239話 王都決戦リザルト
「ルナちゃん。家をお願いします」
四季の声でルナが家を降ろし、家を巨大化させる。そして、ひょっこり出てきたミズキに、謁見の間での戦いは一応、終わったことを伝える。これで城の外には戦闘終了が伝わる。
「なんかパッとしねぇがな!」
「そりゃそうでしょ」
「ですね。見た目上、パッとしないのは破壊できないから仕方ありませんし…。心理的にも…ね」
イジャズがいたとはいえ、俺達がいて、有宮さん達がいて、メリコム様とアーミラ様にルキィ様がいた。この戦いはほぼ身内同士の殺し合いだ。パッとするわけあるものか。
「パッとするような内戦なら、よほどどちらかが害悪だった時だけだ。内乱なんて同じ国民同士の殺し合い。不毛でしかない」
内戦でパッとするようなのは…、リャアンとハールラインくらいか?
「今回の内戦はイジャズのせいだよな?」
「だよ。でも、民から見ればイジャズのことなんてわからないから、責任は基本メリコム様とアーミラ様に行くよ」
だから民からすればパッとする内戦である可能性はある。
「私に気を遣って話していただかなくて結構ですよ。皆さま。私はとうにお父様とお姉様を殺した咎を背負う覚悟は出来ています。たとえ二人がイジャズによっておかしくなった時──あの時から二人は既に死んでいたとしても」
…俺らが頼んだお香。そして、ソレがもたらした結果。それを見れば聡明なルキィ様なら察するか。
「え?ルキィ様。既に死んでいたってどういうことだ!?」
「そのままの意味です。さっきまで動いていたお父様とお姉様は私の知る二人ではありません」
「なっ…、兄貴、姉御!それにタク!3人は二人が既に死んでることを知って…、いや、気づいていたのか!?」
一目見た時からね。そうでなければ、ルキィ様にあのお香は頼めない。
「習や清水さんは兎も角、俺は割と城にいたのに不自然なくらい二人に会わなかったからな。会ったら合点がいったが」
タクならば、二人がおかしいことなんてすぐに気づける。そしてなんだかんだで勇者信仰の強い国。タクがそれを言えば調べてくれるだろう。
「なら、何でルキィ様にやらせた!?イジャズを先に落としさえすれば、ルキィ様はやらずに済んだだろ!?」
確かにやろうと思えばやれただろう。終わらせるだけなら触媒魔法をぶっ放せばそれで済む。
「謙三様。私のために怒ってくださりありがとうございます。ですが、それではどのみち、私以外が二人を止めねばならなかったのです。であるなら、私がするべきだったのです」
「何故。既に二人は死んでいたから、あるべき姿に戻しただけ…とでもいうおつもりか?」
「…なるほど。そのような考え方も出来ますね。ありがとうございます」
謙三にペコリ頭を下げるルキィ様。あげた彼女の顔は幾分か柔らかいモノになっている。謙三の言葉で固さが取れた。
「謙三様。思い出してくださいませ。これは私とアーミラ姉様の王位継承戦争なのですよ?であれば、私が何もしない…というのでは少々具合が悪いではありませんか」
悲しそうな顔で言うルキィ様。だけど、彼女の言葉は暴論のように見えても、きっとこの世界では正しい理論。だから謙三も何も言えずに押し黙る。
「ミズキ様。他の方々はどうなのです?」
「ダンスホールだけアタシがいないから、状況が分からないけど…、たぶん大丈夫ね。他のところは全員無事にめぼしい戦闘は終了してるわ」
「ありがとうございます。では、のんびりしているわけには参りませんね。すぐにこの戦争を終わらせましょう」
了解です。運んでくれるカレン以外が家に入り…、って、証拠を持って行かないと。イジャズの死体とメリコム様とアーミラ様のご遺体を空間拡張された鞄の中へ。それから家に戻って、家を小さく。来た道を同じように逆走する。
「父さま、母さま。ほんとにルキィ様にやらせてよかったの?」
…ルキィ様がしなければいけなかった理由はさっき説明してくださった。でも、「俺らの」言葉が欲しい…そう言う事ね。
「いいか悪いかで言うならよくないな」
「ですが、あれが最善でしょう。厳しいことを言うようですが、あの方は「王」ですから…」
いつまでも二人の死を受け入れられず、ずっと足踏み…では困る。
「「普段通り周囲に時間が流れているのに、わたしの時間は止まったまま。それが無性に苛立たしくて、全てを壊したい」そんな風になっても?」
そう言うミズキの声と目はいつにもまして真剣で、一切のごまかしも茶化しも許さない。そんな雰囲気で、この子の根っこが「愛し、愛される人を失いたくないという恐怖」であることを否が応でも思い出させるもの。
「それでも。だよ」
「ですね。それでもです。王であろうとなかろうと、時間は流れ、前に進みます」
「いつまでも過去で立ち止まっているわけにはいかない。王であるルキィ様はその立ち止まる時間を可能な限り短くあるべき。それだけだ」
非情ではあるけれど。それが王なのだろう。俺はなれてもなりたくはない。
「そっか…。わかったわ。後、兄さまや姉さまが揃ったら時間頂戴。話したいことがあるの」
了解。俺らとミズキが出会ってからずっと黙っていたこと。それを話してくれる気になったのかな?
「お父様、お母様。ところでルキィ様にお頼みした香の効果はどのようなものなのです?」
「あれ?あれは「アンデッドをあるべき姿に──死体に戻すもの」だよ」
だから既に死んでた二人…メリコムとアーミラには絶大な効果があった。
「イジャズの白授の道具はおそらく、死体に力を送り込んで操り、かつその死体を強化するモノだと思われます。彼の道具の全ての起点は死体です。ですから…、」
「死体を破壊するか、死体への干渉を遮れば、」
「どうしようもなくなってしまう…と言う事ですか」
正解だよ、ガロウ。レイコ。勿論、白授の道具の効果だからルキィ様のシャイツァーの効果に抵抗しようとしただろうけど…、戦闘開始からずっと密閉空間にルキィ様の香は漂っていた。香が体内にかなり蓄積した状態での魔法。触っただけで効果を及ぼせる道具の効果が勝てるものか。
そのうえ、シャイツァーは思いを汲んでくれる。ルキィ様にも「死体は自力で動きはしない。死体は冒涜されてはならず、ただ安らかに眠るような状態で運ばれる」そんな思いあるはず。で、対象は肉親。効果はより一層強くなっただろう。
「ダンスホールだよー!」
了解。戦闘を終えた勇者たちを回収。有宮さん側にいた青釧美紅さんも、座馬井条二、律の兄妹も、西光寺姉弟も光太も、天上院さんも全員無事。誰一人として減っていなくてよかった。
回収後、ダンスホールを抜け、門を抜けて街の外。結構な数の兵士さんとそこそこの数の冒険者さん。そして気概のある一部の住民さん。それらが纏めていくつかの集団になって捕縛されていて、ソレを守るように大量の木兵が周囲にいる。
…何も事情を知らなければ壮観の一言なのだろうけれど、この兵全部、ミズキ一人が出したものだと知ってる身としては…、異常としか言えないな。
…あぁ、なるほど。この光景もミズキが話そうと思った一因かな? 今まで狭い範囲内にミズキが20人以上いて木兵を全力生産したことはなかった。だから、こんな光景見たことなかったわけなのだから。
無事とは聞いていたけれど、やはり自分で見ると安心感が違う。コウキもセンも、芯も蔵和さんも順も、若干疲れてはいるけれど元気そう。
「ルキィ様、合流出来ましたが、どうなさるおつもりですか?」
「内戦の終結を宣言いたします。まず証…」
「は持ってきています」
ルキィ様も見ておられたはずだけど、…やはり精神的にはダメージを受けておられるか。
「吊るすのはイジャズだけでよいですよね?」
「ですね。シキ様」
だね。四季。勇者たる俺らがいるんだ。わざわざ身内であるメリコム様とアーミラ様を吊るす必要はない。既に死んでいて、操られていたことを明かして、後で国葬するほうが絶対良い。
「兄貴!姉御!ツルはどうすんだ!?」
ツル? …あぁ。アレも一緒に何とかしたほうがインパクトあるか。ナイス。ガロウ。
「私に名案がある」
「おい待て姉。それは迷あn「そら、有宮嬢。おはようの時間だぞ」…」
賢人が止める間もなく薫さんは試験管を有宮さんの口にねじ込んだ。
「うぇっら゛ッ゛ブぅゥヴ」
「よし、起きたな」
「な゛ぁ゛に゛か゛よ゛し゛な゛の゛ぉ゛ぉ゛」
「何が良しって…、起きれば問題なかろう」
「あ゛り゛あ゛り゛…、うえぇぇぇ」
少なくとも「よし」ではない。下手したらあれ、粘性高すぎて気管とかのどに詰まるぞ…。
「…ふぅ、落ち着いた。殺す気かっ!」
「いや、殺す気はないぞ。殺すなら硫酸とか青酸カリ水溶液を流し込む。アレは粘性を高めてあるが…ちゃんと死なない処置はしてある。何より、味では死なん」
何で薬に「死」って単語が二つ混じってるんだ…。
「絶対それ気付け薬じゃないよね?」
「勿論。尋問用だ。敢えて気道を塞ぐことで苦しくして、死にそうになったらちょっと酸素あげて、また締め上げる…そんな代物だ。ついでに糞不味いから鬱陶しさも倍増」
「鬼畜か」
「私だ」
真顔の問いに真顔の返答。有宮さんは困ってしまって「お、おう」といったきり黙…、
「って、何でそんなの使ったんじゃい!」
るかと思ったがそんなことはなかった。
「意趣返し以上のことはないな。洗脳されていたとはいえ、私もやられっぱなしでは腹に据えかねる。それだけだ」
一瞬だけこてり首を傾げると有宮さんはぐるり辺りを見渡す。その中に有宮さん側にいた勇者達がいないことを見て取ると、納得したように「あー」と数回言うと、
「悟った。文が持ってる情報は後…、具体的には皆が自然に起きてからでいいよね。で、叩き起こされたのはツルが邪魔。これでいい?」
正解。適当に見えるけど、それが擬態なんじゃないかって思えるほど、洞察力とかあるんだよな…。
「ツルはもう消しちゃってもいいの?」
「準備できてからでお願いしていいですか?ただでさえ街が混乱しているのに、火種を放り込みたくないです」
「いきなり消えて音沙汰無きゃびっくりするもんね。了解したぜぃ。準備できたら文に言ってね。消し方に希望ある?一瞬とか、謎に神々しいオーラ出して消えるとかいろいろできるよ?およそ10のマイナス6乗ソフト社のスライドショー作成ツールで設定できる退場法は使えるぞ☆」
折角説明してくれても、答えなきゃいけないルキィ様はパワポを理解できるわけないんだよな…。
スルーして動こう。…とはいえ、簡易的な台を作って、そこに周囲に大量のミズキを使ってイジャズを吊るす警告をして、吊るして終わりだが。
吊るされてるイジャズは普通にグロいけれど、晒しているのだからそのグロさに誰もツッコミを入れはしない。「何で無視するのー!」という見当違いのツッコミは飛んでくるが。
たぶん、子供に見せたくないとか、見たくないだとかの場合、各自で注意聞いて隠しておけ。というスタンスなんだろう。
「シュウ様。シキ様。声を届ける魔法はありますか?」
「ないですが、」
「作れます。習君どうぞ」
「ありがとう」
書くべき魔法は『拡声』だな。声は音。音は波。音の波の減衰を押さえ遠くまで届くように、かつ回折して障害物があっても後ろによく回り込めるようにしつつ…、四季のファイルを下敷きに書き上げる。
「どうぞ」
「は、はやいですね」
慣れてますからね。ただの魔法ならすぐできます。
準備できたところで捕まえていた人たちの拘束を解く。明らかに何かある雰囲気だからか、誰も騒ぎはしない。その人たちがぐるっと辺りを囲むと、遠くの方で恐々見ていた住民がちょくちょく野次馬根性で近くに寄ってくる。それを見届けたルキィ様が魔法を使用。同時にツルが朽ちていくように消える。
一瞬だけ周囲の人がざわめいたけれど、俺らの魔法で拡大されたルキィ様の声がそれをかき消し、黙らせる。
そこから始まるルキィ様の独演会。彼女の言葉は王族だからか華美な形容詞や勇ましい副詞が多く、長い。要約すれば「イジャズとかいうチヌカのせいで、メリコム国王とアーミラ第一王女はとうの昔に殺されていた。だから、最近の二人は死体が動いていただけの偽物である。吊るされてるのがそのイジャズで、残り二人は被害者なので国葬する。見届け人は俺ら勇者」といったもの。
ここ最近の内政のごたごたの責任は全てチヌカに押し付ける。勇者召喚とかの外交のごたごたは責任を取る。といった感じか。
内政は内乱に勝ったからどうとでもでもなるけれど、外交はバシェル王国の正当な後継国家を名乗る以上、白紙には出来ない。とはいえ、ルキィ様は謝罪行脚していたし、そう酷いことにはならないだろう。
その上、魔人族も内乱終了し統一されたから国交結ぶ。獣人族ともコンタクト取れたから再度、国交結ぶっていう特大の功績もある。また、エルフは国を持っていないが、彼らもチヌリトリカが復活しそうだから協力したいという立場である事も明かした。たぶん人間領域最大の国っていう立場も変わらないだろう。
…纏めて投げるのが楽だと判断したのだろうけれど、特大の情報が大量に混じってて可哀そうになってくる。
それに続いて内乱で被害を受けた人への補填とかの話をしていたけれど…、お金に一番五月蠅そうな商人でさえ、大多数が上の空。
「最後に繰り返しになりますが…、この内乱──対チヌリトリカの前哨戦──は私達の勝利です!」
「勝利だ!」
「「「勝利だ!」」」
誰も続かなかったからタクが桜になりやがった。が、うまくキャパオーバーしてたっぽい民衆が再起動したな。
「以上。解散です。皆さん、仕事に復帰してください。勇者様方、詳しい内容は明日にしましょう。それまで休憩してください。寝ておられる方が目覚められましても明日です」
了解です。
ルキィ様が台を降りたから台を消す。ルキィ様は辺りにいるメイドさんや執事さんに適当に指示を出して王城の中へ。ダンスホールを抜けた先にある、王城の中でもよさそうな部屋にルキィ様自ら一切迷うそぶりもなく部屋を割り当てていく。
俺らの部屋は…結構広い部屋にキングサイズのベッドが一つ。そんな部屋…かと思ったけど、追加でベッドが来て、ベッドが二つになった。
「これで皆さま寝れます…よね?少し部屋が狭くなりますがご容赦ください」
「そもそもルナの家があるのですけど…」
「シュウ様。さすがに家があるからと部屋を提供しないのは…」
そちらに問題ありますか。了解です。素直に受け取らせていただきます。
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お風呂を浴びて汚れた服を着替え、ベッドの上で待機。外から見てれば格式高そうだったけど、中に入ってしまえばそんなことない気がする。…慣れたか?
俺の腰かける真横にお風呂から出てきた四季が座ると、ミズキは即座に俺らに土下座。
「ごめんなさい!黙ってたけど世界樹にとりついて悪さしてたのはアタシです!」
あぁ…。ミズキが隠してたのはそれなのね。
「ミズキ。顔を上げて」
「です。土下座してたら話にくいでしょう?」
「あれ?怒らないの?」
「ん?怒りはするよ。でも、それはミズキが準前世でしでかしたことにじゃない」
「怒るのは「大事なことを秘密にしていたこと」ですね」
準前世で何をしていようがミズキの勝手。正直、こっちの世界にリンヴィ様とか、ナヒュグ様とかがいなければ滅んだってどうでもいい。
「なるほど」
「まぁ、俺らも話してくれるまで待つって言った以上、放置していた責任はあるが…、」
「ことが大きかったので言っておいて欲しかったとは思います。何かあった時、多少でも心当たりがあるのとないのでは大違いですから…」
何かを探すとき、やみくもにやるより、目印があるほうがやりやすいからなぁ…。
「ただ、俺らが踏み込まなかったのも悪い」
「ここで怒るのは完全に後出しじゃんけんです。なので、怒る怒らないはもういいでしょう」
既に過ぎちゃったこと。これ以上は不毛。
「改めて言っておくね。秘密にしたいことがあったら別に秘密にしてくれて構わない」
「ですけど、ヤバい内容は言ってくださいね?内容によっては怒るでしょうけど、言ってくれたら少々の怒りと褒めで終わります。が、言わなければ怒りのみになりますよ」
頷いてくれた。なら、よし。
「で、ミズキ。まだ話してないことあるでしょ」
「うん。あるわ。だって言ったらアタシが隠したかった準前世のことバレちゃうもの。でも、今なら言えるわよ。アタシの前世は神話決戦の時の英雄たる『ウシャール=カーツェ=ラーヴェ』父さまと『シャリア=コーエルミア=ハイコメリア』母さまの長女にして、コウキ兄さまの妹。そして『アークライン神聖国』を樹立した教皇でもある…『リャール=カーツェル=ラーヴェ』よ」
やっぱり…。相対した時に『リャール=カー』って言ってたからなぁ…。恨みのある王族かな? とは思ってたけどズバリだったか。とりあえず父母の思いを汲んで『アークライン神聖国』を作ってみたはいいものの、自分の持つ恨みを消化しきれずに世界樹にとりついてしまった。あの騒動の顛末はそんな感じか。
「さすが二人ね。アタシが戦闘中に漏らしたのもあるでしょうけど、驚きが少ないわね…。後、アタシ達が生まれた複合泉ってあったじゃない?アレの本当の効果も知ってるわ。たぶんアタシが世界樹に行く知識を吸っちゃったんでしょうね。…嘘ついてごめんなさい」
…まぁ、言っちゃうと世界樹で敵対したことがバレるもんね。仕方なし。
「アレの細々した条件はほぼ一緒なのよ。唯一、魂の条件が加わるだけよ。子供になる魂が泉に来た二人が前世で結婚していて、かつ、前世でその二人の子供だった魂が「二人の子にまたなりたいなー」って思って待機してるときだけ成立するのよ」
!?
「条件キッツいな!?」
いや、待って。ガロウ。それはそうだけど…。
「そうよ。待機する…って言っても二人が同じ生物に転生するかわかんないし、よしんば転生できてて結婚して泉に来ても、待機に魂が耐えられなかったらダメなのよね…。アタシは倒されたばっかりだったし、コウキ兄さまも似たようなもの。だから大して問題にならなかったのよ」
なるほど。こっちはまだ理解できる。サラッと流されたさっきのに比べれば。
「ミズキ。俺の前世って『ウシャール=カーツェ=ラーヴェ』なの?」
「私は『シャリア=コーエルミア=ハイコメリア』なのですか…?」
「えぇ。そうよ」
おぉう…。
「ちなみにコウキ兄さんの名前は『ヴァーエラル=カーツェル=ラーヴェ』よ」
このタイミングでねじ込んでこないで! 情報量が多すぎる!
「ミズキは名前覚えてるんだね」
「みたいよ。兄さまは?」
「僕は覚えてないなぁ…。準前世が長すぎたからだと思うな」
二人の前世の記憶も差があるのね。ミズキの方が持ってそう? でもたぶん、あまり情報はない気がする。
あ。あぁ! なるほど。ギルドに行った時のランク分けの説明。あの時、四季が解釈を述べて妙にしっくりきたような気がしたのは…、俺が本人だったからか。腑に落ちた。でも、
「前世がその二人だからって、だから何?って感が」
「ですね。私は私です。それ以外に言いようがありません」
「…一応、二人が尋常じゃないくらい命のやり取りに慣れてる理由にはなると思うよ」
前世の行動を魂が覚えている…と言う事か。…アイリの言う事もあるかもしれない。
「まー、なんだっていーでしょ?」
それを言っちゃあそれまでだけど…、そうだね。カレン。
「なら、遊ぼ!」
「ルナ姉さん…」
「コウキ。止めなくていいよ」
「そうですね。話は明日とおっしゃっていたのです。ですから、今日は遊んでも良いでしょう」
なんだかんだ言っても、戦いのせいで疲れているのは事実だけど…、遊んで寝る方が気持ちよく寝れるでしょ。