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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
5章 魔人領域
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174話 続VSマカドギョニロ

アイリ視点です。

 妹や弟たちと泥の対処を必死にしていたら、ようやく滝つぼのほとりにつけた。



「…カレン、ガロウ、レイコ、それとシールさん、防衛お願い」

「わかったー!」

「勿論!」

「はい!」

「任せてくれ!「さん」づけがちょっと気持ちわるいけど!」


…シールに暴言吐かれた。普通に同意してくれればいいのに…。何で? …確かにいつも呼び捨てだけど、頼み事するから丁寧にしようとしたのに。



「で、僕らに押し付けてどうするつもりなの?アイリちゃん!」

「…お父さんとお母さんを安全地帯にかくまう」


 …あれ? 皆、頭に疑問符を浮かべてる。どうしよう。



「とりあえず、父ちゃんと母ちゃんを『輸爪』に乗せとくか?」

「…ん。お願い」

「了解」


 上手く爪と協調して二人を乗せた。説明を…、



「うあわっ!来たよ!」


 …来ちゃったね。



「説明は後でいい?」


 コクリ全員頷く。



「姉ちゃんはそんなことより二人を!」

「おねがーい!」

「お願いいたします!」


 …ん。任された。



「…ルナ。家はどこにやったの?」


まずルナの家を見つけないと。あれが全部の鍵。



 …聞いてみたけど、わかってない? なら自力ででも探し出す。…シャイツァーは持ち運ばないといけない。だから、どこかには持ってるはずなんだけど……。あ。見つけた。腰のところに私の鎌が一番小さい時とおんなじくらいのサイズでちょこんといる。



 …どのシャイツァーもこのサイズまでしか小さくならないのね。…家と鎌を比べると縮小率が理不尽なくらい違うけど。わたしのシャイツァーがこれくらいの縮小率だったなら隠せたのに…。



 あっ、ルナにちょっと逃げられちゃった。…黒い気持ちが漏れちゃったかな? 今、そんなに恨んでないんだけど。



「…それ、大きくできる?」


 身振りを付けてルナに聞く。…「それ」が家を指してることはわかってるのか、家とわたしを見てくれてるけど、身振りの意味がわからない…ってところかな?



 言葉もなく伝えるのって難しい…。わたしの鎌を大きくすればわかってくれるかな?



 …怖がられても嫌だから、ルナの後ろに回り込んで一緒に握る。その状態で鎌を大きくして、空いている片手で同じ身振り。戻してもう一回小さくして、再度繰り返す。ルナはコクっと頷くと、家を大きくしてくれた。



 …やった。伝わった。ドアを開けて輸爪に乗せた二人を家の中に入れる。これで最難関は抜けられたね。…妹達のおかげで一発もこっちに飛んでこなかった。



 中は…さすがシャイツァーってところかな? 馬車も、タンスもクローゼットもベッドも何もかもが出撃前と変わってない。



 …馬車がそのままなのは嬉しいけど、ベッドが横倒しになったままなのはどうなのかな? どうにかならな…なった。…わたし、何もしてないのにベッドがひとりでに元に戻った。



「…ルナ、二人を見てて…、」


 …シャイツァーだし、気にしないでおこう。たぶんわたしの意図を汲んでくれたんだね。二人をベッドに寝かせて調薬準備。機材を鞄から引きずり出して組み上げる。



 ルナは…、二人の横で心配そうに顔を覗き込んでるね。あの分ならこっちに来ないかな。…。それならいいや。手を出してくるとは思わないけれど手が狂うと大変だしね。



 …作る薬はあれでいいかな。…勇者の二人には魔力が多すぎるからほぼ効かないだろうけど、今欲しいのは魔力。それさえ用意できればいい。…可能なら二人に起きてもらいたいけど。この薬は意識がないときじゃないと効果が弱いんだよね…。



 気分を入れ替えて作ろう。わたしだけが遊んでいるわけにはいかない。『アスクタピブ』をはじめとする種々の薬草をすりつぶして、ピンクのゲルを混ぜあわせて紫の液をつくって…、よし。出来た。



 これを2 cmぐらいのうねうね這いずり回る『サロピラ』に注入。後は、この薬を作るときにしか使わない液体の入った2 mmくらいの針をサロピラに深く突き刺し、針のお尻の部分だけを僅かに露出させる。



 …ん。準備完了。そういえばこの薬、女性の貴族の人に大不評だったね。…お母さんなら大丈夫だよね? どこかの某侯爵令嬢は「この薬を飲むぐらいなら死にますわ!」とか言ってたから、本当に1年ぐらい寝たきりだったらしいけど。目が覚めた後に100回くらい医者に使用の有無を聞いたとか…。



 …本当に大丈夫なのかな。これ。…お母さんとお父さんの世界では確か「いもむし」だったかな?苦手な人が多いとか言ってたね。…不安が増えちゃった。



 …時間もないし飲んでもらおう。怒られたら謝ればいい。…必要なことだし、二人なら怒らないはず。…そもそもわたしに任せるって言ってくれた。問題ない。これが最善。



「…ちょっとごめんね」


 覚悟を決めて枕元に来たけど、ルナがちょっと邪魔。少しだけどいてもらう。…興味があるのかわたしの手を見てるね。ルナが食べちゃダメだよ。



 …お母さんの口開けて、サロピラの顔に薬を塗って、口の中に投入。…ん。ちゃんと自発的に喉まで行ったね。これでよし。後、お父さんにも同じように投入。ちょっとだけ待つ。



 …そういえばこの薬って確か、勇者が作ったやつだったような…。なのに嫌われてる。…相当嫌いなんだね。



 …作った勇者は「最後に塗る薬が、人間には薬効成分だけど、サロピラの頭をおかしくするもの。サロピラはそのせいで酸性の強い胃を目指して一直線に進む。胃の中の酸性で針の尻が融けて中の液がサロピラを殺す。それでサロピラの有効成分と注射したものを混ざって完成!」とか言ってたとか…。



 …今ならお父さんとお母さんのおかげで何が言いたいかだいたいわかるね。専門単語祭り。



 …そろそろ効果が出てきた? 目を無理やり開かせてみて、瞳孔の辺りが周囲と真反対の色になってれば効果が出てきたって証だったはず。



 …お父さんもお母さんも、ちゃんと白い。効果は出ているみたいだね。…わたしはいつもの方が好きだけど。



 …ん。何はともあれ効果も確認できた、わたしも出よう。



「…ルナ、どうする?」


 尋ねるとルナはギュッと二人の手を握った。…そっか、じゃあ、二人をお願い。わたしは行く。



…一応、最後に確認。家を鎌で殴る。…うん。ちゃんと防御魔法は発動してる。これで三人は問題ないね。戦列に参加しよう。



 鎌を抱え、ガロウとマカドギョニロの間に割り込み、攻撃を受け止める。



「待ってたぜ!」

「…ただいま」


 さ、やるよ。



「ねえ、アイリちゃん、僕さ、ものすごく今、あれな想像してるんだけど」

「…何?」


 …わたしはマカドギョニロを倒すのに忙しいよ? シールだけ顔が妙に引きつってるね。何でだろう?



 …あっ、また泥。お父さんとお母さんがかなり処分してくれたはずなんだけど、タフだね…。



「アイリちゃん、簡潔に聞くよ?シュウとシキを魔力供給機にしてない?」

「…してるよ?」


 それがどうしたの? …あれ、シールだけじゃなくて、ガロウとレイコも顔を歪めてる。



「えっ、うそ。本当に?」


 …嘘ついてどうするのさ。頷きながらマカドギョニロ目がけて鎌を放り投げる。



 くるくる回る鎌は泥兵を数体切り裂いてマカドギョニロに迫り…、悠々と落とされた。…むぅ、やっぱり本体はきつい?



「姉ちゃん、それって、二人の身の安全という観点から見てどうなの?」

「…問題ないよ」


 …というかあったらしない。いくらわたしでもそれはしない。



「ならいいか」

「ですね。(わたくし)達の中で最も薬学に通じるアイリお姉さまですから、間違いはないでしょう」


 わたし、レイコが思ってるほど薬学に精通してないよ? …ちょっと勉強したほうがいいかな?



「シュウとシキに怒られ…ないか。うん。怒らないわな」


 …必要なことだからね。そもそも、わたし達の安全が魔力で買えるなら二人は喜んでなげうってくれるはず。だから問題ない。



「隙アリ!」


 嬉しそうに家に突っ込んでいくマカドギョニロ。何が隙なのかさっぱり理解できないけれど、奴は頭上に掲げた釜をひっくり返して、わたしが普段見るよりも黒い色が濃い気がする泥を家にぶちまけた。



 泥が自然の摂理に従って落下。家の輪郭の少し手前で爆ぜた。



「やった!やってヤッタ!」

「ちょっ!?」


 マカドギョニロが喜んでシールが焦ったような声を出す。…焦る必要なんてないんだけど。



 鎌を大きくして思いっきり振るって風を起こして、煙を吹き飛ばす。…うん、やっぱり家は無傷。意識はなくとも魔力でちゃんと防御してくれてる。



「なっ!?ナゼダ!?」

「…答える義理はないよ」

「死んじゃえー!」

「くらえ!」

「『|蒼凍紅焼拓《ガルミーア=アディシュ》』!」


 唖然として、文字通り隙を晒すマカドギョニロにわたし達の一斉攻撃。鎌と矢が泥兵を全て土へ返し、ガロウの一撃が奴の左腕をちぎりとり、レイコがその腕を跡形もなく燃やし尽くす。



「ちっ、腕だけか!」

「…ほんとにね」


 畳みかけたのに腕だけ。…しょっぱい。



「何もないよりはマシ。そのように考えましょう。ガロウ。姉さま!」


 …だね。少なくとも器用さは奪えたはず。…あ、ダメだね。泥から腕を作り出して元通りくっつけた。



「吹き飛ベ!」


 …? 威圧的な言葉の割に泥の色が…よく見る色だね。…爆弾だったら別だけど、ただの泥な気がする。…嫌な予感もしない。一点突破。



「なっ!?」

「ちょっ、姉ちゃん!?」


 突撃したら泥が増えた。…だから何だって話だけどね。ガロウが心配して声をあげてくれてるけど、わたしの鎌だけでも全部処理できるのに、妹達がいる。対処できないなんてことがあるはずがないよ。



 数回鎌を薙いで泥を斬り抜ける。…むぅ。ちょっとだけしぶきがかかっちゃったね。…折角お父さんとお母さんが綺麗にしてくれてたのに。



「お姉さま!下です!」

「…ん!ありがと!」


 周囲を見渡してマカドギョニロを捜す前に、レイコの声が飛んできた。声に従って礼を言いつつ鎌を大上段から振り下ろす。



 ガキッ!


 鎌が止められ、同時に甲高い音が鳴る。…止められちゃった。…あんな雑な腕の付け方していたくせにしっかりくっついてるのね。…理不尽。



「姉ちゃん!何ともないのか!?」

「…?ないよ?」


 …しぶきはかかったけれど、それだけで、何ともないよ。



 …押し切れない。鎌と腕が拮抗してる。ちょっとずつめり込んではいるけれど進まない。…わたしにお父さんやお母さん並みの体格があれば既に押しきれてるはずなのに。



「おねーちゃんと遊んでる間なんてないよー!」

「邪魔するナ!?」


 …拮抗してたのに一気に斬れた。頭に飛んできたカレンの矢を避けるために、わざと腕を切り飛ばさせた?



「お断りします!」

「キサマらぁぁ!」


 レイコが幻覚で誘導して、ガロウの護爪で片腕を切断。これで両腕が飛んだ…、けどまた生えてきた。…先に回復源になってる泥を枯渇させるべきかな? …それとも、白授の道具を狙うべきかな?



「ブルルル!」


 ? …わたしに回復? …違うね。これは浄化?



「…どうしたの?」

「さっきの泥、何か呪い的なもんが籠ってたんだよ!」


 …なるほど、それで心配してくれてたのね。わたしに何も影響がなかったのは…、呪いをずっと受けてたからかな? …耐性でもついてるんだろうね。



「…何はともあれ、ありがと」


 …言えるならお礼は言っておかないとね。…また性懲りもなく家を狙ってる。泥が射出されるけれど、すぐにガロウの『護爪』が割り込んで阻む。



「マタカ!」

「防げる限り何度だって防いで見せるぜ!」

「…落ちて」


 飛んでるあいつの背後へ思いっきり飛ぶ。切っ先を心臓に突き立て、わたしの体重をのせ、地面に落とす。心臓っぽいところ諸共地面を刺し貫いた。…たぶん意味ないよね。



「邪魔をするナ!」


 やっぱりね。…チヌカは心臓ぶち抜いたぐらいじゃ死なないよね。



「そういえばさ、何で君は家を狙ってるんだい?」

「知れたコト!」


 …あ、答えるんだ。何で答えちゃうんだろうね?



「計画を阻んだ首班がイル!それだけで十分だろうガ!」


 …うわ、本当に答えた。…間抜けなの? …ん? 二人がいるから家狙われてる? …わたしのせい?



「…二人が来る前から家、狙ってたよね?」

「あぁ、あれか」


 …わたしでも反応するのね。…心臓の辺り切り裂いたんだけど。…全然堪えてないってことだよね。



「それはアレが死ねば都合がいいカラだ!上手くやれば三つ巴ダッタ!」


 …なるほど。こいつ、ルナが公称皇帝だって察してるのかどうかはわかんないけど、魔人と獣人の戦争原因にする気だったんだ。



 ルナのシャイツァーのおかげで邪魔されまくって今の今まで計画頓挫していたみたいだけど。…なんとかうまいことやってルナを仕留めて死体を獣人領域に捨てるなり、泥人形作ってナヒュグ様のところに行くなりすれば開戦口実はいくらでも作れるしね…。



「計画倒れー!」

「ウルサイ!」

「もう既にルナを…、妹を狙う計画は完全に破綻したぜ?」

「…ですね。お父様とお母様がいる限り、そして(わたくし)達がいる限り、手は出させませんよ」

「そのようだナ!鬱陶しイ!」


 家への攻撃は悉く遮ってあげる。万が一抜けてもさっき見たようにほぼ絶対安全だけど、それでも(・・・・)やる。



 にしても…、



「…お前の能力なら、ルナに関わらずとも戦争の口実を作れたんじゃない?」


 …いろんな種族の姿を模して作れるのなら、わざわざルナを殺さなくても開戦の口実にはできるはず。…それこそ、魔人の姿で獣人を殴りつけるとかを、何回もやればいいはず。



 …というか、イベアの時もそう。わざわざ獣人を攫って人間領域で奴隷にする必要なんてなかったはずだよね?



「我らが神は完璧である。…が、残念ながら我は、そして白授の道具は神ではないが故、不完全ダ!」


 …なんだただの狂信者か。…白授の道具にも出来ないことがあるはずだろうから、その関係?



 わざわざさっきわたしが考えてたことを言う必要もないね。言ってみて「その考えが合ったか!?」みたいな顔されたら、どんな顔していいかわかんなくなっちゃう。…あぁ、でも、開戦口実として弱いとか、他の要因もあるのかな?



 …何だろう、シールから「君が言うな」的な視線を感じるような…。気のせいか。



 …滝のせいか泥が多いね。…泥が尽きるまで攻撃するって作戦は放棄しようかな。こいつはずっとここにいてその間泥を蓄えていたはずだし、押し切れなさそう。



 …ん。間違いないね。白授の道具を破壊するほうが確実。



「…釜狙って」

「「了解!」」


 …皆返事してくれた。…じゃ、やるよ。



 釜があるのはたぶん頭。胸を狙われても動じなかったくせに頭だけは避けてた。



 頭を狙ってわたしとシールで入れ替わり立ち代わり近距離攻撃。カレンとガロウとレイコとセンが後ろから援護。時たま、ガロウとセンは肉弾戦に加わってくれる。



 …確実に当たってる。当たってはいるけれど…、効いてない。当たってるのは全部カレンとガロウの攻撃。というか二人の攻撃はよけようともしない。…白授の道具に命中しない限り完全に効果がないのかな。…となるとやっぱり釜があるのは頭だね。カレンの矢でさえ避けていたから。



 …あれ? そうなるとわたしの攻撃も受けて良いはずだけど。何で避けるんだろう? …レイコは燃やす。シールとセンは浄化する。だけど、わたし、何かあったっけ?



 たまたま白授の道具あるところに攻撃が当たりそうになってるのかな? …でも、さっき思いっきり貫いた。…その時どんな風だったか覚えてない。



 …むぅ。仕方ない。首を狙って鎌を振り払えば、大げさに後ろに下がるマカドギョニロ。…理由はわかんないけど、わたしの鎌で首を斬られるのは嫌なのね。



 …なら、囲んで逃げられないようにして首を斬る。釜っぽい頭を狙い続けるのもいいけれど、釜は絶対硬い。なら、より確実なこっちを選ぶべきだね。



『…カレン、ガロウは拘束。センとレイコは囮ね』


 日本語で妹達に伝える。これでシール以外はみんなわかる。



「…シール、殴って」


 …細かく指示したら狙いがバレちゃう。…ごめんね。だけど、群長だからその辺りの判断はわきまえてくれるはずって信じてる。



 わたしと入れ替わってシールがマカドギョニロの前へ。わざと動作を大きく取って後ろへの視線を遮る。その隙にわたしが思いっきり飛んで上へ。



 上方へ飛んだわたしをガロウの『護爪』がこっそり隠し、わたしの周囲にわざと目立つように《輸爪》で浮かぶレイコとセンが、目くらましを兼ねた弾を大量に放つ。



 大量の光弾に目をひかれた隙にシールが顔に一撃。これまでにないくらい甲高い音が鳴った。…白授の道具殴ったね。



「キサマ、よくモ!」


 …激発するマカドギョニロ。それを尻目にガロウが目くらましに出してくれた『護爪』を思いっきり、力を込めて蹴り飛ばして飛ぶ。



 下ではカレンがかなり大きな矢を番え引き絞る。シールだけ狙い突っ込むマカドギョニロの右腕をガロウが切り飛ばして、思いっきり右足を踏みつける。そして、カレンの一射が左足へ。



 …足の動きは封じた。これで決める。



「この程度デ、止められると思うナヨ!」


 叫んでガロウを振りほどこうとしているけれど…、無駄だよ。



 飛んだ勢いを生かし、首めがけ鎌を振りぬく、スパッと小気味のいい音とともに首が飛ぶ。さらに勢いそのままに、下から上に切り上げて胴を真っ二つ。



 衝撃のあまり少し上に浮き上がった胴は、同時に飛来したレイコとセンの攻撃によって抹消された。



「あぁ!?」「ブルルッ!?」

「どうしたんだ!?」

「首がっ!」「ブルッ!」


 …首? 視線の先には吹き飛んだ首がある。…あれ? 無力化しようとしてくれてたはずなのに。…まさか、防がれた!?



「ああっ!?」「ブルルッ!?」


 呪文詠唱を中断したレイコの声。今度は何!?



 …あぁ、滝に呑まれたのね。これで終わってくれればいいけど…、これで終わるはずがないよね。



 ……あぁ、やっぱり。そう来るよね。わたし達の目の前で、滝つぼの水面が先ほどと違って、ぼこぼこ猛烈に泡立ち始めた。

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