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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
8章 再人間領域
256/306

226話 起床

 よかった。目が覚めた。いつもと違って気絶じゃなかったから、目は覚めるだろうと思っていた。けれど、やっぱり戦闘後に疲れ切って寝てしまうのは、目が覚めないんじゃないかと思ってしまって少し怖い。



 期間は分からないけど、寝ていたからか体が硬い。伸びを…したいけど、周りの確認をしとかないと。寝起きの時のいつもの皆の感触がないから、安全だとは思うけど…、不慮の事故でビンタとか嫌すぎる。ていうか、周りに皆の感触がないなら体を起こしてから見渡す方が良いか。よっと。



「あ。おはようございます。習君」

「うん。おはよう」


 今日は四季の方が起きるのが早かったみたい。俺が起きたから俺の横で座ってた四季から声が即飛んできた。



「四季。大丈夫?」

「えぇ。大丈夫ですよ」

「子供たちは?」

「部屋の外にいるっぽいです。耳を澄ませてみてください。皆の声が聞こえますから」


 了解。魔力を耳に回して『身体強化』を発動。ドアの向こうは廊下のはず。その先のリビングから楽しそうな声が聞こえる。



「ご飯!ご飯!」

「見た目とのギャップがひでぇな」


 ルナと謙三の声。ご飯時なのね。



「アイリ嬢。それだけの量のご飯を作ってどうするのだ?まさか森野氏や清水嬢の分も作るつもりか?」

「…ん?これはわたし達の分だよ?…お父さんとお母さんの分も作ったほうが良い?」

「え!?いや、結構。起きて来なければ無駄になるからな」

「…そう?増えてもわたしがいるから食べられるけど…」


 アイリの食べる量に薫さんが閉口してるっぽい。



「ミズキ。コウキ。習と清水さんは見てなくてもいいのか?」

「見てはいたいけど…、僕らがずっと一緒の方が休まらない気がするので」

「そうなのよ。だから全員、こっちにいることにしてるのよ。気絶するのも一度や二度じゃないし…、あぁ!だからと言って心配してないわけじゃないわよ!?」


 必死に弁明を始めるミズキを賢人が優しく宥める。



「でもー、今回はあんまり心配してないよー」

「賢人の兄ちゃんの姉ちゃんのおかげで、父ちゃんと母ちゃんは魔力節約できたぽいし…」

「魔力を使い切ったわけではありませんから、今日、明日には目覚めてくださる。そんな推測が(わたくし)達の間で出来ておりますので」


 今のはカレンとガロウとレイコか。「起きるのは早いだろう」その認識は俺と一緒か。…四季も一緒だろうけど、確認しておこう。



「…だからわたし達はこっちにいる。心配は心配だけど、親離れ出来るようになっとかなきゃ、二人に申し訳ないからね」

「アイリ嬢。唐突に別の会話に口を出すな。後、それは見舞いに行かないということか?」

「…愚問。ご飯食べたら一度、様子を見に行く」


 リビングで何人かがズッコケたような音が響く。…まぁ、そりゃズッコケるよね。



「ね?元気そうでしょう?」

「だね」


 俺らが心配すぎて何も手につかない…なんて状態じゃなくて一安心。



「あ。四季。四季も今日は起きるのが早そうって認識あった?」

「え?えぇ。ありましたよ。薫さんでしたか?その方からお薬貰いましたもの。それのおかげで魔力消費が減りましたし…」


 了解。やっぱり四季も俺と認識だね。別に聞かなくてもよかったか。



「で、どうしよう?」

「…どうしましょうか?」


 耳を澄ませてください。と言ったタイミングで四季も耳を澄ませていたのは確認済み。だから、四季もご飯食べたらあの子らが来てくれることは知ってる。だからこそ、次の行動に悩む。



「今からあっちに行く?」

「のは駄目では?ご飯できそうな雰囲気の時に飛び込んで行って、新しく私達のモノを用意させる気にはなりませんよ」

「だよね。そもそもあまりお腹空いてないし…」

「私もです」


 となれば、出ていく意味はマジでないな。気を使わせちゃうだけだ。…どうしよう。…起きたばかりだからか体が硬い。四季に断りを入れてから伸ばすか。



「四季、体伸ばしていい?」

「え?そんなの許可なんて要りませんけど…。あ。習君がやるなら私もします」

「じゃあ、一緒にする?」


 折角だし。ついでに時間つぶしも出来るはず。



「一緒に伸ばしあいっこですか…、いいのではないでしょうか。ベッドの上で出来ますし、音が立たないので向こうに要らぬ心配をかけることもなさそうですし…」

「ついでに多少だけど、運動にもなる」

「ですね。やりましょ」


 やることが決まったからそそくさ動く。互いの距離をグイと詰め、背中合わせになって座る。手を頭の上に伸ばして、四季の手を取って組む。後は前に倒れて四季の腕を引っ張り、四季を伸ばす。5秒くらいしたら交代して、四季に手伝ってもらいながら体を伸ばす。



 体が伸びて気持ちいい。四季と身長がそこそこ近くてよかった。差がでかすぎるとこんなこと出来ないし…。



「そう言えば四季、いまみんなが食べてるのって何ご飯何だろう?聞いてない?」


 伸びの体勢より前傾姿勢のがしゃべりやすい。前傾姿勢になったタイミングで聞いてみる。



「む…。聞いてませんね。皆一様に「ご飯」としか言いませんでしたし…」


 四季は俺と同じように前傾姿勢になったタイミングで答えてくれた。そっか。じゃあわからないよね…。



「外見ても…、馬車の中っぽいしね…」

「ですね…。日が出ているのか、沈んでいるのかわかりませんものね」


 時間は分からない。たぶん朝ではないだろうけど…。昼か夜か決まらない。



「まぁ、ご飯食べたら来てくれるみたいだし…、その時に聞こうか」

「ですね。私達が今考えたところで答えが出るわけではないですし…」


 確かなのは寝落ちてからまだそんなに時間は経ってないってことだけ。



「それはそうと…、あの、習君?」

「ん?どうしたの?」


 声が少し恥ずかしそうだけど…。小声で何か言ってる? 「察して欲しいけど、これは無理ですよね…」…? …まさか、あれか?



「あの、重くないですか?」

「全然」


 上体を伸ばしているから少し答えにくいけど即答。ちょっと喋りにくいけれど、俺の番が来るまでだんまりして、四季に重圧をかけることに比べればなんてことない。



 …推測、当たってた。確かに四季の言う通りこれは無理。口にできるわけない。男が女の子に体重と年齢の話を振るのは禁忌だぞ…。



 沈黙が痛い。四季、何か喋って。



「……ほんとですか?」

「ほんとだよ。嘘ついてどうするのさ」


 再度の問いかけにも即答する。重いわけなんてない。2回の即答に四季は俺が本心から言っていると思ってくれ…た?



「ですが、私。痩せているわけではありませんし…」

「俺は今の四季が好きだけどね」


 体重聞いてないからわかんないけど、たぶんBMIを求めたらちょい低めの適正ぐらいのはずだし。



「ていうか、体重の上下はあんまり気にしないよ。俺は四季が好きなんだから」


 「体型」と考えた時、今ぐらいがたぶん俺にとってベストなんだろうけど…、体型まで束縛する気はない。



「あんまり…です?」

「それは仕方ないでしょ?流石に急激すぎる体重の増減とか、やせすぎ、肥満はマズいでしょ?長生きして欲しいもん」


 急激すぎる体重の増減とか明らかにおかしいし…、減りすぎると貧血になりまくりそうだし、増えすぎると生活習慣病が怖い。



「確かに。その場合は私も習君や子供達になら忠告しますね…」


 納得してくれたみたい? 一応、ダメ押ししておこう。四季がこんなことに煩わされないように。本心をぶつけよう。



「四季。俺は四季の体重がどうなろうと、いつだって「軽い」って言うよ」

「…何故です?」

「四季が好きだから。男として、好きな女の子をお姫様抱っこできるようにしておきたいから」


 …本心ではあるけどちょっとカッコつけすぎか。………四季、お願い。喋って。背中越しに四季の心臓が激しく脈をうっているのは感じられている。だから多分、照れてるはず…と思いたい。けど、呆れられてる可能性も無きにしも非ず…。あぁ、もう! 無言が辛い! 自然に会話を繋げるには…、さっきの話題をふまえて…、



「四季。四季こそ大丈夫?俺、重くない?」

「え!?全然大丈夫です!この程度で重いと思うようなやわな体してませんよ!?」


 あ。たぶんダメなやつだこの話題。思考を体重の話からそらさねば…!



「四季」

「うひゃい!何でしょう?」


 めっちゃ動揺してる。だいたい俺のせいだけど。でも、意識がこっちに向いてくれた。これなら…!



「四季が紙作って、俺が書く…。その魔法に名前付けない?」

「あ、あぁ…。なるほど。付けた方が良いですよね…。いちいち長いですし」


 よし、話題に乗ってくれた。拍動も落ち着いてきた。これで大丈夫なはず。ちょっとの時間だけど二人なんだし、楽しく過ごしたい。



「丁度伸ばしあいっこしてるし…」

「交代のタイミングに合わせて案出してみましょうか」

「だねー」


 交代のタイミングとは言ったけど、速攻で案が出るわけもない。だから、しばらく無言でやることになるけれど、さっきのいたたまれない無言に比べれば、楽しい。



 さて、どうしよう。長すぎると名前を付ける意味が無くなってしまうから、短めのもの。この魔法の肝は「四季が紙で字を書く」こと。強制的に触媒魔法になるとか、威力上がるとかあるけど、それに比べるとあんまり重要じゃない。となれば…、



「『形紙(けいし)魔法』はどう?」

「ふむ…、いいのではないでしょうか?「書く」という意味が入っていないのがちょっと残念ですが」

「それはいいでしょ。長くなっちゃうし…」

「「いつもの魔法の時点で俺が書いてるんだから」ですよね?」


 クスっと笑いながら言う四季。よくお分かりで。



「そりゃあ、私ですし。好きな人の心情はだいたい察せますよ」

「それは俺も。だよ」

「知ってます」


 まぁ、さっきみたいにだいたい察せるとはいえ変な雰囲気になっちゃうこともある。だからこそ…、



「察せても言うのって大事だよね」

「ですね。思ってたのと違う…とかあると困りますもの」


 伸ばしあいっこはまだ続いている。だから順番的に言えば、俺が四季の上体を引っ張らないといけないのだけれど、俺は互いに背中合わせで普通に座った状態で止めた。



 …そこそこ前のすかした言葉と一緒に送った「好き」は、混沌としていたせいで四季に届いてない。今の「好き」は背中合わせだったからスルッと言ってくれたし、言う事も出来た。だけどその言葉は心に響くものはあるけれど、心の中にまで浸透していないだろう。…以前に四季に向かって心の奥に響くような「好き」を贈ったのはいつだろう?



 …告白してからないような気がする。四季の心が俺から離れてしまう。俺の「好き」が四季に届かず消えてしまう。そんなことはないと思うけれど…、



「あのー、習君?」

「あ。ごめん四季。ちょっと一回やめよう」

「え?あ。はい」


 手を組んでいるのを外して、くるっと四季に向きなおると、四季は不思議そうな顔でこちらを見ている。



 ついさっき「悟れても伝えるのが大事」って言ったばかり。であれば、改めて伝えておこう。何度伝えても伝えすぎ…ということはないはずだ。…やり過ぎたらその限りではないのだろうけど。



 …もうちょっと四季にはこちらを向いて欲しいが…、それは我儘だな。いや、むしろこのままのがいい。ある程度勢いに任せないと、四季の綺麗な目でじっと見つめられてしまうと、照れ臭くなってしまうから。



「四季、いつもありがとう。俺は御前が…、四季が大好きだ」


 言えた。確かにちゃんと目を見て言えた。誤魔化しも嘘偽りもない本心をしっかりと伝えられた。



「習君。こちらこそいつもありがとうございます。私も貴方が…、習君が大好きです」


 四季が綺麗な整った顔を朱に染め、真っすぐこちらを見つめながらそう言ってくれる。そんな四季が無性に可愛らしくて、愛おしい。もっと近くで四季を感じたくなって、俺も四季も両方が動いて互いの距離が無くなっていく。まだ距離があるけど我慢できなくなって、優しく抱きしめる。距離があるからガッチリ組み合うようなハグではない。だけど、四季は嫌がらず、寧ろそれがいいと言ってくれるかのように、俺の胸にしなだれかかってくる。



 俺の胸に好きな人(四季)の頭がある。黒い艶のある髪を触るとサラッとしていて心地いい。撫でている間に四季がこちらを少し潤んだ目で見てくる。



 どちらともなく顔と顔の距離が縮まって、顔が近づいて口と口がぶつかる。鼻から入ってくる女の子特有の甘い香りと、唇の柔らかさ。それらに触発されてもっと四季に近づきたくなって、俺も四季も互いの背中に手を回してキュッと抱き寄せる。体と体がかなり広い範囲で接触して、四季の温かさと女の子らしい全体的に柔らかな感触が体全体で感じられる。



 今は口づけよりもこの温かさを感じていたい。俺も四季もそう思ったからか、同時に顔が離れ、優しく、しっかりと抱きしめ合う。思った通りさっきよりもうんと四季を感じられて心地いい。顔は互いの肩の上。そのせいか四季の微かに荒くなった呼気が首筋を撫でてきて少しこそばゆい。鼻腔にはうなじ付近の四季のいい匂いが飛び込んできて、四季の滑らかで光沢のある美しい長黒髪が鼻をくすぐる。



「こうやってると、なんだか安心出来て、幸せです」

「俺も。俺もこうやってると幸せな気持ちになれる」


 理屈っぽく言えば、互いの心臓の拍動のペースがほぼ同じだとか、匂いが安心できるとかになるのだろうけれど、そんな理屈はどうでもいい。ただ一言「俺が四季を好き」この一言で十分すぎるほどに説明できる。キスしていないから口が開いている。折角だ、もう一度言おう。



「「好き(です)」」


 四季と言葉が重なった。猛烈に彼女が愛しくなってハグを緩める。そして、また唇と唇が触れ合う。こうやって抱き合ってキスをしていると体が蕩けてしまって、彼女と一つになってしまう…そんなあり得もしない錯覚を感じる。きっとこれはこの時間が長く続きますように。そんな思いの現れなんだと…ぐふっ。何で横腹に衝撃が…。



「とーたま!かーたま!あしょべ!」


 ルナ…? ということは…、チラリ目をドアにやるとこちらを覗いていた12の目がサッと消えてドアがパタッと閉まる。…思いっきりあの子らに見られたな。



「あしょべ!」


 了解。とりあえず四季と一緒にルナを撫でる。どう動くか考えながらだから少しおざなりだけど、構ってもらえるのが嬉しいようで「にゅ!にゅ!と嬉しそうな声を上げている。



 …とりあえず、呼ぼうか。目が12個あったから、セン以外のうちの子は全員揃ってるはずだし。



「アイリー!皆ー!」

「入って来てくださーい!」

「入れー!」


 何故かルナまで混じってきた。……あ。開いた。ちょっと時間がかかったけど、ドアが開いた。



「…もういいの?」

「俺も四季も大丈夫のはずだよ」

「ですです。目もバッチリ覚めてますし、魔力も問題ありません」


 俺らがそう言うとアイリはコクっと頷く。その横でガロウとレイコが何か言ってるけど…。



「あるぇ!?父ちゃんも母ちゃんもアイリ姉ちゃんの言葉を普通に流した!?」

「先ほどの触れ合いをなかったことにしている…というよりは純粋にアイリお姉さまの言葉を「お二人の体調を心配している言葉」として受け止めておられるようですよ?」

「あぁ。寝起きで大丈夫?ってことな。…夫婦でいちゃついてる時点で大丈夫だろ」

(わたくし)もそう思わなくもないですが…やはり、心配ですからね」


 二人の会話はこっちに聞かせる気がないからか、ちゃんと内容を把握できない。俺らの話なのは間違いないんだけど…。



「父さま、母さま。起きたらすぐに来てくれてもよかったんじゃない?

「ごめんね。でも、ご飯食べてるぽかったからさ…」

「私も習君も今回は目覚めが早かったので、たぶんご飯の用意がないでしょうから、申し訳ない顔させたくないと思いまして…」


 納得してくれたのかミズキもアイリも皆頷いてくれる。



「…でも、ご飯はすぐ作れるよ?」

「時の止まってる鞄の中に何か入ってるしね…」

「でも、私達がそちらの部屋に行くと、折角私達の級友の皆さんと会話出来てるのに、そっちのけで動くでしょう?だからですよ」


 この子らは閉鎖的な気質ではないけれど…、他人と話すことがあんまりないような気がする。その機会をみすみす潰したくない。俺らの友達であれば、この子らの失敗は俺らが真剣に誤れば許してくれるはずだし。…許してもらえなければその時はその時。



 後、この子らには言わないけど、西光寺姉弟が連れてきた勇者の中に一人、|シールさんの同類《イチャラブ見るのが好き》がいたっぽい。本当にそうかは知り合いじゃないからわからないが…、絶対、俺と四季の話になって、この子らと話す機会が飛ぶ。それは勿体な…いか?むしろ逆にそいつから悪い影響を受けないように、行った方が良かったのでは…?



「…過保護」


 何時ものことだけど何故考えていることがバレるんだ?



「…完全に読めてるわけじゃないけどね。何となく」


 さいで。



「それは兎も角としまして…、私達が寝てからどれだけ経ってます?」

「全然経ってないよ?父さんと母さんが寝た次の日の昼だから…」

「ちょうど一日ってところだねー!」


 了解。ありがとう。



「思った通り早かったな」

「ですね」

「その予想はどこから出てきたんだ?」

「ん?ガロウ。それは薫さんが威力倍にするとか言ってたからだよ」

「皆と同じ推測ですね。あ。これはここで聞き耳を立てて聞きました。後、心配してくれてありがとうございます。そして、ごめんなさい」

「俺もごめん。心配かけた」


 俺らが頭を下げるとそんなの良いのにって顔をしている。…これは俺らのけじめみたいなものだから。



「それはそうと、何の話をしたの?」

「互いの紹介はしたわよ!」

「…反応は前とほぼ同じ」


 だろうね。高校生の俺らが割と年とってる実子(コウキとミズキ)を持ってるとか意味不明すぎるもの。俺らだって当事者じゃなければ「マジ?」って三回ぐらい聞きなおす。



「帰還魔法の話は?」

「したよー!」

「全員、帰れるみたいだったけど…、どうするかは思案中みたい。一応、期限は今日の夜まで!って向こうから言ってきたから、夜に答えは聞けると思うよ。父さん。母さん」


 了解。



「そういえば、父ちゃん。母ちゃん。助けた全員知ってるの?」

「知ってたり」

「知らなかったりですね…」

「そうなの?二人とも知らない人とかいるのか?」

「「勿論(勿論です)」」


 全員知ってる! なんて言えない。



「…そうなの?組分けが違うくても遊びに行く…とかなかったの?」

「人によってはそんな人もいたね」


 ただ、俺は…、



「俺はだいたいタクとその他数名で休み時間は消し飛んでたからなぁ…」

「私はだいたい本読んでましたし…。本を読んでると誰も話しかけて来ませんでしたし、声をかけてくれる子も部屋の中で完結してますし…」


 …あれ? 俺も四季も交友関係かなり閉じてない?



「他のクラスから遊びに来てる人もいたけど…」

「興味を持たなければ紹介されたわけでもなし、名前なんて覚えないのですよね」


 名前を聞くとしたら…、



「友人と喋ってるときに友人の友人が来て仲良くなった時か…、」

「運動できるとか、勉強できるとかで有名で、名前を一方的に知ってるとかですよね」


 他にもあるかもしれないけど…、これが一番多いはず。



「確率計算面倒くさいからしないけど、うちの高校のこの課程は1年文理合わせて6クラス、2年は文理別れちゃって3クラスなんだ」

「なので、私も習君も知らない。という人はいますよ」


 寧ろいない方が不自然だね。たぶん2割くらい…?



「であれば、夜ごはんの席では、お父様とお母様の御級友様達が帰還なさるかどうかの確認と…、」

「父さまと母さまが助けた人と交流する機会を設けた方が良さそうね?」


 それがよさそうだね。こっちには異論はない。



「じゃー!あそぼー!元からー、おとーさんとおかーさんが起きて来るまでー、自由時間だったからー!」


 カレンの言葉に嬉しそうにルナが「にゅ!」と体全身で嬉しそうに追従する。



「…待って。それより先にお父さんとお母さんにご飯」

「そうね。昨日の昼から絶食中だものね。何か食べてもらわないと…」

「父さんと母さんは座ってて。元気そうだけど本格的に動くのは食べてから!」


 了解。コウキ。となると…、



「これからの動きは、今から皆が出してくれる昼食を食べて、」

「食べ終わったらみんなで遊びまして…、全員での夕食の機会に合流。そこで西光寺姉弟さん達との諸々を済ませる…ですよね?」


 俺らの確認に子供たちが頷く。じゃあ、その通り動こう。



 全員といっぱい遊ばないと。気絶ではないとはいえ…、寝ちゃったから大なり小なり心配かけちゃってたのは確かなんだから。



おまけ 本編に出てきた確率について


1年生が6クラス、2年生が3クラスの時、習と四季が1年生の時も、2年生の時も互いに別クラスになっていて、かつAさんが

(1) 習とも四季とも2年の間に一度も同じクラスになったことがない

(2) 習か四季のどちらかとは同じクラスになったことがある

(3) 習とも四季とも同じクラスになったことがある、

という確率は、(私の計算が合っていれば)、


(1) 2/9, (2) 2/3, (3) 2/9


です。が、本編に出て来るクラスメイトを習と四季が知っているかどうかは、噂で聞いたことがある。や、遠くから見たことがある。などの理由でこの確率通りにはならないと思われます。ご了承くださいませ。

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