187話 VSリャール
カレン視点です。
今回は漢字の上にルビを振っています。これで「ー」地獄でも、少しは読みやすくなる…はずです。
むー! 当たっても当たってないなんてー、面倒だねー。
まー、ボクの場合、当てるところから始めなきゃいけないけどー。
「答えてくれる気はないのね…」
「そもそも、答えなんて言われる前から決まってる」
「ですね、勿論拒絶しますよ」
おとーさんとおかーさんが、提案を蹴ったねー。そりゃそーだよね、二人がボクの願いが叶えられなくなるよーになる可能性が高いのに、撤退やー、何もせずにここにいるなんてー、選ぶわけがないよー。
「くっ…。本当に貴方たち面倒くさいわね!」
「そりゃどうも」
「最高の誉め言葉です!」
「むきー!」
煽り耐性がないねー。顔全体ー、特に目元が赤くなってるよー?
でもー、ツルが伸びてくるりょーが、増えたのはー、いただけないー! 避けるの大変だしー! ボクはそーでもないけど…、ルナが特にー!
《ぎゃわっ!?》
世界樹の悲鳴? またやられたのかなー? しっかしてよー。折角、おとーさん達に来てもらったのにー、何とかしてくれる前に枯れるとかー、やめてよねー?
『樹の子供が樹を労わってくれない…』
五月蠅いなー。というかー、親面されても困るー。一人称が「樹」とかわけがわかんない人に育てられた覚えはないよー! せめておとーさん達に無駄足を運ばせた…、ってのはだけは止めてねー!
というーか、
《何やらかしたのー?説明》
《あっ。そうだったね》
!? この樹、使えないよー!? 仕事放棄とか、止めてよー!
「下!」
「今度は枝ですか!」
おとーさん達のほーが、早いよー! 何やってんのさ―!?
《面目ない…》
頑張ってくれてるのはわかるけどー、もっとしっかりしてよー! おとーさん達みたいに!
《!?それは無茶…。てか、二人への信頼が厚すぎない?》
そんなことないよー!?
《じゃあ、早く何とかしてよ!》
それ禁句だよー!? 少なくともー、おとーさん達には伝えられないよー!? 結果でなくてもー、必死に動いている人にー、八つ当たりはしちゃだめー!
《むぅ…。確かにそうだね。冷静さを欠いていた。ごめん》
ボク以外誰も聞ーてないし、いーよ! …会話に思考を割くためにー、回避が雑になってるのは言わないで置いたげるー!
《言ってんのと変わらないよねぇ!?あっ》
ちょっと待ってよー! またなのー!?
《今度は「葉」》
「葉だってー!」
聞いてすぐおとーさんとおかーさんに叫ぶ。いろんな要素が抜けてるけど―。
「ありがと!『葉』もか!」
ちゃんと理解してくれたねー。おとーさんを狙ってた枝にはー、葉がついてたけどー、それを見事に切り落としてくれたねー。
あのままだったらー、回避した後に発射されて「ザクー!」とかあったかもだからー、よかったー。
にしてもー! 単純に手数が増えちゃってるからー、やりにくいねー! 空を自在に飛べるー、ボクでもこーなんだから、おとーさん達はもっと辛いかなー? …でも、ボクと違ってー、足場しっかりしてるからねー。撃墜はしやすそー。
「徐々に対処が面倒くさくなってきますね…!」
「ほんとにな!」
「ハハハ!どう!?これがあたしの奪った力よ!」
「奪った」って言うんだねー。謎の謙虚さを発揮しなくてもいーからね!?
…どーしよっかなー。このまま延々と弓を撃ってもー、進展ないよねー? さっきの一射以外はー、届いてすらないしー。
むー。罵倒することはあってもー、やっぱり世界樹は大切だしねー。
《罵倒するの!?》
幻聴が聞こえるねー。無視しよー。
《ひっど!》
まずー、一発入れる事を目標にしよっかー! 正面からの風が強いならー、上から行ってみよー!
「おとーさん!おかーさん!」
「任せる!」
「自由におやり!」
声かけただけでー、何をやりたいか察してくれたねー。許可もすぐにくれたー。
嬉しーな。これって、ボクのやりたいことを把握してくれててー、ボクを信頼してくれてるってことのはずだからー!
《上に限界はー?》
《ないよ》
好都合だねー! 上に行けば行くほどー、正面からの風は弱くなるはずー!
いざ上にー! 妨害したいのかー、ツルや枝が伸びて来るしー、葉も刃のように飛んでくるけどー、相手なんかしてあげないよー! 圧倒的速さで振り切るよー!
置き去りにして行くうちにかなり上にすぐについたー! 相変わらずー、こんなに高いのにー、天井は見えないしー、太陽の光みたいなのが降り注いできているのはー、意味が分かんないねー。
まー、いーけど。やることやろー! 矢を放ってー、位置調整してー、足場作ってー。
これで引きやすくなったねー! 矢を番えてー、放―つ! これで当たるはずー!
なんだけどー。止まってるねー。おかしーな。何でだろー? まるで壁があるみたいにー、進めてないねー。
……あー! 風は球形に出てるー?
そーいえば、「あたしの周囲から悉く!」って言ってたよーな。
《言ってたよ。樹はそう覚えてる》
なるほどー。そーなると、やっぱりボクの予想は正しそー? 風のせーで進めないのかー。
むー。おとーさんとおかーさんならこんな初歩的なミスはしないだろーにー。
《落ち込まないで!ほらほら、動いて!はやくはやく、ハリーハリー!》
助けて欲しーのは理解するけどー、複数の言語混ぜないで欲しーな。いくら方言みたいなものとはいえー。
《謝るからぁ!?何かして!手を打って!》
それは大丈夫! ボクはおとーさん達からそんなやわなー、教育は受けてないからねー!
「駄目だと思ったら別のことをやってみればいい」ってねー。「出来ればやったことを生かす方針で!無理ならさっさと見切れ!」ともねー。
この位置ならー、重力が活かせるかなー?
《重力はあるよ。てか、ないと浮くよ?》
確かにー。ならー、重力を最大限に生かしてあげよー! 出来るだけ表面積を小さく! 形を滑らかにー! 重さを大きく!
こーやれば空気抵抗? が出来るだけ小さくなってー、矢の持つエネルギー? は大きくなるはずー!
……あれー? 風を避けたいだけなら―、空気抵抗無視すれば事足りるー? どーなんだろー? おとーさん達に聞いてないしー、わかんないなー。
面倒だねー。とりあえずー空気抵抗は無視させよー。それでいけるでしょー! そのためにここまで来たんだしー!
《適当!?》
気にしてもいーことないよー!
全身全霊、思いっきり引っ張ってー!
《若芽は!若芽だけは!何卒!》
言葉がおかしーね! でも、心配無用! 当てないよー!
矢を手から解放!
矢は加速しながら落ちてくねー。こっちにリャールはあんまり注意割けていないみたいだしー、風を超えてー、行って欲しーな!
んー! 行けそー! かなり近づいてるしー。後は矢が若芽に当たらないよーに、位置を微調整して…、
貫いたよー! それも胸の辺りー!
《普通の人間なら急所なんだけどね!》
だねー! ぴんぴんしてるー! とりあえずもう一発ー!
グっと引き絞って発射ー! 今度も無事に貫いたー!
《当たってるけど当たってないよ》
見りゃわかるよー! うー! ほんっとに面倒だねー!
おとーさん達は下で頑張ってくれてるけどー、ボクとおんなじでー、決定打がないみたいー。にしてもー、おとーさん達がルナの力を必要としているとはいえー、よく庇いながら戦えるよねー。ボクなら無理だねー。やれるならやりたいけどー、手が足りないー。
《話逸れてる!戻して!じゃないと樹、死んじゃう!》
樹はそんなにすぐ死なないよー。
《かもしれないけど!?急いでよ!?人も頭の打ちどころ悪かったら死ぬよ!?》
それは知ってるー。おとーさん、おかーさんから聞ーてる。
でもさー、本気で手詰まりなんだよねー。ボクだってー。なんとかしたいよー?でもー、ボクの今持っている技じゃダメみたいだしー。レイコの『|蒼凍紅焼拓《ガルミ―ア=アディシュ》』なら可能性はありそーだけどー…。
うにゅー? おとーさんとおかーさんが呼んでるねー。矢を撃って欲しーのね、撃つよー!
…下に落とすだけなのにー、風が尋常じゃなくうざいよー! ?リャールを狙うときも邪魔だけどー、連絡を取るときさえ邪魔してくるとは―!?
無理やり魔力で軌道を修正させてー、二人のところへー。紙を矢の先端にぶっさしてー、矢を投げてくれたー。
やったー。これでちょっと楽になるー。そもそも追い風だけどー。
おかえりー。えっと、何書いてあるかなー?
《攻撃来てるよ》
むぅー。さっきまでみたいにー、捨て置いてくれればいーのに! 流石におとーさん達と連絡を取ればー、そーするわけにもいかなくなったのかなー?
葉っぱカッターみたいなのとー、花粉かなー? こっちに来てるのー。当たらないよーに回避すれば普通に読めるねー!
《うわぁ…》
ドン引きしなくてもいーよね? こーしたほーが楽なんだからさー。油断もしてないしー。
まー、世界樹はほっておこー。内容はー?
ふむふむー『リャールは別の次元にいる』ねー。…んー? 別の次元ー?
《はぁ?》
ボクの心を読んだけど理解できてないのかなー?これはちゃんと言ってあげたほーがいーね。
《なんでも「リャールは別の次元に本体があるんじゃないか」って言ってるよー》
《は!?ちょ…、そんなのアリ!?そんなのラーヴェ神の御業レベルだよ!?一介の人間が手を触れて良い領域では……、あ?ん?あれ?いや、その線ならあり…やなしや?ありゃりゃ?となると自爆?あれれ?ありりり?うぅ、頭が…》
なんか混乱し始めたねー。樹に頭ってあるのー?とは思うけど―、それどころではないねー。
別次元…ってことはー、きっとそのままの意味だねー。此処ではない何処かー。そんな場所ー。紙面の表と裏みたいなー、そんなのー。
…そりゃー当たるはずがないよねー。酷いよー!
これじゃーきっとレイコもダメだねー。いくら攻撃対象を選べるとはいえー『|蒼凍紅焼拓《ガルミ―ア=アディシュ》』ではー、別次元を攻撃することなんてきっと出来ないだろうからねー。
もっと正確に言うならー、今のレイコでは無理―。かなー?妹なら実例を見れば何とかしてくれそー。
だけどー、今はどうしよーもない…とー。これは受け入れなきゃなんないねー。本格的に詰んでなーい?
《ギャガッ!?》
あー。これは…、やられたねー。どう考えてもさっき頭を抱えていた隙をー、突かれたねー。
何で世界樹を殴ってでもー、止めなかったのかってー、ボクの間抜けさ加減に舌打ちしそーになるけどー、我慢我慢ー。
《今度は何さー?》
《テヘッ☆》
イラッ☆
ちゃんと答えて?
《ほぼ全部☆》
世界樹のやつ、開き直りやがったよー!? どー考えてもそれー、(生命活動に必要な部分を除く)とかいう致命的な括弧ついてるよねー!?
《そうだよ☆》
え゛。えー、あれー? この局面でそのノリを押し通してくるのー? 流石にそれはー、おかしーよね。…まさかとは思うけどー、世界樹は開き直ってるんじゃなくてー、壊れたー!?
《アハハー☆》
うわぁー! 想像が当たってるー!?一旦、おとーさん達のところに戻ったほーがよさそー! 一気に下へー!
「止まれ!」「止まってください!」
え!? ボクー!?…おとーさんもおかーさんもこっちを向いてるしー、ボクねー! 止まるー!
「ちえっ、生意気な羽虫を捉えられると思ったのに」
うそっー! リャールの声のせいでものすごく寒気がー!? 戻るー!
クルリ矢の向きを変えてー、上昇!
後ろでメキメキってー、嫌な音が鳴ってるー! …止めてくれて助かったねー。
えーと、後ろの様子はー?
…あー。これは完全に分断されちゃったねー。ボクがいたところからおとーさん達がいるところの3階くらいの高さまでー、みっちり木のツルというかー、網ー? みたいなのが詰まってるー。
網の隙間から下は見れるけどー。たぶんボクの攻撃は通らないよねー?
《にゃははは》
世界樹ー。壊れてるなら壊れてるでいーけど、せめてー、黙っててー。
弓に矢を番えてー、全身でひーて、発射ー!
したけどー、矢が即行で弾かれたねー。ならー、もっと大きくて強い矢をー。
番えてー、ひーて、ひーて…、発射ー!
突き刺さったー! けどー! それだけー!? ひどくなーい!? ツルの一本すらー、貫けないのー!?
「ふふん、とりあえずあの子は場外に放り出したわ!後は、貴方たち皆だけ!」
おとーさん達に攻撃を始めたねー。…でもー、こっちには何もないー。
……まさか、本当にボクを場外にして無力化したつもりー!? ここからおとーさん達が殴られるのを見てろー。って言うのー!?
そんなの許せないよー!? 普段のおとーさん達ならボクだって心配はしないけどー、リャールに対して有効な手もないー。二人の魔力も心もとないー。そのせいで余裕もないー。
そんな「ないー」ばっかりの状況で、蚊帳の外なんてー、絶対に許さないんだからねー!
さっきのでダメならもっと強く。もっと強くやればー、貫けるはずー!
《ねぺぺぺ》
五月蠅い。黙ってて―。弓を引くにも一定の所作がいるn、
《うおぱー!》
何言っても無駄だねー。無視ー! でもー、倒した後でー、一回殴るー!
細くてー、鋭くてー、硬くてー、破壊力を前よりも高めた矢をー、ひーて、ひーて、ひーて、ひーて、まだひーて…、きっついなー。
《ねへへ》
狙いを定める必要はないねー。貫ければいーだけ。
発射ー! 矢は風を切って飛んでー、ツルに命中!穴を穿ってー、突き進んで…、えー!? そんなのありー!? 矢がツルに押しつぶされたよー!?
むー! ムカつくー! だいたいわかってたけどー、こっちに対して行動をしてきたくせにー、リャールがこっちを一目も見てくれないのが余計に! このままじゃー、おとーさん達に向いてる注意をこっちにこさせることすら出来ないー!?
《ぺりゃりゅー!》
憤ってみてもー、何も変わるわけはなしー。攻撃も視線も相変わらずー、ボクの方を全く見てないー。でもー! それならー、繰り返すまでー!
もっと鋭くてー、もっと頑丈で、もっと強いー。そんな矢をー。召喚したらー、番えて限界まで引き絞るー!
さっきはここまで引っ張れたー。だからまだ引けるはずー! 魔力は使ってなかったからー、魔力を手に回してー。ツルが食い込んでも怪我をしないよーにしてー。
発射ー! 今度はどー!?
にゃがー!? ダメかー! さっきよりは奥に行けたけれど、それでもまだダメだー!
《ねるぺぺ》
視線もこっちに来ないしー。まだ強い矢がいるー。それでもっと強く引き絞らないとー! そーしないとー! おとーさん達を守れない!
あぁ、もー! おとーさん! 今の場面で魔法使わないとかー!? かなり危ないよねー!? 無事に避けてるけどー、後、ちょっとズレたら首だよー!?
発射ー !通らないー! 発射ー! 届かないー! 発射ー! 達しないー!
「「テェルプさん!?」」
がー!? こっちは全く進展ないのにー、下は容赦なく進むねー!? テェルプがおとーさんとおかーさんを庇ったよー!?
「回復は…、不要です…よっ」
お腹におっきな穴が空いてるー。なのにわざわざそれを言う―。…テェルプの遺言になるのは間違いないねー。死んでも転生出来るのが確定してるとはいえー、よくやるよー。
でもー、この言葉が出たのはー、おとーさん達の魔力がないことを察しているからだろーね。二人の顔がかつてない程悔しそうだしー。それにー、普段のおとーさん達ならー、魔力消費が馬鹿だけどー、きっと治療できる傷だってのはわかるしー。
…とにかくー、下に行かなきゃー! ここまで引き絞ればー、どー!?
やったー! ツルを切り裂いて、網を突き破って下まで行ったー! これならー!
「あら。まだ矢を通せたのね。御苦労様。でも、それでどうするの?一本に時間かけ過ぎよ?あたしには効かないし、一本では貴方が通る道を作ることすら叶わないわよ?」
っー!? やっとこっち向いてくれたのはいーけど、ムカつくことをー!? 絶対に許さないんだからー!
…って言―たいけどー、実際、そーなんだよね。薄々わかってたけどー、一本、二本通せたところで―、どーにもならない。そんなことはわかってたー。
《にゅぺー!》
…はー。こんなことならー、ここに来たいなんて言わなければよかったかなー。ボクが望むのはー、おとーさん。おかーさん。それにアイリおねーちゃんと、妹達と一緒にいる事なんだからー。最悪、魔王を殲滅すれば帰れたんだしー。世界がどーなろーと構わないm、
《諦めないでよ》
!? 治ったのー!?
《ふぁーしゅ!》
治ってないかー。でもー、わざわざあの状況で、ボクの心が折れそーな状況で言ってきたってことはー、まだ完全に壊れてはないってことかなー。
にしてもー、ため息が出るねー。こんな風に考えてるってことはー、やっぱりボクはハイエルフなんだろーね。ハイエルフは、世界樹を守るのが役目だからー。世界樹のこともやっぱり諦めきれないんだよねー。
護りたいのはー、おとーさん達だけのはずだったんだけどねー。
でもー、このまま諦めるのはボクらしくないよねー!
細い矢で貫通しても意味がないならー! 貫通力なんていらないねー!ボクが通れる道を作るよー!
とにかく太い矢をー !それでいてー、簡単には壊れない矢をー!それを押し込んでいけば道は拓くはずー!
魔力をたっぷり回して矢を練ってー、番えてー、手に全力で強化を回してー、全身全霊で引くー!
今まで以上に全身を使って引くー! 引けるだけ引くよー! さっきの時点でぎちぎちに張り詰めてたからー、それ以上引っ張ったところでー、誤差レベルだろーけど、今はその誤差レベルが欲しー!
思いっきり手に弦がめり込んでるー。でもー、まだ足りないー! どー考えてもー、さっきの威力は出ないー!
まだまだー、まだまだー、まだ足りない…! もっと、もっとー!
…? 引けないー? 何でー?
まさかー、ボクの手の長さが足りないー!? 嘘でしょー!? ここで諦めろ。そー言うのー!?
ボクはあっちに行きたいだけなのにー! ううんー、行けなくてもいー。おとーさん達と、ついでに世界樹をー、守れればそれだけでいいのにー!
このままじゃー、ボクはおとーさん達すら護れないー! それだけはー、それだけは嫌だ!
にゃっ!?
今ー、頭の中で何かが横切っていったよーな…。
『越弓 ユヴァ―ゲ』…? なるほどー。ボクの願いが定まったー。そー言う事かなー?
今まで名前が出てこなかったのは―、おとーさん達への想いは間違いなかったけどー、どこかに世界樹のことがあったとかかなー?
まー、考察は後でいーよね。今はこれを使おー!
この弓ならー、ボクの望んだところに届くー!
こんなにおっきな矢は要らないねー。魔力に分解。普通の矢を一本見繕ってー。後はー、
《世界樹!しゃんとしてー!》
《むぺ!?》
反応はあるー。これなら早そー。
《世界樹ー!やるよー!死にたくないならー、力を貸してー!》
返事は聞かないよー。ここで無視するならー「世界樹はそれまでだった」というだけの事ー!
番えてー、引き絞ってー、放つー!
弓から離れた矢はーツルがないみたいに飛んで行って―。
「ッ!?いったぁぁい!?」
綺麗にリャールに突き刺さったー。後ー、
《カレン!》
ここ一番でちゃんと復活してくれたねー!
そんなおっきな声を出さなくてもー、わかってるー!
それを期待してリャールに攻撃をかけたんだからねー! さー、世界樹も帰ってきてー、しかもー、リャールが困惑する隙にー、支配権を取り戻してー、道を拓けてくれたねー!
お膳立てはばっちりー! 道を通り抜けながらー、ボクが戻る前に決着をつけよーとする、リャールの試みを悉く射抜いてー、粉砕してくよー!
「ただいま。おとーさん。おかーさん」
無事に戻ってこれたー。
おとーさんもおかーさんも、服にやたらと傷があってー、魔力の消耗が大きいからかー、少しだけ焦燥してるねー。
「「お帰り(なさい)」」
そんな状況でもー、ちゃんと歓迎してくれたー。
「終わらせるよー!」
「ああ!」「やりましょう!」
詳しいことは一切説明してないのにー、信じて同意してくれるー。
やっぱりー、ボクはこの二人がー、家族が大好きだねー。だからー、リャール。ボクの望みを叶えるためにー。世界樹を守ってー、家族を守るためにー。
死んでほしーな。