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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
6章 エルフ領域
209/306

185話 続々世界樹の中

「「「ガロウ(君)!」」」


 俺、四季それとカレンの声が響く。それと時を同じくしてガロウが『輸爪』を発射、俺ら全員を受け止めた。



「よくやったガロウ!」

「いい仕事です!」

「だねー!」

「あったりまえだ!こんな時のための俺だ!」


 口調は乱暴。でも、ガロウの顔は嬉しそうだ。



 下を見てみると、つい先ほどまで歩いていた床がすっぽり抜けてしまっていて、その上にいた木兵が落ちていっている。仲間ごと持って行くつもりだったのだろうか? そもそも、敵は木兵を仲間とも思っていないだろうが。



「罠も踏んでいないのにこれはないですよね…」

「ん?何がだ?母ちゃん」

「え?カレンちゃんのおかげでほぼ迷宮(笑)と化しているとはいえ、迷宮みたいなものじゃないですか、ここ」

「知らねぇ。けど母ちゃんが言うならそうなんじゃね?」


 ガロウの横でレイコもコクリ頷く。四季はそれを見て少し顔を引きつらせながら言葉を繋げる。



「迷宮でいきなり床をぶち抜くなんて禁じ手だと思うんですよ」

「だよね。こっちが何もしてないのに床をぶち抜いて殺しに来るとか…酷い」


 もしそんなゲームがあれば「クソゲー」の非難は免れない。それか「死にゲー」だな。



「「「「「………」」」」」


 …わかってはいたけど皆の目が死んでる。でも、まだだ。まだここから挽回できるはず…!



「ねぇ、ガロウ」


 声をかけると露骨に嫌そうな顔をされた。そして、肩を優しくたたかれた。



 振り返ると四季がいて、目が雄弁に「習君。諦めましょう」と伝えてきている。そうだね。そうしよっか。



 言っちゃあ何だけど、拾いに行った時点でほぼ回避不能の爆弾と化していたからね…。そもそも俺ら以外はこっちの世界の人。いきなり地球の話持ってきてもわからない。ついでにこの場面で唐突にそんな話をすれば余計に意味が分からない。



「なぁ、何だってそんな話を?」

「ん?ルナがいるし…」

「後、レイコちゃんに少し不安の色が見えたので…」

「なるほどです」

「気分を切り替えようとして盛大に滑ってたのか」


 ガロウ。確かにそうだけど、傷口に塩を塗るのは止めて。



「上!」

「んにゃ!」


 切羽詰まったカレンの声。それにルナの声が誰よりも早く応え、ルナのシャイツァーである家が俺の視界いっぱいに広がる。



「えい。えい」


 ルナの可愛らしい声とともに巨大化した家が上下に動く。移動に伴い可愛らしい声を台無しにする「ドスッ」という重低音や「ぬちゃっ」といった粘性を持つ音が響く。



「なあ、父ちゃん。母ちゃん。ルナさ、どこ持ってんの?」

「「煙突 (ですね)」」


 煙突部分を持ち手にして家を軽々上下運動させているね。



「煙突なんてありましたか?」

「私の記憶ではないですね」

「俺もないな」


 レイコがホッとしたように息を吐く。



 …うん。間違いなく煙突なんてなかった。きっと掴みやすいように、それでいて家についていておかしくない物。そんな感じで俺らの記憶を漁ったら出てきたから付けたんだろう。



「家ってあんな使い方出来たか?」

「無理だな」

「まず、普通の家は人間一人では持ち上がりませんよ」


 だねぇ…。物凄く軽い建材で作られていて、かつ地面の上に置いてみたといった感じの建物なら百歩譲って可能かもしれない。が、普通の家はまず無理だ。地面に基礎がしっかり作られているし、家自体、広さに依存するとはいえ重さが間違いなく10トンを超える。



「ルナが行動変えたよー」

「だねぇ…」


 ルナは家を上下させるのをやめ、家をグルグル回転させ始めた。家と天井の境から「ぎゅるぎゅるぬちゃぬちゃ」という嫌な音が鳴る。



「潰し終えたので圧縮しているのでしょうか?」

「シャイツァーの使い方がおかしいぜ…」


 え?



「何をいまさら、」

「言ってるんですか?」

「だねー」

「うぼわぁ」


 ガロウが変な声を上げて崩れ落ち、一瞬だけだけど、ガロウの乗る『輸爪』の制御が緩み、ふらついた。



「ガロウ。まだまだですね」

「何が!?何がまだまだなの!?くそっ…、唯一の良心が!」

「滅多なことで「くそ」とか言っちゃダメですよ。後、両親は私達です」

「ふぁっ!?」


 あれ? なんでガロウがこんなに動揺してるの?



「ガロウ。両親は俺らでしょ?」

「同音異義語ぅ!」


 叫んで崩れ落ちた。…今回は、制御は揺らいでない。あ。良心(・・)か。アークラインの言葉でも日本語同様、両親と良心。この言葉の発音は被るのね。



「ガロウ。しっかりしてください。お父様とお母様は両親で良心です。お二人が良心でないのならば、一体、誰が良心なのです?」

「ああ、うん。そりゃそうだ。でも、そうじゃねぇ。俺が言いたいのは天然じゃないって意味で…、あれ?レイコも天然だったような?じゃなかったような?」


 あ。言ってる本人も、レイコも仲良く揃って疑問の坩堝に沈んだな。



 …レイコはどうだろね。若干怪しいけど、四季やアイリほど天然ではない。



「そういえば、レイコちゃん。さっきのまだまだとは?」

「え?お父様とお母様に対する理解のお話ですが?」

「制御の腕前じゃねぇのか…。レイコもダメだぁ」


 哀れガロウが遠い目をしている。



「ガロウもー、まともじゃないシャイツァーのー、使い方すればー、いーんだよ!」

「天然にはなりたかねぇよ!てか、シャイツァーで本来の使い方を逸脱してねぇの俺だけじゃねぇか!」


 まさかそんなわけ…あるわ。ガロウだけだ。シャイツァーの本分を逸脱したような使い方をしていないのは。



 アイリは鎌に籠を引っかけて昇降機代わりに使ったことがあるし、カレンの弓は移動装置、もしくは、近接武器として頻繁に使われてる。



 俺と四季は言わずもがな。文房具(ペンとファイル)は武器じゃない。でも、仕方ないよね。ペンもファイルもシャイツァーだから「ペンは剣よりも強し」を地でいくのだから。



 そして今、新しく加わったガロウの妹であるルナがシャイツァーである家を振り回している。敵を倒してくれているのだろうが、その使い方は明らかに家じゃない。どっちかというとハンマーだ。



 とりあえず、ガロウにはこの言葉を贈ろう。



「やりましたね、ガロウ君!」

「愉快な家族が増えたよ!」

「愉快すぎるわ!それに二人のノリもわかんねぇよ!」

「「あ。そう(ですか)?」」


 なら止めておこう。動き観察中とはいえ、ここは敵地だ。



「急に戻るなよ!?」


 えぇ…。どうしろと。



「ルナー。重くないのー?」

「ん?重くない。よ?」

「そっかー。ならいーよ。がんばってー」

「んにゃ」


 姉に応援されてルナの顔が嬉しそうに綻び、撃ちつける音も激しくなる。家がギュルっと回るたび、ツルから溢れたであろう毒々しい液体がドロリとバリアの表面を撫で滴り落ちてゆく。



「あの、シャイツァーの重さはどのようになっているのですか?」

「ん?重さ?本人の都合がいいようになってるよ」


 俺の答えにレイコは益々疑問符を浮かべる。



「習君。言葉が足りていませんよ。「概ね」という言葉を付けましょう」

「???」

「おい。余計に混乱させてどうするんだ。母ちゃん」


 だね。余計に混乱してる。首の傾げる角度が大きすぎてもげそう。復習しておこうか。



「シャイツァーの重さは基本、見た目の大きさに準拠だよ」

「ですが、シャイツァーを持つ本人は別です。本人には体の一部のように扱えます。重さも程よい重さです。すっぽ抜けそうなほど軽くはなく、ずっと持っていても疲れない。そんな感じです」


 使っている本人からすればありがたい…はず。こんな風に言ってても俺と四季のシャイツァーは、本体の大きさは変わらないからな。



「後、本人が特別に意識してれば重さの影響は出ないよ」

「お味方には重さの影響が出ない…ということですか?」

「ええ。そうです。ですがそれは一例ですよ」


 他にもあるけどわかるかな? レイコならわかりそうだけど…。



「あ。床ですか」

「「正解」」


 早かった。



「それで合ってるよ」


 このおかげで、アイリがでかい鎌を振り回したからといって、鎌の超重量でめり込むなんてことはないし、今、ルナが家を大きくしてさらには振り回していて数トンの荷重がかかっているのは間違いないが、『輸爪』はもとより四季もびくともしない。



「あの。何か行動されないのですか?」


 …ん? あぁ。テェルプさんか。



「おい。父ちゃん。母ちゃん…」


 ガロウとレイコ、それにカレンのジト目が俺と四季に突き刺さる。



「大丈夫。忘れてないから」

「ちゃんとテェルプさんの存在は覚えていましたから」


 テェルプさんが俺らに対して一歩引いてくれているからこそ蚊帳の外だっただけ。だから覚えてる。というか、ガロウとレイコのほう見たら絶対視界に入るじゃん。



「私の存在感はどうでもいいのです。このままでよろしいのですか?」

「よくはないです」

「ですね。習君。そろそろ待機も限界でしょう」


 だね。床が抜け、天井からツルが降りてきた。これ以上何かあるかと待ってみたが…。これ以上は何もなさそうだ。待つだけ無駄だ。



「それにルナもそろそろ飽きるでしょう」


 こちらからは天井の様子はよくわからないけれど、回転のたびになる音の元気がなくなってきた。そして、バリアを流れる液体の色も緑色になってきた。



「ルナちゃんが飽きれば進みますか…。その前にカレンちゃん。世界樹は何て言ってます?」

「「あっ、ごっめーん。てへっ☆」だってー」


 …ふむ。一回へし折るか。うん。そうしよう。なぁに、四季もいるからへし折っても治せるさ。



「「じょーだん!」だってー。「ふつーに負けましたー」だってー。軟弱、貧弱ぅー」

「辛辣だな。姉ちゃん」

「その場のノリー」


 やっぱ世界樹へし折ってやろうかな。何で話題戻したのに速攻で脱線させんだ。



「まー、それはともかくー。世界樹もー、敵もー、なんかくんずほぐれつしてるみたーい」


 それ最初に言ってくれると嬉しかったなー。それならここで待機する必要はなかった。…いや、俺らの想像力不足か。足元をぶち抜くという禁忌。俺らを一発で仕留められる可能性があったんだから全力でやっていたとしてもおかしくはなかった。



「そもそも世界樹がなんやなんやー。やってたみたいだよー」


 この子(カレン)この子(カレン)でちょくちょく心読んでくるね。



「終わった!」


 満面の笑顔でルナが宣言する。あっという間に家が小さくなり、茶色かったはずなのに緑に染まった天井が現れた。無駄に念入りにやっていたけれど…、なにはともあれ、



「お疲れ様」

「よくできました」


 二人で軽く頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。



「『輸爪』進めるぜ?」

「お願い。最低でも目的地に着くまでは『輸爪』に乗ってくよ」

「だろうな。てか「歩いて行く!」って言われたら止めるわ。『輸爪』の維持は任せろー」


 ん。お願いね。



 『輸爪』に乗ったまま道なりに進行。床はぶち抜かれても天井と壁はそのまま。元「道」を出せる最大の速度で駆け抜ける。



「うわー!また壁―!」

「何で残ってんだよ…。床消したくせに」


 文句も言いたくなるのは分かる。都合よく壁の丁度真下からは床が生きている。だから、壁を無視できない。



「私もやってみますね」


 言いながらこちらをチラリとも見ず、腕を振りかぶる四季。四季は彼女自身が何も俺に言わなくても、俺の時に四季がやってくれたみたいに俺が準備すると信じてくれているんだろう。



 不安だから止めたくはある。でも、それ以上に好きな人に…、好きで好きで仕方がない人に、そこまで信頼してもらえているという事実が、この上なく嬉しい。



 コツっと小さい音を立て、魔力を纏った四季の手が壁と接触。同時に世界樹が激しく動揺して戸が開く。



「めっちゃ揺れたな」

「浮いているので(わたくし)達に影響はありませんでしたが」


 …「浮いていなくてもきっとそこまで影響がなかった」というのは黙っとこう。また話が飛ぶ。



「カレン。それより何で急にここまで揺れた?」

「わかんないー!でもー、今が絶好の機会だってー!」


 よくわからないが、そう言い放つカレンの目は爛々と輝いている。



「テンション高いのはいいが、内容を説明しろよ!姉ちゃん!?」

「道をとーすんだってー!激しく動揺してるー、今がチャンスだってー!」


 道を通す? …これはきっとそのままの意味。動揺…は何でだ? 俺で開いたのだから、同じく勇者である四季で開いてもおかしくはないだろうに。



「来るよー!」


 戸が開いた先、そこにある大広間の天井が激しく脈打つ。世界樹全体が木の軋むような音を立て、葉がこすれるような音が上から降ってくる。



 振動が最高潮に達し、急に落ち着く。一拍置いて大広間の中央、そこの天井から光が差し込んでくる。



「おとーさん!おかーさん!」

「わかってる。」

「行きますよ!」


 全速力で穴に飛び込み駆け上る。このまま上がり切れるか…? いや、たぶんそれまでに復活されるな。ならば、



「カレン!凍らせても大丈夫か!?」

「え!?んー。「仕方ないねー」だってー」


 よし。適切な魔法は…、作ったほうが早いか。



「習君。任せます」

「任された」


 さすが四季。何も言わなくてもタイミングが完璧だ。すぐに書き上げる。



「降りるねー」

「んあ?あぁ。ありがと」


 別に背負っていたままでも書けるけれど。降りてくれるならそのほうが楽だ。



 高速で飛翔し、道を凍らせることで確保。かつ、こちらが寒くないように。それでいて出来るだけ魔力を使わないように…。あれ? キツイな。まぁいい。いけそうだ。



 ペンを滑らかに動かす。いつものように決め技として書き上げるわけではないから、抵抗はかなり弱い。とはいえ完全にないわけではないが…。それらをねじ伏せ、ならし、誘導してやりつつペンの先を動かす。



 …出来た。



 無言のうちに四季と俺の手が重なる。穴が細動し、既に一部に盛り上がりが出来ているが…。俺らの方が早い。



「「『『凍回廊』』」」


 呪文と共に紙が消え、世界樹が拓けてくれた穴を冷気が上へ上へと登ってゆく。魔法の先端部が穴の外壁を撫でた瞬間、パキッっと金属を軽くぶつけたような硬質な音を立て、たちまち凍てつく。



 そして凍てついた端から穴は振動を止める。道を塞ごうと蠢いていた出っ張りも、閉塞に抵抗していた壁も、いつの間にか出てきていたツルも、一切の例外なくあたかも時間が止まったかのように。



 魔法は俺らよりもずっと早く──魔法自体が透明に近くて見にくいのも加わって──あっという間に『身体強化』をしてなお見えない位置へ消え去った。



 後に残るは氷の回廊。だが、こちらに寒さは一切伝わってこない。そのためさながらクリスタルガラスの筒を通っているかのよう。



「「すごいよー!来て欲しいとこまで道が出来たー!」だってさー。「急いで―!」とも言ってるねー」

「ちょ!?速度はこれ以上上がんねぇよ!?」


 知ってるさ。これが限界だってことは。



「でも、それはガロウだけの場合でしょ?」

「ん?どういうことだ?俺の魔法の制御は、父ちゃんや母ちゃんは自分でやってんじゃん」


 …まぁ、確かにそうだね。ガロウの『輸爪』の制御──向きや速度──はテェルプさんを除いて乗っている本人がしてる。そう言う意味では既に協力していると言える。でも、



「推進力って、自由につけられるんですよね」


 四季の声を聞いたガロウ、レイコの頬をツーっと汗が流れた。ような気がする。



「『護爪』の最大展開で、この穴を覆うことは?」

「…一応、出来る」


 ならば良し。



「ルナ。家を出して」

「あい!」


 俺が頼み、ルナが大きくする前に四季が家に触れて「大きさの程度」のイメージを伝える。



 目の前に丁度いい大きさの家が出来た。確たるイメージを持っていないルナの「巨大化」の指示に無事に四季が割り込めたってことだな。



 大きさはほぼ俺と同じ高さぐらいの一辺を持つ立方体ぐらい。かなり小さいがこれでいい。



「家に入って」

「全員分の『輸爪』を回収したら、その分を家の下に回してくださいね」

「サイズを大きくするのは後で指示を出す」

「あれやんのかよ…」

「うん。やる」


 一回目は死にかけた。二回目は滝つぼの中。…つまりこれで三回目だな。もはや伝統芸能。



 家の中に入り軽く準備を整える。家のドアからは凍てついたままの穴の入り口が見える。いい加減、別の何かをしてきそうだが、まだ何も来てない。好都合。



「やるよ」

「一応、衝撃に備えてくださいね!」


 四季の声を合図に、穴最下端の氷を消す。消えた部分からにょきっと何かが出てきてすぐさま穴を埋めてしまう。そして、そこを起点に氷を破壊しながら下から駆け上がってくる。



 が…、遅い。『『爆破』』の紙をあっりったけばらまく。…5枚ほどしかないが。



 だが、紙ってのがありがたい。紙はひらひら落ちる。だから、『石』の紙で作った石をつければ落下速度は調整できる。



「「ガロウ(君)!」」

「ああ!」


 返答を聞くや否や二人で全弾起爆する。冷気を伝えてこないし、魔法で作ったとはいえ、回廊を構成するのは氷。



 氷は爆発の熱量によって気化、猛烈に膨張しながら爆発のエネルギーが唯一の逃げ場であるこちらに向かって吹きすさぶ。



 だが、家はシャイツァー。そのおかげで全く揺れない。魔力消費以外非常に快適にあっという間に高度が上がる。



「後何秒!?」

「何秒で目的地までつきますか!?」

「え!?えーとね…、5秒!」


 5秒…。5秒後はあの位置か。元は俺らの魔法。狙いさえ定めれば氷はあっという間に融ける。



「ガロウ!」

「わかってる!」


 さすがだ。



 カレンの宣言からぴったり五秒。家が横にズレ、回廊から脱出。そして開けたドアの隙間から抜けた穴を『氷』で塞ぐ。



 すぐさま破砕されそうだが、強烈な爆風に巻き込まれない程度に離れられればいい。

ついでに必要のなくなった世界樹内部の回廊を消しておく。



「終わったってー」


 何が?



「無理やり抑え込んだみたいー」


 爆風を世界樹本体で圧殺したのか…。仕事が早い。そして、痛そう。



 そう思ったのは俺だけじゃないらしく、全員痛そうな顔。



「出よー!」


 待ち遠しいものが目の前にあるかのように嬉しそうに跳ねるカレン。それでも、一番乗りは俺達に譲ってくれるようだ。



 家から出るためにドアを開けると、光が上からさんさんと照り付けてくる。そして下に広がる緑の絨毯。葉で出来ているようだが、複雑に編み込まれているのかかなりしっかりしている。



「世界樹の天辺…かな?」

「…のようですね。私達の生命活動は世界樹が維持してくれているみたいですかね?」

「台詞取られた―!そーだよ!『いーつけには反するけどー!』これくらい、いーでしょ?」


 だね。確かに「何もしないで」って言ったけど。



「むしろ感謝伝えといて」

「んにゃー」


 確実にそっちのほうがありがたいからな。…で、そこまでして倒して欲しいのが…あれか。



 全員の視線が世界樹の中央へ集まる。世界樹中央、これから伸びようとしている若芽の周りに何か禍々しいものが集まっている。

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