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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
1章 バシェル出国とフーライナ
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閑話 受付嬢の災難

ギルドの受付嬢さん視点です

 私はマリー。フーライナのミェージュ支部の美人受付嬢。



「マリー。ちょっと出てくるね」


 そう言い残してさっさと出て行ってしまったのは、私の親友にして同僚のシャルル。この子も美人さんだ。



「うん、いってらっしゃーい」


 私は無邪気に手を振り親友を送り出す。後でシャルルを引き留め、生贄にしておけばよかった。と後悔することも知らずに…。



 昼までは何事もなかったの。いつものようにまかないの美味しいごはんを食べて、うまーい!って言って、仲のいい女魔導士さんと仕事しながら雑談して、ちょっとギザな男の人にナンパされたぐらいだ。ナンパは帰ってもらった。タイプじゃなかった。



 けど、ついて行ったほうが良かったのかもしれない。普通なら絶対、天地がひっくり返ってもあの人についていくのはないけど、あれを見るくらいならね…。



 5の鐘がなって6の鐘がもう半刻もすればなるかな?という頃に彼らはやってきた。

仲のいい両親とフードをかぶった小柄な人。まぁ、子供だろう。で、何故か。何故か。

子供が3mぐらいはありそうな物を持っている。



 この時点ですでに嫌な予感しかしなかった。下手したら逆鱗案件だ。何事もありませんように!と私は思わず願った。



 逆鱗案件とは…、まぁ、通称だ。今回は親御さんだから、親の逆鱗ね。

 

 

 逆鱗はあれだ、竜の弱点とかいうやつ。触ったらものすごいことになる、あれ。



 つまり、親の逆鱗とは、子供に何かされた親がプッチンいって、いろいろカオスになっちゃう素敵なやつ。何人か権力でピチュンされた人もいる。あいつらは素行ゴミだったから当然だけど。



 服がいいから名のある家の出かもしれない。やらかす奴がいたら権力ピチュン再びかな?でも、弱そうだし。物理的損害はないでしょ。そして!今日ギルドにいる人は良識派だから大丈夫!



 そう思ったのが間違いだった。クエストをクリアして意気揚々と帰る男性の剣のつかの部分が子供のフードに引っかかって、フードがはらりと脱げた。



 男性は気づかずに出て行ったが、中から出てきたのは黒髪で鎌 (たぶん)を持った女の子。



 あ、ダメだなこれ。一瞬で諦めた。葬式の予約しなきゃ。



 見た人が「思わず」という感じで声を出してしまったがために当然のように逆鱗に触れた。



 『エルモンツィ』の「エr」の時点でアウトだった。周りをよく見てらっしゃいますね!こんちくしょう!と、思わず叫んでしまった…と思ったが、声すら出ていなかった。とりあえず、怖くて全くそのあとのことは覚えていない。



 疲れた。しんどい。死ぬ。



私はそうひとりごちて、今日のことを振り返る。カウンターには時間が結構たったのに誰も来ない。仕方ないね。空気がまだ死んでるもん。



 とりあえずものすごく怖かった。あの家族に動揺してたのばれてないよね?よね?あのまとわりつくような殺気に、あふれ出す魔力!空気が一瞬で死に絶えた。受付嬢として生きてきて初めて。あんなの!ありえない。



 誰だよ、弱そうとか言ったやつ。私か!ハッハ。怖い。まだ思い出したら震えが…。



 あ、登録させてもよかったよね?何も考えてなかったけど。思い出す必要もないだろうけど思い出そう。



 えーと、あの二人、魔力はありそう。殺気もすごかったし。



 お金もアホみたいに持ってた。

 殺気もすごかったし。

 殺気もすごかった。



 …ん?何回これ言ってる?



「三回ね」

「うわーん、おかえりー」


 私は言いながら発言者の胸に飛び込む。私よりも少しやわらくて大きい感触が返ってきた。声をかけてきたのはシャルル。今帰ってきたところみたい。



「あのね、すっごいこわかったの」

「おーよしよし。そうかそうか。それは見ればわかるよ?何があったの?」

「逆鱗案件」

「え゛、逆鱗でここまで行く?本当に何があったの?」


 私が落ち着かないのでなでなでしながら言う。



「黒い髪、鎌持ちの女の子」


 これで察して。頼むから。言ったらまたあの二人が来そうで怖い!あ、やばい、寒気が…。



「察した。察したから。泣きそうな顔しないで」

「あ、ごめん」


 祈りは通じた。よかった。ん?目から涙が。



「マジでやばかったんだね…。で?どうなの?その人たち」

「殺気と魔力が凄かったから強いんじゃないかな?怖かったけど。弱いはずがないね」

「そんなに怖かったか…。まぁ、頑張ってね…。私も買い物に行ってた分、頑張るから…。まだ当分暇そうだけど…」

「帰っちゃダメ?」

「ダメ」


 なんでよ。



 しばらく立ち直れそうにない…。シャルルもくらってほしい。あ、嘘。巻き添えくらうじゃん。来ないでください。トラウマ案件はもうお腹いっぱい。



 というわけで、業務に戻ろう。しばらくは誰も来ないだろうけど。と思っていた時もあった。



 さっきの少女がこそっと戻ってきて、お金を自分の口座から少しおろしてどっかに行った。



 それだけだったが、少女が顔を出しただけで、弛緩してきた空気が死んだ。さっきいなかった人も雰囲気を感じ取って硬くなっていた。



 もう疲れた。家に帰って寝よう。で、家に帰ったのに、怖くて寝れなかった。だから、シャルルを襲撃して寝た。



 くそう、寝落ちするまでに日をまたいでいたのだけど…。昨日はとんだ厄日ね…。今日は平和であってほしいなぁ…。

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