212話 続シャンドゥ
魔族達からの攻撃を受け止め、力に転化させたルナの一撃が解き放たれる。ルナの放ったソレは一瞬にして家の周囲をまばゆい光で埋め尽くし、外の様子を窺うことが全くできなくなってしまった。
「ルナ。これはどれくらい続く?」
「にゃあ?」
ルナにもわからないと。可愛らしい猫みたいな声とともに首をしっかりかしげていたから。
「ちゃだ、全部、撃ったよ!」
エヘン! と胸を張るルナ。…となると、この視界不良の状態はすぐには終わらないな。受けた攻撃が熾烈だった分、この尋常じゃない火力を誇る逆撃も、かなり長く続くだろう。
なら…。
「…どこ行くの?」
「ん?外。ガロウが足場を作ってくれてるし、今のうちに馬車を元通りにしておこうと思ってね」
「ボクらも行ったほーがいーい?」
「いえ、今はいいです。私が出ます。ですが、いつでも出られるようにだけはしておいてください。呼んだらお願いしますね」
全員、勢いよく頷く。アイリとミズキに至ってはさっさと呼んでね! と言いたそうな顔をしてる。…そんな顔しても、何もないのに呼んだりしないからね?
さ、行くよ。セン。
「ブルッ!」
物凄く嬉しそうに鳴くね、セン。ドアが閉まっているけれど、そのすぐ脇までってってこ走り寄っていった。馬車が無くても走れるはずだけど…。馬車があるほうが良いのね。
「ブルルッ!」
「早くっ!」…ね。急かさなくても行くから。ドアを開け…た瞬間、出て行ったね。どんだけ走るのが好きなのさ。
外に出て、家の戸を閉めて、また準備。ガロウが出してくれてる爪は…5枚か。なら、一枚ずつ、合計三枚を俺らの足場。一枚を家、一枚を馬車本体でいいか。
さっさと繋ごう。
「にしても習君」
「何?」
「案の定でしたね」
「だね」
思った通り聞こえてくる音が酷い。この予感がしていたから子供達に外に出て欲しくなかったわけだけど。どの子も少なからず戦闘したことがあるが…、戦闘の最中に出て来る凄惨な光景、残虐な音、生々しい臭いに、皮膚を撫でる生暖かい風、そして、口に入ってくる血の味。これらは体験しなくて済むなら、体感しなくていいだろう。
特に今回みたいに酷いのは。
ルナの攻撃自体が音を放っているのか、外の音は割とかき消されている。だけど、度々漏れ聞こえてくる声を意味成すようにつなぎ合わせれば、酷いとしか言いようがない。これをBGMとして受け流せる人はそういないだろう。
…とはいえ、この酷さも、あっちの視点に立ってみれば納得できるのだが。彼らからすれば怒涛の勢いで攻撃を叩き込んで、もう終わり…というときに穴のそばの味方が突如死ぬ。唖然としている間にさらに味方が死ぬ。正気に戻って後ろに動き出すまでの間に追加で死ぬ。逃げてもルナの逆撃の方が早いからますます死ぬ。光線を打ち消そうと魔法を撃っても、何かを投げても威力が違いすぎて無駄。余計に死ぬ。
…とルナのたった一発の攻撃で加速度的に死が量産される。それに加えて、おまけと言わんばかりにカレンが安全地帯にいる魔族達を射貫いていってる。きっと、カレンは俺らの攻撃を『境』とみなして、それを越えて行っているのだろうけれど…。あちらさんはそんなこっちの事情なんて分からない。どこからともなく矢が飛んできて、命の灯を消してゆく。彼らに観測できるのはただこれだけ。
カレンとルナ。二人の一撃が彼らに齎すのは阿鼻叫喚の地獄。逃げ遅れた者から順に塵すら残らず消し飛ばされる。ルナの逆撃のそばで足に矢を受ければもう逃げられない。『回復』をしている暇などなく、『回復』しようとした者諸共消え失せる。
もうちょっと逆撃から離れれば「助けようとするけれど、本人に止められて泣く泣く撤退する」とか「止められて逡巡してる間にまとめて塵と化す」とかの悲劇だとか、「倒れた息のある人を踏みつけて逃げて行く」とかの生への執着が見せる一種の残酷さ。だとか、「逃げようとして怪我もしてないのに辺り一帯が倒れる」といった秩序を失った集団の末路だとか、そんなありとあらゆる光景が繰り広げられている。
…のが聞こえてくる。いまだに視界はルナの逆撃の白色に制圧されている。そして、音もルナの攻撃でかき消されているのか絶え絶えで、完全ではない。だが、それでもこちらに伝わってくる細切れにされた音に乗った感情は、欠落した音を埋め合わせ、本来あるはずのない視界情報を目で見るよりも鮮やかに伝えてくる。
やっぱり、あの子らを外に出さなくて正解だったな。俺らの子らがこれに耐え切れないとは思わない。それでも、不快になる要素は出来るだけ除いてあげておきたいから。
アイリもカレンもコウキもミズキも、ある種達観しているから表面上は何も変わらないだろうが…心の中は分からない。ルナも今はまだよくわかってないから、耐えるとかそういう次元にまだ至れてない。将来、思い起こして不安になる可能性を否定することは不可能だが。
ガロウとレイコは確実に嫌そうな顔はするだろう。あの子らが一番、家族以外に対しても優しいから。それでも、割とすぐに越えるだろう。逞しすぎる姉と弟妹がいることだし。…ただ、一人だったら危ういかもしれない。
でも、遠ざけるのと、敢えて接させること。どっちがいいのかなんてわからない。跳ねた油で火傷するとか、落ちてきた包丁で裂傷を負うとかなら、日常にありふれた危険。だから、ある程度近づけてみて「危ない」と教えるのは、本人にとってもいいだろう。
だけど、これは…ね。日常にあるか? と言われれば確実にない。戦場にあるか? と言われれば” Yes “だが…、このレベルは汚いモノしかない戦場でもそうそうないだろう。
「習君。ルナちゃんの攻撃が薄くなってきましたよ」
「ありがと。でも、ちゃんと気づいてるよ」
「ですよね。でも、一応です」
ニッコリほほ笑む四季。…綺麗だ。やっぱり俺は四季が好きなんだなぁ…。
…残念だが見とれているわけにはいかないか。今、まだ余裕があるとはいえ、余裕がなくなってゆく最中なのだから。
四季に言われた瞬間、ほのかに向こうが見えるかな? レベルだったのにもう既に物の輪郭がわかる程度になってる。これからますます見えるように…ひいてはエネルギーが無くなり、攻撃が弱まっていくのは間違いない。
現状見る限り、攻撃範囲はかなり広かったみたいだ。目算1 kmほどの範囲が地面を除いて全て消滅している。まだ攻撃は進んでいるから、最終的にはもうちょっとばかし、この文字通り「命の消えた」荒野は広がることになるのだろう。
そしてルナの逆撃の向こうに広がるのは、音から聴いた光景の焼きまわし。武器や怪我人が散乱し、逆撃に触れた端から消えていく。
…あれ? 魔族達の行動、鈍くなってないか? ……いや、気のせい…ってわけでもなさそう? ルナの攻撃の進む速度も遅くなってるみたいだし…。…わからん。
「習君。ここまでの威力ですと、地面が残っているのが逆に違和感ありますね」
「だね。きっとルナのシャイツァーが俺らの気持ちを汲んでくれたんじゃない?」
「かもですね。地面があるほうが私達にとって都合がいいのは間違いないのですから」
俺らにとってはある程度ちゃんとした地面があるならば、空を飛ぶよりはセンに走ってもらった方が早い。
「もしくは、地面を消滅させる分、魔力が増えるのを厭ったか。かな?」
「どっちもありそうですね…」
ルナならどっちの理由もありそう。割合的には前者が圧倒的に多い予感がするが。
「…ねぇ、お父さん。お母さん。これからどうするの?」
出てきたのね。アイリ。となると他の子らもか。呼ぶって言ったのに…。この子らの性格なら次の場面に移りそうなときにジッとしてるはずはないか。
「「「「シャンドゥを殴る」」」」
陛下夫妻は俺らの今の聞かれていないはずなんですけど…。何故に被った。
「もはやここにいる敵軍は壊滅したと言っていい。これを潰して回るのはただの時間の無駄だ」
「なら、シャンドゥを占拠してしまうほうが良い。万一、ジョルシェンがいなくとも軍を助ける保険に出来る」
アイリが二人も同じ理由? と目で訴えてきてる。うん。そうだよ。
「…だよね」
「それ以外のー。選択肢がないからねー」
「ねぇ。5人ほどアタシを残して、他に回すけどいい?」
「「お願い」」
「ん」
大量にいたミズキが手を繋いで一瞬で5人にまで減る。今頃、連絡用に残されたミズキがいるところではミズキが増えているのだろう。
「ブルルッ!」
「お願い」
「全力で行っちゃってください」
そろそろ待ち飽きたのかセンが走るのを催促してきたから走ってもらう。この位置からなら外縁に到着する前に攻撃は消えるだろう。
「ねー。敵ー、脆くなったー?」
「そんな気がするね」
「ですね。私達の周りに敵が一切いないので、確証はもてませんけど」
カレンは矢でかなり遠くの敵を撃ってる。だけど近場にはソレを確かめられるような敵もいない。だからはっきりと断言できない…と思ったけどそうでもないな。
「貫通力が上がってる…?」
「上がってますね…。前までなら、肩に当たったところで通り抜けもせず止められちゃってましたが…、今は止められるどころか、腕一本持って行っていますね」
脆くなった? って聞いてるんだから、矢の威力を上げているわけではないのだろうし…。やっぱり脆くなってる?
「けんしょーしてみるねー。わかりやすいよーに道の上狙うねー」
道の上…ね。既に盛大に混乱状態にあるのだが…。
「心配しなくてもー、狙うのはこーげきのそばだよー。どーせボクが何もしなくても死ぬー」
ならいいか。…相手の心情を考えるとあまりよくはないけれど、確かめておきたいしな。…それにどうせ生き残るのに精いっぱいで後ろを確認する奴なんてそうそういないだろうから、目撃者も少ないだろう。錯覚でゴリ押せる。
「見やすいよーに、矢はおっきくするねー!後ー、わざとかんつーしないよーに当てたら止めるー。威力も下げるよー!」
配慮の塊。
カレンは電柱並みに太い矢を番え…、というか弓に乗せ、ほんのちょびっとだけ弓を引き絞ると、即放つ。矢は一瞬でルナの攻撃を越え、道の上の魔族の胸を少し下から小突く。
矢はヘロヘロで普通に当たったところでちょっと痛いですむ程度。にもかかわらず魔族の心臓付近はぽっかりと穴が穿たれ、撃ち抜かれた魔族はなぜそうなるのかさっぱりわからないが、3階くらいの高さまで打ちあがり…落ちる間にルナの一撃に巻き込まれて消滅した。
「おー。そーてーがいの動きするねー」
「重力仕事してないじゃん…。ねぇ、父さん。母さん」
「「だね」」
それは兎も角、今ので「脆い」のは間違いなくなった。あれで吹っ飛ばされるのは謎だが。吹き飛びやすいのは「脆い」で済ませられることではない。…となると、魔族達が打ちあがりやすくなってる? …あれ?
「なぁ、四季。やっぱり魔族達の移動速度下がってない?」
「やはりそう見えます?私もそんな気がしています。怪我…にしては皆、怪我してるようには見えませんし」
外から見てわかる程度に重傷なやつは既にルナの攻撃で無と帰しているからな。
「足首を挫かれたという可能性は…さすがにないですか。あるとすれば疲労ですよね?」
「そうね。レイコ姉さま。でも…、命がかかってるせいかもしれないけど、少なくとも皆、元気そうよ?」
家族全員が敵の速度が下がったということを感じてる。なら、速度が下がってるのは俺の気のせいではない。でも、速度が下がったのは怪我や疲労のせいじゃない…となると原因はなんだ?
「あ。父さま。母さま。味方の軍が軽く相手に一当てするみたいよ」
「大丈夫なの?さっき散々にやられてたよね?」
「ある程度何とかしたみたいだからたぶん、行けると思うわ」
軍が合流して以前よりも数は増えているのだろうし、攻撃だから士気も上がるだろうけれど…、少し不安ではある。決断した指揮官はナヒュグ様とジャンリャ様から信頼されているのだから、そう心配はいらないだろうが…。
「ヒヒ―ン!」
「終わったよ!」と言わんばかりにセンが嘶く。俺らにルナの逆撃が止んだことを教えるためのその行動は、同時に敵に俺らの接近を告げる。だが、既に指揮統制が壊滅し「如何に逃げるか?」が主題になっている彼らにとって、センの嘶きは死神の襲来を告げる合図に等しい。
誰もかれもが絶望を深め、益々一心不乱に逃げようとする。こちらに向かってくるものは誰もなく、混乱を余計に助長させ、我先に逃げようとする。
…逃げようとしているはずなのだが。間違いなく遅いな。ここまで近づけばはっきりわかる。俺らが穴に落ちる前までの速度の半分程度しかない。この期に及んで全力を出さないなんてありえない。速度が落ちているのも確定だ。
「やっと見えた!ナヒュグ!お前は取る!」
…まだいたんだ。戦える奴。…いや、違うな。こいつは俺らを殴ってた軍の中にいたやつではない。おそらく、近場にいた先の惨劇を齎したルナの一撃を見て、士気が崩壊した軍の指揮官だ。
…にしても、急降下しながら向かってきてるはずなのに遅いな。普通なら既に俺らの元に到達してるぞ? しかも、本人は自分が極端に遅いことに気づいていないっぽい。いっそ滑稽だ。
「…やる?」
「取るー?」
遅すぎて子供たちも俺らに確認を取ってくる始末。
「うん。取る」
「私達にやらせてください」
でも、今回は確かめたいことがあるからありがたい。…というか、聞いてくれたのはそれを察していたからか。
俺と四季で飛び上がって迎撃する。…止まっていると思ってしまうレベルに遅いな。スロー再生の方が早い可能性すらある。
…あれ? モヤモヤした白い霧みたいなものがまとわりついてる?
「なーーーんーーーだーーー」
…さっきは普通に喋れてたのに、話す速度まで下がってる…。武器を構えず、振るおうとしているようだが…、俺らの接近の方が早い。
四季が軽く振るって武器ごと腕を斬り飛ばし、俺は彼の進路上に刃を優しく置く。
たったそれだけ。だがそれだけなのに、鋭利な武器でもなく、大した力が入っているわけでもなく、相対速度が早いとか、ありとあらゆる威力を高める工夫をほぼしていないのに、ツーっと置いた刃によって切断された。
「手ごたえはどうです?」
「豆腐」
ひょっとしたら豆腐の方がマシかもしれない。それくらい手ごたえがない。
「間違いないな。確実に敵は弱くなってる」
「それも特大に…ですね」
だね。RPGで言えば全能力値に特大のデバフが入ってる状態。…例えはどうでもいいか。大切なのは敵が凄まじいまでに弱体化しているということ。さすがにちょっと歩いただけで骨折…とかまでではない。が、おそらくどこにでもいるような幼子が、ちょっと本気を出して殺す気で殴りかかってきたら、死ぬ。そのレベルにまで。
普段なら気づける殺気に気づけずに殴られて死ぬ。よしんば普段通り気づけても、今度は回避出来ずに死ぬ。回避を諦めて防御態勢に入っても、防御を粉砕されて死ぬ。…と、可哀そうと言うほかないレベルにまで弱くなってる。
「カレン。もう攻撃はいいよ。逃がしてやって」
「ですね…。もう既に虐殺したようなものですが…、それでも、今やめるのと、まだ続けるのでは、ナヒュグ様達夫妻の苦労が変わりそうですからね」
もはや手遅れな気がしないでもないけれど…。それでもやっぱり「民心が離れてしまう」ダメ押しはしなくていいだろう。
「じゃあさ、馬車の前の人らはどうすんの?」
「「ごめんなさいする」」
「は?」
言葉通りの意味だよ。(あの世に送って)ごめんなさい。
「センはもう街道に戻ってた。そして、街道を進むつもりで…、しかもさっき、カレンが街道を狙った」
「明らかに街道は安全地帯ではないってことはわかるでしょう?なのに、未だに街道にいる。そんな人たちのことまでは見れません」
追撃はしない。が、事故は知らん。
「冷たくねぇ?」
「だが、妃達が配慮してやる必要もない」
「朕らの道を阻む遅滞行動である可能性を否定できんからな」
さすがにないでしょうがね。でも、逃げたいなら道ではなく、その脇を通ればいい。ただそれだけのこと。
なおかつ、センは既に嘶いた後。車で言えばクラクションを鳴らした後のようなもの。「後ろから来てるよ!」ってのは十分伝わるだろう。…それで回避行動に移れるのは距離があるところにいるやつだけだろうが。ま、前は俺らの目標を読み違え、矢を見ても頑なに道から離れなかったのが悪い。
なにより、俺らは敵対している奴らの命より、今、味方で壊滅の危機にある命を選ぶ。ただそれだけのこと。
「ヒヒ―ン!」
「街があるよ!」ね…。たぶん『ジェーヤ』だな。
「迂回しろ!」
「お二人もそれで構いませんよね?」
二人はコクっと頷く。なら、迂回だ。あちらさんに余計な被害を出す必要はない。敗残兵の乱暴狼藉までは面倒見切れん。
街の壁スレスレを通過。だが、一切の攻撃はない。そして、来た方とは逆側…西の街道に戻れば、シャンドゥがはっきり見える。人っ子一人いない街道を猛進し、一切攻撃されることなく、シャンドゥの門に到着。
デンマークのカレステットや函館の五稜郭にある防御に優れた星形城壁。壁はいかにも硬そうな材料で出来ていて、内側から外を殴るための工夫が随所に施されている。そして、一番脆弱な部分になる門は接合部から本体に至るまで、シャリミネで出来ていて壁のどこよりも堅そう。
まさに難攻不落を体現したような都市だ。…門を閉じてさえいれば。だが。
「これは罠か?」
「ではありませんよ」
ナヒュグ様の声に俺らが答えるよりも早く、門の上から声が降ってくる。そして声から少し遅れて人も降ってくる。
降ってきた人は全体的にすらっとしていて、一見、戦えなさそうに見える。だが、爪や尾、羽の先端は鋭利で、凶器でしかない。魔法のあるこっちの世界はもちろんのこと、地球であってもたとえこの人が何も持っていなくとも安心できない。
「皆さま、お初にお目にかかります。私はジョルシェン…将軍の名代です」
何で『ジョルシェン』って言った後に間を取った。
「間を取った理由は何となくです。あ。攻撃は止めてくださいよ。一応、爪や羽、尾で迎撃しますけど、たぶんぽっきり折れますので。というか、前、尻尾折ってます」
「それはどうでもいい」
「要件を話せ。降伏か?交戦か?」
名代は一瞬だけ悔しそうな顔をしたが、すぐさまそれを隠す。そして、
「降伏いたします。これよりシャンドゥ全市はナヒュグ様、ジャンリャ様、お二方の国の支配下に入ります」
とはっきりと宣言した。