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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
5章 魔人領域
200/306

閑話 夢

 168話の時、子供たちはどんな夢を見ていたの? そんなお話です。


 四季の分はないです。習のと視点と服装が変わるぐらいですので…。



 最初はアイリから。各子供達の分は、


------


なんとか編



------


 という感じで区切ります。


------


アイリ編



------



「アイリ」

「アイリちゃん」


 …? お父さんとお母さんが呼んでる? …確かわたしはシャルシャ大渓谷で気を失ったんだったね。



 呼ばれてるし体を起こして…、むにゃっ。…? この感触は、お父さんとお母さんに抱き付かれてる?



「…どうしたの?」


 わたしの顔のそばにある二人の顔。それを見ながら訪ねる。



「ん?特に何も」

「アイリちゃんを甘やかそうと思いまして」


 …へぇ。周りを見る限り…ここは宿かな? 見覚えがそんなにないんだけれど…。



 …どこでもいいよね。折角、甘やかしてくれるって言ってくれてるんだし…、盛大にやろう。



「…滅茶苦茶言ってもいい?」

「ん?」

「いいですよ」


 ニッコリほほ笑んで言う二人。じゃあ…。



「…飴。作って。お父さんとお母さんがわたしに、わたしのために作ってくれた飴」

「「勿論」」


 二人はそう言うと道具をゴソゴソと探って準備しだした。わたしはそれを座って見ながら待つ。



二人とも慣れた手つきで砂糖を取り出して、加熱。色がついたときに取り出した。



「「どうぞ」」


 …それで完成?



「…これじゃない」

「「え゛」」


 「え゛」じゃないでしょ…。



「…わたしが言ったのは「最初に作ってくれた飴」だよ?そんな作り方じゃなかったよね?」

「あー。そっか」

「それもそうでしたね」

「ちょっとセンに頼んで搾ってくる」


 サッと外に行くお父さん。お母さんはそれを見送る。しばらくすると帰って来て、砂糖をザーっと鍋に投入して製作し始めた。



「「どうぞ」」


 …ん。見た目はそれっぽい。口の中に入れてみる。



「…違う」

「「え゛」」

「…甘い」


 わたしの駄目だしを聞いてもう一回作ってくれた。…甘やかしてくれるのは本当らしい。



「はい」

「どうぞ」


 …いただきます。



「…違う。とげとげしすぎ」

「「え゛」」


 …口当たりがよくない。あの時のはもうちょっと優しかった。



「「はいどうぞ」」

「…違う。まろやかすぎる」

「「え゛」」


 あの時のはこんなにすぐに溶けなかった。



「これでどう?」

「…色」

「「あ。うん」」


 あれはこんなに綺麗な黄金色じゃなかった。もう少し黒…、端的に言って、見た目が悪かった。



「これはどうです!?」

「…苦すぎ」


 ちょっと苦い。



「なら、これは!?」

「…違う」

「「えぇ…」」



「これならどうです!?」

「…違う」



「なら、こう!?」

「…違う」



「ならば、こうですか!?」

「…違う」



「ならこうか!?」

「…違う」



「な「違う」うわぁ…」



「な」

「ち」

「あ。うん」







______


「な、なら、これはどうですか!?」

「…違う」

「「何が違うの!?」」


…ついに折れた。…意外ともったね。



「…全部。例え味が一緒であったとしても、作ってるのがわたしのお父さんとお母さんじゃない。その時点でわたしの求めてるものじゃない」

「「なっ…」」


驚いてる。…そんなに不思議かな?



「…まず、お父さんとお母さんは何でもない時にわたし達を起こしたりしない」


…起こすときは緊急の時。だけど、今日はそんなんじゃないのに起こされた。だというのに、その謝罪もなかった。…これはおかしい。二人ならまずそれ(謝罪)を口にする。謝らなくてもいいのに。



「…しかも、挨拶してない」


…二人なら挨拶するはず。平時だったら絶対に。…遅れるときもあるけど、5分以内にはしてくれる。



「…それに、妹達に一切触れてなかったのもおかしい」


…わたしが妹達のことを気にするのはわかってるはずなのに、そのことを口にしなかった。



「…さらに言うなら、お父さんとお母さんに「最初に作ってくれたやつ」を頼んだのに、理解できてなかった」


…わたしのお父さんとお母さんならわかってくれる。…というか、わたしがそれを頼んだ初回から、最初の作り方を踏襲してくれた。



「…極めつけに味は似てても、違う。…何回だって言うけれど、根っこから違うよ。二人が作ってくれたならあるはずの、わたしや、妹達に対する気持ちがまるでなかった」

「そんなものわかるはず「ないなんて言わせないよ?」…」


わたしはわかる。唖然としてるね…。何で分からないのかな?



「…そもそも、わたしを誰だと思ってるの?お父さんとお母さんの長女にして、ルキィ様の元近衛。…そして、エルモンツィに似てるからと蔑まれた元孤児だよ?…人の気持ちには人一倍敏感だと自負があるんだよ?」


 寧ろ、何で分からないと思うのさ。…ただでさえ、あの二人の気持ちは真っすぐわたし達を向いてくれているのに。



「じゃ、じゃあ…。最初からわかってた?」

「…ん。そだよ。斬り捨ててもよかったけど、お父さんとお母さんの姿を取る奴にそんな慈悲、要らないよね?」


 揶揄って、散々に遊んで斬り捨ててあげる。それがわたしの気持ちを弄ぼうとした、お父さんとお母さんの姿を偽った目の前の奴への罰。



 …例え二人が許そうと、わたしが許さない。…どうやって痛めつけてあげよう?



「「か、帰れ!」」


 え? …ありゃ。追放された…? …むぅ。怖がらせ過ぎて逃げられちゃったか。…最初から斬り捨ててればよかったかな?



 …起きよう。起きてわたしのお父さんとお母さんに会いたい。







------


カレン編



------




「カレン」

「カレンちゃん」


 んー? おとーさんとおかーさんが呼んでるー? んー? …顔があったかーい。それに柔らかーい。…抱きしめてくれてるのー?



 嬉しいから顔を押し付けよー。ぐりぐりー。



「あははっ。カレンちゃん。それがしたいのですか?」


 んー?



「どーいうことー?」

「今日はカレンを思いっきり甘やかせようと思ってね」

「ええ。ですからカレンちゃん。希望を言うのです。私達は可能な限り答えますよ!」


 へぇ…。そっかー。だったらー。



 よいしょ。弓を出してー、矢を番えてー。



「ええっと…、カレン。何しようとしてるの?」

「見たらわかるでしょー?」


 引き絞ってー。



「ステイ。ステイです。カレンちゃん」


 知らない言語だー。発射ー! 間髪入れず、もーいっぱーつ!



 おとーさんとおかーさんを矢で空高く持ち上げる。それからー。ボクも矢で空に飛ぶー!



「一緒にこーやってあそぼー!」


 顔色が悪いねー。でも、頷いてくれたしー。いーや!



 上ー、下ー、右ー、左ー、急じょーしょー!からのー、きゅーこーか! さらにグルグルかいてーん!



「ちょっ…、」

「待ってくださ」

「やー!」


 二人の言う事なんて聞かないよー!どんどん早くしてー!どんどん移動をおーきく!きゅーてーしに、きゅー加速! 右に螺旋を描きながらー、ぐるぐる昇ってー、描いた螺旋を貫くよーにきゅーこーか!



 ますます左右移動をおーきく! 一個一個の動作の緩急をおーきく!



「ちょっ…!」

「カレンちゃっん!?」


 むー。うるさいなー。えい。



「カレン!ギャッ」「カレンちゃん!ちょっ…にゃっ」


 きゅーていし。舌噛んだかなー?まー。いーか。静かになったねー。次行くよー!



「おい。カレン」

「これはどういう了見ですか?」


 むー。止まったら質問来ちゃったねー。顔がちょっと怖―い。このまま放置してるとー、めんどーなことになりそー? ならー。答えよっかー。



()ーていうならー、偽物を痛めつけるりょーけん?かなー?」

「「なっ!?」」


 んー? そんなに驚くことでもないよねー? 何でそんな顔してるのかなー?



「何でボクがわからないってー、思ったのかがわからないよー」

「何故わかったんですか?というか…、いつから違うと気づいていたんですか?」

「最初からー」


 最初の最初。おとーさんとおかーさんが起こしてくれた時からだよー。だけどー、このあたりのー理由せつめーはいーかな? この現象がボクだけってわけはないだろーし。



 きっとおねーちゃんが言ってくれてるしー。でもー、これは言っといたほうがいーよね。



「ボクだってー、おとーさんとおかーさんが好きなんだからねー?」


 さすがに、おねーちゃんには負けるけどねー。でも、



「触ったらわかるよー。というーか。ボクが今、この形になる前からー、つまり蕾の時からー、一緒にいるのにー、わからないなんてありえないよーだ!」


 おとーさんとおかーさんはボクが蕾の時から―、ずっとそばに置いてくれてたー。だからこそー、色々産まれる前に学べたわけだけどー。



 でも、フツーに考えるとよくわからない物()をー、ずっとそばに置くなんてありえないよねー。何となくー「ボクが寂しいと思ったら可哀そう」って思ってくれてそーしてくれたみたいだけどー。



 そんなおとーさんとおかーさんの優しさのありがたさはー。ボクだってー、いーや違うねー。ボクが一番わかってるんだよー。



「だからー。偽物如きー、ボクがわからないわけがないよーだ。だからー、偽物がいたらー、徹底的に痛めつけるよー!」

「「ちょっ…!?」」

「逃げちゃやだよー!甘やかしてくれるんでしょー!」


 おとーさんとおかーさんだと嘘をつく奴には逆撃を入れるよー! そーじゃないと、ボクの気がすまないからねー!



「さー!思いっきりいってみよー!」

「「帰れ!」」


 にゃっ!? あれー? 逃げられちゃったー? 悪い顔をしすぎちゃったのかなー?



 むー。こんなことなら頭打ちぬいておけばよかったー!



 まー、過ぎたことは仕方ないかなー。起きよーっと。起きたら遊んでくれるかなー?






------


ガロウ編



------


「ガロウ。起きてください。ガロウ」


 ん? レイコ? もう朝…か?



「ガロウ。起きてください。ガロウ!」

「あ。ごめん。おはよう。レイコ」

「おはようございます。ガロウ。今日もいい朝ですよ」


 確かに良い朝だ。起こされてしまったけど。



「父ちゃんと母ちゃんは?」

「お父様とお母様ですか?お二人ならば仲良く朝食を作ってくださっていますよ?」


 そっか。ここは馬車の中…か? 見る限りだが。



 父ちゃん達が何か色々処置してくれたんだろうが…。レイコが近ぇ。なんか今日、近ぇよ…。



「どうかいたししましたか?ガロウ?」

「近くねぇ?」

「そうですか?きっとガロウの気のせいですよ」


 はっきりと断言するレイコ。だけどなぁ…。どう考えてもいつもより近ぇんだよなぁ。父ちゃんと母ちゃんの距離感というか…、そんな感じの距離感。



「ガロウ。行きますよ」

「え?ああ。おう」


 レイコが俺の腕を取って、ガッチリ逃さないように捕まえ、歩き出す。近ぇ…。



「お父様!お母様!ガロウを連れて来ました!」

「ありがと。レイコ」

「その辺りで待っててください」


 作ってるのは…、何だろ? スープか?



「いえ、お母様。先ほど、ガロウと一緒に作ると申し上げたではありませんか」

「そういえばそうでしたね。よろしくです」


 え!? 俺聞いてないけど!?



「さ。ガロウ。一緒に作りましょう」


 あぁ。今、言ったってことか? レイコが嬉しそうだし…、いいか。



「何作るんだ?」

「メインであるハンバーグを作りましょう。ガロウ。好きですよね?」

「ああ。好きだぜ」


 メインか…。いつもなら、父ちゃんか母ちゃんの補佐に入ってるだけなのに、今日はいやに積極的だな。



 …というか、俺とレイコだけで作るなんてはじめてなんだが。いつも父ちゃん達の動きを見ているとはいえ、出来る気しねぇ。



「やりますよ!」


 言ってるだけじゃ始まらねぇし、やるか。…とりあえず、レイコを止めよう。ミンチ肉をそれ以上ミンチにしてどーすんだ。



「レイコ。それは良いから、タマネギ切ろうぜ」

「あっ…。そうでしたね。では、タマネギを切りましょう」


 皮を剥いてみじん切り。フライパンの上に油をひいて…、



「ガロウ。既に(わたくし)がひいていますよ?」

「え。マジか」


 俺もやっちゃたんだが…。油過多待ったなし。布で適度に拭ってタマネギを炒める。色があめ色になってきたらボウルの中の肉の上にのせて、塩胡椒とスパイスを…。



「待って下さい。既に振っています!」

「あ。そうなの?」


 じゃあ、卵を割って、小麦粉適量いれてこねて…。肉の冷たいのとタマネギの熱いのとが混じって少し気持ち悪い…。特にタマネギ。お前だよ。熱いんだよ。



 頑張ってこねて成形して、フライパンの上に。



「ガロウ。(わたくし)が今、持っている分、肉が少ないので分けてください」

「ん?了解」


 既にフライパンの上に置いちまったけど、これが一番多いから、そこから拝借。…割と均等に4つ出来た。



 焼いてる間に手を洗って…、ぐえっ…。



「ごめんなさい」

「ああ、いいよ」


 脇腹に一発入ったけど、そんなに痛くないし…。水をちょっと取って…。



「きゃっ!?」

「ごめん。」


コップがレイコの手に思いっきり当たった…。



「気になさらないでください。」

「ごめん」


 謝りつつ、水をフライパンへ、そして蓋をして蒸し焼き。…妙に引っ付いてくるレイコを感じつつ焼いて、ひっくり返す。そして、蓋をせずに待機。待ってる間にソースを適当に調合して…。



 よし、出来た。



「出来ました!」

「お。よかった」

「無事に出来ましたか?」

「出来たぜ」


 …無事とは言い難いが。というか、ハンバーグ作っただけなのに、父ちゃんと母ちゃんの息の良さを思い知らされたぜ…。ぶつからねぇし、見もせずに互いに相手の必要な物を提供できて、見もせずに受け取れてるし…。



 息が良いというか、阿吽の呼吸とか、それ以上だと思った。



「じゃあ。食べるよー」

「はーい」

「どうぞ。食べてくれ」


 俺以外の三人がハンバーグを口に運ぶ。



「「「まずっ!?」」」


 ソースが舌に触れた瞬間、ふき出した。



「だろうな」


 感想が漏れたら、父ちゃんも母ちゃんも怖い目でこっちを見てくる。…全然怖くねぇが。



「何でこんなことを?」

「ん?だって、俺の知ってる父ちゃんと母ちゃん、レイコじゃねぇもん」


 理由としてはそれだけだ。偽物に俺の家族を名乗られるのがムカついた。それだけ。食材は無駄になっちまうが…、たぶん夢だ。問題ねぇ…か?



 本当の父ちゃん達なら「夢でも食材無駄にしちゃダメでしょ!」って言いそうだなぁ…。



「いつからだ?」

「二人に関しては最初から」


 わからないわけがねぇ。理由は…、挨拶とか色々あるけど、その辺りは省略するか。この夢が俺だけとは思わねぇし。たぶんアイリ姉ちゃんから聞いてんだろ。でも一応、



「ていうかだな、レイコがレイコじゃねぇ時点で疑うわ。臭いも限りなく似てっけど、ちげぇし」


 こんくらいは言っとくか。



「では、(わたくし)は?」

「レイコ?レイコはもっと簡単だぜ。小さいころから一緒にいんだから、分かんねぇなんてあるかよ」


 それに、異性として好きだしな。偽物でも面と向かっては恥ずかしくて言いたかねぇけど。身内補正に、好きな人補正。これで間違えるほど俺は耄碌してねぇよ。



 まぁ、ご高説を垂れるのはいいだろう。父ちゃんや母ちゃん、レイコの偽物を放置しておくわけにはいかねぇし、イライラするから斬るか。



「「「帰れ!」」」


 あ。逃げられ…、いや、夢から追い出された? チッ…。よくはないが…。逃げられたなら仕方ねぇか。とりあえず、起きよう。



 起きてレイコや父ちゃん達の無事を確かめねぇと。






------


レイコ編



------


「レイコ。起きろ。朝だぜ」


 ガロウ? そういえば、(わたくし)は気を失ってしまったのでした…。朝という事は気づくまでかなり時間が経ってしまったのでしょうか?



「おーい。レイコ?」


 ガロウを待たせてしまっていますね。先に返事をしませんと。



「あ。申し訳ないです」

「いいって、気にすんな。男は甲斐性って言うだろ?」


 確かに言いますが…。



「度が過ぎるとただの寄生ですよ?」


 どのような関係を築くかは個々人の自由ですが…。少なくとも(わたくし)はガロウに…、いえ、より正確に言いましょう。



 (わたくし)はお父様やお母様、ガロウやアイリお姉さまやカレンお姉さまに施していただくだけ。そんな人になりたくないのです。



「わかってるよ。そんくらい。だが、たまには甘えてくれてもいいんだぜ?」

「普段から頼りにしていますよ。ガロウ」


 「甘える」と言うべきでしょうが「頼る」に逃げてしまいました。(わたくし)もガロウが好きですが、素直に口に出来ません。



 その点、お父様とお母様はすごいですね。時折、無意識に愛を囁いて赤面しておられますが…、自分の気持ちを真正面から相手に伝えられているのですから。



 その上、お二人とも危急の場面では抜群の集中力を発揮され、言葉で親愛を伝え、行動でその親愛に応える…という事をなさりますし。



 (わたくし)も「ガロウと共にあのようになれればいいな」と思いますが…、やはり少々難度が高そうです。…お父様たち曰く、会ってまだ一年と経っていないそうですが、長年連れ添わねば無理でしょう。



「おーい。レイコ?」

「あ。何ですか?」

「いや…、ずーっと下向いてたからさ。俺が変なこと言ったせい?」


 思索にふけり過ぎましたか。



「いえ、違います。ただ少し考え事をしていただけです。ところで、お父様とお母様はどちらに?」

「外だぜ?行くか?」

「はい」


 (わたくし)が答えるとガロウがそっと(わたくし)のそばへ。そして手を取ってきました。…いつもよりも近いですね。というか、グイグイ来ますね。バランスを崩して倒れてしまいそうです…。



「ああ。レイコ。来たんだ」

「ご飯はもうできていますよ」

「ありがとうございます」


 (わたくし)が出来ることは無さそう…、いえ、飲み物を用意することは出来ますか。スープを作ってくださっているようですが…、それは別枠(副菜)です。



 牛乳を入れて、そこにはちみつを入れて。後はこれを入れましょう。



「出来たよー」

(わたくし)も出来ました」


 お父様が先に来て料理を置いて、いつもよりも遅くお母様が来て、お箸を持ってきてくださいました。(わたくし)も置きましょう。位置を間違えないようにしまして…。



「じゃあ、食べるよー」

「いただきます」


 お父様とお母様それにガロウの三人が(わたくし)のいれた飲み物を口にして…、



「「「まずっ!?」」」


 一斉に吐き出しました。…が、それだけのようですね。おかしいですね? 投入したものはアイリお姉さま曰く「不味すぎてのたうち回る薬」なのですが…。割と平気そうです。



「レイコ…。お前、どういうつもりだ?」

「偽物への制裁のつもりですが?」


 あっけらかんと返すと、全員が驚愕されています。



「驚くようなことでしょうか?(わたくし)がお父様やお母様、ガロウの偽物をみすみす見逃すわけがありませんのに…」

「いつから気づいたんですか?」

「お父様とお母様は会う前からです」


 ガロウが偽物だと分かっていましたから。お父様とお母様が本物なわけがありません。…何しろ、お二人が(わたくし)達の偽物に気づかないわけがありませんもの。直接会ってからも色々と違和感がありましたが…。(わたくし)だけにこの現象が起きているわけがないでしょうから、既にアイリお姉さまが指摘しておられるでしょう。触れません。



「俺はいつから?」

「声を聞いた時ですかね?」


 声にいつものガロウの安心感がありませんでした。近づいてきた際の臭いで確信できました。そうなれば後は、違和感しかありませんでしたね。



 何よりおかしいのはガロウが(わたくし)に対してかなり積極的だったことでしょう。ガロウにあそこまでの行動は無理でしょう。…逆もまた然りですが。お父様とお母様のようになりたくはあるのですが、どうしても先に羞恥が来てしまいますから…。



 気分を切り替えましょう。思考を打ち切ります。唖然とパクパク口を開けている偽物に、聞かせてあげる道理もございません。さて…。



「処罰を与えましょうか」


 (わたくし)は家族の中では割と温厚だと思います。…アイリお姉さまやお父様とお母様が、お怒りになった時のソレが異常なだけかもしれませんが。



 ですが、(わたくし)の大恩人たるお二人と、ガロウの姿に偽るなど言語道断。そのまま許すなど、誰が許そうとも、(わたくし)の気持ちが許しません。



 何をして差し上げましょう? 二度とやろうとは思わないようにさせることは確定ですが…。



「「「帰れ!」」」


? …どうやら追い出されてしまったようです。



 …業腹(ごうばら)ではありますが、起きてしまったことは仕方ありません。起きましょう。皆の安否を確認しませんと…!

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