切。それを頭で受け止めるチビリブ。
「新しい卵ダ!」
ころころ転がってくる卵。
「殴ったらあかへんよ。じょーくん。りっちゃん」
「わかってるで!」
「いくらあたしらでもやったらあかんことはやらんで!」
大阪人や言うたかって、フリかフリじゃないかくらいは判断できやなあかんもんな!
「でも、青ちゃん。今展開してる嵐が直撃するんちゃう?」
「まぁ、せやね。でも、前よりは弱くなるんちゃう?途中でやめるわけにもいかへんし」
ということは…、風と雷。それに花びらが卵に当たるのは避けられないってことやん!?
「せやね。でも、悪いようにはならへんよ」
仕込みはしてるけど…、それの効果が出るまでにはまだまだかかるはずやねんけど…!
「大丈夫やって。ほら、うちかてライオンはんと遊べるで?」
? ごめん。理屈が行方不明やで。青釧さん。えっと、「腕喰われてもうたけど、もう前に出て戦えるで」ってこと?
「あれ?面白うなかった?」
「くははっ!出でヨ!我が僕!」
やっぱ孵ってしまうか…! 出てきたのは…象か?
「兄ちゃん!天王寺で見たことあるな!」
「せやな」
象がアフリカ象かインド象かは、割とどうでもええけどな。今。
「いけ!潰セ!」
勝ちを確信したらしく、偉そうにふんぞり返り、指示を出すチビリブ。
「喰らい殺してもうて」
青釧さんが小さく、やけど、はっきり伝わる声で言う。
「ガルッ!」
「バオッ!?」
「ハ!?」
!? ライオンが象を襲った!? 何で!? いや、確かに。戦闘が始まってからずっと、洗脳出来る音楽を流し続けてはおるけれど、効果が出るまで早すぎるで!?
「共同作業と行こか」
動揺する俺らを尻目に、ライオンとともに象に襲いかかる青釧さん。最初の一撃で右前足を食い千切られてもうてる象は、既にバランスをとることすらおぼつかへん。
そんなとこに、ライオンが右後ろ足をダメ押しに食い千切る。あぁ、もう象は立てへんな。倒れたのを見届けた青釧さんが象の口の中に扇を叩き込むと、血がドシュッと噴き出す。けれども、青釧さんは気にせずザシュザシュ切り刻む。
「じょーくん、りっちゃん。ちょっとの間ちっこいリブヒッチシカはんを頼むわ」
了解。逃がさへんように、風と雷で囲むで!
「バッガッ」
「チッ。作ったばかりなのニ…!」
早いな!? あ。見たら納得やわ。ライオンが象の心臓付近を足で踏み潰しとる。右の足を二つ奪われて倒されてるんや。そんな状態じゃ、上から体にのしかかられたらどーしようもないわな。
「食べてもええよー。ただ、急いでな」
「ガウッ」
大きな口で心臓付近を一口。骨ごとかみ砕きながら血肉を摂取。そのたびに体が巨大化していくライオン。
「あれ?なんか気のせいか大きなってない?」
「気のせいやのうてガチで大きなっとるなぁ…」
感じられる威圧感も増大しとる。大丈夫なんか、これ? 青釧さんが大丈夫言うとる以上、大丈夫なんやろうけど、めっちゃ不安や。
「ガフッ」
「ゲップしてるんやけど」
「しとるな」
幸せそうな顔しとる。威圧感が尋常やないけどな!?
「そら、行き。喰い殺してしまいや」
「ガルッ!」
青釧さんの声でチビリブに飛びかかる巨大化したライオン。俺らがチビリブの回りに展開してる風も雷も、青釧さんが作る花びらすら真っ向から受けて突撃。時折目にかすってくのを鬱陶しそうに手で弾く以外、特に反応を見せやせえへん。
やっぱりまずない?
「よく来たナ!戻るがいい我が僕!」
頭をパカッと開いて待ち構えるチビリブ。飛びかかるライオンはそれを無視して背面に回って、チビリブを押し倒す。
「ナッ!?何故!?何故だ!?」
足で押さえつけられながらわめき散らすチビリブ。それを青釧さんは哀れなものを見る目で、口元を扇で隠しながら見とる。
「何でって言うたかて、既にそのライオンはうちらの術中にはまっとる。それだけのことやろ?」
「はぁ!?こいつは私の僕ダゾ!?そのような理屈が通用するカ!?」
「通用するんよ。残念やったなぁ。その子はもう、うちらのもんや。あんさんの言うことに従う義理もなけりゃ、あんさんの道具の統制下に置かれる言われもないんよ。堪忍な」
俺ら? え? 洗脳ぐらいで、白授の道具の影響下から脱っせるん!? 無理やろ!?
「何故!?我の統制から外れた理由を答えロ!?」
「嫌やん。謎は謎のまま。それもまた乙やろう?せやから、」
言葉を切って、嗜虐的な笑みを浮かべる青釧さん。
「そのまま死なはって?」
ライオンの足が頭を踏みつけ、ギリギリと圧力を強める。
「じょーくん。りっちゃん。あの子強化しよか」
「「了解」」
不安やけど、従っとこか。奏でるは戦うものを応援する調べ。俺の笛もりっちゃんの太鼓も、和風。だからあまり派手とちゃうけれど。それでも、太鼓の音はお腹の奥に響いて、勇気づける。笛の音は優しく体に染み入って、傷ついた体と心を労るように前に押し出す。
それを完成させるのが青釧さんの舞。俺とりっちゃんの音を受けて、ひらりひらり舞う。一挙手一投足が見惚れるほどに美しく、思わず見入ってまいそうになる。
それを受けたライオンは力を強め、チビリブがじりじり床にめり込んでいく。
青釧さんが手を大きく広げ、くるりくるりその場で回転。扇に追従する桜が、笛の音とともに吹き荒ぶ緑の風が、太鼓の音と一緒に駆け巡る金色の稲妻が、青釧さんの動きだけやなく、彼女自身の雰囲気を神秘的なものに跳ね上げる。
その荘厳さは見るもの全てを魅了する。「舞をずっと、永遠に、永久に見ていたい」そう思わせる。やから、「見るためならば、体がどうなったって構わない」なんて、本末転倒な判断を下してしまう。
「ガルルッ!」
ライオンが一吠えすると、足を持ち上げる。チビリブは青釧さんに魅入られたか動けない。その上に、自分を維持するための魔力すら攻撃に回したライオンの足が振り下ろされる。
ドガッ!
鈍い音が響き渡る。次いで、パキッとチビリブの頭…白授の道具が砕け散る。少し遅れて床が砕け散り、それでもなお、殺しきれへん勢いが、湖面の水を押しのけ、湖中の魔物を粉砕する。
せやけど、湖にはチビリブもライオンも落ちてはいけへん。チビリブはライオンの攻撃で、ライオンは自分の攻撃の反動で既に塵と化しとる。
「これでしまいやね」
「「せやね」」
いろいろ聞きたいことはある。やけども、チビリブは倒せた。
「じゃあ、芯達の方へ合流せえへん?」
「兄ちゃん。倒したばっかやで?青ちゃん疲れてるやろ?」
……確かに。
「青釧さん。少しだけ休憩する?」
「させてもらえるんやったら…、させてもらいたいなぁ」
ほんなら、しよか。ついでに聞きたいこと聞いとこう。
「なぁ、習と清水さんからもらった紙って、あんな回復力あったかいな?」
絶対、あんなにはなかったはずなんやけど…。
「あったみたいやね。尤も、さすがに損傷が大きすぎて、回復するときに一枚丸々もってかれてもうてるんやけど。でも、腕に比べれば安いもんやろ?」
そりゃな。てか、習に清水さんも重篤な怪我を見越して渡してくれてるハズや。使わんかったら怒られてまうやろ。
「ライオンはどしたん?なんで支配下から外れたん?」
「そんなん、あれがうちの腕を食べて、ずっと舞を見とったからやん」
?
「そもそも、あの子、勇者であるうちの腕を食べても、大きなれへんかったやろ?あれはうちの腕がちょいちょいと悪さしたからやで?」
え? 腕が動いたん? 何そのホラー。
「二人が想像しとるようなんとちゃうで?ただ、ずっと流れてた音楽とうちが舞ってた舞。それらとの相乗効果やで。二人の音楽と合わさって、見惚れるほどのうちの舞。それをずっとあのライオンは見とったんよ?そして、そのうちが扇を持つための腕を食べた。つまり、うちの血肉を取り込んだんや。うちの扇を持つために必要な腕を食べてしまうほど、うちの舞が好きなファンや。そんなん、うちのもんやろ?」
見とった(戦いの最中だから見ざるを得えへん)。食べる(物理)。そして超理論。突っ込みどころが多いなぁ…。
「せやから、ああなったんよ。うちが思考誘導とか出来ること、相手さんは知らはれへんしな?意図して対処しようって事がないから楽でええわ」
となると…、相手がこっちのことをあんまし知らん。あのライオンは舞の効果だけやのうて、青釧さんの腕を喰ってもうたから、その影響もめっちゃ受けた…と。なるほど。腕が鍵なんやな。……むちゃくちゃするなぁ!?
「さ、じょーくん。りっちゃん。休憩はもうええよ。この位置やとおちおちゆっくり出来もせえへん」
「せやな!中心から遠いとはいえ、外縁よりは近いもんな!」
あ。待てや。俺の考えたこと察したんか!? 流そうとすんなよ!?
「臥門はんを探して合流しましょ。その後、遠距離から森野はんらを援護しましょか」
あ。ちょっ…。腕喰わせるのも策のうちだったとか、やめてや!? 怒るで!?
「兄ちゃん。そんなんあるわけないやん!あれは不幸な事故やで!」
何でや!?
「だって、青ちゃんやで?あの子がうちらが見るのが大好きな舞を、二度と舞えへんようになるかもしれへんことを、するわけないやんか!」
めっちゃいい笑顔で言うりっちゃん。でも…、確かにそうやな。あの舞は体全身をいっぱい使う。どれかひとつ欠けたかって、出来やせえへん。せやな。事故か。
せやったら、俺とりっちゃんで、もう事故が起きへんようにせなあかんな! 手始めに、この辺の魔物片付けたるで!