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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
7章 魔人領域再び
249/306

閑話 子供達と勇者の自己紹介

時系列的にはジンデ討伐一日後。子供達が割と落ち着いていた時期です。

視点は臥門芯。


8章で行動を共にするメンバー(魔王討伐班)の簡易纏めも兼ねてます。

「習や清水さんは大丈夫?」

「…ん。大丈夫。ちょっと心配ではあるけれど…。数日気絶するのはたまにあること」


 稀にある…か。一体、習や清水さんはどんな旅路を通ってきたのやら。まさか二人だけ難易度lunatic(ルナティック)だったりInferno(インフェルノ)だったりしないよな…?



「そっか。心配だけど…。僕等が出来ることはないよね」


 光太の言葉に鎌を携えた少女がコクリ頷く。



「…待つしかない」

「だよね。じゃあ、何もしないのは時間の無駄だし…。互いの紹介しよ?たぶん、皆は習や清水さんが僕等について教えてくれてるだろうからいいだろうけど…、」

「いつまでもわたくし達が名前を知らないのは不便ですわ」


 だな。名を呼ぶにあたり『死神』やら『長耳の狩人』等、外見的特徴を捉えた渾名で呼ばれても困るだろう。



「じゃあ、こっちからいくね。多分、皆も知ってるだろうから。僕は望月(もちづき)光太(こうた)。一応、魔王討伐班のリー…あ。ごめん」

「…大丈夫ですよ?わたし達、リーダーという言葉の意味はお父さんとお母さんに教えてもらっています」


 出た。この子らの口から出る言葉で一番mistery()な言葉。『お父さん』と『お母さん』。おそらく(義理の)だろうが…。普通に考えて、この大きさの子なんているわけがあるまい。…仮にいたとしたら清水さん、何歳で産んでんだって話だからな…。



 最小出産記録は5歳だったか? なれば、可能と言えば可能。だが、5(から)体が出来るまでの間、帝王切開は避けられぬ。現代の出産でも稀に命を落とす母もいる。体の小ささというマイナス要素を加えるなら、死亡率は著しく増加する。故に、実の子というのはありえぬ。



「わたくしは天上院(てんじょういん)(しずく)ですわ。呼び方はご自由に」

「僕も自由でいいよ。ついでに、喋り方もね」

「…わかった」


 提案を即断で受け入れるか…。こちらの方が立場が上(勇者)というのもあるだろうが、今回は「習と清水さんの友人」という点を意識したか?



「…でも、光太さん。わたし達は雫さんを呼び捨てにするようなことはないから安心して」


 グッと親指を立てる少女。それを見て光太も天上院さんも微笑ましいものを見るように笑う。



 …確かに、字面だけ見ると微笑ましいように思えるが…。習に清水さん。この子らにも光太が天上院さんといい関係…、というか光太が天上院さんを呼び捨てすることをサラッと遮ってくることを伝えてる。じゃなきゃこのタイミングで言わんだろう。……となると、俺と列の関係も当然のように伝わってるよなぁ…。



「俺は久我(くが)謙三(けんぞう)。俺も口調は気にしない。適当でいいぜ!てか、兄貴と姉御の子なら…、甥っ子と姪っ子だからな!」


 超理論ヤメロ。お前が勝手に二人を「兄貴」やら「姉御」と呼んでいるだけで血縁ねぇじゃねぇか。



「…ん。よろしく。叔父さん。」


順応性たかぁい。…でも、それはこの子が特別…というわけでもなさそうだ。差はあれど普通に受け入れてる…。



「俺は旅島(たびしま)(じゅん)。俺も口調は自由で良いぜ。」

「長呉、長呉!」

「おい、芯。翻訳」


 言われずとも。



「こいつは蔵和(くらわ)(れつ)。今のは…、長崎と呉の造船所で作った船→武蔵・大和→蔵和とかいう尋常じゃない言葉遊びの結果。滅多なことがない限り常にこの喋り方だ。満足に意思疎通をしたくば翻訳を我、臥門(がもん)(しん)か、習、清水さんに頼め。あぁ、それと我らも言葉は気にせぬ。自由でいい」


 丁寧語を強制とかする気はない。とはいえ、曲がりなりにも習や清水さんと一緒にいたのだから「自由に」と言ってもある程度、礼節ある話し方をするだろう。



「…ん。わかった。じゃあ、こっちも自己紹介するね。」


 頼んだ。



「…わたし達の大部分はお父さんとお母さん…あ。えっと、森野習と、清水四季。この二人の義理の子供だよ」


 …? 大部分?



「…わたし達の正式な名前は『森野=清水=なんとか=ラーヴェ』。『なんとか』の部分にはわたし達の本名が入る」


 習と清水さんの苗字が引っ付いてる…。まさかあいつら籍入れた? …いやいや、まさか…。



「…わたしはアイリ。…漢字に直すと愛と理でアイリ。…お父さんとお母さんの実質的長女」


 ほう…。通りで。通りで先からこの少女が…、アイリがリーダーシップをとっていたわけだ。



「…わたしは元ルキィ様の近衛。お父さんとお母さん、それにわたしの背丈が都合よく家族に見えるから、二人の護衛として同行してたよ」


 確かに。習は勿論、清水さんも背が高いからな。清水さん、女性なのに俺より普通に高い。そこに背丈が小さいアイリちゃんが入れば…家族に見えるか。習も清水さんも大人びて見えるから、アイリちゃんくらいの子なら居ても変じゃない。



 …流石に二人に「実年齢よりかなり上に見えるぞ」とか言えないが。でも、30はいかない。それに原因は見た目じゃなく、二人の持つどこか落ち着いた雰囲気だ。



「ん?兄貴も姉御も普通に戦えるが…」

「…魔獣とか魔物がいるから。その対処にね。…ただ、護衛だったわたしより普通に強かったんだよね…」


 まぁ、習と清水さんだしな…。何故かあの二人は大抵のことは何とか出来てしまいそうな気がする。



「なら、どうして今も一緒にいるんだい?」

「…長女だから」


 光太の問いに即答するアイリちゃん。



 なるほど。あの二人が好きになったから、ずっと一緒にいたい。そう思ったのか。



「…あ。今更だけど、わたし達も口調は気にしないよ。…というか、私達の方がだいたい年下だよ?」


 だいたい? …長耳の娘が例外か?



「…違う。長耳の娘は、産まれたばかり」

「だめだよー!おねーちゃん!ボクにも喋らせてー!」


 は? ん? 産まれたばかり…?



「ボクはカレンだよー!」


 こっちの困惑を置き去りに始めるのな…。



「漢字はー、難しい方の華にー、(はす)ー!蓮根(れんこん)の蓮でもいーよー」


 蓮根は蓮の茎の部分なのだが。言わぬが花か。蓮華(れんげ)などと言われるほうが困る。そっちの方がおそらく想像しにくい。…結局、蓮なのだが。



「でー、立場は一応、おとーさん達の次女だよー。産まれたばかりってのはそのままだねー。おとーさんとおかーさんが拾ってくれた蕾からー、産まれたのー!」


 …マジかよ。



「何故蕾なんだ?」

「それはねー。ボクがハイエルフだからだよー!」

「っぁっ…」


 あ。すまん。強かった。だが、順を押さえつけるのには必要な処置だった。まぁ、出自の話で「異世界チック」だからといって立ち上がるほど馬鹿じゃないとは思うが…、それでも、やらかしやがる可能性は潰しとかないと…。



「この世界ではー、エルフもハイエルフも蕾から生まれるのー。差を作るのは産まれるまでのかんきょー!そこに世界樹のえいきょーは、あんまりないよー!」


 ふむ…。となれば…。



「血は繋がっていないけれど、習と清水さんの影響を多分に受けてる…ってこと?」


 光太が思っていたことを言ってくれた。



「そうだよー、望月さん!だからー!ボクにとって二人は実の親に等しーよ!世界樹はー、原料作る工場かなー?」


 おかしいな。ハイエルフは世界樹を守る盾とか本にあったはずなのに…、カレンちゃんの中での世界樹の地位が低そう。



「なるほど。ところで何故「一応」次女なのです?」

「天上院さん。それはねー。ボクがハイエルフで無性だからだよー!」


 あぁ…、そりゃ「一応」だな。どっちでもないんだから。



「だけどー、エルフは性別があってー。ハイエルフってバレたらちょっと面倒くさそうだったからー、誤魔化しやすい女の子扱いなのー」


 なるほど。よく考えてるな…。カレンちゃんの顔つきは中性的。ぶっちゃけ、どっちとも取れるから、触って確かめる馬鹿が出ないとも限らない。その時、あるモノがないよりは、ないのが当然。その状況の方がまだ誤魔化しが効く。後、女の子なら同性が無理やり脱がすとかもないだろう。…たぶん。



「ところで、環境の違いって何だ?差し障りなければ教えてくれ」

「いーよ!順さん!むしろ、よく聞いてくれたねー!かんきょーはねー!「愛」だよー!ふふん」


 実に嬉しそうにいうカレンちゃん。…本当に習と清水さんが好きなんだな。



「ボクが産まれた時のねー、おとーさんとおかーさんはまだ思いを伝えてなかったけどー、互いが好きなのが生まれる前から伝わってきたのー!それにー、ボクが生まれるきっかけはねー!お風呂でおとーさんがおかーさんに告白したことだったんだよー!」


 …習、清水さん。ドンマイ。あまりにも二人が好きすぎて馴れ初め的なモノを暴露されたぞ。それを聞いても他の子供たちは特に反応…獣人の子らだけ顔が赤いか。免疫ないのか?



 光太と天上院さんは普通だな。「仲いーな」ぐらいなんだろ。お前らも十分仲いいがな! 謙三は…「甥か姪」が増えるか? とでも考えてる? 残念。血のつながりはないから姪甥は増えないぞ。そして、順は…、ニヤニヤ笑顔でこっちを見ている。その視線の先には俺の膝の上に陣取って、こっちをガン見してくる列。



「大型車。大型車」


 大型車→バス→風呂…ね。お風呂かぁ。ちっさいころは一緒に入ってたけど、最近は拒否してたもんな。「誰もやってないから」って。



「魚。魚」


 魚→(ブラック)バス→風呂か。黄昏ていたのがご不満か。「入ってる人いるじゃん!」って露骨に訴えてきてる。



「列。習と清水さんが一緒にお風呂に入ってるのは事故だ」


 たぶん。だけど、習の性格的に告白してもないのに一緒に風呂入るとかあり得ん。きっと誰かに仕組まれたはず。



 不満だからって膝を叩かないで。割と痛いから。あ。駄目だこれ。通じない。つねんな痛い! もー。仕方ない。



「プールか混浴可の温泉で我慢して」


 危なっかしすぎて一緒に水辺に遊びに行ったことなかったが…。もう高校三年生。さすがに何かあっても守れるはず。ちっさいからナンパはないだろうが、一応、肉壁()も付けよう。呼べるなら応援に誰か…特に習か清水さんを呼べばいい。



 …プクっと頬を膨らませる列。プールや混浴の温泉ではご不満か。…他人がいるのが嫌。…顔があんまり変わらない。それだけではない。



 …まさか全裸で引っ付きたい? 昔はよくやっていたが………。顔がパッと華やいだ気がする。……………見なかったことにしよう。おい、こら順! 笑うな!



「そっちの男の子と女の子は?」


 急に話題を振ったからか少し驚く狼と狐っぽい男の子と女の子。すまん。逃げさせてくれ。



「俺はガロウ。漢字は牙に狼。父ちゃんらの長男」

(わたくし)はレイコ。漢字はお礼の礼に、子供の子。そして、お父様たちの三女です」


 ガロウがちょっとキラキラっぽいのは…、もとからあった名前に漢字を当てたからか。



「俺は白狼族で、」

(わたくし)霊狐(れいこ)という種族です」


 よし、順好みの単語が出たが、ちゃんと座っているな。…だが、レイコちゃんは種族名と発音が同じだな…。



(わたくし)、もとは神獣です。だからといって何か特別な役目があるとかそのようなことはありません」


 よし、偉いぞ順。よく座ったままでいてくれているな。だが「元」か…。



「『元』であるのは、お父様とお母様が、リンヴィ様をはじめとする群長方の助けを借りて、神獣という概念を破壊してくださったからです」


 何してんだ。あの二人。



「というのも『神獣』という概念自体、何故存在しているのかわからないものでして…、そのくせ、(わたくし)の行動のあちこちを縛り付けていたのです」


 なーる。それなら納得。それなら壊すことを選ぶか。あの二人なら。



「それ、壊しちゃってもよかったのか?」

「さぁ?よくわかっていませんが、わからないがゆえに監禁しておこう。といった扱いしかされておりませんでしたので…。本質がどうであれ、(わたくし)がお父様方とともにあるには邪魔でした。だからこそ、お二人は壊してくださいました」


 謙三の問いで予想外に重い答えが返ってきた…。種族名と名前の発音が同じなのも「神獣」だったことに起因してるっぽいな…。



「俺とレイコのことはこれくらいで」

「…補足1。ガロウとレイコは幼馴染」

「補足2ー!二人は恋仲だよー!」

「「!?」」


 何でバラすの!? って目が言ってるな…。



 姉二人はおそらく、「幼馴染であって付き合うのに問題なく、ガロウとレイコちゃんが両想いなのも互いが知ってるし、習らも知ってる。だから、恋路を邪魔すんな」と言いたいんだな。



 心配しなくともこっちの6人中4人は固定カプ。謙三は姪甥には手を出すまい。順は知らんが、たぶん出さん。心配せずとも横恋慕はない。



 現に、光太と天上院さんがほんわかした目で二人をみてるしな…。



 光太。お前が無意識であってもやってるのは、アイリちゃん達がやった|のと同じ|《他人への牽制》だぞ…。さっさと天上院さんに告って付き合え。そんで爆発しろ。



「貴族。貴族」


 貴族からpeer(貴族, 仲間)を経て、仲間…か。難度高いな。



 確かにそうだな。俺と列の関係はガロウとレイコちゃんの関係とそっくりだ。幼馴染で、両想いなのが分かってる。…そして進展具合も(主に俺のせいで)同じくらいのようだしな。



「ルナはルナだよ!」


 終わったと判断したのか言い出す女性。…それはいいが、口調が幼いな?



「…この娘はルナ。漢字は瑠璃の「瑠」と、えっと確か…、「奈良」だったっけ?それの奈。魔国の前皇帝の次女で、わたし達の四女」

「よろしぃ、く!」


 前皇帝の次女…? びっくりするほど偉いな…。だが、その事実が余計に幼さを際立たせる。今も若干、舌足らずだったし…。



「…だからたぶんこの娘が一番、わたし達の中で年取ってる。…200以上は間違いないよ。…所作が所々で幼いのは、産まれた直後に誘拐されて、魔族の入れないところでずっと一人で生きてきたからだね」


 理由が重くて何も言えん。



「幸せ、だよっ!」


 静まり返った空気に含まれる同情や憐憫の気持ちを感じたのか、満面の笑顔で言うルナさん。



 「習や清水さんと会えて幸せだ」そう言いたいのだろう。そうか。ならば、このルナさんへの憐れみだとかそんな気持ちは投げ捨ててしまえ。



 …で、後は二人。



「僕はコウキです。漢字は幸せの樹です」

「アタシはミズキ。漢字は瑞々しい樹よ。あ。『き』の漢字はアタシも兄さまも植物の難しいほうよ」


 「き」は「樹」な。了解。確かに、「樹」は色々あるからな…。



「僕が次男で、」

「アタシが5女ね。アタシとコウキは双子よ。一応、コウキ兄さまが兄よ」


 通りで似ていると思った。……? あれ? 二人の面影、どこかで見たことが…。



「後、アタシと兄さまは父さまと母さまの遺伝子学上の子供よ」


 ……は? あれ? 聞き間違え…?



「ごめん。ミズキちゃん。今なんて?」

「構わないわよ。望月さん。アタシと、コウキは父さまと母さまの遺伝子上の子。そう言ったわ」


 光太が聞いてくれたが…。聞き間違いではない。おかしいのは耳? それとも頭?



「えっと、それは遺伝子検査したら親子判定が出るってことでよろしいか?」

「よろしいわ。臥門さん」


 遺伝子検査したら親子判定出るのかー。そっか。異世界だし、そう言うこともある…いや、異世界でもさすがにないだろ。意味が分からん!



「まさか姉御、処女懐妊したのか!?」

「何でだよ!普通に儀式したのかもしれねぇだろ!?」

「だけど、順!兄貴がやってるとは思わねぇよ!だって、旅してるんだぜ!」


 一理ある。俺が言える立場ではない…どころか習に文句や苦言を言われても仕方ないが、客観的に見て習はヘタレ。



 儀式はしていないと考えるのが普通。…まぁ、ヘタレとはいっても、やってない理由の大部分は、何度も旅で気絶してるんだから「清水さんの体調が心配すぎる」という甘い理由だろうけれど。



「だが!待て!謙三!普通に考えて処女懐胎はありえんだろ!?」


 だな…。順。単為生殖なら別だが、人ならほぼあり得ない。



 …尋常じゃないくらい生命力のある精子が、いい場所に着地して気合で受精出来れば…、可能性はなくもない気はしないでもないが。そんなのはあり得ないだろう。だって、そんな状況、手術なしで作ろうと思えば作れるだろうが、「何やってんのお前ら?」としか言えないもの。普通にやれよ。



「なら普通に妊娠した!?」

「いえ、待ってください!久我さん!それこそおかしいですわ!まだこちらに召喚されてから6カ月も経ってませんのよ!?」

「雫の言う通りだよ!期間が短すぎる!こっち来てからだと産めるわけないよ!?」


 なら…向こうで作った?



 …あのさ。列、そんな目で俺を見ないでくれ。「羨ましいから私もやりたい」そんな気持ちでやっていいモノじゃないと思うんだ。俺。心配しなくても俺は列と結婚する…って、口に出して言ってなくないか? 好きも言ってないような…。それが不安にさせてる?



 だー! 体押し付けてくんな! 考えが! 考えがっ! まとまらなくなるだろっ!



 うりうりという押しが強くなったー! 知ってた。言っても聞いてくれないことぐらい。待って。本気で待って。子供はまだ早い! 育てられるわけが…ん? 育つ…。あ。



「そもそも、こっちで産んでいるなら育ちすぎだぞ!?」

「そうよ」

「です」


 ミズキちゃんとコウキが即、若干、呆れの籠った目で同意する。…何故にこんな簡単なことに気づかなかった。…てか、説明受ける前はそう考えてたはずだが…。衝撃がでかすぎたな。うん。もうちょい早くに止めてくれてもよかったとは思うけど…。てんやわんやしすぎててどうしようもなかったのかね?



 …列。頼むからその捨てられそうな小鹿のような目を止めてくれ。な?



 くそっ。八つ当たりでしかないが、のほほんとしてる光太と天上院さんが恨めしい…! このくらいの年齢なら「子供」と聞いたら何らかのリアクションをするものじゃないのか!?



 …まさか、一緒にいるのが当たり前すぎて考えられないとかそういうのか!? ちくせう。



「まだ少し混沌としてる気がするけど…。アタシ達は父さまと母さまが特別な日にエルフ領域の湖に落ちて、その時に採取された精子と卵子が受精することで生まれたのよ」


 完全に遺伝子的に二人の子供だな。



 …くっ、列の目がきらっきらしてる…! 待て。頼むから待て。まだ早いって! てか、特別な日って言ってるじゃん! 100年に一度とかかもしれない!



「周期、周期?」


 翻訳不要な言葉をしゃべった…!? マジかよ。テストのとき以外だとほとんどないのに…! こいつ、本気だな!?



「周期…?あぁ。特別な日…『白と黒の旅路(ホシェックジャイゼ)』が起きる周期のこと?それならだいたい1ヶ月らしいわ」


 くそっ! 流石、習と清水さんの子供だな! 察しが良すぎる!



「あ。でも、出来るのは多分ガワだけよ?」

「何故?何故?」

「僕もミズキも転生者だからですよ。僕の魂は2000年前っぽいです、まぁ、準前世を含めると、死んだのはつい最近ですが」

「アタシも前世のことはあんまり覚えてないわ。準前世は……、あったかどうか定かではないわ」


 ミズキちゃん、一瞬目が泳いだ気がするが…。属性てんこ盛りすぎるだろ。二人とも。



「む」


 あ。列が考え出した。「もしガワだけしかできないなら、中身…すなわち、前世、準前世を持つ魂が必要?なら、作り出す…?」的なことを考えてるな。この目は…本気。



「止まれ。列」


 後ろから覆いかぶさって耳元でささやく



「むぅ」


 止まってくれた。よかった。その思考はいくら何でも看過できない。



「ま、アタシとコウキの話はこれくらいでいいでしょ。前世、準前世の話をアタシ、出来ないし」

「僕も同じ。準なら別ではありますが、楽しくありませんから」

「了解。じゃあ、これからよろしく」


 光太が頭を下げると、習と清水さんの子供達も下げる。そして、俺や腕の中の列、順に謙三、天上院さんも下げる。



「じゃあ、後はお話する?」


 光太に問われたアイリちゃんはちらと習と清水さんが眠る部屋に目を向ける。一瞬だけ逡巡したが、結局、コクっと頷いた。



 なら、話そう。話題ならいっぱいある。こっちの話をしても子供たちは困るだろうが…。二人の話ならこっちもわかるしな。



 …視線を感じる。これは…順か。



「へ タ レ」


 順に視線をやると口を動かしてそう言った。うっせ。お前、どれだけ感情を素直に口に出すのが小恥ずかしいかわかってねぇだろ!?

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