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白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
5章 魔人領域
169/306

149話 続々スタンピード

「入れ食いなのー!」


 なんて言いながら、魔法を乱射するカプラさん。あんなに楽しそうにはしゃぐカプラさんなんて初めて見た。



「あの人は大丈夫そうですね」

「だね」

「ちょっと、どこに目を付けてるの!とミーは問いたいの!」


 スルーしようとしたらバレた。…まぁ、冗談ですよ。冗談。



「二人は時たま冗談では済まない事言うし、やってのけるの。それはともかく…、助けるの!」

「「『『ウォーターカッター』』」」


 返答代わりに、水で魔物を切断する。泥の魔物は少しだけ軌道をクイっと動かせば核を破壊できる。3匹ぐらい処理できた。



「今なの!ふわふわなミー毛よ、敵を穿て。『柔温毛《ヤラマカシュ》』!」


 カプラさんから毛が放たれ、それに突っ込んだ魔物がスパッと切れた。



「威力が落ちてるの!」

「なら少々ジッとしていてください」

「ついでに息も止めてくださいね。すぐ終わりますので」

「なの?」


 カプラさんの魔法は毛が命。毛が汚れると威力が落ちてしまう。ならば…、



「『水』」

「ちょっ。ゲブァッ」


 俺が水で汚れを落として…、毛を真っ白にする。



「『温風』」


 続いて四季が乾かす。



「乾きましたね」

「ナイス四季。完璧だ」

「習君もよかったですよ。ちゃんと汚れ落ちていました」


 二人ともいい仕事をした。



「ミーが置いてけぼりにされている件」

「ハッハ。カプラ。無駄だよ。二人だからね!」

「答えになってないと思うの…」


 膝から崩れ落ちるカプラさん。崩れ落ちる前に四季が優しく支える。



「シキ…」

「ダメですよ。折角綺麗にしたのに。意味がなくなってしまいますよ」

「そうですよ。しゃんと立ってください」

「シールの答えになってない答えが真理だったのー!」


 何で叫んでるんだろう。この人。



「ハッハ。カプラ。いいから戦いなよ」

「わかってるの!やってやるの!ふわふわの毛。飛んで迷って引っかけるの!『迷子羊(ヤチャビュ)』」


 スルスルと滑らかに毛が風に乗っているかの如く飛ぶ。そして、泥の魔物だけでなく周囲の魔物をもからめとる。



「毛よ!やってやるの!『黄昏羊(サーンビュ)』!」


 イライラを叩きつけるように乱暴にベシッと毛に触れるカプラさん。それにこたえ、毛が膨れ上がり敵を包み込む。



「窒息するがいいの!」

「窒息よりも圧死するほうが早いんじゃなかったっけ?」

「細かいことは気にしちゃ負けなの」


 うわぁ…。



「あの人、私達にあれ使う気だったんですね…」

「『狂食羊(バーグラハンビュ)』の時点で大概だったのにな…」


 あの時点でかなりヤバかった。というか、精神ダメージはあっちの方がありそう。生きたまま喰われるから。どっちにしろ『迷子羊(ヤチャビュ)』からの派生技が恐ろしすぎる。



「試合開始!から速攻で容赦なく4人を叩き潰した人たちに言われたくないの」


 じっとりとした目。…さっさと敵を倒そう。



「おや。二人そろって誤魔化す気かい。まぁいいけどね」

「ミーは良くないの!」

「はいはい。やるよ。カプラ。魔の力よ、僕を狩人に変えろ。『獅子咆哮(スィーリュン)』!」


 唱えると、魔物の群れに突撃。魔物を猿のような魔物の殴打を正面から叩きのめし、狼の喉笛を牙で噛みきり、近くにいた泥の魔物。その核を強靭な足で踏みつけ潰す。



「シールお得意の技が出たの」

「あれって、『身体強化』と何が違うんです?」

「能力が向上しているようにしか見えませんけど…」


 あの時(試合)も劇的に変わっていた記憶がない。



「あ。貴方たち相手なら特に意味はないの」


 え。



「正確にはなかった。と言うべきなの。魔力回復が向上するとか、受けたダメージや、獅子咆哮(スィーリュン)につぎ込んだ魔力と時間に応じて奥義の威力が上がるとかあったけど…、」


 そこで言葉を切ると、やれやれと首を振りながら、ため息とともに、



「それらを二人…、というか4人は真正面から踏み潰していったの」


 と一息で吐き出した。…なんかごめんなさい。



「ま、それはいいの。助けに来てくれてありがとうなの。そろそろミーはいいの。何なら上からクヴォックも助けてくれるの」

「上から見えますかね?」

「見えるの。まぁ、忙しかったらさっきみたいになるの」


 それって一般的に「駄目」というのでは…?



「とりあえず、ミーはなんとかなるの。だから、イラスのところ見て来て欲しいの」

「イラス爺さんですか?構いませんが…」

「何故です?」

「無茶やらかしてる気がするの」


 何とも端的な答えで…。



「了解です。では、行ってきます」

「頼んだの。あ。シールも連れて行って欲しいの」

「というか勝手についてくよ」


 うわ。いつの間に…。さっきまで敵の中にいたはずなのに、何で俺らの目の前にいるんですかね…。



「君たちが移動する気配を感じた!」


 さいですか。…気配。気配か…。気配と言えば、さっきから感じているこの拭えない違和感。…イラス爺のところを見たら、ハーティさんのところに行くか。彼ならば、何か答えをくれるかもしれない。



 それでいい? そう目で四季に聞けば、肯定の目をしてくれている。なら、これでいこう。



「お。目だけで会話かい?通じ合ってていいね!」

「「埋めますよ?」」

「仲いいね!」


 ビシッと親指を立てるシールさん。これはダメだ。無視して走ろう。



「せいっ!」


 走り出すか出さないか、その瞬間に立てた親指を魔物の目に押し込み、爪で脳髄を切り裂いた。ドヤ顔はやめてください。タイミングが悪すぎてムカつきます。



「イラスさんはどこにいるんですかね?」

「カプラさん曰く、こっちらしいけど…」

「臭いから判断するに、すぐ見えると思うよ?」


 臭いって…。というか、よく会話に混じってこれましたね…。



 それにしても…、「見える」? 今、見つからないのだが…。



「木々の切れ間を見てみなよ」


 あ。いた。たぶんあれだ。顔をあげた先。木々の切れ間からわずかに、サイのような硬質な皮膚が見えている。全長は10 mくらいだろうか。



「大きいですねぇ…」

「だね…。前は使ってこなかったのに」

「君らの前ではデカい的製造魔法になるよね?」


 ……確かに。あの時使った触媒魔法──『乱気流』と『重岩弾』──の前では盾にすらならない…はず。デカいときの能力の如何によっては盾になるだろうが。



「しかもあいつ、リンパスみたいな再生能力もないし、純粋な攻撃偏重だからね」


 なら、絶対に無理だな。



「当然、4人(辰、巳、酉、亥)が落ちてからは言わずもがなだね。邪魔。しかも君らなら、口の中に攻撃叩き込んだりするよね?」

「「しますね」」

「即答だね…」


 しないわけがない。一寸法師でもやっている由緒ある方法だ。



「まぁ、私達の攻撃を一箇所に集中させてこじ開けることも出来ますがね」

「こじ開けたらそこに塩を塗るように攻撃すればいい」

「やっぱ、君達怖いよ。仲良く楽しげに話しながらド外道な事言うなんて…。ありゃ?子供達も出来るじゃん…」


 出来るな。しかも簡単に。アイリは一箇所を切り続ければいい。シャイツァーだから、いくら皮膚が硬いといってもいずれ競り勝てる。『死神の鎌』もあるから狙いやすい。



 カレンの場合はもっと楽だ。あの子の狙撃能力ならば、貫通するまで同じところを狙うことも出来る。



 レイコはに至っては論外。『|蒼凍紅焼拓《ガルミ―ア=アディシュ》』で中から破壊できる。リンパスさんなら再生できるから一撃で致命傷にならないが、イラス爺はどうしようもないだろう。



 ガロウは一番厳しいか。ただ、シャイツァーは『爪』だ。俺らの『ペン』と『ファイル』などと言う、「ねぇ、それ本当に武器にするの?文房具だぜ?」っていう物よりはマシだろう。



 …文房具でも使い方によっては自衛の道具にも凶器にもなるけど。



 閑話休題。全員が出来るな。そもそも、イラス爺大きくなると移動速度がなさそうだ。現に今も動きがおそ…、ん? 遅いというより…、



「なぁ、四季。イラス爺止まってない?」

「上下には動いてますねぇ…」

「シキェ…」


 大丈夫です。シールさん。今回はちゃんと、左右には動いていないって言うニュアンスが含まれている。天然では…、って、天然でしかない。上下移動はおそらく「呼吸」が原因だ。



「悠長に話しつつ、敵を蹴散らしてる場合ではなさそうですね。急ぎましょう」

「ん?」

「先に行くよ!」


 俺がとぼけている間に置いて行かれた。



「あれほど『獅子咆哮(スィーリュン)』に魔力を使って大丈夫なのかね?」

「魔力消費よりも、仲間優先なのでしょう」


 話ながらも少し魔力を増やし、足をより強化。速度を上げる。



「爺さん!」

「埋まった。助けろ」

「元に戻れないの?」

「戻ると今度は上がれん」

「うおう…。穴が深いんだね!とりあえず敵を片付けるよ!」

「すまん。頼む」


 よし到着。イラス爺。綺麗に穴に埋まっているな…。抜けようともがいたのか空間はあるが、深い。これでは上がれないだろう。



 俺らも何かすべきだろうが、説明も一切なしに既にシールさんが動いている。少し様子を見よう。



 …アレは何だ? イラス爺が開けた大穴の外壁に何か…、あれは…、穴?



「習君。穴の中に横穴が…」

「四季も見える?となると錯覚ではない。…。」

「王たる僕の前にひれ伏せ。奥義!『|獅子王の威光《スィーラ=ジェディーン》』!」


 彼の纏う雰囲気が変わった。つられてそちらを向けば威風堂々たる王、という様相を呈する彼がいた。



 …今まで「国を統べる人」という意味では、アークライン神聖国(カーチェ様)イベア(オスカル様)ぺリアマレン連邦(リンヴィ様)で会ったことがあるが、彼らとはまるで雰囲気が違う。彼らは民に寄り添う王だった。



 だが、今の彼は力で全てを押さえつける。…こう例えるとシールさんに対して失礼極まりないが、ハールラインに似ている。そんな気がする。



 彼は雰囲気を纏ったまま体をゆっくり倒す。刹那、俺達の目の前から消えた。そして舞い上げられた砂が落ちる前に光の道を作りながら戻ってきた。



 そのまま俺達の目の前を走り抜け、元居た位置に戻る。グワッと一瞬で道が太くなった。



「ちょっ。おまっ!」

「てへっ。ごめんね。頑張ってくれたまえ」

「ふ ざ け ん な 」

「てへっ」


 威厳もクソもない会話。その最中に、もはや円と見紛うほどにあたりを覆いつくした光の環。半径8 mほどの円と化した光輪は、端から火が上がると、たちまち内部を焼き尽くし、消えた。



「どうだい。僕もやるだろう?」

「最後が締まっていれば完璧でした」

「ですね。習君。さっさと助けましょう」


 ジトっとした目を一瞬だけ向けて、手を繋いでイラス爺がいると思われるところへ。シールさんの言葉は無視だ。



 こういう巨大化を解除した時って、大抵の場合、中心付近にいるのがセオリー。だから今回も中央付近にいるはず…。



「シールゥ!殺り残しが多すぎるわ!このたわけ!」

「…謝ったじゃん!爺さんがちっこくなったからとは言わないけどさ!」

「言ってんじゃねぇか!」

「気のせいさ。そもそも、僕のあれは上にしか判定ないのわかってるでしょ!さっさとやりなよ」

「わかっとるわぁ!離れてろ!」


 …元気そうで何よりです。離れろと言われれば離れますかね。ガシッとシールさんの襟を掴んで引きずる。



「あ。待って。引っ張らないで」

「「嫌です」」


 さっさと離れましょうねー。



「何でさ」

「「まだイラス爺を弄り倒しそうだったので」」

「…しないよ」


 間。そもそも間なんてなくともこの点においてシールさんに信頼などない。いや、悪い意味での信頼がある。と言うべきか。



「うわ。同タイミングでやれやれって首振った」

「「そういうところですよ」」


 はぁ…。愛の狩人(自分の恋人は見つからない)だからなこの人…。



「『犀の誉(ラノダー)』」


 呪文の末尾だけが響き、みるみるうちにイラス爺が巨大化。穴の中に落ちてきた魔物を巨大化しながら穴の淵へ淵へと追いやっていく。逃げ場を無くした魔物達はイラス爺に攻撃をかけるが、全ての威力が足りない。彼の皮膚を貫けない。



 故に、壁に追いやられて圧死。彼の腹部分に潜りこんだ奴らもお腹で押しつぶされた。



「そういえば、あの人巨大化中に2足歩行出来ないんですかね?」

「確かに。リンパスさんと違って、あの人は見たところただ巨大化しているだけのはずだよな…」


 リンパスさんは鯱になれば、腕とか足とか立つための気管は全部ヒレになる。ヒレになったところであの人、謎力で浮くから全くもって問題ないが。



「ああ。理由?簡単だよ。2足歩行しようものなら確実に自重で沈む。それだけさ」


 予想以上に理由が酷い。



「そういえば服は?巨大化に伴ってビリビリー。とかなりません?」

「その辺は魔法で融通効かしているのさ」

「どうでもいいが。助けろ」


 無駄話がすぎた。四季と手を繋いで…っと、



「「『『壁』』」」


 壁を傾けてスロープを作成。これで登れるでしょう。



「急」


 「ふざけてんの?あ゛あ゛?」とでも言いそうな顔。というかいわゆるヤクザそのものの顔。それよりも怖いかもしれない。そりゃあ子供泣く…。



 とは言え、坂の傾きは45°だ。確か…日本で一の坂の勾配が37%だったはず。横に100 m移動すると上に37m進む。そんな坂。今回の坂の傾き(45°)なら…、横に100 mの移動で、縦に70 mくらい進む…と。うん。無理。緩やかにしようとすると場所が足りない。



 階段の方が良いかな。書かなければならないが、持続時間は1分ぐらいもあれば十分。サッと書いて出す。



「すまぬな」

「構いませんが…、」

「いつもはどうしているのです?私達がいなければ助けられない。なんてことはないですよね?」

「クヴォックに引き上げて「黙れ」あっ、はい」

「普段ならば沈んだりせぬよ…」


 …普段なら沈まない。となると…普段とは違うわけだ。本格的にハーティさんのところに行ったほうがいいか。



「ハーティさんのところに行ってきます」

「ならば、待て」


 小声でぼそぼそと詠唱。再度巨大化。そして、みるみるうちに彼の足元が陥没していく。



「助けて」

「爺さん。ボケた?」


 何となく何がしたかったのかは分かった。偵察をしようとしてくれたんだろう。だったら、跳ね上げてしまえ。



「「『『風』』」」


 物理的にも精神的にも小さくなったイラス爺を巻き上げ、木々の上へ吹き飛ばす。こういう時、形を明確に決めていない紙は便利だ。後から修正が効く。



「ギャァァァー!」

「たーまやー」

「爆発はしないけどね」

「言ってみたかっただけです」

「そっか」


 なら、仕方ない。



「容赦ないねぇ…」

「シールさんもこの気持ちわかりますよね?」

「まぁねぇ…。厚意からの行動とは言え、直近の出来事を忘却してこっちの厚意を一発で無に帰すのはさすがの僕でも引く。あ。帰ってきたね」


 俺らから少し離れたところに華麗に着地。そしてある方向を指さす。



「あっちじゃな」


 …予想通りとはいえ、ちゃんと着地できるんだなこの人。



「行くがいい。儂はここに残る」


 俺らの方を見ずに駆け出し、角で敵を串刺し、体を叩きつけ、足で踏み潰して内臓を破壊した。そして、しゃがみこむと、



「『犀の号砲(ラノンバクック)』」


 呪文を唱え、地球で見たサイのように角を立てて全力で吶喊、衝撃で魔物を砕きながら走り去っていった。



「最初からやれといいたいのは私だけでしょうか?」

「心配しないで四季。俺も同感。見える範囲だけで泥の魔物を3匹も潰してる…」

「おしどり夫婦だねぇ…。おおっと、その目はやめて欲しい。…ん?僕があいつを注意しに行けばいいんだ!じゃ!」


 俺らがジト目で見るなら、視界から外れればいいじゃない! そんな謎発想で、シールさんもその後を追うように敵を薙ぎ払いながら走っていった。



 行くか。イラス爺さんが教えてくれた…、というかイラス爺に俺らに教えさせた方向へ。

敵の量が減った感のある森を走ること数分。



「あ。いた」

「一人でよくあの量を止めていますね。あの人…」

「だな」


 シャイツァーの特性もあるだろうが、たった一人で40 m程の空間を完全に封鎖している。『吸引(アブシューレ)』で魔物を纏めて引き込み、『射出(イジェック)』で纏めて発射。魔物にぶつけて弾にした魔物もろとも、命中した魔物を粉砕する。それを繰り返しているだけだが、魔物は彼の横を生きて通り抜けることができない。



「…深呼吸ですかね?」

「四季。真面目な顔して何でボケるの?」

「え?あ。ごめんなさい」


 恥ずかしいからか、頬を赤く染めてポリポリと掻く。…こういう天然染みたところも可愛い。



「惚気るならよそでやれ」


 ギョロリとした大きな赤目で睨みつけられた。



「「ごめんなさい」」

「ま、冗談だ」


 この人、戦闘中に冗談なんか言うんだな。言わないもんだと思っていた。



「で、要件は?二人が惚気るためだけに来たわけじゃないのは確信している」

「はっきりこれとは言い難いのですが…、何か違和感があるのです」


 彼の視線が四季に移った。



「私も、残念ながらはっきりとは言えません。が、何かが変です。瘴気関係だと言うのは断言できますが」

「そうか。…クヴォォォォック!」


 大声で叫び、球体を上空に投げた。花火のように鮮やかな華が昼間の森の上で開いた。

敵を倒しながら待つこと1分程。



「どうした。ハーティ」

「違和感を調べろ」

「違和感…?ああ。勇者二人の証言を得て、半ば確信を得たと。了解。探る」

「カレンにも伝えろ」

「えぇ…。あの子に伝えるとオレ、負けそうなんだが。……そう睨むな。ちゃんとやる」


 ヒュパっと羽を撒き散らしながら上空へ消えた。



「他に何か?」


 他…、他…。あ。



「イラス爺が『犀の誉(ラノダー)』を使った際に地盤沈下を起こしていました」

「私達は、普段を知らないのですが、彼曰く、いつもは起きないらしいので」

「となると…、地下か?」


 バサッ。音とともに羽が降ってきた。



「ハーティ。上から見た限り異常なし。だ」

「おとーさん!おかーさん!いじょーはなかったよー!」


 カレン。何で俺らに報告する。別にいいけどさ…。おそらくクヴォックさんからは、「ハーティさんからの頼みだ」的なことを言われているはずだよね?



「オレの言葉なんざ、勇者様がそばに居りゃ無視できるってことだろ」

「そのくらいの年齢の子ならば、子は親を優先する」

「ハーティ。カレンはハイエルフらしいぞ」

「そうか、であるならば、子供だからか?」

「えへへー」


 褒めてー。とぐいぐいと頭を押し付けてくるカレン。甘えたになってるな。この子。まぁ、かわいいからいいけど。



 撫でれば、気持ちよさそうに目を細める。…それにしても、違和感の原因は何だ?



「上空にー、てきえーはなかったよー!でも、そーじゃないんだよねー?なにか忘れてなーい?」


 忘れるような何か…ねぇ。あ。あれを確認していない!



 四季と顔を見合わせ、イラス爺のいたところへ急いで戻る。先ほどイラス爺が陥没させた穴。その壁面を見れば…、



「あった!横穴!」


 やっぱり気のせいではなかった!



「やりますよ!」

「ああ!」

「「『『水球』』」」


 水の球を横穴に叩き込む。俺らの想像が当たっているならば…。



「「「ぴぎゃぁ!」」」


 ムカデみたいなやつが穴から混乱しながら這い出てきた。が、クヴォックさんとカレンによって瞬殺された。



 ……正解か。通りで見えないわけだ。こんなに木が生えているくせに地下からか!



「オイオイどうする。ハーティ。地上はかなり減らしたが、地下は…」

「クヴォック!集合させろ!」

「場所は!」

「『クーラン』および『ビード』それらの中点!」

「了解!」


 クヴォックさんが上空に飛び上がると、模様の違う花火が4発上がった。緊急集合。『クーラン』、『ビード』、その中央。そんな意味だろう。



「急げ!」


 『身体強化』を強化してっと、地上の敵を蹴散らして行きますか。かなり減ったとはいえ、まだ完全に潰したとは言えない。

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