232話 王都決戦 in 城下街 城下侵食
コウキ視点です。
時系列はカレン達が王城に突入した直後です。
父さんと母さん達は突っ込んで行った。僕たちの仕事はここを通さないこと。それだけなら僕とミズキ、センだけでもいけるお仕事だと思う。
なのに、凍てつく城門が象徴しているように芯叔父さん達も遠くにいて、援護してくれる。これで仕事を達成できないわけがない。
門付近の抑えはミズキに任せて、僕はセンに乗ったまま吶喊。兵士を跳ね飛ばしてから飛び降りる。
「援軍を!援軍を呼べ!」
「俺は駐屯所にグッ!?」
「なら俺が駐屯zグエ」
僕たちに気づいた城門に近い人が対応しようとしているみたいだけど、ミズキと木兵に押しつぶされてる。
行こう。兵士さんが持ってた槍を拾って兵士の中へ突撃。槍の柄を力任せに叩きつけて、兵士さんを吹き飛ばす。…あ。色々巻き込んで壁に激突しちゃった。しかも、槍がへし折れた…。うん。素直に突いて無力化したほうがあの人にとっても良かったかもしれない。…城門付近であまり人がいなくてよかった。
人があまりいないついでに、このままこの辺りで騒いでいれば、無人地帯は増やせるかな? 誰も好き好んで巻き込まれたくはないはず。人のいるところを城門から遠ざけられればその分だけ、城門突破しにくく出来る。よし、この辺りで暴れておこう。
武器は壊れたけれど、その辺りに落ちてるから、拾えばいい。落ちてるというより、落とさせた。が正しいと思うけど。…父さんや母さんの記憶にこんな蛮族スタイルのゲームがあったような。
…考えるのは止めよう。僕は僕の仕事をする。今度こそ、父さんと母さんを残して逝ったりはしない。
兵士さんからの突きを回避。再度つかれる前に素早く兵士さんの手足を突く。そのついでに槍を略奪。二槍流だよ。
でも、手足突くだけだと割と安全に無力化できるけど…、回復されると即復帰できちゃうからね…。どうしよう。
「コウキ兄さま!無力化したら放っておいて!アタシが動くわ!自由に動いちゃって!」
「ありがとう!セン!フォローよろしく!」
「ブルルッ!」
センも了承してくれた。父さんや母さんみたいになんて言ってるかは分からないけど。
今のところ順調かな。門の前にはミズキ3人と木兵100体が待機してくれてる。木兵はあの3人の魔力が回復したら増えるだろうね。今はまだ門に近いから一般人さんがいない領域。一般人さんがいるところに着くまでに、一般人さんが避難してくれればいいのだけど。
城門付近にいた兵士さん達はあらかたミズキが押しつぶした。駐屯所やギルドといった援軍要請できる場所に兵士さん達が行けたかどうかはわからないけど…。既に叔母さんの大砲の一撃からだいぶたってるし、門付近で異変があるのは明らか。湧いてきてもおかしくないね。
それはそうと、
「ねぇ、ミズキ。それだけ木兵作って操れるの?」
「え?操れるわよ。これくらい」
下手したら1000超えてる数をこれくらいって…。えげつないよね。よく扱いきれるよ。
…ミズキが全力で木兵を扱ってるのを間直で見るのって、今回が初だったよね。30人以上の自分と、数百の木兵の同時操作がこれくらい。…普通なら一つの脳で処理しきれる負荷じゃない。
「傍から見れば明らかにおかしいのは自覚してるわよ、コウキ兄さま。父さまや母さまでさえ、アタシに疑念を持つかもしれない。でも、出し惜しみはしないわ。失敗するほうが不味いもの。隠し事があるのは事実だしね…。隠してちゃダメ。それを理解していても踏み出せない。父さまと母さまはアタシが話すことを待ってくれてる。今回のは一つの節目だと思う事にするわ」
「そっか。ならいいや。僕からは何も言わない」
もしもミズキが「父さんと母さんが、ミズキが隠し事を話してくれることを待ってくれてる」って、理解してなければ、叱るつもりだったけどね。
わき道から飛び出て来る二人の兵士を回避。僕は槍で、ミズキは風魔法で手と足の腱を斬る。無力化完了。その奥にいる兵士さんもついでに無力化。二本あると同時に二か所突けて便利だ。
「コウキ兄さま。別に避けなく…あ。ごめんなさい」
「謝らなくてもいいよ。悟ってくれてるみたいだから説明はしないよ?」
「勿論。説明されちゃうとコウキ兄さまの配慮を潰しちゃうことになるもの」
僕はシャイツァーのおかげで確かに顔以外なら避けなくてもいい。けれど、だからと言って避けずに受けて、その部分は当たっても傷がつかない。そんな情報を相手に渡す必要はない。
「兵士さんがいっぱい来たわよ」
「制圧さえすれば、片付けはだいたいミズキがやってくれるだろ?」
「えぇ。物理的に数が違うもの」
ほんとにね。(攻撃の手)数じゃなくて、(同一人物の)数とかなかなか意味不明。
「矢!矢を持ってるやつらは射かけろ!」
こんな路地で矢を持ってる人なんて…いた。射ってくる前に槍を投げつけ…るのは駄目だったか。
槍は足に命中。でも、矢は飛んでくる。けれど、これくらいなら掴めるね。キャッチ&近場にいる兵士さんにぶっ刺してリリース。投げた槍の代わりに持ってた槍を強奪。足を軽く斬って押し倒して、放置。
「矢くらい抜いてあげなさいよ…」
「へし折れそうだから嫌」
へし折れた方が悲惨だよ? 抜きにくいし。
「抜くのはアタシ…というか木兵なんだけどね!」
ごめん。ま、まぁ、やり過ぎたらセンが回復してくれるし…。多少は大丈夫!
え、巨人!?
「ブルルッ!」
センがグサッと一刺し。丁度、幻に兵士さんが重なっていたらしい。左足の大部分を抉られて戦意喪失。ありがとう。僕じゃ幻覚はどうしようもないからね。
「そういえばミズキ。ミズキは幻ってどう処理してるの?」
「ガン無視よ。一応、触ってみるけどね?触ってみて何もなければ無視よ。感触がある…すなわち、人とかが重なっていれば人は潰しておくわ。幻覚じゃなくて、だれかのペットなら袋叩き。それで終わりよ?」
思ったより脳筋だった。それで終わりよ? って涼しい顔しているけれど、脳筋だった。
「それが一番早いもの…。でも、たまーにペット混じってるわよ?テイマーっていうのかしら?あ。そこにいるのワンちゃんよ。触った木兵を破壊して逃げたやつ」
まじか…ッ! 既に飛びかかって来てる! 槍を突き出す。相手が回避。回避機動を取っているところに右の槍! これも避けるの!?
「風よ。アタシの魔力で眼前の敵を切り裂きなさい『風刃』」
追加でミズキの風の刃。空中に浮いているはずなのにさらに避ける。槍を右に振るえば
空中で飛ぶ。
変態軌道止めて。
あ。これ噛まれる…かと思ったけどミズキの木兵が割り込んできてくれた。木兵は即粉砕されたけれど、その隙にお腹を蹴ってセンの方に吹き飛ばす。センが足で地面に叩きつけて終了。
「縛るわ」
木兵がペトッと犬にまとわりついて、別の木兵が運んでいく。…縛るとは一体何なんだろう?
「縄もないのにまともに縛れないわよ。心配しなくても関節は全部外してあるから回復魔法掛けてからじゃないと復帰できないわよ」
自力で関節外しを治せる人もいるけど…?
「その場合は周りの人含めて自爆するって言ってあるからへーきよ。紙は貰ってるもの。もし傷を治したなら自爆でその一角を吹き飛ばすわ。その場のアタシが殺されちゃったら、まぁ、別の場所のアタシが全部自爆すればいいだけの話だもの。全場所を同時に急襲するのは難しいわ。だからたぶんいけるわ。むざむざと何もしなければ生きていられる守りたかった人を失いたくはないでしょうし」
殺されちゃうと兵の意味が無くなっちゃうもんね。
「ブルッ!」
!? セン!?
センがミズキの前に飛び出す。一拍置いて、甲高い音を立てて矢が落ちる。
「アタシは平気なのに…!」
「それはいいでしょ!?今の多分シャイツァーだよ!?」
「みたいね。兵士は城で異変があれば駆け付けざるを得ないから潰すけど…、アレ、たぶん冒険者よね?」
多分ね…。
「出来るだけ冒険者とは敵対したくないのだけど、木兵がぶん殴られたり、アタシが殴られたりするから、のしておくしかないのよねぇ…」
「それは…仕方ないでしょ」
ただ、冒険者まで敵に回られるのは面倒くさいな…。
「念のためギルド付近に一人送って情報貰ってくるわ。ちょっとでもないよりましでしょ?」
「頼む」
情報はあったほうが良いしっ! 飛んできた矢をクルッと回避。矢は背後の建物の壁をぶち破り、家を貫いてなお飛んで行った。
「危なっかしいわねこれ。家の中にいる人、最悪死ぬわよ?今のたぶん木兵とかで見る限り3家は貫いたわよ」
酷い火力だ。…何でそんな微妙な顔してるの?
「いえ、誰何されたから「人に聞くなら先に自分からでしょ?」って言ったら普通に名乗ってくれたのよ…。相手はプラチナ級冒険者集団『ヴァラックイドラー』みたいね」
ヴァラックイドラー…か。確か日本語にしたら黒鷲だったかな?
「リーダーは『タスウェン』で、残りは『アッバス』、『ノルニー』、『エイジュ』らしいわ」
「!?え!?教えてくれるの!?」
「聞いたら答えてくれたわ」
何で教えてるの!?
「教えてくれる理由は謎ね。性格悪そうにも見えないし…。冥土の土産というわけでもなさそうだし…。でも、阿保ではなさそうよ?」
マジで意味不明。
「敵対行為はした?」
「モロにしてるわね。タスウェンさんの周りの兵隊さん達は片付けたけど…。ッ!?」
取られたか。
「ご名答。何かをする暇すらなかったわ。ただ、アタシが使役している木兵に手出ししてこないのよね…。何故かしら?アタシがアレを使役しているところも見られているはずなのだけど?」
木兵に手出ししてこない? それにミズキが取られた状況を考えると…、
「敵意に反応してる…?」
「可能性ありそうね…。放置しても良いけど、放置した結果、縛ってる人を解放されても困っちゃうから何とかするわ」
「無理なら呼んでね」
僕が出れば何とかなるかもしれない。
「わかってるわ」
「ならいい。集団見つけた。取るよ」
センと一緒に突っ込む。右の槍を兵の右足諸共壁にぶっ刺し、壁に固定。左の槍で槍を持つ右手を軽く切り裂き、槍を強奪。振るわれる槍を回避。その隙間を縫ってミズキの風が眼前の兵士3人の両足を切り裂く。
「ブルッ!」
センが回復させて、呆然としている彼らの腱をミズキと切り裂き、槍を投げる。外れた。ちぇっ。
盾を構える5人の兵にセンが突っ込む。人間と馬…しかもセンはただの馬じゃなくて魔物。火力が違う。一瞬だけ拮抗したが兵は押し切られて倒れる。槍を放り投げて兵が地面についている手を纏めて貫く。当たらなかった兵にはミズキが個別に風で切り裂く。
「ブルッ!」
センが回復。それと同時に容赦なくミズキと一緒にお腹を踏み抜いて2人気絶。流れで回し蹴り。これで二人気絶。そして飛んできた矢を一人掴んで受けさせる。…まぁ、貫通するよね。
「ブルッ!」
回復。腱を斬って終了。
「兵がまばらだね」
「アタシ達の侵食と避難誘導。その二つのせいで散らざるを得ないんじゃない?」
「冒険者よりは兵士の方が信頼されそうだしね」
父さんと母さんの記憶のせいなのかもしれないけど、どうも冒険者は粗暴なイメージがあるもんね…。…あれ? 父さんと母さんがギルド作った時からそうだったような? 記憶が微妙だけど…。「ごろつきには身分証明と頑張った時の名誉を保証しておけば勝手に働くか、死ぬでしょ」的なことを言ってたような…どうだったかな?
飛んできた矢を回避。
「割とコウキ狙われるわね…」
「明らかに兵士を倒して回ってる中、同じ顔をしていないのは僕かセン。それと叔父さん達だけ。叔父さん達は街の外で、幻覚とか潰してくれてるからまだ人的被害はそこまでじゃない。となると狙うべきは僕でしょ?後、僕の横にいるから今、ここにいるミズキが本物と思ってるか」
どのミズキも本物だから意味ないけど、そんなことわかるはずもないしねぇ…。ノーヒントで分かったら尊敬に値するレベル。ミズキも痛み耐性が尋常ではないけれど。不意打ちならすごく痛そうなお顔を隠せないけど、そうでもなければ普通に隠せる。
「ギルド着いたわ。結構避難民がいるわ」
「顔隠してる?」
「隠した方が怪しいから隠してないわよ。黙ってれば敵のそっくりさんで通るでしょ。ふむ。金級冒険者が2グループ。盾シャイツァーを2人が持つ4人集団『アルゼンハギム』と、大剣シャイツァーを1人が持つ4人集団『クォドンノーセロス』…と」
敢えて漢字に直すなら、アルゼンハギムは『鉄鹿』で、クォドンノーセロスは『角犀』か。
「後、プラチナ級がギルマスと、受付嬢2人…。不安だからかアタシが何もしゃべらなくてもポロポロ避難民から情報が出るわね。金級、白金級で今、この街にいるってわかってるのはこれだけみたいよ」
3/7がギルド関係者か…。さすが人間領域最大の国の首都。戦力が違う。
「金級は銃弾が万一、飛んできたら危ないから避難民の護衛をしてるみたい。アッバスは遠くでこっちを射って来てる。ノルニーがタスウェンの補助に入って来たわ。で、エイジュがアタシと会敵中。居場所の分からない金、白銀級はギルド職員3人ね」
「叔父さん達の援護若干変わった?」
「えぇ。順叔父さまが幻覚消しに回ってくれてるわ。青釧叔母さま達と接敵して、雲の心配が減ったから」
なるほど。狩野叔母さんも早く見つかればいいのだけど。
ッ! セン、ミズキとそろってバックステップ。間一髪で飛んできた矢を避けると、避けられたことを悟ったとでもいうように矢はスルスル戻っていく。
矢を視界に収め、注意を払いながらその場で体をクルリ回転。飛んできたカードを避け…るだけじゃ足りない! ミズキをセンのところに押し込み、揃って障壁の中へ。
カードが僅かに爆ぜた。範囲はそこまでじゃなかったけど…、威力は結構やばめだね。
! 上かッ! 地面を踏みしめ飛び上がる。上から降ってくるものを払いのけようと槍を振るうと、ガッ! なんて音が鳴って、力が一瞬だけ拮抗したかと思うと、女性はグッと力を入れて僕の槍で跳ねて二人のところに。
「残りの三人よ!」
残り? …あぁ、(プラチナの)残りか! つまりギルマスと受付嬢さん!
3人は様子を見るそぶりすらなく突っ込んでくる。ギルマスは手に持った矢を振るい、受付嬢さんその1はカードを投げ、受付嬢さんその2は拳につけたナックルで殴ってくる。
「そっちの紳士然とした男性がギルマスよ!名前は『ラネルイ』さん!シャイツァーは…!」
「見たらわかる!」
「そうよね!」
見ただけで背筋が伸びるようなスーツっぽい服に身を包んだ男性が、『矢』だけを振り回してる。明らかに普通の使い方じゃないんだから、それだけでこれがシャイツァーだってわかる。てか、これがシャイツァーじゃなければどうしろっていうのさ。
「シャイツァー名は…」
「『フュブイルロー』ですよ。お嬢様」
やらせない! ミズキの前に割り込んで、腕を弾いて、槍を振るう…けど、当たらない! 服にすら掠らない。
「言ってよかったの?」
「えぇ。名前だけわかったところで効果が推測できるわけもありませんでしょうに」
なんて言いながら後ろに引くラネルイさん。距離が開いたからかピシッとお辞儀。むかつくくらいに様になってる。
「スラリとした体のラインが綺麗な出来る受付嬢さんチックな方の女性は『アウラーフ=ミ…』みゅっ!?」
ミズキの目の前をさっきまで透明だったカードが横切る。ミズキがじろっと睨むようにアウラーフさんを見ると、人差し指を立てて口に当てる。
それ以上は言うなってことだよね。でも、ミズキがまだ名前を言いかけていたこと、そして彼女が黒髪であることを踏まえると…、おそらく貴族の血縁ってことは容易に推測できる。なるほど。どおりで服から受けるイメージ以上の凛としたオーラがあるわけだ。
「シャイツァーは腰のカードケースでッ、」
「『カールネイスィ』ですわ。お姫様」
シャイツァー名は教えてくれたけど完全ではないね…! 形態としては母さんに似た、ケースからカードを取り出すタイプだね。ミズキに飛んでいくカードを斬り捨てる。
「で、最後ッ!モデル体型でメリハリのある体をこれでもかと見せつけてくる受付嬢さんが…『リヴィライデ』さん!シャイツァーは…!」
リヴィさんの拳がミズキを襲う。が、ミズキは木兵を盾に受け止め、逆に風の刃を放ち、距離を取る。
「で、お嬢。私のシャイツァーは?」
「貴方にシャイツァーはないわ。武器は貴方の体、それ自体。いろんな意味で」
「合格です」
リヴィさんは魅惑的に微笑むと、つま先で地面を蹴ってクルリ回転。ギルマスのラネルイさんの横に立つ。服のせいなのかリヴィさんの豊満な肉体は揺れもしない。
肉弾戦が主なラヴィさんにとって胸は邪魔そうだけどね。アウラーさんと逆なら戦闘スタイル的によかっただろうにままならないなぁ…。
「ワタシ。オウジサマ、コロス」
「ラーフ。落ち着いて。口に出してませんし、純粋な戦力分析ではないですか」
「……」
アウラーさんがラヴィさんに軽く頭突きしだした。…えっと、どうしたらいいの?
「ラネルイさん。この状況で茶番してもらって場を和ませたわけは?」
「おや。お嬢様。お気付かれですか。であれば、お坊ちゃまも?」
勿論。受付嬢さん達が遊んでいるのは勿論だけど、ミズキが僕に説明してくれているときの攻撃がまばらすぎる。連携は取っていたけれど微妙。おそらく、まだ本気を出してない。僕がミズキから貰えた情報なんて名前とシャイツァー名だけ。それだけじゃ何にもならない。
「私達…いえ、我々が聞きたいことはただ一つですわ。お姫様。王子様」
「お嬢、お坊。二人の目的は何だ?」
なるほど。それは至極簡単。
「王城に誰一人通さない」
「出来るだけ民へ被害を出さずに」
それだけ。父さんや母さん達がことを為し終えるまで誰も通さなければいい。
「答えたのだから、お礼代わりにアタシからも質問いいかしら?」
「勿論。どうぞ」
恭しく礼をするラネルイさん。
「冒険者ギルドはこういう争いには不介入が原則のはずだけど、貴方たちはあちらの肩を持つ…ということで良いのかしら?」
「まさか。そのようなことはございません。わたし共はその原則は守ります。ですが、」
顔を上げてこちらを見据えるラネルイさん。その目には力強い光と、嫌な光が混在している。
「わたし共のギルドが存在する街」
「その街を争うとする不埒ものを処罰することぐらいは…」
「私達の裁量の範囲内。そういうわけだよ。お嬢。お坊」
攻撃を仕掛けてくる三人。あぁ、なるほど。父さんと母さんの同級生の情報はある。けれど、僕らの情報はない。だからどっち側に立って動く人なのか? それを確定させたかったのか!
さっきまでの攻撃で仕留められる雑魚なら味方でもどうでもいい。仕留められない味方なら使う。仕留められない敵は全力で始末する。これがこの人らの思考回路かな?
まったく、不介入の原則は基本守れないと思ってたけどさ、ここまで清々しく無視されるという事は、既にこの人たちはあっち側の支配下にあるってことだね。…遠く離れた父さん、母さんの友人に手を出せるんだから当然っちゃあ当然だけどさ。
冒険者との対立は出来れば避けたかったけど、事ここに至っては回避不能。つまり、冒険者との対立も避けられない。でも、だからどうした。それら全てまとめて潰せばいい。叩き潰して、父さん、母さんのオーダーを果たす!