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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
8章 再人間領域
274/306

閑話 ミズキのアークライン神聖国への手紙配達

ミズキ視点です。

時系列的にはフーライナ編の後、樹軍戦の前ぐらい。

約4500字です。

 アークライン神聖国についたわね。ここは国土もそんなにないし、手紙を渡したいのは教皇猊下。もしくはその妹様。どっちも首都のプリストカウタンにいるのは間違いないでしょう。直行しましょ。



 壁を越えて城の上に。…うん、不法入国ね。というか、まだ城の中に入ってないとはいえ完全に不法侵入。…逆に問題ない気がしてくるわね。まぁ、罪に問われるときは不法入国&不法侵入のWで問われるのだけど。



 さて、どうやって中に入りましょ…ッ!? 何で矢がいきなり下に落ちるのよ!



 頑張ってカレン姉さま! 矢を上に向けてもらって…。よし、都合のいい向きになったわ! これならいける! 手紙を投げて、アタシを手紙が受け止められる位置に召喚! 後は手を離していっちょ上がりね。



 アタシが投げた手紙をキャッチ。うん。大丈夫ね。本当に、投げられる形にしておいてよかったわ。ッー! 叩きつけられたらやっぱり痛いわね…。



「で、アタシには戦う気はないのだけど?」

「信用できるとでも?」


 アタシが彼女の立場なら思わないわね。指揮棒が軽く首にめり込んでいるのは「適当なこと言ってんじゃねぇぞ」っていう圧力なのでしょうね…。



「目的は何?」

「手紙を届けに来たのよ。バシェル王国のルキィ様から」

「…そう。手紙を届けるだけなら正面から来ればよかったのでは?」


 ド正論ね。…父さまと母さまから貰った記憶のせいで貴方には言われたくない! って気分になっちゃうけど。



「バシェルの現状はお分かりでしょう?ですから、余り時間をかけるわけにもいかないのですよ。ブルンナ=クリーナ=ヴェーラン=アークライン様」

「…ッ!よくブルンナだってわかったね…」

「父さまと母さまから聞いていますから」


 じゃないと、顔も見てない、声もぼやけていてよくわからない。そんな人が誰かなんて当てられないわ。しかも城の塔の上なんていう王族が絶対来るはずない場所だし。



「ん?父さま、母さま?…もしかしてだけど、シュウとシキの娘さん?」

「そうです。アタシは森野習と清水四季の娘。瑞樹(みずき)と申します」

「うわっ。まじ!?ごめん!」


 態度がガラッと変わったわね。勇者の子ってネームバリューはやばいわね…。



「ブルンナ様、謝らないでくださいませ。こちらが無作法だったのですから…」

「いや、でも、シュウとシキの子だよ?ちゃんとしないとブルンナが死ぬよ?」


 何を言って…あ。あぁ…。この人、アイリ姉さまが攫われた時の父さまと母さまの怒りをまともに受けてるのね。…ドンマイ。



「わかってくれたの。ならよし!あ。ブルンナに敬語は要らないよ。何故か二人もブルンナに敬語使わなかったし。二人の娘ならいいでしょ」


 敬語使わなかったのは初対面の印象のせいでしょうね…。貰った記憶でもバッチリ、ブルンナ様は子供枠にカテゴライズされてるのよねー。



「じゃ、姉様のとこに行こー!」

「有難いけど…大丈夫なの?」

「今の時間なら書類捌いているか、休憩してるかのどっちかだろうから問題ないとはず」


 ならいい…のかしら? …良いって言ってるし、良いわよね。



「じゃ、今度こそ行くよー。シャイツァーで魔法使うけど悪いことしないから、ジッとしててね」


 了解よ。



 ブルンナ様が中央にある塔の窓を魔法で開ける。



「じゃ、行くよー」


 アタシが魔法で滑るように押し出されて、塔の中へ。そしてブルンナ様も続く。



「ん。じゃあ、あがろ」

「雑ね」


 たぶんアタシじゃなきゃぶー垂れてるわ。



「仕方ないじゃん。元から飛ぶシャイツァーじゃないの。変則的な使い方になるのは仕方ないよ」


 それもそうね。アタシの移動法もカレン姉さまの弓だけど、どう考えても正規の使用法じゃないもの。



「ただ、一つ言わせて。こんな入り方してメイドとか通ったらどうするのよ。不審者と思われたら面倒よ?」


 というか、どっからどう見ても不審者よ。捕まえようとするか援軍呼ぼうとしなければ、そいつの内通か頭を疑うべきってレベルで。…正門を通らなくても許されるのはサンタさんぐらいでしょうに。



「大丈夫。その辺りは秘密だけど何とかする術はあるから。ん。到着。姉様も中にいるね。ノックして…、姉様、入るよー!」


 ちょっ…、ノックしても速攻で開いたら意味ないでしょうに!



「ブルンナ。ノックしたら待てといつも言って…」


 書類仕事をしていたカーチェ様が不満そうに顔を上げ、アタシを見止めるとピタッと止まった。



「ようこそ。お客様。ブルンナ。こちらの方は?」


 態度の変わりようが凄いわね。これくらいできないと国主なんて務まらないのでしょうけど…、不満で野蛮そうな顔が一気に聖女って感じになったわ。



「ミズキだよ。シュウとシキの娘さんだって」

「は?…そうか。シュウとシキの娘さんか。じゃあ、取り繕う必要はないか。ようこそ。ミズキ。オレはカチェプス=ヨエハ=ヴェーラ=アークラインだ。長いからカーチェでいい。後は…まぁ、二人から聞いてるだろ?」


 父さまと母さまの身内ならいいって、信用されてるのね。



「えぇ。聞いてるわ。カーチェ様。いきなりだけど一つ聞いていいかしら?」

「いいぞ?」


 よかった。じゃあ、遠慮なく。



「何でアタシが二人の娘だってすぐに信じたの?前はいなかったのよ?」

「え?何でってなぁ…。あの二人だぞ。増えてもおかしくないだろ?現に、ここに滞在中にカレン増えたぞ」


 …確かに。こっちの世界に来てアイリ姉さま。フーライナに行ってセン。アークライン神聖国でカレン姉様。イベアでガロウ兄さまとレイコ姉さま。獣人領域では増えなかったけど、魔人領域でルナ姉さまが増えて、エルフ領域でアタシとコウキ兄さま。



 別の国に行ったら増えるってレベルで増えてるわね。



「それにシュウとシキに似てるしな…。ブルンナも同じ理由で信じたんだろ?」

「だねー。ちょくちょく面影あるし、黒髪だし。意味不明な行動取ってるし、間違いないよね」

「意味不明なことをするのはお前もだぞ。ブルンナ」


 似てるって言ってもらえるのは嬉しいけれど、軽くディスられてる気がするのは気のせいじゃないわよね。流すけど。



「っと、遊んでる場合じゃねぇな。用件は?わざわざオレに来るってことはそれなりの件だろ?」

「手紙を渡しに来たわ。差出人はルキィ様よ。はい。どうぞ」

「ん。了解。確かに受け取った。今読んでいいか?」

「勿論」


 というか、その方が好都合ね。



「ブルンナも見るよ!」

「なら、後ろから読め。すまんがミズキ。少し待ってくれ。なんなら茶でも出させるが?」

「そこまで気を遣ってもらわなくてもいいわよ。カーチェ様。のんびり待ってるわ」


 アタシが暇でも、別のアタシは暇じゃなかったりするもの。多少だけど、リソースは削っておかないと。







______


「待たせたな。読了した」


 手紙を置きながら言うカーチェ様。



「人魔決戦には、戦っていない我らは口を出さん。「頑張って魔族を止めろ」ぐらいは言うが、勝ってるなら問題ない。バシェル内戦も同様。そもそも、内戦に神聖騎士団は出せん。チヌカの件はむしろこっちから頼みたいぐらいだな。オレらもチヌカには辛酸をなめさせられている。その大本が出張るとなれば、動かねぇわけにもいかねぇよ。で、だ」


 ? 他に何かあったかしら? 鋭い目でこっちを見ているけれど、手紙には後、アタシの生い立ちぐらいしかないはz…あ。



「貴方の前世が『リャール=カーツェ=ラーヴェ』というのは本当ですか?」

「『カーツェ』じゃなくて、『カーツェル』だけどね」

「「初代様…」」


 そういえばアタシ。この国の初代だったわ…。前世は前世。今世で父さまと母さまと生きられればどうでもいいから、完全に記憶の片隅に置いてたわ…。



「跪かれても困るわ。それにアタシは初代じゃなくて二代目よ」


 初代は父さまね。そこは譲れないもの。



「そのお言葉…。初代様の口癖ですわ!」


 あ。駄目ね。カーチェ様、変なスイッチが入っちゃってる。ブルンナ様はブルンナ様で震えて…ん? 何か言ってる? えーと…、



「ブルンナは不興を買いたくないです…」


 なるほど。アタシはこれくらいで怒らないわよ。昔された父さま、母さまへの手のひらクルーの方が酷かったし。



 にしてもしくじったわね。父さまと母さまがカーチェ様を撫でていた時に父性、母性を感じていたのは…、前世の二人の義子孫だったからなのね。直系じゃないのにそう感じたのは謎だけど。



 DNAにでもアタシの匂い的なモノが染み付いてるのかしら? 養子だったはずだけど、そんなことあるのかしら…。ま、考えたって詮方ないわね。兎も角、止めなきゃ不味いわね。



「カーチェ様。敬うのは止めて。アタシは単に、生きていた間は父さまと母さまに言われたことを守っていたにすぎないわ」


 「戻ってくるから、それまで民を頼む」って、言われちゃったもの。結局、戻ってこなかったけど。



「で、ですが…」

「ですがも何もないわよ。それに、アタシは死んだ後、世界を滅ぼしにいったのよ?感謝されるいわれもないわ」

「「は?」」


 うん、普通、そういう反応されるわよね。



「だって、二人を死ぬまで待ってたけど帰って来てくれなかったのよ?そのくせ国民は手のひらクルクルしやがるし…。いくら洗脳されたとはいえ、素面の奴も何人かいるでしょ?わざわざ二人を嵌めて殺しやがったくせに、そいつとその子孫がのうのうと生きてるかもしれないなんて許せないわよ。それに、洗脳されてたとはいえ、二人を追い詰めたことには変わりはないし…。そりゃ、アタシも生きてた時はちゃんとしたわ。父さまと母さまを信じてたもの。でも、約束は果たされずにアタシが死んじゃったわ。これはもう復讐のために世界滅ぼすしかないじゃない?」


 まぁ、父さまと母さまに世界滅亡計画は阻止されたけどね。結果的に二人に会えたからおっけーね。アタシのせいでダメージ喰らった世界樹は…うん。ごめん。まぁ、お相子でしょ。ん? あれ? 何がお相子なのかしら…?



「な、なるほど。そのことをシュウ様とシキ様は?」


 む。こっちに意識向けないと駄目ね。



「知らないわ。でも、いつか機会があれば話すわ。…というか、さっきまで敬称なかったのに敬称つけるのは止めなさい。変に思われるわよ?」


 どんな心変わりがあった!? ってなること請け合いよ。



「…確かに。では、これまで通りとしよう。…凄まじくやりにくいがな」

「ねー」


 諦めてちょうだい。



「オレが聞きたかったのはさっきのだけだ。逆にミズキは何かあるか?」


 んー。何か…。



「ないわね。手紙渡して、チヌカ対策してくれるんでしょ?なら言う事ないわ」

「そうか。なら、ブルンナ。ミズキの接待w「あ。要らないわ」…そうなのか?」


 話に割り込んじゃったけど、止める方が先決だもの。仕方ないわよね。



「すぐに帰れるもの。あ、でも、アタシがいたほうがいいなら居るけど?」

「手紙さえあればどうとでもなるぞ?ただ、来てすぐに帰すのはなぁ…」

「それなら大丈夫よ。誰にも見られずに帰るから」


 まだ二人以外には見られていないはずだしね。



「そうか。なら、いいか。気を付けて帰れ」

「ばいばい!また会おうねー!」

「ありがとう。でも、気を付けて帰るのは無理ね。あ。そうそう。驚かないでね?」


 ちゃんと言っとかないとね。二人ともポカンとしてる気がするけど、いいわ。言ったもの。木兵を召還&首をバッサリ切断。



 ―ッ! さて、これでアークライン神聖国の手紙配達も終わり。後はイベアね。

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