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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
6章 エルフ領域
207/306

183話 世界樹の中

 グロイ二話のあらすじを纏めて記載しておきます。「読んだよ!」という人は、ありがとうございます。お手数ですが飛ばしてください。


『エルフ領域に入り、一路世界樹を目指す主人公一行にエルフである「テェルプ(12)」が降ってくる。

そして彼は言う「世界樹は乗っ取られようとしている、そして、周辺は凄惨だ。覚悟を決めろ。」と。


 実際、彼の言うように世界樹は乗っ取られようとしているらしく、近づくエルフもチヌカも、まとめて木になるエルフで迎撃している。


 主人公たちはかつて相対した「ボロス」のように命を散らせる攻撃を潜り抜け、世界樹を目指し、見事到達した…が、世界樹の外にアイリとセンを残した。チヌカがいるにも関わらず』


 あらすじは以上です。以下本編です。

「アイリねえたま、だいじょぶ?」


 可愛らしいルナの問いに全員首肯する。あの娘なら大丈夫。一人でも大丈夫なのに、センもいる。きっと、心配いらないだろう。



 でも、そんなことわからないルナは、心配そうにさっきまで開いていた部分を見ている。撫でてあやしておこう。



 その間に簡単に情報を集めよう。周りを見る限り、この場所は普通の木の中のように見える。



 でも、元の世界で数回、(うろ)の中に入ったことがあるけれど…、その時の木に比べて元気そう。…乗っ取られかけているとはいえ、さすがは世界樹と言うべきか。生命力が段違い。



 で、今いる空間から道が数本、右や左だけでなく、下や上とあちこちの方角を向いて繋がっている。



 ひとまず、この広間は安全そうだ。今のうちに閉じてしまった入り口が開くかどうかの確認をしてみよう。



 開いていた部分を触ってみる。…「木」っていう感じが返って来る。…温かくて心地いい。何となく安心できる……って、安心してる場合じゃない。調べないと。えーと、つなぎ目はどこだ?



 入り口付近を、ルナを撫でつつ四季と触って探る。……残念ながらなさそうだ。



「やっぱし、心配か?」


 ガロウが空気を読んだのか小声で聞いてくる。



「そりゃあね…」

「信用はしているんですけどね」


 ある一点。その一点だけが俺らの不安を掻き立ててくる。



「ルナー。ボクとあそぼー」

「きゃうう!」


 カレンがルナの気をひいておいてくれるみたい。カレンありがとね。でも、ルナのテンションがなぜか妙に高いから引きずられないようにね…。



「何がお二人をそこまで悩ませているのですか?」


 ルナに聞かれないようレイコも小声。だから俺らも小声で会話を続行する。



「あのチヌカ…、たぶん『エルモンツィ』だよね?」

「おそらく。私もそう思いますし」


 四季と同じ見立て。ならきっとあれは『エルモンツィ』で間違いない。



「心配か?」

「そりゃね。あの子を信用しているけど、心配とはまた別だし」


 さっき心配ないとは思ったし、大丈夫とも言った。でも、やはり心配。言う事と思う事は別ってことだ。



「そうおっしゃると思っていました」

「だな。てか、そう言わなきゃ二人じゃねぇ」


 二人揃って断言するのね。…しかもカレンもこっそり頷いてる。カレンに聞こえてるならルナにも聞こえてそうだけど…。



「きゃう!…きゃう!」


 カレンがモグラたたきみたいなことやってくれてるから大丈夫そう。…にしても、掛け声が可愛いな。外見との差が尋常じゃないけど。



「それはさておき、二人の心配さ的なものがちょっと深い気がすんだけど」

「何が心配なのですか?」

「ん?『エルモンツィ』ってことかな」

「ですね」


 たぶんこれに尽きる。『エルモンツィ』はアイリにとって因縁深い相手。アイリ──正確には黒髪赤目で鎌持ちの子供──が人間領域においてあれほどまでに忌避される原因を作ったのが、彼女。他のチヌカならこんなことはないだろうに。



「アイリお姉さまが復讐しようとして、反撃を受けることを予期されているのですか?」

「いえ、それは心配していませんよ」

「俺もだ」


 アイリはエルモンツィにそんな気持ち(復讐心)なんてない。断言できる。そもそも、あの子自身、俺ら家族が関わらない敵は作業的に殺す。そこに何の感慨も抱かない。そんな娘だ。



 逆に言えば俺らがかかわった場合、暴発する可能性があるということだが…。あの娘は俺らの長女(・・)だ。あの娘はそれを頼りに冷静さを保とうとするだろう。



「じゃあ、何が心配なんだ?」

「「わからない(りません)」」


 ガロウがガクッと崩れ落ち、レイコがそれを支える。



 いや、仕方ないじゃん。ただ、あの子が珍しく飴を同時に口の中にいくつも入れていた。そのことだけが引っかかっている。だから何となくだけど『エルモンツィ』にだけは、あの子が気を割くような、不安になるような何かがある。そんな気がする。



「どうすんのさ」

「どうしようもないね」

「ですねぇ…」


 俺らの返答を聞いてガロウが再度崩れ落ちる。ノリがいいなぁ…。



「何で…って。出れないのか」


 大正解!



「気分を切り替えますか」

「だね。アイリのことは頭の中で常に心配して、無事を祈っておきつつ…、」

「やることをやりましょうか」

「常に心配して、無事を祈んのか。それでやることやれんの?」


 勿論。俺らを誰だと思ってる。それくらいはできる。



「断言された」

「お父様とお母様ですから…」


 言いながら遠くを見る二人。ここは木の中だよー? 見上げても何ら変わりのない木があるだけ。



「知ってるわ!」


 だよね。知ってた。



「あ。終わったー?」


 うん。終わったよ。ありがとね。



「さて、今回の目的は世界樹が乗っ取られようとしているらしいから、それの阻止」

「後、世界樹は損壊しているでしょうから、可能そうであればそれの修復…ですかね」


 一言で言ってしまえば「正常(清浄)化」だろうか。これを目指して動けばいい。



「問題は、どこに行けばいいかわからないこと」

「ですね。カレンちゃん。もしくはテェルプさん。わかったりしませんか?」


 この二人のうちどっちかが知ってくれていればやりやすいのだが…。



「私は…、申し訳ありませんがわかりかねます。そもそも我らの権限の及ぶ範囲ではございません」

「ボクは何となくわかるかなー?って感じー。ぐねぐねうねうねしてるー」


 ぐねぐねうねうね…?



「世界樹はカレンに来て欲しいけれど、」

「乗っ取ろうとしている奴は来て欲しくない…。そんな感じですかね?」

「たぶんそー!」


 面倒な…。それでも、何のヒントもないよりはカレンに頼るほうが良い…か? さっき軽く見たけど、もう一回周りを見てみるか。



 …さっきと様子は何一つ変わらない。ヒントになりそうなものはないかな? 強いて言うなら、道の位置がずれていることだが、これは妨害を受けていることの裏付けにしかならない。



 後、シャルシャ大渓谷とかにもあった感情もある気がする。が、その感情は「後悔」の部類。ここはラーヴェ神が作った場所ってことを考えると、手掛かりにすらならない。



 作るときにチヌリトリカの襲撃を招いたことを詫びていたんだろうし。



「うん。どうしようもないな。カレン。道案内を任せる」

「出来ればもっと精度上げてもらってください…」

「わかったー!頑張って交渉してみるー!それまではしんちょーに行くよー!」


 そうしてもらえると助かる。



「陣形はどうなさいますか?」

「俺が最前列、四季が最後尾で残りを真ん中、これが一番安定すると思うけど…?」

「父ちゃんと母ちゃん離すと火力が心配なんだが」


 …確かにそうなんだよね。でも、俺らを一緒にしてしまうと今度は前か後ろが…。



「ある程度信用して任せてくれよ」

「ですね。テェルプ様もいらっしゃいます。(わたくし)とガロウ、テェルプ様。3人で位置方面を担当いたします」


 …むぅ。この二人ならある程度は任せてもいと思ってる。けど…、いや、これはやらせない言い訳か。寧ろテェルプさんが補助に入ってくれるなら練習には最高か。



「テェルプさん。お願いしてもいいですか?」

「お任せください。この身に代えても」

「「ほどほどにしておいてくださいね」」


 俺と四季の言葉にテェルプさんはニッコリほほ笑む。後は…、



「ボクは―?」


 カレンの位置? 考えるまでもない。



「当然、」

「中央です」

「なんでー!?」


 「なんで」も何もないでしょうが。



「周囲の警戒しながら、世界樹に正解を聞くのは無理でしょう…」

「だから、カレンは中央。勿論、ルナも中央ね」


 ルナは戦えないからね。あ、でも、



「一応真ん中には寄っておいてね」

「分断されると笑えませんので」


 俺らが前。ガロウたちが後ろ。こうやって完全に分けてしまうと、真ん中(カレンとルナのところ)で何かあれば対応出来ない。一発で分断される。だから、出来るだけ固まる。



 即応力の低下は諦める。



「カレンちゃん。道は?」

「んーとね、あの上に上がりながら曲がってる道かなー?」

「了解。じゃあ、そこ行くよ」


 カレンの指示した入り口にたどり着く前に歩きながら陣形を整え、完全に完成させてからゆっくり境目を越える。



「少しだけ雰囲気変わったかな?」


 僅かではあるが肌を通して感じる空気が境目の向こうとこっちで違う気がする。



「私もそんな気がしますよ」

「ボクもそんな気がするー!」

「私もそのような気がいたします」


 3人が言うなら確定か。



「…気を引き締めたほうが良さそうだな」

「だな。俺は全然違いがわからねぇけど」

「ですね。(わたくし)も全くわかりませんけど」


 …まぁ、そう言う事もあるよ。…うん。



 少しだけ上へ傾斜する道を何事もなく登る。曲がり角で折れると、目の前には周りと変わらない質感の木の壁。行き止まりだな。



「にゃー!?」

「カレン。奇声をあげないで」

「少しびっくりしてしまうので…」

「ごめーん!でも、何で行き止まりなのさー!?」


 カレンが驚く理由はわかる。でも、落ち着いて。



「何故行き止まりか?それはおそらく…」

「ここが元から行き止まりだった。か、」

「ここが正解なので私達に通ってほしくない。か、」

「正解じゃないし、奥に道が続いているけど、ここで止めることで俺らに時間を浪費させたい」

「これくらいではないでしょうか?」

「まともに答えられたー!?」


 あれ? 答えを要求してたんじゃないのね…。



「叩いたら開いたりしねぇの?」

「一応、試してみようか」


 素手で触りたくはないから魔力で手を保護して…。



「何かあったらフォローよろしく」

「言われなくともそのつもりです」


 即答してくれた。そう言ってくれるだろうと確信していても嬉しい。



 コツっと壁を殴ってみる。…手がちょっと痛いだけで反応がない。もう一回軽くやってみるか?



「あ。開きましたよ。お父様」

「今ので開くの!?」

「ガロウ。たぶん偶然だよ」


 一応、世界樹が丁度開けてくれたのかもしれないし、俺らの行動がキーで開くと思わせたい何かの仕業かもしれない。…可能性は尽きない。



「だけど、微妙に光ってたような気がするぜ?」

「あれ?そうなの?」


 俺の位置ではわからなかったけど…。



「私は見てませんが…」

(わたくし)は見えましたよ」

「私もです」


 ガロウ、レイコ、テェルプさんの3人は見えた。であれば、位置の問題か。



「カレンちゃん、道はこのままで?」

「ちょっと待ってねー。ごちゃごちゃしててわかりにくいー」

「世界樹とだけ繋がるような道作れねぇのか?ちょいちょいと」


 ガロウ、それは無理だと思うけど…。



「んー?あ。出来たー!」

「出来るんかい!」


 言ったガロウが一番最初にツッコんでどうするんだ。



「あー。期待に沿えるものじゃないよー!でもー、世界樹と直接意思をやり取りできるようになったよー!」

「てことは、道分かる?」

「わかるよー!」


 なら、大収穫だ。よくやった、カレン。



「じゃあ、道はわかる?」

「いちおーね。「ぐちゃぐちゃ弄りまわされるから疲れる!」とかなんとか言ってる気がするー」


 俺らに愚痴られても困るんだが。



「だよねー。このまま上だってー」


 顔色に出てたか? カレンに読まれた。それはおいとこう。このまま上…ね。最終的に木の上に出るかな?



「うるさいし、行くよー!」


 「(世界樹が)うるさいし」なのだろう。理由が酷い。そうでなくとも進むけど。



 坂の傾斜は先と変わらず。木の中なのに凸凹がまるでなくてかなり進みやすい。この道は見たところ一本道。次もまたそう遠くないところで折れ曲がってはいるけれども。



「父ちゃん!母ちゃん!何か来る!」

(わたくし)も聞こえました!」


 上? ならば…、魔力を耳に回し、さらに神経を集中させる。



「俺も聞こえた。上だ」

「ですね。偉いですよ。二人とも」


 ちょっと距離はあるけど、手は届く。軽く撫でると嬉しそうに二人とも胸を張った。



「この音だと人型かな?」

「ですかね?少なくともここまで音が揃っているのですから、練度は高そうですよ」


 ザッザッという音が一定間隔で繰り返されている。味方…と考えるよりは敵と考える方が良いだろう。



「世界樹は何て言ってる?」

「何故か黙ってるー」


 何でさ。今こそ話すべきでしょうに…。



「あの、世界樹の中に我々エルフは入れませんよ」


 それだけが心配なわけではないのですが。味方だったらどうするのか。という問題が…。



「おそらく敵です。ですが、私は皆様に従いますよ」


 丸投げされた。…どうするべきか。



「家、使う?」

「家?家ねぇ…」


 家は出会い頭を避けられる。さらに、上から何をされてもある程度は防げる。…でも、安全だけど次の手が打ちにくい。



 …というか、上から水で家ごと流されたら詰むな。



「考えてみたら却下。でも、ありがとね、ルナ」


 感謝の気持ちを込めて頭を撫でるとルナは嬉しそうに、よくわからない声をあげた。提案してきてくれた時との落差が酷い。可愛いけどさ。



 即応力重視で対応しようか。丁度、曲がり角直前についた。



「ガロウ君。お願いします」

「了解。『護爪』でいいか?」

「いいよ。でも、向きは斜めにして」


 もし水とかが来ても、俺らの上を丁度越えるようにね。



「了解」


 道の湾曲部、樹の一部そのものという風景に、ガロウの爪が出現する。違和感しかない。だけど、その下に皆で潜り込む。



 そのまま待機。味方であれば声をかけて来てくれるだろう。敵なら殴ってくる。実にわかりやすい。



「あれ?あの、お父様、お母様。足音の様子が変わっていませんか?」


 …? あぁ、確かに。足音の感覚がゆっくりになってる?



「地味に何か引きずってるような音も…」


 まさか!?



「ガロウ!もう一枚!」

「後、私達の後方上部にもお願いします!」

「え!?あぁ、わかったよ!」


 混乱しつつもやってくれた。でも、これで十分…という気がしない。補強が足りない。



 俺らもやることをやる。懐から紙を取り出し、



「「『『硬化』』」」


 ガロウの爪に魔法をかける。『岩』とかを何枚も重ねるより、こっちの方が良いはず!



 ガランガラン!



「何か転がしてきやがった!?」

「だから、対策頼んだの!」


 ギャン!



 ッ!? 今、上通った!



 ドギャッ!



 爆音を立てて着地。その衝撃でわずかに俺らのいる位置まで揺れる。まともに当たっていたら死んでたな。



 俺らを越えた球はそのままあたりを破壊しながら下っていき、突き当りで突如出現した大穴に呑み込まれた。



「お父様。お母様。焼いていいですか?」

「延焼したら困るから焼かないで」

「では、凍らせるのは?」


 そっちは…。どうなんだろ?



「カレン?」

「んー?「火は絶対やめて!」だってー。こーりはまだマシー」

「では、その方向でいきます。『|蒼凍紅焼拓《ガルミ―ア=アディシュ》』!」


 レイコの呪文で球が出現。いつも攻撃に使うモノと違って、かなり冷たそう。それは俺らが製作した壁をスルリ通り抜け…、一拍置くと、向こう側の通路で甲高い音が鳴った。



「球を爆発させて敵を凍らせました。全滅させられたかと」

「他に音はしますか?」

(わたくし)は聞こえません」

「俺も」


 なら当面の危機は去ったか。



「ガロウ」

「外してください」


 爪がスッと消え去ると、向こう側に広がるのは銀世界。…一部だけではあるが。木でできた人形のようなものが完全に凍り付いている。



「おとーさん。おかーさん。完全に砕いて0」

「了解。これ何なの?」

「ぼーえーようのへーし。世界樹にとってのー、異物を排除するよー。コアはなくてー、ある程度の形を保っている限りー、さいせーする。らしーよ!」

「私は残念ながらわかりません」


 俺らが聞く前にテェルプさんが補足してきた。…少し空気が冷えた気がする。でも、カレンの方が詳しいのは仕方ない。世界樹に直接聞けるんだから。



「敵が出たってことは、この道は完全に正解か?」

「それは短絡的だな」

「ですね。間違った道に敵を配置して正解と思わせたいのかもしれませんよ」


 よくある手だ。苦労したからこっちが正解! 人間はそう思いやすい。とは言っても、今回はカレンが「この道」って言ってるんだから正解だろうけれど。



「めんどくせぇな」

「もっと面倒くさいことがありますよ?」

「だね。友好的に見える敵もいるからね」

「油断したところを刺す、といったことや、率先して間違った道に誘導する…等ですね」

「めんどくせぇ!」


 色んな可能性を考慮しないといけないからねぇ…。



「私は信用していただいているので?」

「ええ。親友には及びませんが、人を見る目は一応あるので」

「ですね。私もありますから。貴方は味方ですよ」


 裏切られたらその時はその時。俺らの目を欺けるレベルってことは真正の敵だ。容赦なく潰す。



「あれ?じゃあ、出会ったら判断出来るんじゃね?」

「流石に一瞬じゃ無理」

「ですね。虚を突かれて…ぐふっ。というのはごめん被ります」


 だから出会い頭は何としても避けたい。あー、でも、道の真ん中だと挟まれる可能性もあるのか。面倒くさいな。避けたいとは思っていたけどもう、全部潰す?



「ねー。おとーさん。おかーさん。この兵士ってー、世界樹にとってのー、はっけっきゅー?」


 んあ? ……。あぁ。



「カレン。『白血球』って言いたいの?」

「そーそれー!」


 いきなりすぎて頭が回らなかった。回っても、「兵士が白血球かどうか?」なんて聞かれてもね……。



 外見は少なくとも全く違う。こっちはのっぺり顔の木の兵士。俺らのはただの…って言っていいかは分からないけど、丸い細胞。



 そう言えば、既に砕いたけど、あいつらの見た目はほぼ同じだった。画一生産でもここまで揃わないだろってくらいに。ダークブラウンの色やら、若干丸みを帯びている関節やら、何から何まで。



「ねぇ。これってどんな感じなの?」

「さっき言ったとーりだよー!世界樹がー、異物を排除するときに作るのー!」


 世界樹が作るのか…。俺らは白血球の製作は無意識でやってくれてるから考えずにすんでる。そこも違う…、ん? 作る(・・)



「ねぇ、カレンちゃん。この世界樹に自動で働く防御機構ってありますか?」

「じどーって、どのレベルー?」

「世界樹が意識しなくても勝手に動くってレベルです」


 四季も同じ考えに至ったのかな?



 四季の問いにカレンが少し逡巡すると



「ないみたいー」


 と答えてくれた。そっか。完全に自動は「ない」のか。



「本人…、本樹が説明できない機構とかある?」


 聞いたはいいけど、普通にあるな。さっき声かけても返事くれなかったし。



「んー、僕らに説明しにくいとか、出来ないー!って部分はあるみたいだけど―、全部いけるってー!」


 予想が外れた? そんなことあり得るわけ…あるか。世界樹だし。



「カレン姉ちゃん、それだと世界樹の意識?的なものが死んだら一撃で死ぬじゃねぇか」

「だねー」

「この世界樹、構造から欠陥を抱えていませんか、お父様、お母様?」

「だね」「ですね」


 でも、世界樹の意識が全てを把握して、統括している。今回は実に好都合だ。



「カレン。世界樹とのやりとりって遮られたり、傍受されたりしない?」

「しないよー。りゆーは分からないけど―」


 よし、理由は分からなくても出来るならいい。わからないことは大抵シャイツァーだしね。



「習君どうぞ」

「ありがとう」


 四季から紙を受け取って日本語で書く。カレンならこれを読める。後は世界樹に伝えてもらえばいい。これで一気に進みやすくなる…はず!

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